《アンテナが腐っていく》
■羽化の作法[33]
拘留生活・その1/自ら感受性を抹殺した日々
武 盾一郎
■crossroads[46]
テキストエディタのススメ
若林健一
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■羽化の作法[33]
拘留生活・その1 自ら感受性を抹殺した日々
武 盾一郎
https://bn.dgcr.com/archives/20170221140200.html
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新宿署に連行されて留置所に入れられる。番号を首からかけた写真を撮られ、拇印を押す。その時、警官は僕にこう言った。
「ここはいろんなのがいるからな」
僕は急に怖くなり拇印を押す指が震えた。手錠に繋がれながら留置部屋の方へ行く。6人部屋がずらっと並んでいる。
檻の前に立ち止まると、檻の中に入ってる男たちがいっせいにこっちを向いた。怖くて少しめまいがした。
檻の中に入れられ、僕は「よろしくお願いします」と檻の中の人たちに頭を下げた。
部屋で一番長く入ってそうな人が「とりあえず、便所を掃除しろ」と言った。
トイレは部屋の奥にある。トイレを丁寧に磨いて戻ると、「なにで入った?」と質問された。
「器物損壊です」と答えた。
「はあ?」という感じのリアクションだった。多分、珍しいのだろう。
6人部屋の内訳は、一人は暴力団〇〇会の自称幹部、何をやって檻に入ったのかは不明。もう一人も暴力団関係の人で、覚せい剤の売買に関わってる人。そして麻薬をやって捕まった人。それから出稼ぎオーバーステイして捕まってる真面目なアジア人。といった感じだった。
罪が確定してる人は留置所から拘置所に送られるようで、人の入れ替わりは早かった。隣の隣あたりの部屋には人を殺した暴力団の人がいて怖かった。あの部屋ではなくて本当に良かった。
6人部屋には必ず、暴力団の人がいて、外国人がいて、麻薬関係の人がいるようだった。
●拘留日記より留置所の生活
僕が留置されたのは新宿署の6人部屋。間口は1間ほどで奥に長くなっている。一番奥にトイレがある。
朝は6:30に起床、天井の電気が自動で点灯し、「はい、起床!」と警官の号令がかかる。
起きると布団を畳んで布団部屋に運ぶ。僕は「43」と書かれた便所サンダルを履いて、檻から布団部屋まで布団を運び、檻に戻る。
一旦全員が檻に戻ってから「洗顔」。再び檻から出て共同洗面所に行き、顔を洗い歯を磨く。終わると檻に戻る。
そして「朝食」。部屋の中みんなでいっせいに食べる。
朝食が終わると掃除の時間がある。掃除機が檻の中に入れられて、部屋の中に掃除機をかける。掃除する人はごく自然に持ち回りになる。
午前9時ちょっと前あたりに「運動」という時間があります。
檻から出てちょっと広い檻に行き、煙草を吸うのです。煙草は二本まで。煙草の火は警官がつけてくれる。というのは、ライターを持つことが禁止されているから。
「運動」の時間は各檻が集まるので、結構な人数になる。監視の警官は5〜6人壁に立っていて、煙草に火をつける時に警官を呼ぶ。
警官に煙草の火をつけてもらうのは、なんだかお給仕をしてもらってるようでモゾモゾする。
10時頃になると「点検」というのがある。
警官隊が向こうの部屋から「点検! 1番! はい! 2番! はい!…以上 1号室異常なし!」みたいな号令が聞こえてくる。
檻の中の人は廊下の方に向かって座り、番号を呼ばれたら返事をする。僕は43番なので「43番!」と言われると、「はい!」と返事をする。
こういう軍隊みたいなのが僕は苦手だった。内心「くっだらねえよなあ、おい……」って思いながら自分の番号が呼ばれると、「はい!」と返事をした。
点検が終わると昼まで何もない。
●1996年9月3日(火)拘留されて15日目の日記より
留置所に入ってからは熟睡することが出来ない。誰でも。
だんだん精気が抜けて行くのが体感できる。
頭の中もシャープではなくなる。
留置所で何かのアイデアや想像(イメージ)を膨らませてみようとしても、どうにも出来ない。
目の前にあるのは灰色の壁だけ。
何も想い浮かばない。
脳の働きも体の働きも どんどん低下して行くようだ。
絵を描こうなどという気ももちろん起きない。
ただ、打ち上げられたマグロのように一日の大半を無駄に過ごす、そんな事しか出来ない。
感受性のアンテナをちょっとでも張ろうものなら苦しみだけが増長してしまう。
「絶望的」ではないが「なんの希望」も沸かない。
