まにまにころころ[113]ざっくり日本の歴史(後編その30)/川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito

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コロこと川合です。稀勢の里、やった!!!心震えた!!!

特別相撲好きってわけでもなく、今場所も、見たのは最後の最後、優勝決定戦のみ。それでも、成り行きだけはチェックしていました。

なんといっても19年ぶりの日本人横綱。それまでずっとここ一番でつまずいてばかりきた稀勢の里が、ついに横綱となっての最初の場所、気にせざるを得ないですよね。

そしたら破竹の12連勝! 白鵬が早々に離脱したとはいえ、これはこのまま最後まで全勝でいってしまうかと思いきや、13日目に負傷。救急車で運ばれるほどの大怪我。

もう今場所どころか、先々にまで暗雲立ちこめる中で迎えた14日目、負傷した左肩から胸をテーピングで固めて、まさかの強行出場。が、相手の鶴竜にまで心配されるような負け方で二敗目。

照ノ富士に追い越されて、迎えた千秋楽。対戦するのはその照ノ富士。負ければ終わり、勝てば優勝決定戦。つまりは、手負いの状態で照ノ富士に二連勝しないと優勝できないという絶望的な状況。





気迫に満ちた表情で臨む稀勢の里、勝っちゃうんですよ、まずその本割で。

ずっと見ていたように書いていますが、ここまでまったく見ていません。(笑)

そこで「稀勢の里、優勝決定戦へ!」って通知がスマホに来たんですよ。おお、これはさすがに見たいぞと。地下のカフェにいたのですが、ダメ元でワンセグをつけたら電波届いて。そこで見られたわけです、優勝決定戦を。

土俵際でもつれながらも、右腕で放つ小手投げ。そして優勝。声出そうでした。家ならきっと叫んでた。

開いていたPCに稀勢の里の写真が出ていたのが目に入ったのか、隣の席で仕事していた見知らぬお姉さんが私の画面を指さして「勝った?」と。親指立てて「勝ちました!」って返しました。思いがけず喜びを分かち合えました。

照ノ富士はやりにくそうだった。前日に琴奨菊の大関復帰がかかった一番で、立ち会いで変化して勝ったことで割れんばかりの大ブーイングも受けていたし、散々批判を受けた状態で迎える千秋楽。

相手は会場中どころか日本中から応援されている稀勢の里。しかも大怪我している相手。気持ちでも負けていた感じ。

それにしてもドラマのような優勝劇。しびれました。決定戦しか見てないのに。

稀勢の里には何はさておき怪我を治してもらって、白鵬にも快復してもらって、来場所、四人の横綱がしのぎを削る熱い展開を期待します。

さて、相撲の話がえらい長くなりましたが、ここから西郷さんの話。西郷さん、来年のNHK大河なんですよね。『西郷どん(せごどん)』、楽しみです。今年の『おんな城主 直虎』が、今のところあまりにもひどいので。(笑)


◎──『南洲翁遺訓(なんしゅうおういくん)』

突然ですが、戊辰戦争、覚えていますか。前回もちょこっとだけ触れましたが、新政府軍と、旧幕府軍とそれを支持する奥羽越列藩同盟との戦。大政奉還後に、そのまま平和裏に政権交代がなされるかと思ったところで、倒幕の総仕上げと言わんばかりに起こった戦いです。

新選組が散り、江戸城無血開城を経てなお、会津が壊滅させられ、最後は箱館にまで及んだ内戦です。

戊辰戦争は京都、鳥羽・伏見の戦いで幕を開けますが、そのきっかけは江戸で起こりました。薩摩が幕府を挑発し続けていたんです。大政奉還が成立して、討幕の密勅も意味をなさなくなった時点で、薩摩は幕府への挑発を停止させるつもりだったのですが、江戸ではその後も挑発行動が繰り返されていました。

