Otaku ワールドへようこそ![252]無限の彼方に掃き出したものは消えるのか
── GrowHair ──

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前回、数学の話をしました。数学は、専門外の人々から見れば、なんでもかんでも白黒はっきりと決着がついて、あいまいさや多様性を許さない厳格な学問というイメージをもたれがちです。また、専門家からは、よく、数理体系の美しさが激賞されます。

そんな数学の世界にも、悪魔みたいな素性のよろしくないやつが住んでいる気配がする、というようなことを言いました。特に、無限の彼方を見ようとするとき、そいつがチラッ、チラッと姿を見せます。

『数学の悪魔は無限の彼方から病根を抱えてやってくる』
https://bn.dgcr.com/archives/20170224140100.html


今回は、その続きです。





●数を数えずに多寡を判定する便利な方法

小学校の運動会なんかでよく行われる競技に「玉入れ」というのがありますね。高い位置に籠が設けられ、地面にはお手玉のような玉がたくさん散らばっています。一定時間内に、玉を拾って放り上げ、できるだけたくさん籠に入れようというものです。

たいてい、赤組と白組に別れて競技します。赤組のメンバーは、赤い玉を赤い籠へ。白組のメンバーは白い玉を白い籠へ。

勝敗を判定する際、両チームの代表者が棒を傾けて籠を低い位置に持ってきて、「ひとーつ」「ふたーつ」と数えながら、赤白同時に、玉をひとつずつ、籠の外に放り出していきます。

そうしていくと、いつか、どちらか一方の玉が尽きて、もう放り出すものがなくなり、もう一方は、まだ玉が残っていて、放り出し続けることができる、という状況になります。これをもって勝敗が判定できるというわけです。

この判定方法、たいへん合理的です。どこがいいかというと、数をちゃんと数える必要がないという点です。

なんなら、「ひとーつ」「ふたーつ」の代わりに「うぇーい」「うぇーい」と言っていても、勝敗はちゃんと判定できるってわけです。

●集合論、入門

ちょいと、集合論の初歩的なところをお話ししておきましょう。

このコラムは、文系の方やアート系の方にもご理解いただけるように、平易な表現に徹することを旨としているので、あんまり数学数学した記述はしたくないのですが、そうは言っても、土台の部分の概念や表記法ぐらいは押さえておいたほうが、後の話がスムーズかなぁ、と思いまして。

ものの集まりを集合といいます。たとえば、数字の1と2と3とを持ってきて、これをひとつのくくりとみなすことで、集合が形成されます。

この集合を

  {1,2,3}

と表記します。

いま作ったこの集合に、「集合A」という名前をつけたとしましょう。(BGM: 中森明菜『少女A』)

すると、

  A = {1,2,3}

のように表記できます。

このとき、1,2,3のそれぞれを集合Aの「要素」といいます。

数字の1が集合Aの要素であることを

  1 ∈ A

のように表現します。

数字の4が集合Aの要素ではないことを、先ほどの記号 ∈ に斜線を書き加えて表すのですが、その記号がフォントの中に見当たらないので、書けません。でも、分かりますよね?