だから感受性を自ら飲み込み、無きものとしてマグロみたいに時間を潰していくのだ。
退屈で死にそうだが、何も想い浮かばない。
何にも集中出来ないから、もちろん本を読んでも何も頭に入らない。
ダラダラとしか過ごせないから夜は眠れない。
まともな神経に戻したら発狂してしまいそうだから、自ら感受性を抹殺する。
その状態を保ち続けて2週間。
奥の方に押し込まれたアンテナが腐って行く予感がある。
僕が早くここから出たいのはそのためである。
奥にしまっておかねばならない触覚、使っていない間に枯れてしまったらどうしよう。溶けてしまったらどうしよう。
どっちにしてもシャバに出て、1〜2週間のリハビリが必要だ、戦線復帰までに。
この時間のロスが「何か」に結びついてくれている事を願うより他はない。
「オルタナティブ」とは野心を温存する状態を示す。のだから。
(つづく)
【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/4月9日『仔猫のタムちゃん』演奏会】
Facebookページ https://www.facebook.com/junichiro.take
Twitter https://twitter.com/Take_J
take.junichiro@gmail.com
『聴く展覧会・観る音楽会・組曲 仔猫のタムちゃん』
日時:2017年4月9日(日)開場13:30 開演14:00 終了16:30
場所:ギャラリーゼフィール(大宮駅東口徒歩5分)
料金:前売2,000円 当日2,500円(全席自由)
https://www.facebook.com/events/141963569646400/
“小さな猫のタムちゃんは ある日ネズミさんに恋をしたけれども《事件》がおきて 深い闇に落ちてしまう…”武 盾一郎・原作『ネズミに恋したネコのタムちゃん』が10曲の朗読劇『組曲 仔猫のタムちゃん』になりましたピアノとヴァイオリンと朗読でタムちゃんの心の世界を奏でます
チケットご購入・お問合せ
http://gabrielgabriela-jp.blogspot.jp/2017/02/blog-post.html#ticket
チケット御希望の方は下記御記入の上
gabrielgabriela.jp@gmail.com
に送信くださいませ
折り返し合計金額と振込先口座番号をご連絡差し上げます
件名:『仔猫のタムちゃん』演奏会
・お名前
・ご住所
・希望チケット枚数
・お問合せ等
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■crossroads[46]
テキストエディタのススメ
若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20170221140100.html
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こんにちは、若林です。
最近、メインで使うテキストエディタを「Sublime Text」に変更しました。
これまでは無料で使える「Bracketst」を愛用してきたのですが、動作の重いのが難で、色んなテキストエディタを試用した結果、もっとも動作の軽い「Sublime Text」に落ち着き、$70を支払って正規ユーザーとなりました。
ほとんどのスマートフォンアプリやネットのサービスが無料で利用できる時代に、ソフトウェアに$70(日本円で8,000円ちょっとです)も払うというのは多くの方には理解しにくいかもしれませんね。
でも、エンジニアにとって「テキストエディタ」は侍の刀のようなもの、自分の気に入ったものを、お金を出してでも使いたいものなのです。
自らのサイトで"The text editor you'll fall in love with(恋に落ちるテキストエディタ)"を標榜しているのもうなづけるほど、すっかり気に入って使っています。
Sublime Text
https://www.sublimetext.com/
「テキストエディタ」といっても、ピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、Windowsで言うメモ帳の高機能版アプリのことです。
Microsoft Wordのような文字の装飾機能やページ管理機能はついていない、文書ファイルを作るだけのアプリですが、プログラムのソースコードやwebのHTML/CSS/JavaScriptを書くための機能が充実している点が、メモ帳とは異なります。