当時、江戸は幕府の命で庄内藩が警護していました。庄内藩は、徳川四天王の
一人である酒井忠次の孫から始まる譜代、名門中の名門です。

西郷さんの指示でその庄内藩と幕府を挑発していた中に、後に赤報隊隊長となる相楽総三がいます。赤報隊の話は割愛。

繰り返される挑発に、ついに幕府は庄内藩に、薩摩藩邸に賊徒の引渡しを求め、応じなければ強引にでも引っ捕らえてこいと命じます。応じるはずないでしょ。

最初からそんなこと分かっていたので、庄内藩は他の藩と連携して事に当たり、一応、引き渡しを求め、断られるという手順を踏んだ上で、江戸の薩摩藩邸を焼き討ちすることになります。1868年1月19日のことです。

3日後には大坂城にいた旧幕府陣営にその情報が伝わり、慶喜は、薩摩を討つぞといきり立つ声を抑えることができず、朝廷へと討薩を上表して京へ進軍開始。会津藩・桑名藩を中心とした旧幕府軍と、薩摩藩・長州藩によって構成された新政府軍との戦いが鳥羽・伏見で勃発しました。

なぜ急に戊辰戦争の話を始めたのかというと、庄内藩と薩摩藩の微妙な関係にまず触れておきたかったんです。

戊辰戦争の行方は説明するまでもなく、新政府軍の勝ち。会津と並ぶ佐幕雄藩で、戊辰戦争の契機となった庄内藩も最終的には新政府に恭順するわけですが、奥羽越列藩が新政府軍に討ち果たされていく中、庄内藩だけは最後まで自領に新政府軍の侵入を許しませんでした。会津藩は、京都守護職の関係もあって、疲弊しきっていましたしね。

そんな無敵の庄内藩と言えど、敗軍は敗軍。会津同様、新政府にめちゃくちゃに潰されてしまうんだろうなと思いきや、比較的軽い処分で済みました。

処分を言い渡しに行った薩摩の黒田清隆は、上座から庄内藩一同に処分内容を告げた後、上座を藩主に明け渡して礼を尽くしたそうです。それが西郷さんの指示によるものであると聞いた庄内藩の面々は、西郷さんに惚れ込みます。

その後、藩主含めて、何人も何人も旧庄内藩の人々が、西郷さんを慕って薩摩を訪れました。そして西南戦争の時、西郷さんはその時に来ていた人々に庄内へ帰るように言いますが、なかなか帰ろうとせず、結局二人の若者がそのまま残り西郷軍と共に散りました。

庄内の人々の西郷さんへの敬慕はその後も続き、大日本帝国憲法が発布された際の恩赦で西郷さんの名誉が回復されたのを契機に、西郷さんの残した言葉を集め、一冊の本にまとめあげました。それが『南州翁遺訓』です。


◎──人格者だった西郷さん

『南州翁遺訓』には、政治に携わるものの心構えを中心に、西郷さんの教えが記されています。経緯が経緯だけに実に立派な内容です。西郷さんを慕う人々が編纂したファンブックのようなものですから。

西郷さんは、庄内藩の例に限らず、とにかく人に慕われる人柄だったようです。まあ、そうでなければ、西南戦争は起きてなかったようにも思えます。

長州と結んだことといい、江戸城無血開城といい、庄内藩のことといい、西郷さんはとにかく周りから慕われるタイプの、「いい人」だったんじゃないでしょうか。

権力にもこだわらず、温泉が好きで、ダイエットのために愛犬と狩猟に勤しむ。愛され要素、満載ですよね。挙げ句、来年の大河で演じるのは鈴木亮平ですよ。好かれないはずがない!