とにかく、集合Aは、1と2と3とを要素とし、それ以外のものは、何を持ってきても、要素ではない、ということになります。

集合Aの要素の個数は3個ってことになりますね。これを、

  | A | = 3

のように表記します。

集合の要素にする「もの」は何でもいいのです。任意の「もの」を持ってきたとき、それが集合の要素になっているか、なっていないかがちゃんと判定できればよいのです。

集合Bとして、次のようなものを考えてみましょう。

  B = {○,△,□,◎}

記号4つからなる集合です。

さて、集合Aと集合Bとでは、どちらが要素の個数が多いでしょうか。

集合Bの要素の個数は4つです。

  | B | = 4

先ほどの集合Aの要素の個数3に比べて、4のほうが大きい数なので、集合Bのほうが要素の個数が多いと分かります。

これでいいのですが、別の判定方法もあります。先ほどの玉入れの勝敗判定方式です。

集合Aの各要素と、集合Bの各要素とを一対一に対応づけ、余ったほうが多いとする方式です。やってみましょう。

  A = {1,2,3}
       ↑ ↑ ↑ 
       ↓ ↓ ↓ 
  B = {○,△,□,◎}

1と○、2と△、3と□がそれぞれ対応づけられましたが、Bの要素である◎に対しては、Aの中にもう対応づけられる要素が残っていません。したがって、集合Bのほうが要素の個数が多いと判定できます。

集合の要素の個数を勘定して比較する方法と、要素どうしを対応づけていって、どっちが余るかをもって判定する方法と、ふたつ挙げましたけど、どっちも大差ないようにみえます。

ただ、後者の方法においては、実際に数を数えなくてもいいという点において、ラクをしています。

この違いは、無限集合どうしを比べようとするときに、効力の違いとなって現れます。要素の個数を数え上げてしまおうとする前者の方法は、無限集合を相手にしようとするとき、まったく役に立たず、手掛かりを得る方法は後者しかないのです。

●集合論、入門 その2

後で必要になってくるので、集合論の初歩の話をもうちょっとだけ進めておきます。

1から始まって、1,2,3,……と続いていく数を「自然数」といいます。すべての自然数からなる集合をNと表記します。

「自然数」を英語で"natural number"というので、その頭文字を取ってきてNとしています。

  N = {1,2,3,4,5,6,……}

ほんとうは、数学において、「……」なんて記号を使うのはよろしくないのですが、それを使わずに自然数全体を表現しようとすると、土台作りが割と面倒くさいので、ここは誤魔化します。

さて、すると、先ほど作った集合Aは、「3以下の自然数の集合」というふうに言い換えることができます。このことを、次のように表記します。

  A = {x | x ∈ N かつ x ≦ 3}

縦棒の左側で、「集合Aとは、要素xからなる集合である」と宣言しています。縦棒の右側で、要素xの満たすべき条件を書き並べています。

全体を読み下すと「集合Aとは、要素xからなる集合であって、xは自然数の集合Nの要素であって、なおかつ、3以下である」となります。

これで、

  A = {1,2,3}

というのと同じことを言っている、と納得できましたでしょうか。

同じことを、下記のように略記してもいいことになっています。

  A = {x ∈ N | x ≦ 3}

「集合Aとは、自然数の集合Nの要素xからなる集合であって、xは3以下である」と読み下すことができます。

もし、「うわー、分からないっ! ここでつまづいたー!」という方がいらっしゃっても、「もう先へ進めないー」とあきらめず、あんまり気にせず読み進んだとしても、案外、大して困らないと思います。

●無限の彼方で急に状況が変わる

前回、「変な話、その2」で、1を3で割って、しかる後に3倍したら、元に戻らないようにみえる、という話をしました。

その例において、有限なら常に成り立っていたことが、無限の彼方では急に成り立たなくなることがある、という現象をみました。

・1と0.9とは等しくない。その差は0.1である
・1と0.99とは等しくない。その差は0.01である
・1と0.999とは等しくない。その差は0.001である

これは、次々に続けていくことができて、任意の自然数nに対して、

・1と0.999...999(9がn個続く)とは等しくない。その差は0.000...0001(小数点以下に0が(n-1)個続く)である

というのは、正しい。にも関わらず、nが無限大になったとき、つまり、9の列が無限に続くとき、その数は1に等しくなければならない、というものです。

つまり、任意の自然数nに対して、ある命題P(n)が成り立っているからといって、nが有限の域を超えて、ほんとうに無限の彼方まで飛び去っていったとき、P(n)は必ずしも真だとは言い切れない、ということです。

