[4331] 無限はどう料理してもそれ以上大きくならないのか

投稿:  著者:  読了時間:25分(本文:約12,400文字)



《直観の側が屈服するとき》

■ Otaku ワールドへようこそ![254]
 無限はどう料理してもそれ以上大きくならないのか
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無限はどう料理してもそれ以上大きくならないのか

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これまで3回にわたって、「数学の悪魔」の話をしてきました。今回は、その4回目です。

まずは、今までのところを、ざっと振り返ってみましょう。

●前回までのあらすじ

2月24日(金)配信分では、「数学の悪魔は無限の彼方から病根を抱えてやってくる」と題し、数学で無限集合を扱うことの強みと、それに伴って発生するややこしい事情について、導入的な話をしました。

「すべての三角形」と言ったとき、その具体的な形状は無数にあり、実際にすべてを列挙することは、できない相談です。が、「任意の三角形の3辺の垂直二等分線は1点で交わる」という定理はちゃんと証明できます。

論理の力をもってすれば、無限に多くのケースを相手に回しても、一網打尽にすることができます。これが数学の強みのひとつです。

しかし、無限の彼方というのは実際に見てきた人が誰もおらず、何かにたとえて直観的に把握しようにも、理解が追いつかないというややこしさがあります。

3月10日(金)配信分では、「無限の彼方に掃き出したものは消えるのか」と題し、可算無限に1を足したぐらいじゃ焼石に水で、ちっとも増えていないという現象を見ました。

ここに、「ヒルベルトの無限ホテルのパラドックス」が起きます。可算無限個の部屋のあるホテルが満室だったが、宿泊客に部屋を1つずつズレてもらうことにより空室を作り出し、後から来た旅人を泊めることができたという話です。

「パラドックス」と名がついているけれど、コンフリクト(食い違い)が起きているのは、直観と論理との間のことであって、別に、論理矛盾が生じているわけでありません。無限集合とはそういうもんだ、と受け容れちゃえば、解消する問題なのです。

一回置いて、4月7日(金)配信分では、「無限に膨れるものでも無限の彼方に消せるのか」と題し、可算無限は2倍しても、やはりちっとも増えていないという現象を見ました。

ここに、「部分は全体に等しい」という深刻な問題が起きます。しかし、それも、無限集合とはそういうもんだ、と受け容れちゃえば、特に破綻はなかったのでした。

さて、今回は、可算無限は可算無限倍しても、やはり増えていない、という現象を見てみます。

●自然数を2つ取ってきて抱き合わせにする

すべての自然数からなる集合をNと表記する慣例になっていたのでした。要素を書き並べる形で書くと、

  N = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, ...}

となります。

さて、次のような集合N^2を考えます。

その前に、ひとつ注釈。このN^2という表記、本来はNの右上の肩に小さく2を書きたいところですが、テキストで表記する際の慣例として、こう書きます。

もうひとつ注釈。Nは集合です。N^2も集合です。その意味するところは、NとNとの掛け算です。

集合と集合とを掛け算して、その結果として集合が得られるって、どういうこと? と、疑問に思われるかもしれません。掛け算っていうのは、数と数との間でなされるべき演算であって、結果は数になるもんなんじゃないの? と。

ごもっともです。掛け算は掛け算でも「直積」というのがありまして、この概念を導入することにより、集合と集合とを掛け算して、結果として集合を得ることができます。

が、ここではあんまり難しい領域へは立ち入らずに、なんとなく感じが分かる表記方法、ぐらいに思っておいていただけると。

では、あらためて。N^2を次のように定義します。

  N^2 = {(x, y) | x ∈ N, y ∈ N}

平たく言葉で説明すると、自然数を2つ取ってきて、カンマで区切って、カッコでくくって抱き合わせにしたものを要素とする集合です。

例えば、(1, 3)とか、(8, 5)とか、(327, 783164)などが、集合N^2の要素となります。

2つの自然数は同一のものでもよく、(4, 4)も集合N^2の要素です。

並び順の前後は区別すべきものです。例えば、(3, 5)と(5, 3)はどちらも集合N^2の要素ですが、別々の要素として区別すべきものです。

集合N^2を、要素を書き並べる形で書くと、次のようになります。

  N^2 = {
    (1, 1), (2, 1), (3, 1), (4, 1), (5, 1), (6, 1), (7, 1), ...,
    (1, 2), (2, 2), (3, 2), (4, 2), (5, 2), (6, 2), (7, 2), ...,
    (1, 3), (2, 3), (3, 3), (4, 3), (5, 3), (6, 3), (7, 3), ...,
    (1, 4), (2, 4), (3, 4), (4, 4), (5, 4), (6, 4), (7, 4), ...,
    (1, 5), (2, 5), (3, 5), (4, 5), (5, 5), (6, 5), (7, 5), ...,
    (1, 6), (2, 6), (3, 6), (4, 6), (5, 6), (6, 6), (7, 6), ...,
    (1, 7), (2, 7), (3, 7), (4, 7), (5, 7), (6, 7), (7, 7), ...,
    ...
  }