でも、庄内藩とのエピソード、なんていうか、結果論かもしれませんが、挑発して喧嘩を起こさせて、痛めつけて、ねじ伏せたところで優しくして、相手を手なずけてって、なんかヤクザの手口を思わせるのは気のせいですかね。(笑)


◎──明治維新150周年

NHK大河ドラマ『西郷どん』が、明治維新150周年を記念しての作品なんですが、来年2018年は、明治元年から数えて150年の節目。今年は大政奉還150周年で、来年が王政復古の大号令150周年、明治改元150周年。

あと、近藤勇、沖田総司、没後150周年。没後150周年は、来年再来年はいっぱいいますけどね、戊辰戦争150周年なので。周年行事には事欠きません。

大阪では「幕末・維新150年」ののぼりが、ちらほら立っています。大坂の陣の400周年イベントがひと息つきましたから。(笑)

・大阪城天守閣「幕末・維新150年」
http://www.osakacastle.net/bakumatsu_ishin150

大阪城は周年イベントに敏感です。築城400年で来場者数記録を樹立し、それを塗り替えたのが落城400年イベント。さすがに維新150年ではそこまでの勢いはないと思いますけども。乗っかれるものは何でも貪欲に乗っかっていく大阪城。大坂の陣400年は、10年がかりで仕込んでいたそうですから、今後もあれこれ、企画が動いていると思います。


◎──西郷さんにまつわる本

最後に、西郷さんについての書籍をいくつかご紹介。山ほどあるので、一部を。

・司馬遼太郎『翔ぶが如く』(文春文庫・全10巻)何はさておき知名度ナンバーワンはこれ。大河にもなった司馬遼太郎作品です。……私、未読なんですが。(笑)

大河『翔ぶが如く』の原作としては、これだけでなく、他の司馬作品あれこれ合わさってのものです。なお来年の大河原作、林真理子『西郷どん!』は、まだ刊行されていません。

・横山まさみち『西郷隆盛』(全8巻)

コミックです。今ならKindle Unlimitedや読み放題サイトで無料で読めます。

・坂野潤治『西郷隆盛と明治維新』(講談社現代新書)

日本近代政治史の専門家で東大名誉教授である著者による西郷さん研究です。物語でなく、西郷さんのことをきちんと知りたい方にはお勧め。

・原田伊織『大西郷という虚像』(悟空出版)

『明治維新という過ち』『官賊と幕臣たち』に続く、維新批判本。歴史学者でなく、作家が書いた本なので、学術的にはともかく内容は面白いはず。はず、というのは、未読だからで……。『明治〜』、『官賊〜』、は面白かったです。柴田さん、読まれました?

・松浦光修 編訳 『[新訳]南洲翁遺訓』(PHP研究所)

『南州翁遺訓』は色んな形で本になっていますが、これはとにかく読みやすく補って訳されている上に、解説も添えられていて、どんなものかを知るのにはちょうどいい分かりやすさだと思います。

これでハマれば、もう少し硬派な本へと進めばいいかと。「青空文庫」にも『遺訓』『異教』『異牘』と西郷さんの本がいくつかあります。旧仮名遣いですけども。

・芥川龍之介『西郷隆盛』(青空文庫ほか)

主人公が維新史を専攻する先輩から体験談を聞くという形の短編小説。先輩が研究で行った京都からの帰り、列車で出会った老紳士から、維新の資料は疑え、西郷隆盛は生きている、と聞かされて……まあ、短いので読んでみてください。ちなみに歴史についてこれといった情報が得られる話ではありません。(笑)

・佐藤一斎 『言志四録』(講談社学術文庫・全四巻)

儒学の大家である佐藤一斎が書いた随想録で西郷さんの愛読書。全1133条からなる書で、そこから西郷さんは101条を選び『手抄言志録』として纏めてます。いつか輪読会でもしてみたいな。

・呂祖謙 著 福田晃市 訳『基礎からよく分かる「近思録」』(明窓出版)若き日の西郷さんが大久保利通らと輪読会を開いていた、朱子学の祖・朱熹による朱子学入門書『近思録』の入門書。入門書の入門書なのに、難しい。


◎──今回はここまで

次回は違う人の話に移りたいと思います。有名どころでは、坂本龍馬や勝海舟あたりがまだですね。幕末は有名どころだけでも色んな人がいてキリがないし、適当なところで切り上げようとは思っているんですが。誰を取り上げるかまた考えておきますね。リクエストあればどうぞ。


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