そんな例をもうひとつ、見てみます。

●変な話、その3、無限になると1個や2個の違いは焼け石に水

「その3」としたのは、前回からの通算番号です。

10以下の自然数からなる集合をN10のように表記することにします。これは、数学の一般的な表記法ではなく、ここだけのルールです。

  N10 = {x ∈ N | x ≦ 10}

であって、要素を書き下すと、

  N10 = {1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}

となります。

さて、この集合N10に0という要素を仲間入りさせてあらたな集合を作り、これを集合M10とします。

  M10 = {0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}

N10に要素を1個つけ加えてM10を作ったのであるから、M10の要素の個数はひとつ増えて11個なのは明らかなわけですが、これも、いちおう玉入れ方式で対応づけを見てみましょう。

  N10 = {1,2,3,4,5,6,7,8,9,10}
         ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑  ↑ 
         ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓  ↓ 
  M10 = {0,1,2,3,4,5,6,7,8, 9,10}

なるほど、たしかに、M10の要素10に対しては、N10の中に対応すべき相手がいません。

この事情は、100までにしようと、1000までにしようと変わりません。任意のnに対して成り立っています。

つまり、「任意の自然数nに対して、Nnの要素の個数よりも、Mnの要素の個数のほうが、常に1だけ多い」というのが成り立ちます。

では、話が無限大に飛ぶと、どういうことになるでしょう。

自然数全体の集合をNとするのは定義済みなのでいいとして、これに0という要素を付け加えてできる集合をMとしましょう。

Mの要素の個数は、Nの要素の個数よりも1だけ多いはずなのですが、玉入れ方式で対応づけようとすると、どうなるでしょう。

  N = {1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,……}
       ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑  ↑  ↑ 
       ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓  ↓  ↓ 
  M = {0,1,2,3,4,5,6,7,8, 9,10,……}

今度は終わりがないもんで、集合Mの側に余りがひとつ出るという現象がどこまで行っても現れません。

nが有限であるうちは、確かにMnの側に余分な要素が1個あったはずなのですが、無限にしたとたん、その余分は無限の彼方に飛び去ってしまいました。

無限というのは、かくも大きな数なので、1増えたぐらいでは焼け石に水で、ちっとも変わらないということです。

1増えてもちっとも変わらなければ、2増えても3増えても変わりません。

われわれが日常的に経験していて頭で理解することのできる有限の世界の常識は、無限の世界では通用しないことがある、ということです。

●無限の彼方に先送りにすることと、消えて無くなることは同じか

要素の個数が有限の集合を「有限集合」といいます。そうでない集合を「無限集合」といいます。

有限集合については、要素の個数というものを考えることができました。では、無限集合については、どうでしょう。

有限ではないにせよ、限りなくいっぱいある個数みたいな概念は考えることができます。ただ、それを「個数」と呼んじゃうと語弊があるので、「濃度」と呼び換えています。

「濃度」という言葉から来るイメージで捉えようとすると、かえって分かりづらくなってしまうので、そういうときは、遠慮なく「個数」と言い換えちゃって構いません。ただし、心の中で。

自然数の集合Nの濃度を「可算濃度」といいます。この用語、「加算」という誤記がたいへん多く、むしろそっちのほうが多いんじゃないかってくらいです。もう、勘弁してほしいなぁ。

「加算」とは「足し算」のことです。「可算」は「勘定できる」って意味で、"enumerable"の訳語です。ほんとに勘定し始めたら終わらないので、「できる」と言っちゃっていいものかどうか、なんともかんともですが。

さて、自然数の集合Nの各要素と一対一に対応づけが可能な集合は、「可算濃度をもつ」といいます。可算濃度をもつ集合を「可算集合」といいます。先ほど作ったMが可算集合の例です。

この対応づけは「うまくやる」ことが肝要です。

集合Nと集合Mとの間で、たとえば、

  N = {  1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,……}
         ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑  ↑ 
         ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓  ↓ 
  M = {0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,……}

