装飾山イバラ道[194]雛まつりとフランス人形
── 武田瑛夢 ──

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節分の日の朝、夫に起こされた。「鬼は外!」などと言いながら、私に豆の小袋をぶつけている。

まだ目が覚めていなかったので、「なんだー?」っと思っていると、私の手にも豆の小袋が握らされていた。一方的に攻めると、私が怒って恐ろしいことになると思ったので、まずは私にも豆の袋を握らせたそうだ。

別に私は鬼嫁ではないつもりだけれど、それは確かに怒るかもね。今年も節分用の煎り大豆の小袋タイプは買っておいたけれど、奇襲攻撃とは思っていなかったので迂闊だった。

本来は家の内と外に豆をまきながら福を呼び込むもののはずが、うちではこのように相手にぶつけている。雪合戦ならぬ豆合戦。そういう人も多いと思う。

次の行事はバレンタインデーと雛まつりかな。雛まつりというと女の子の節句だから良い思い出がありそうなのに特にない。女姉妹の家なのにね。




●昭和の人形

うちには雛人形はなく、小学校の頃買ってもらった「フランス人形」がある。大きなガラスケース入りで、模様替えや断捨離で捨てられそうな危機を何度も乗り越えて、まだ実家にあるのだ。

カールした金髪で、黒いベルベットのロングドレスの立ち姿の人形だ。おそらく母の趣味で、雛人形ではなく、当時流行っていたフランス人形を買ったのだと思う。

昭和の家にはどこでも置いてあった人形といえば、他に「起き上がり小法師の赤ちゃん人形」も懐かしい。さすがにもうこれはうちにはないけれど、画像検索してあの丸いフォルムを久しぶりに見た。

「フランス人形」で検索すると、本格的なフランスの人形が出てきてしまって怖いので、「フランス人形 昭和」で検索すると、レトロで懐かしいタイプの人形が見られる。

今思えばどこが「フランス」なのかよくわからないけれど、きっと「フランス」という響きに憧れた世代の人形なのだと思う。

画像検索で画面を人形で埋め尽くしてみると、ありとあらゆるバージョンのフランス人形があったのだとわかる。メイクも髪型もドレスもバッチリ決めて気取っていて、どの子も大好きだ。

しかし、うちにあるのは友達の家にあるようなピンクや黄色のヒラヒラドレスのフランス人形ではなく、黒のベルベット。そういえば、趣味に合うような人形を相当こだわって探していた母を思い出す。

ガラスの人形ケースって割れそうで繊細だけれど、このケースのおかげか汚れることなく、中の人形は今でも綺麗だ。画像検索で出てくる人形たちも、古いわりに綺麗だけれど激安で売られていたりして、哀愁を感じてしまう。

実家にあるこの人形ほど、私たちの暮らしをじっと見続けててきたものは他にはない気がする。美術系で受験をすることになった時も、絵のモチーフとして描いた記憶がある。

もはや捨てるつもりもない。もしうちのマンションに移動させることになったら、壁掛けケースでも特注して省スペースに飾ろうかなと思っている。

●ハマグリのお吸い物

雛まつりにはハマグリのお吸い物を作る。このシーズンは、魚屋さんでも良いものが必ず入荷しているので作りたくなる。しかし、いつものアサリと違って、ハマグリは高い。しかも殻が重たいので、グラム売りの場合は相当重さのことを考慮に入れておかないといけない。

魚屋さんに聞いてみればいいのだけれど、聞いた以上は買わないと悪い気がする。今までの感じだと、魚屋さんは値段を聞くとすぐに、生簀からビニール袋にハマグリを入れ始めてるし(作戦?)、思ってた以上に高い買い物になることばかりだった。今年こそ買いすぎないようにしたい。

理想は一人あたりに二つになるように買って、開いた一個の貝殻に二つ分の身を入れる盛り付けだ。

この料理番組で見る雛まつりっぽい盛り付けは、大きいハマグリでないとサマにならない。それでもハマグリの白く濁った出汁とミツバの味は素晴らしくて、高いのも納得するしかないんだよな。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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人形の話とは私には珍しくなかなか女性っぽいけれど、今年の雛まつりはゼルダのゲームが届く日だ(笑)。ゲームというと男の子っぽいし、雛まつりとは真逆のイメージ。でも違うのです。ゼルダってゼルダ姫を救うゲームなので、雛まつりには合っていると思う(笑)。ゲームの主人公はリンクという男子で、今回の設定だとちょうどかっこいい青年風。とにかく、雛まつりの日に無事にゼルダが始められるといいなと思う。