OSによってもたくさんの「テキストエディタ」がありますので、その一部をピックアップしてみます(名前の前に「★」がついているものは有料です)。
主に、LinuxなどのUNIX系OSで利用されているエディタ
vi / Emacs(イーマックス)
Windows専用エディタ
★秀丸 / サクラエディタ / TeraPad / EmEditor
Mac専用エディタ
★Jedit X / mi / CotEditor
Mac、Linux、Windowsの全部もしくは複数のOSで利用できるエディタ
★Sublime Text / Brackets / Atom / Visual Studio Code
そもそも「テキストファイル」と「Wordの文書ファイル」の違いがわかりにくいので、あまり一般的ではないソフトウェアですが、文字の大きさや色を変えたり罫線を使って表を描いたりはできないものの、仕事上で「文字装飾の必要がない文書」を作成することが多い方なら、「テキストエディタ」の方が圧倒的に便利です。
WordやExcelよりも軽量(動作が速い)なので、ストレスなく文書作成に集中できます。
ただし、「Sublime Text」、「Brackets」、「Atom」など、最近の海外製「テキストエディタ」は印刷機能がないので要注意。
作成した文書をデータのまま入稿するのであれば、ほとんど印刷することはないかもしれませんが、文書の一部をメモ代わりに印刷して持ち出したい、というケースはよくあります。
また、海外製テキストエディタの特徴として、日本語文字コードの「SHIFT JIS」に対応していないものがありますので、ここにも要注意です。
webコーディングの場合は、「UTF-8」を使っていることがほとんどなので問題ないのですが、Windows上で開発しているプログラムのソースコードやWord、Excelからテキストに変換したファイルを扱う場合は、文字コードが「SHIFT JIS」になりますので、対応していないと扱いづらいです。
これらを総合すると、Windowsなら「サクラエディタ」が便利です。「SHIIFT JIS」に対応しているし、印刷機能も付いています。
ただし、webコーディングがメインで印刷機能も不要ということであれば、「Brackets」がお勧め。Adobeが開発しただけあって、webコーディングの支援機能が充実しています。
Macだとmiか、やはりwebコーディングがメインで印刷機能も不要なら「Brackets」がお勧めです。
文書を作成するだけのアプリですが、それだけに道具感や味を感じることがあります。色々試して、自分の刀となるテキストエディタを見つけてください。
【若林健一 / kwaka1208】
http://kwaka1208.net/aboutme/
CoderDojo奈良・生駒〜子どもためのコーディング道場〜
http://coderdojo-nara-ikoma.github.io/
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Scratch(スクラッチ)でつくる! たのしむ! プログラミング道場
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編集後記(02/21)
●服部剛「感動の日本史」を読んでいる(致知出版社、2016)。モンスターを二冊続けて読んで、なんだかいやーな気分になったので、方向転換して感動路線に向かった。日本の青少年は、世界でもとりわけ「自己肯定感」が低いというデータがある。世界で突出して、自己を卑下している日本の若者たち、自殺率の高さも深刻である。この原因のひとつが「自己肯定感の低さ」である。彼らに大きく欠落するものは「健全な歴史観」だ。それは長年、教職に従事してきた筆者の現場感覚であるという。「自己を愛せない教育」「祖国を愛せない教育」の常態化が、日本人の「自己肯定感」を削ぎ落としてきたのである。
日本の歴史教育には「健全な歴史観」が失われている。その根本原因はGHQによる「戦争犯罪宣伝計画」にあり、その後遺症が歴史の実相を歪めている。というと、またそれかいと思う人も少なくないだろう。だが、戦後の歴史教育がGHQの敷いた路線を、今以て走り続けているのはまぎれもない事実である。日本や日本人の歴史を否定する教育には、誇りや感動はなく、自尊心が傷つくだけである。本当の歴史を学べば、先人への感謝と日本人としての誇りに目覚めて、向上心、責任感、勇気、他者へのおもいやりや敬意などが育ってくる。この本は、これまで筆者が授業で話してきた中から、11編を選んだものである。