自然数の集合Nが、一列縦隊に並んだ隊列が無限の彼方まで延びているイメージなのに対し、集合N^2は、(縦にm列) (横にn列)の格子状に整列した歩兵隊が長方形の広場を埋め尽くすイメージです。

ただし、その広場は隣り合う縦横の二辺は壁で、それぞれの対辺は無限の彼方へと開いており、mとnには限りがありません。

いま、可算無限個のおにぎりが用意されているとして、これを歩兵隊全員に一個ずつ配ることができるでしょうか、って話です。

●集合N^2の濃度は集合Nの濃度よりも増えたのか?

可算無限は、1を足しても2倍しても、実はちっとも増えていなかったというのは、前回までに見たとおりです。

いま作った集合N^2は、可算無限個の要素が並ぶ行が、可算無限列あるので、その要素の個数は、感覚的に言うと、可算無限、掛ける、可算無限、つまり、可算無限の二乗です。

直線的な延びが平面的な広がりになった分、今度はさすがに集合Nよりも圧倒的に増えたんじゃないかという感じがします。要素を書き並べると、書ききれずにごまかした点々々がまわりじゅうにあるので、一列に整列させようとしても、どうしても余るんじゃないでしょうか。

実際、

  1 ∈ N と (1, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  2 ∈ N と (2, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  3 ∈ N と (3, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  4 ∈ N と (4, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  5 ∈ N と (5, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  6 ∈ N と (6, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  7 ∈ N と (7, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  ...

というような、ありきたりの対応づけを考えたのでは、集合N^2の要素の並びの1行目をカバーするだけで終わってしまい、2行目以降がすべて余ってしまいます。

ところが、です。並べ方を工夫すると、一列に整列させることができちゃったりするのです。

  1 ∈ N と (1, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  2 ∈ N と (2, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  3 ∈ N と (2, 2) ∈ N^2 とを対応させ、
  4 ∈ N と (1, 2) ∈ N^2 とを対応させ、
  5 ∈ N と (1, 3) ∈ N^2 とを対応させ、
  6 ∈ N と (2, 3) ∈ N^2 とを対応させ、
  7 ∈ N と (3, 3) ∈ N^2 とを対応させ、
  8 ∈ N と (3, 2) ∈ N^2 とを対応させ、
  9 ∈ N と (3, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  10 ∈ N と (4, 1) ∈ N^2 とを対応させ、
  11 ∈ N と (4, 2) ∈ N^2 とを対応させ、
  12 ∈ N と (4, 3) ∈ N^2 とを対応させ、
  13 ∈ N と (4, 4) ∈ N^2 とを対応させ、
  14 ∈ N と (3, 4) ∈ N^2 とを対応させ、
  15 ∈ N と (2, 4) ∈ N^2 とを対応させ、
  16 ∈ N と (1, 4) ∈ N^2 とを対応させ、
  17 ∈ N と (1, 5) ∈ N^2 とを対応させ、
  ...

これ、見ただけで、どういう法則で並んでいるか、分かりますか?

集合N^2の要素を構成する2つの自然数のうちの最大値に着目します。

最大値が1であるような要素は(1, 1)だけです。最大値が2であるような要素は(2, 1), (2, 2), (1, 2)の3つあります。最大値が3である要素は(1, 3), (2, 3), (3, 3), (3, 2), (3, 1)の5つあります。

これ、図にすると一目瞭然なんですが。テキストでこの図を描くのはもはや限界です。描いて描けないこともないのですが、フォントなどの環境によって、表示がズレちゃう可能性があります。なので、Excelで描いて、GIF画像に落としてみました。
http://www.geocities.jp/layerphotos/FigDGCR170421/Serpentine01.gif

どうです? うねうねうねうねとつづら折りになっているのが、視覚的に捉えられたと思います。

このように集合N^2の各要素を巡回していき、訪問した要素に対して、1, 2, 3, ... と順々にカードを渡していくと上記の対応関係になります。

これをもって、直線状に延びている集合Nと、平面上に広がっている集合N^2との間に、一対一対応が取れてしまうことが分かりました。

集合Nから集合N^2を作っても、要素の個数(正確には濃度)はちっとも増えていっていないということです。

これも、割と深刻な問題を引き起こします。前回は、長さ1の線分を2倍に引き延ばしてもちっとも増えていかないことから、「部分と全体が等しい」という現象を見たわけですが。今回見る現象は「線と面が等しい」という現象です。

●線と面が等しい?!