のように対応づけると、集合Mの側で要素がひとつ余っているようにみえます。

しかし、一方、

  N = {1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,……}
         ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑  ↑  ↑ 
         ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓  ↓  ↓ 
  M = {  0,1,2,3,4,5,6,7, 8, 9,……}

のように対応づけすると、集合Nの側に余りが出たようにみえます。

どっちが余るように見せかけることも可能は可能ですが、どっちからも余りが出ないような対応づけが一通りでも可能であるとき、濃度が等しいといいます。

自然数nが有限のうちは、Nnの要素よりも、Mnの要素のほうが必ずひとつだけ多いのでした。

この一個の余りは、nを無限大にしたとき、どこへ消えてしまったのでしょうか。それは、無限の彼方に飛び去っていってしまっています。

では、無限の彼方に飛び去ることと、消えて無くなることは、同じなのでしょうか。無限の彼方に飛び去っていったからといって、「存在している」状態が「存在していない」状態に切り替わるってことはないんじゃないか、って疑問が残ります。

星新一の短編小説に『おーいでてこーい』というのがありました。ある日、地面に穴が空いているのが発見されます。「おーい」と呼んでも反響が聞こえて来ず、どれだけ深いのか分かりません。

試しに小石を投げ入れてみると、吸い込まれっぱなしで、底に到達した音も聞こえてきません。

ここに投げ込んだものは、なんでもかんでも消滅していきます。こりゃ便利だ、ってんで、家庭ゴミやら産業廃棄物やら、要らないものをじゃんじゃん放り込みます。

数学における無限の彼方というのは、『おーいでてこーい』の穴のごとく、そこにあったはずの面倒なものを箒で掃き出して、無くしてしまうことのできる便利なゴミ箱として利用可能ということみたいです。

どうやら、「無限の彼方に飛び去る」ことと「消えて無くなる」ことは、同じことと考えていいようです。

納得できないって方は、私のほうへ苦情を持ってこないで、ご自分で悪魔を呼び出して聞いてみてください。

●無限ホテルのパラドックス

これは、先ほどの「変な話、その3」の応用例です。「ヒルベルトの無限ホテ
ルのパラドックス」という立派な名称がついています。

可算無限個の客室をもつホテルがあるとしましょう。可算無限個ということは、自然数の集合Nと対応づけが可能ということであるから、各客室に、1号室、2号室、3号室、……のように番号を振ることができ、その番号には際限がありません。

いま、このホテルが満室だったとしましょう。旅人がやってきて、泊めてくれと言います。

「満室」というのは「もう一人も泊められない」というのと同じことのようですが、それは有限の話であって、無限ホテルだとそうはなりません。

支配人は、1号室の客を2号室に移し、2号室の客を3号室に移し、3号室の客を4号室へ、……n号室の客を(n+1)号室へ、……と順番に移します。

客室は無限にあるので、誰もあぶれることはありません。こうして、満室だったはずのホテルに空室を作ることができ、後から来た旅人は、無事、泊まることができました。

この話に種明かしはありません。「なんだ?! 数理体系は、そのの内部に矛盾をはらんでいたのか?!」と騒ぎたくなりそうなところですが、冷静に考えてみると、これは矛盾でもなんでもありません。

無限集合とはそういうもんだ、と受け容れちゃえば、それで済む話なのです。名称に「パラドックス」とついてはいても、本当の意味のパラドックスにはなっていないのです。

●いやぁ、なかなか進みませんねー

今回は、可算無限集合に要素を一個や二個つけ足したぐらいでは焼け石に水で、ちっとも増えていかないという現象を見ました。

ほんとは、もうちょっと先まで話を進められるんじゃないかなー、と思ってたわけですが。可算無限は2倍しても、やっぱり、ちっとも増えてない、って話とか。実は可算無限倍しても、やっぱり増えてない、って話とか。