大伴部博麻、小笠原諸島を守ったサムライたち、マリア・ルース事件、鳥居信平、重松まさなお、樋口季一郎、栗林忠道、阿南惟幾、昭和天皇、ウズベキスタンと日本人、幻の尖閣切手。このうち、よく知っていると言えるのは「ウズベキスタンと日本人」だけ。嶌信彦「日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた」で読んだからだ。ほかの人物、事項については何も知らないに等しい。そして、すべてに感動した。一人で読むべき本だ。涙が出てたまらない。学校の授業ではまったく知らされていないことばかりである。こういう話を中学生のときに聞きたかった。服部先生の生徒たちは本当に恵まれている。
我々の学んだ日本史は、日本を卑下するために書かれていた。いわゆる自虐史観である。そのため、日本を誇る、日本人を誇る、そういう当たり前のことが大ッ嫌いな日本人がたくさん生まれた。ガチガチ確信的、狂信的な反日嫌日の人はともかく、ごく普通の人でも、日本や日本人を誇ることにためらいを感じているようだ。とくに若い層では。そういう教育を受けてきた結果である。この本を読むと、ますます日本が好きになる。日本に生まれてよかったと思う。中学の社会の教師にならなくて(正しくは、なれなくて)本当によかった。日本史がおかしい、日本人がおかしいと気づくのがあまりに遅すぎた。(柴田)
服部剛「感動の日本史」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800911273/dgcrcom-22/
●日本製紙が4月出荷分からの印刷・情報用紙の値上げ発表。印刷用紙は15円/kg以上、情報用紙は10%以上とのこと。
/エンゲル係数が4年連続で上昇、29年ぶりの高水準。「エンゲル係数は、生活水準が高くなるにつれて数値が低くなる経済指標として知られる」とあり、29年前とはどんな時期だろうと検索したら、バブルに突入した頃とのこと。そこから下がり続けていて、はじけた後はデフレになったので抑えられていたようだ。
「所得が伸び悩む中、最近の円安を受けた食品値上げなどで消費低迷は今後も続き、エンゲル係数も上昇するだろう」と。そうなのよ、食費が家計を圧迫しているのよ。100円で買えていたものが、120円になり150円になり。災害があると倍以上になったり。価格は同じでも量が減る。続く。 (hammer.mule)
<エンゲル係数>29年ぶりの高水準 16年25.8%
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170217-00000090-mai-bus_all
素材に値上げの波 日本製紙は印刷用15〜20%上げ
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDJ20H47_Q7A220C1EA2000/
2017年4月出荷分より
印刷・情報用紙の価格修正について 日本製紙(2017.2.21)
http://www.nipponpapergroup.com/news/year/2017/news170221003639.html
日印産連、用紙値上げ断固反対(2015.1.29)
http://nichiin.co.jp/archives/1251/
製紙大手5社、印刷・情報用紙「10%以上」値上げ表明が出揃う(2014.12.20)
http://www.pjl.co.jp/news/enterprise/2014/12/7125.html
2015年1月21日または2月1日出荷分より
製紙大手5社、印刷・情報用紙を10月21日から一斉値上げ(2013.9.27)
http://www.pjl.co.jp/news/main/2013/09/5604.html
2013年10月21日出荷分より
いま世界の製紙業界で何が起きているか(2017年2月)
http://keepmeposted.asablo.jp/blog/2017/02/01/8346625
日本製紙が4日ぶり急反発、製品値上げ報道受け収益改善期待
http://shikiho.jp/tk/news/articles/0/159530