前回と同様、長さ1の線分を考え、これを線分l1と表すことにします。線分l1は、無限個の点からなる集合です。

線分l1を数直線だと思ってみれば、それを構成する各点は、0から1までの実数と一対一に対応します。本来、「点の集合」と「実数の集合」とは別物なのですが、これらを同一の数直線の別表現に過ぎないものとみなし、思い切って、同一視しちゃいます。

実数全体の集合は、"real number" の頭文字を借りてきて、Rで表します。

すると、線分l1は、次のように表現することができます。

  l1 = { x ∈ R | 0 ≦ x ≦ 1}

つまり、線分l1を、0以上であり、かつ、1以下である実数の集合と同一視してしまいましょう、ということです。

両端を入れるか入れないかは、ちょっと悩むのですが、こういうところで厳密に議論を進めても、大勢には影響しないんで、さらっと流しちゃいます。

さて、次に、一辺の長さが1の正方形を考えます。この正方形は、外枠だけでなく、内部もべったりと塗りつぶされているものとします。

この正方形を、"square" の頭文字を借りてきて、S1で表します。この正方形S1を構成する各点は、0以上であり、かつ、1以下である2つの実数の組と一対一に対応します。

なので、ここでも思い切りよく、点の集合と、2つの実数の組の集合とを同一視しちゃいます。そうすると、正方形S1は次のように表現することができます。

  S1 = { (u, v) ∈ R^2 | 0 ≦ u ≦ 1 かつ 0 ≦ v ≦ 1}

線分l1を構成する点の個数と、正方形S1を構成する点の個数とを比較すると、後者のほうが圧倒的に多いような感じがします。両者の間で一対一に対応づけすることは、もはや不可能な感じがします。

ところが、これが、できちゃうのです。

0から1までの実数は、小数で表現することができます。1を表現するのに、1.000...のほうを採用せず、0.999...のほうを採用することにします。

すると、すべて、「0.なにがしかにがし」という形をしています。

いま、直線l1を構成する点から任意の一個を取り出します。例えば、

  x = 0.12345678

だったとしましょう。

xから、小数点以下、奇数桁目だけを取り出して、uを作ります。

  u = 0.1357

一方、x から、小数点以下、偶数桁目だけを取り出して、vを作ります。

  v = 0.2468

こうして、

  (u, v) = (0.1357, 0.2468)

を作ると、それは、正方形S1のある一個の点を表しています。

逆に、正方形S1を構成する点から任意の一個を取り出します。例えば、

  (u, v) = (0.1234, 0.9876)

だったとしましょう。先ほどと逆向きの操作により、xを作ります。

  x = 0.19283746

これにより、xは線分l1のある一個の点を表しています。

以上のようにして、線分l1を構成する各点と、正方形S1を構成する各点との間に一対一の対応関係を作ることができました。よって、線分と(内部の埋まっている)正方形は、濃度が等しいことになります。

論理的な観点からすると、特に抜けがあるわけではないので、以上終わり、で議論を終了してもいいのですが、しかし、この対応関係の不自然さは、気がかりなこととして残ります。

小数を奇数桁目と偶数桁目に分けて、2つの小数を生成するという操作は、無茶苦茶で、意味のあることとは思えません。リンゴやミカンにたとえて、現実世界でいったいどういう操作をすることに相当するのだ、と問われても、たいへん困ります。

視覚的にはどうなっているのでしょうか。動点Pが、線分l1上を左端から右端まで、一定速度でずる〜っと連続的に動くとき、対応する動点Qは、正方形S1内をどのように動き回るのでしょうか。

動点Pが連続的に動いても、動点Qはあっちこっちでジャンプして、もはや連続ではありません。

たいへんフラクタル感のある、自己相似な動きを見せてくれます。

線分l1を100等分し、100個の短い区間に分割します。一方、正方形S1の縦横の二辺をそれぞれ10等分し、10×10 = 100個の小さなブロックに分割します。すると、線分l1のひとつひとつの短い区間が、正方形S1のひとつひとつの小さなブロックに対応します。

つまり、まず、左下の小さなブロックが塗りつぶされ、次にその右隣りのブロックが塗りつぶされ、一番下の段の10個の小さなブロックが塗りつぶされたら、ひとつ上の段に移り、また左から右へ順々に塗りつぶされていきます。