いやぁ、なかなか進みませんねー。この調子でいくと、連載タイトルを『数学ワールドへようこそ!』に変更しても、一年ぐらいもっちゃいそうです。

で、ゲーデルの不完全性定理を証明し終わったころには、重量がすごい、あの超大作『ゲーデル、エッシャー、バッハ』みたいなことになっちゃいそうな。

みなさん、がんばって、ついて来てください。


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 ◆映画『よろずや探偵談』、試写会で上映!◆

2月19日(日)、「ザムザ阿佐ヶ谷」にて、沢村東次監督による自主制作映画『よろずや探偵談』が、関係者向け初号試写会として上映された。

私は、いかにも怪しい新興宗教団体の教祖様役として出演している。大根なりにも、いちおう、役はこなせてるかな。というか、アラが目立たないよう、編集でうまくカバーしてくれている。

ジャンルからするとコメディーなのかもしれないけど、腹を抱えてギャハハと大笑いするようなギャグ系ではなく、人と人との対話からにじみ出る、とぼけた味わいがなんともおかしくて。

あっちやこっちでバラバラに起きていたことが、だんだんひとつにつながっていき、謎の全貌が徐々に徐々に解き明かされていくストーリー展開、よくできている。

映像は構図が面白く、落ち着きがあって美しい。音楽も、ムードをよく表現していて、よい。全体的に、すごーく本格的な作り。

監督からちょこっと聞いた制作裏話は、壮絶を極める。商業映画ではなく、どこからも支援を受けずに、一個人の一念で一本作り切るためには、常軌を逸した情熱と覚悟と根性をもって、あれやこれやを乗り切らんとアカンわけだ。

でも、いつも態度がおだやかで、物腰やわらかな人なんだよねー。たぐい稀なる人格者。人間、突き抜けるとああなるんかいなー。

一般公開は、下記のが決定しています。

5月16日(火)「小倉昭和館」。出演している ELVIS 吉川氏のショーと併せての上映。

6月29日(木)〜7月3日(月)、「ザムザ阿佐ヶ谷」。時間等、詳細は未定。

 ◆DMM CM AWARDS、審査員賞を獲得!◆

うずまきまきお氏(映画作家)、森園みるくさん(漫画家)、寺嶋真里さん(実験映画作家)からなるチーム「UMM」がDMMの30秒CM映像を制作して、コンテストに応募していました。

3月1日(水)に結果が発表され、審査員賞10万円を獲得しました。私が、ではなく、チームが、ですが。

視聴して再生回数カウンタを回してくださった方、投票してくださった方、応援してくださった方、ありがとうございました。
https://cmawards.dmm.com/


 ◆シンガポールのテレビが取材に来た◆

『City DNA』という番組。東アジアの五つの都市を訪ね、魅力とパワーと、さらにマイナス面まで分析し、住みやすさを検証していくものらしい。東京シリーズは五回に分けて、十数人にインタビューすることになっているそうで。

そのうちの一人として、私のところに話が来た。どういう狙いなのかは知らない。多様性(diversity)の検証とか?

収録は2月25日(土)に行われた。スカッと晴れて、暖かくなった。原宿竹下通りの入口付近で、人々から写真を撮られるところを収録される。渋谷に移動して、メイド喫茶「めいどりーみん」でインタビューを受ける。

インタビュアは、歌手で女優のJoanna Dong(董 姿彦)さん。Joannaさんは、シンガポール国立大学を卒業しているそうで。東大や京大よりも遥かにレベルの高い大学。

英語がいわゆるシングリッシュではなく、スタンダードなのを、ネイティブ以上の流暢さで話してくる。とてつもなく聡明な人なんだな、ってのが、話してるだけで分かっちゃう。

実業家にでもなればもっと稼げそうなものを、なんで女優と歌手やってんの?学歴は、いよいよ職にあぶれたときのための保険みたいなもんで、今はやりたいことを優先してやってるのだとか。んもう、才能、ありすぎ〜。

