Scenes Around Me[01]四谷の傘/関根正幸

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初めまして。この度、Scenes Around Meという連載を始めることになりました関根正幸といいます。

私は元々数学を専攻していて、現在も非常勤で数学を教えています。

が、それ以外に自転車でツーリングするのが好きで、その関係で中山道という昔の街道がどこを通過していたのということに興味を持ち、分間延絵図という200年前の絵図と現在の地図(国土基本図)を比較して中山道の通過位置を割り出すことに一時期没頭していました。

現在は、中山道界隈にある庚申塔という石仏の撮影から始めて、埼玉県内の庚申塔の悉皆的な探索に興味を持っています。

機会があればこれらのことについても触れたいのですが、今回の連載はいままでに撮影した印象に残る写真の紹介と、その写真にまつわる思い出などを解説するという内容になると思います。





私は20年以上前から岡画郎(高円寺にあったギャラリー)や東京大学駒場寮といった場所に出入りし、そこで、音楽家、美術家、パフォーマー、ライター、社会運動家といった人達と知り合いになり、彼らに誘われるままに様々なイベントに顔を出していました。

そのうち個人的な写真記録をするようになり、2002年から10年ほど "Scenes Around Me" というサイトを立ち上げて、印象に残る写真を一枚だけアップしていました。

http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos/index.html

"Scenes" という名前にしたのは、ほとんどの場合、私は外部からの参加者で、記録も断片的なものに過ぎなかったからですが、唯一とも言える例外が、岡画廊を主宰していた建築家兼ダンサーの岡啓輔さんが2005年から建設し続けている「蟻鱒鳶ル」で、これについては着工当初から記録を続けています。

私のこれまでの活動は、2014年に板橋Art Studio Dungeonでの「記録魔」展で紹介されたりもしましたが、

http://chikashitsu.blog.shinobi.jp/記録魔/

今年の3月に個人的な事情から、回顧的な写真展"Unheimlich Schoen"を高円寺の写真Bar鳥渡で開催しました。

https://mobile.twitter.com/sekinema/status/830425809651240961

twitterでの告知の通り、タイトルは作曲家リュック・フェラーリの曲のタイトルを借用したのですが、直訳すると「不気味に美しい」となるところを非日常的な美しさと解釈して、50枚近くの写真を展示しました。



上のinstagramは展示風景の一部ですが、写真を見るとわかる通り、展示作業の支障になりそうだったので、キャプションを付けませんでした。これが問題を引き起こします。

つまり、ありふれたものを撮影した写真ならともかく、非日常的なものを写している訳ですから、何をどうやって撮影したかということについて、質問を受けることが度々ありました。

実は、解説用の文章は別に用意していたのですが、それは飲み屋で読むにはあまりにも長過ぎたので、ほとんど読まれませんでした。

幸い、私から声を掛けて展示を見に来てくれた方の多くは、写真の被写体かその関係者だったのと、私自身可能な限り会場に常駐して個々の写真の解説を行なったので、今回は何とかなったのですが、もし、何の関係もない人がこれらの写真を見たらどう思うのだろう、という不安は残りました。

そんなこともあり、今回、武盾一郎さんから、いままで撮影した写真についての解説をここで執筆したらどうかと打診があり、それに応じることにしました。とはいえ、その話があったのが急だったこともあり、今回は写真展のDMに使用した次の写真を取り上げることにします。


(2003年10月 四谷)

この写真は撮影してからあまり間がない頃に、mixiのカバー写真に使用して褒められたことがあり、それについて日記を書いているので、当時の日記を引用しつつ補足解説することにします。(〔 〕内は補注)


今回差し替えた写真には大変な思い出があります。夜、自転車で移動中、とある公園〔四谷の迎賓館近くの公園〕に傘が置いてあるのを見つけ、たまたま、三脚を持っていたので写真を撮ろうと立ち寄りました。

〔写真の様に公園内の樹木を囲むように三つのライトが設置されているうちの一つに傘が置かれていた〕

その公園には、ホームレスがいて、傘もホームレスが何の気なしに置いたものだとうすうす勘付いていました。

が、住人がその場を離れていたのと、以前「ホームレスの中には身元が割れると困る人がいるので撮影しないほうがよい」と知人〔その当時代々木公園のテント村で暮らし始めていた小川てつオ君〕に言われたこともあり、何れにしても人を撮るつもりはなかったので、かまわず三脚を立てました。

その場で数枚写真を撮っていたところ、酔っ払いが絡んできました。私がどこかの週刊誌の記者で、傘を撮る振りをして公園のホームレスを写してるんじゃないのか、というのです。

私が、この傘がきれいだから撮りたいんだと主張しても取り合ってくれません。いわく、「そんな写真を撮って、どうやって食ってるんだ」とか、私がプロではないというと「なら、よっぽど、この傘を撮ろうとするなんておかしい。」と、全く信用してくれませんでした。

そのうち、相手が夜だというのに社員証を付けっ放しにしていたり、「ホームレス」という言葉に一瞬過剰反応したこともあり、彼も公園の住人であることに気が付きました。

押し問答を続けているうち、段々、こういう写真を面白がって撮っている自分も狂っているなあと思い始め、「そうですね、この傘を撮ろうとするなんておかしいですよね」というと、相手も拍子抜けしたのか、「いや、そういうことを言おうとしたんじゃないんだけど。」とつぶやいていました。

結局、何とか相手を言いくるめて公園を後にしたのですが、身の危険を感じたのか、ホームレスはその公園から出て行ってしまいました。

絡まれたこと自体もそうですが、一番悲しかったのは、その傘を撮ろうとした意図を全く理解してくれなかったことでした。

そういう、いわくつきの写真なので、素敵だと言ってもらえるとうれしいです。

【せきね・まさゆき】
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。