ひとつの小さなブロック内がどういうふうに塗りつぶされていくのかというと、
いま見てきた過程の10分の1の縮図になっています。

つまり、小さなブロックを10×10 = 100個の小さな小さなブロックに分割すると、それの一個一個が先ほどと同様に塗りつぶされていくのです。

その小さな小さなブロック一個の内部がどのように塗りつぶされていくかというと、それのまた10分の1の縮図になっています。以下、同様。

正方形S1内の点はばらんばらんにほぐされちゃってますけど、とにかく、線分l1上の点との間に一対一に対応が取れていることになり、つまりは、「線は面に等しい」みたいなことが言えちゃったわけです。

これもまた直観的にはずいぶんと抵抗感のある命題ではありますが、今までに「可算無限ホテルのパラドックス」や「部分が全体に等しい」において見てきたのと同様、コンフリクトしているのは直観と論理との間のことであって、論理矛盾が生じているわけではありません。

こういうときは、そういうもんだと受け容れちゃえば、事態は収束するのでした。直観の側が屈服するのにも、もうそろそろ慣れてきたころなのではないでしょうか。

ついでに言っておくと、可算無限を二乗してもちっとも増えてなかったということは、それに再び可算無限を掛けてもやっぱり増えないということです。つまり、三乗してもやっぱり増えないということです。四乗しても五乗しても同様です。

どうでしょう。可算無限は1を足しても、2倍しても、二乗しても、何乗してもちっとも増えていかないということは、もう、どう料理しても、増えていきようのないもんなんじゃないかと思えてくるかもしれません。

もうひとつ、やってみましょう。2の肩に乗せてみるのです。2の可算無限乗。

その前に、準備として、「部分集合」という概念を導入しておきましょう。

●部分集合は、文字通り、もとの集合の一部分からなる集合

今までよく使ってきた、ここだけで通用する表記法にしたがい、集合N7を7以下の自然数の集合とします。要素を書き並べて表記すると、

  N7 = {1, 2, 3, 4, 5, 6, 7}

です。

さて、集合N7の7個の要素のうち、一部だけを使って新たな集合を作ります。例えば、2と5と7を取ってきて集合を作り、これを集合Aとします。

  A = {2, 5, 7}

です。

このようにして作った集合Aは、もとの集合N7の「部分集合」である、といいます。これを記号で、

  A ⊂ N7

と表記します。

要素が全然ない、空っぽの集合を「空集合」といいます。ギリシア文字の小文字のファイみたいな記号で表記します。ニョロンと一筆で書くファイではなく、丸を縦棒が貫いているファイです。文字化けしないといいのですが、これです。

  φ

ちゃんと見えてます?

さて、この空集合も集合N7の部分集合である、とするのが慣例です。

  φ ⊂ N7

それと、集合N7の要素を全部使った集合、N7自身も、集合N7の部分集合である、ってことになっています。

  N7 ⊂ N7

さて、集合N7の部分集合は、全部で何種類あるでしょうか。答えを先に言っちゃうと、128種類です。実際に全部書き出して勘定してみなくても、すっと答えが出てくるのはなぜでしょうか。それは、チラシの裏にこっそり書き並べたからではなく、...次の段で説明します。

集合N7の部分集合すべてからなる集合を、集合N7の「冪(べき)集合」といいます。集合を要素とする集合です。集合の集合。記号では2^(N7)と表記します。

この表記法は多分に感覚的なものだと思います。2の何々乗と言ったときの何々の部分が数ではなくて集合だ、というのは非常に変なんですが、単なる表記法のことなんで、「おもしろい」で流しちゃってよろしいかと。

ドイツ語の花文字のベータみたいなのを使う表記法もあるにはあるのですが、文字化け以前に、そもそもテキストじゃ出せないし。

集合2^(N7)の要素の個数は128個あります。この128個の要素の一例が、先ほどの集合Aです。ええと、話についてきていただけてますでしょうか?

集合の集合のことを、集合の「族」とも言います。族というと、なんかワルそうな響きがあるかもしれませんが、"family" を和訳しただけです。

●冪集合の要素の個数を数えてみよう

先ほどの集合N7の例だと、要素を全部書き並べると128個もあって、多すぎるので、少し減らします。集合N3で見ていきましょう。

  N3 = {1, 2, 3}

です。これの部分集合の集合2^(N3)の要素を書き並べて示すのは、そんなに大変じゃありません。やってみましょう。

  2^(N3) = {φ, {1}, {2}, {1, 2}, {3}, {1, 3}, {2, 3}, {1, 2, 3}}

こうなります。集合2^(N3)の要素の個数は8個です。

さて、この8個の要素それぞれに対して、表現の言い換えをしてみましょう。

  φ は「1 がなく、2 がなく、3 がない」。
  {1} は「1 があり、2 がなく、3 がない」。
  {2} は「1 がなく、2 があり、3 がない」。
  {1, 2} は「1 があり、2 があり、3 がない」。
  {3} は「1 がなく、2 がなく、3 がある」。
  {1, 3} は「1 があり、2 がなく、3 がある」。
  {2, 3} は「1 がなく、2 があり、3 がある」。
  {1, 2, 3} は「1 があり、2 があり、3 がある」。