取材の3日前に私がたまたま読んだネット上の記事をJoannaさんも読んでいた。原宿のストリートファッションに関するもの。

15年くらい前、私がよく原宿で写真を撮っていたころ、主にラフォーレ近辺で、『FRUiTS』のフォトグラファーが、道行くファッショナブルな人に声をかけて写真を撮る仕事をしているところに、ときおり遭遇した。

記事でインタビューに答えている人ではなく、女性だったけど。その方のファッションもなかなか素敵だったので、頼んで撮らせてもらったりしていた。

 2017年2月22日(水)
 QUARTZ
 Japan’s wild, creative Harajuku street style is dead.
 Long live Uniqlo
 Marc Bain
 https://qz.com/909573/japans-wild-creative-harajuku-street-style-is-dead-long-live-uniqlo/


「ヴィジュアル系バンドのファンの人たちによるコスプレや、古着を合わせたストリートファッションなどのクリエイティブな文化は、なぜ廃れちゃったんだろう? Joanna さんは聞いてくる。

うわぁ、むずかしいこと聞くねぇ。多分、あの時期のほうが特殊で、一種の世紀末現象だったんじゃないかな? なんて、テキトーに答えちゃったけど。

 ◆せきぐちあいみさんの個展のアフターパーティーに参加◆

同じ2月25日(土)の夜、池袋で、せきぐちあいみさんのVRアート個展のアフターパーティーが催された。

個展そのものは、2月11日(土)から13日(月)まで、秋葉原で開催されていた。クラウドファンディングで支援していた私は入場資格があったが、スペイン行きと重なって、見に行けなかった。

アフターパーティーの会場は、池袋サンシャイン通りの途中から右へ入った歓楽街エリアの一角にあるビルの地下一階にあり、奥に長いスペースで、キャパは30人程度か。入ってすぐの左側にバーカウンターがあり、一番奥がステージになっていた。

ステージ上には、「HTC VIVE」一式がセッティングされ、Google 社製のVRペインティングソフト「Tilt Brush」が走る環境が用意されていた。

HTC VIVE は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、左右の手にそれぞれ持つコントローラ、ステージ上二か所に立てられたポールの上端に取りつけられた、動きを検知するためのセンサーからなる。一式9万円ほど。それと、ハイスペックのパソコンが必要で、20万円近くした、と。

せきぐちさんは黒づくめの皮のつなぎ、シルバーを基調としたカラフルなウィッグの姿で現れた。VR関係で人前に出るときの定番の格好にしているとのこと。

来場者は9人であった。スーツにネクタイという、ちゃんとした勤め人ふうの人がほとんどであった。

飲み物は飲み放題、サンドイッチやスナックなどが振る舞われ、私は生ビール×2、モスコミュール、ラムバック、ジンライムなど、強めなのをずいぶんいただいた。

まず、せきぐちさんの独演で、ライブペインティング。考え込むことなく、てきぱきとテンポよく描いていった。Undoボタンもほとんど使わない。描く姿が、しなやかで凛々しくて、なんかカッコいい。

最初は細い線で全体の骨格を描いていき、それから、色のついた太いブラシで表面を塗り固めていった。ものの10分ほどで、大きな龍を描き上げた。

次に、3Dお絵描き体験。イルミネーションで構成された一本の木をせきぐちさんがあらかじめ描いてあり、来場者がひとりずつ壇上に上がり、好きずきに自分の描きたいものを描き込んでいった。

この手のものの操作に関して異常に飲み込みが悪い上に、絵ごころがまったくないことを自認する私は、全体の調和を破壊しては悪いからと、遠慮していた。けど、そうとう飲んで、ふつうに歩行するのも覚束なくなってから、やっぱりと気が変わって、参加した。

