もじもじトーク[61]「書体の誕生」展で動く写植機に感動!/関口浩之

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こんにちは! もじもじトークの関口浩之です。

3月と4月は、文字に関するイベントに毎週のように足を運んでいました。平日は会社にて通常業務、週末は文字のイベントに出張という、ほとんど休みのない毎日でした。

先週4月14日(金)から4月16(日)の三日間、大阪で開催された『書体の誕生』展示と講演、というイベントに参加しました。

大阪DTPの勉強部屋主催のイベントで、トークセッションが8本あり、また、展示コーナーではフォントメーカー4社(フォントワークス・モトヤ・イワタ・白舟書体)が書体の展示を行うという、書体好きの人にはたまらないイベントでした。

でも、よくよく考えると、文字は文字好きの人のためだけに存在しているのではなく、すべての人にとって、なくてはならない存在なのです。

書体に詳しくない人ても楽しめる内容なので、このようなイベントに、一般の人も気軽に参加できるような告知の仕組みがあるといいのでは? と思ったりします。





●動く写植機に感動

今までも、何度か写植(写真植字)のお話はしてきました。今回のイベントでは、なんと、実際に動く写植機が展示されていたんです。

こんな感じです。じゃーん!
https://goo.gl/gHZS9w

大阪DTPの勉強部屋を主催している宮地さんと大石さんから、どのような仕組みで写植で版下が作られるのか、説明していただきした。

いままで、写植の文字盤(メインプレートやサブプレート)を収集したり、頭の中で写植のしくみは理解していたつもりでした。

でも、実際に動く写植機をみたら、いままで以上に、身近に感じることができました。そして、手動式写植機で組版できる人って、本当にスゲェ〜と実感しました。

みなさんにも理解できるように、写植の仕組みをざっくりと解説しますね。先程の写真を見ながら読むと「これが、DTPの先輩である写植(写真植字)なのね〜!」と理解できるのではないでしょうか。

今回、展示されていた写植機は、1978年製のモリサワ『MC-6型』という手動式写植機です。このモデルは、手動式の集大成といわれており、一万台以上販売されたベストセラー機なのです。

手動式なので、文字送りや行送りをモーターで駆動させることはできません。主ハンドルを押すと、歯車で移動するのです。

電算写植という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、手動式から電算式に進化すると、パルスモーターで動かすことができたり、画面で文字組みを確認しながら組版できるようになりました。

まず、パソコンのデジタルフォントに相当するものが「文字盤」です。使用頻度の高い文字が「メインプレート」という、縦22.4cm×横38.4cmの大きいガラス版です。最大で2,862種類の文字や記号を収録できるそうです。

実際に手にとって、光にかざして見ると、ステンドグラスのように美しいです。

使用頻度の低い文字や記号、飾り罫などがは「サブプレート」と呼ばれる、縦7.3cm×横13cmのガラス版に収録されています。最大で269種類の文字や記号を収録できるそうです。

僕が持っている「ナカフリー」だと、メインプレート1枚とサブプレート12枚ぐらいありました。漢字(三級)7枚と正字2枚、記号3枚がです。

これら文字盤(メインプレートとサブプレート)を文字枠に納めます。そして、写植オペレータが文字を選択しやすいように、文字枠は上下左右に滑らかに動くように設計されています。なんとも言えない、とても心地よい滑らかさなのです。

文字盤の下から、光源ランプで照らします。文字盤はフィルムのネガのようになっているので、文字の字形部分のみ光を通します。おぉ、そうか、写真植字というだけに、まさに写真機と引き伸ばし機の原理になってるんですね。

文字盤の上には、各種レンズ群が、回転式リボルバーのような形で配置されています。文字サイズに合わせてレンズを選択するのです。なるほど、焦点距離の異なるカメラレンズがたくさんあって、その中から選べるという感じですね。

文字の形をした光がレンズを通過した先には、カメラシャッターがあります。文字を選択して主ハンドルを下げると、シャッターが切られるのです。

そして、シャッターの先には、工具箱のようなマガジン(暗箱)があります。シャッターが切れると同時に、マガジンに小さな窓が開いて、印画紙に文字を焼き付けるのです。マガジンな中にはドラムがあって、それに印画紙が巻いていました。

印画紙に文字を焼き付ける仕組みは理解できたかと思いますが、どうやって文字組みするか不思議ではありませんか? 液晶画面もないし、タイプライターのように打刻されるわけではないのです。

水平方向と縦方向にどれだけ移動させるかは、1歯=0.25mmの歯車を利用してます。なので「2歯、文字間を空けて」ということは0.5mmの文字間ということなのです。

1歯=0.25mmに基づき、文字送り量や行送り量を基準値に設定するダイアルもありました。細かい文字組みするための微調整ボタンもありました。そして、文字の変形(平体や長体、斜体など)も可能なのです。

何が凄いかっていうと、液晶画面がないので、どう組版したかを確認するには、印画紙を暗室で現像してからなのです。えぇ〜、そうなの……。

そこで、点字ロールという、紙面のどこまで組んだかの目安が分かるようにプラテンのような部品が付いています。でも、そこに文字が打刻されるわけではないのです。

手動式写植時代において、きれいに正確に、そして早く組版できるということは、その写植機をほとんど自分の体の一部のように、ほとんど無意識に操作するということのようです。

そして、熟練職人は、広告組みなのか小説本文組みなのか等に応じて、どのような文字組みが適しているのかを熟知しているのです。本当の意味でのエディトリアルのプロフェッショナルと言えます。驚きと尊敬が入り混じります。

●天体写真と「猫の20書体」がうけました

僕もフォントのお話をしました。書体の誕生展ということで、フォントエバンジェリストとして、Webフォントのお話をしました。

「日本語Webフォントの過去・現在・未来(2017年版)〜DTPにどこまで近づけるか? Webフォント〜」がテーマです。

セミナー資料のダイジェスト版を共有しますね。
https://goo.gl/aPHxE4

実は、会場から一番反応があったのは(おっ〜って感じでどよめいた)、天体写真のお話でした……。

自己紹介のページで、木星と土星の写真を掲載したのですが「これっ、コタツから3メートル横のベランダから、望遠鏡とデジカメで撮りました」と説明した時でした。

自分としては、まだまだのレベルだと思っていましたが、木星はちゃんと縞々が見えるし、土星の輪もきれいに写ってますね。今年はもっと、きれいな木星と土星の撮影に挑戦しますね。

次に、反響が大きかったのは、「いろんな猫を20書体で表現しました」解説の部分でした。

こちらです。
https://goo.gl/11hqaR

ベピポップは大らかでゆるい猫、ラグランパンチはまるまる太った猫で、正楷書の猫は由緒正しい血統書付き猫、桜花は鼻の頭が黒いシャム猫、っていう感じの解説をしました。

まぁ、こんな感じで肩の力を抜いてフォント談義することにより、多くの人が書体に興味をもってもらえたらうれしいなぁと思ってます。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。