自分の周囲に壁を構築して閉じこもってみた。これ、絵ごころのあるなしに関係なく、ものすごくハマれる。いつまででも際限なく遊べる。

動き回っていい範囲が、ワイヤーフレームで示されているので、それを越えない限り、ものに衝突したりステージから落ちたりしない。

真っ暗な空間に光る線を足していくので、どんどんまぶしくきらびやかな世界が構築されていく。HMDを外した瞬間、色味に乏しく、気分をしらけさせる現実空間に再び直面することになり、「うええ、現実」となる。引き戻され感がたまらない。

また、個展に行けなかった私のために、作品を観賞させてくれた。葛飾北斎の浮世絵が壁にかかっているのだが、そこへ首を突っ込んでみると立体の世界が展開しており、見回すことができる。せきぐちさんは、絵の展示を前に、北斎の墓参りをしたとのこと。

せきぐちさんは、ステージから降りてきて、客席に座り、話に加わってくれた。このところ、イベント出演やメディア取材が殺到してそうとう多忙にしている。

今月の 29日(水)〜31日(金)に米国サンノゼで開催されるイベント『Silicon Valley Virtual Reality Expo 2017』に参加するとのこと。いい感じに活躍されてますなぁ。
http://svvr.com/


昼のも含め、写真はこちら:
https://goo.gl/photos/9bAqHghV9jcM7Fa7A


 ◆明治座『SAKURA - Japan in the Box』今月末まで◆

2月10日(金)にご紹介した明治座の夜の公演、3月31日(金)までです。
『内なる桜は常に満開でありたい』。
https://bn.dgcr.com/archives/20170210140100.html


「2.5news」が観劇レポートを記事にしています。

 2017年2月25日(土)
 2.5news レポート『SAKURA -JAPAN IN THE BOX-』
 最先端の技術と古典芸能、身体を張った超美技で異世界へ!
 観客参加型のライブエンターテインメント
 http://25news.jp/?p=11587


これまで、スマートフォンアプリで多言語字幕解説やAR演出を表示するサービスを提供していましたが、3月6日(月)からは、メガネ型のウエアラブル端末に切り替わっています。これにより、より没入感のある演出をハンズフリーで楽しむことが可能となっています。

プレスリリース:

 2017年3月1日(水)
 スマートグラス MOVERIO(モべリオ)で多言語字幕解説やAR演出表示サービスを提供開始
 〜 音響通信「Another Track(R)」でMOVERIO(モべリオ)を制御 〜
 株式会社明治座、エプソン販売株式会社、エヴィクサー株式会社
 https://www.atpress.ne.jp/news/122964


「ロケーションジャパン」も、最近、記事を上げています。

 2017年3月7日(火)
 ロケーションジャパン エンタメ
 明治座が贈る、新しい夜のエンターテインメント
 『SAKURA -JAPAN IN THE BOX-』
 http://locationjapan.net/newss/meijiza-sakura/



 ◆『この世界の片隅に』を二度見てキャラメルをゲットしよう!◆

耳寄りな情報!

秋田県大館市に「御成座」(おなりざ)という映画館があります。そこへ行って、『この世界の片隅に』を見ましょう。上映期間は3月1日(水)〜4月2日(日)です。

チケットの半券は大事に取っておきましょう。

埼玉県川越市には「川越スカラ座」という映画館があります。そこへ行って、同じ映画を見ましょう。上映期間は3月25日(土)〜4月14日(金)です。

しかる後に、スカラ座の売店で御成座の半券を出し、「ギブ・ミー・キャラメル」と言いましょう。そうすると、キャラメルがもらえます。

どうです? すごい企画じゃありませんか? ほんのひと手間かけるだけで、キャラメルがもらえちゃうんですよ! スカラ座の告知ページによると、秋田と埼玉は意外と近いそうです。
http://event.k-scalaza.com/?eid=1264449


えー、誰も行きませんかー? じゃ、企画倒れになっちゃもったいないんで、わたし、行ってきますよー。