これは特に問題ないですね。でも、表現が長ったらしいので省略して書いてみましょう。まず、「1が」、「2が」、「3が」の主語は省きます。「ある」を1で置き換え、「ない」を0で置き換えます。すると、次のようになります。

  φ は 000。
  {1} は 100。
  {2} は 010。
  {1, 2} 110。
  {3} は 001。
  {1, 3} 101。
  {2, 3} 011。
  {1, 2, 3} は 111。

これ、2進数で3桁の数を表しているとみることができます。位取りの上位と下位を通常とはひっくり返した上で、10進数になおしてみましょう。

  φ は 0。
  {1} は 1。
  {2} は 2。
  {1, 2} は 3。
  {3} は は 4。
  {1, 3} は 5。
  {2, 3} は 6。
  {1, 2, 3} は 7。

出てきた数に1を足すと、0から7までが、1から8までになります。

結局、集合2^(N3)の各要素は、1から8までの数字に対応づけができることが分かります。これはつまり、集合N8です。言い換えると集合N(2^3)です。

いま、集合N3を例に取りましたが、一般のNnについては、3のところをnで置き換えればいいだけです。集合Nnの部分集合からなる集合2^(Nn)については、1から2^nまでの自然数からなる集合N(2^n)と一対一に対応づけが可能である、ということです。

n = 7 の場合が、前の段の例で、2^(N7)の要素の個数は、

  2^7 = 2 × 2 × 2 × 2 × 2 × 2 × 2 = 128

と分かります。

念のため、逆向きの操作もやってみましょう。自然数の集合Nから、任意にひとつ、要素を取ってきます。たとえば、92を取ってきましょう。92から1を引くと、91が得られます。

91を二進数で表記すると、1011011となります。桁順をひっくり返して、1101101 となります。これに主語をつけて「ある」、「なし」で表現すると、「1があり、2があり、3がなく、4があり、5があり、6がなく、7がある」となります。

これを集合Bとすると、

  B = {1, 2, 4, 5, 7}

となります。

つまり、任意の自然数nに対し、集合Nnの部分集合の集合2^(Nn)を考えると、それの各要素は、集合N(2^n)の要素と一対一に対応づけができることが分かりました。

さて、nを無限に大きくしていったらどうなるでしょう。n以下の自然数からなる集合Nnは、すべての自然数からなる集合Nになります。

集合2^(Nn)は集合2^Nになるわけですが、それは、すべての自然数からなる集合Nの部分集合の集合ということになります。

一方、集合N(2^n)とは、1から2^nまでの自然数からなる集合なので、nを無限に大きくしていくと、それ自体が自然数全体の集合Nになります。

よって、自然数の集合Nの部分集合の集合2^Nは、自然数の集合N自身と一対一に対応づけが可能、ということになります。

集合2^Nの要素の個数は、気持ち的に言うと、「2の可算無限乗」です。けれども、それは、「可算無限」そのものと同じであることが分かりました。

よって、可算無限は、2の肩に乗せて、2の可算無限乗を考えたとしても、やはり、ちっとも増えていないということになります。

「やっぱりなぁ」、「そうだろうと思ってたよ」と納得しちゃったそこのアナタ、言っておきたい、大事なことがあります。

●だまされましたね?

昔、縁日で「頭がよくなる鉢巻」というのを売ってたそうですが、鉢巻に鈴がついていて、「頭がよく鳴る鉢巻」だったそうです。

繁華街の路上で、ペラッとした紙でできた小さい人みたいなやつが、ピョンコピョンコ踊っていて、人から号令をかけられるとピョロンと宙返りしたりするのを見たことありませんか?

あれ見て、買っちゃったりしませんでしたか? うわさによると、あれを買っても、紙でできた小さい人みたいなやつが入っているだけで、踊りも宙返りもしないみたいです。

あと、英会話がたちどころに上手くなる教材とか。労せずネットで丸儲けできる商材とか。チンコを巨大化できるなにかとか。リッチなマダムとエッチがいたせた上にお金がもらえるとか。

アフリカの銀行の偉い人から突然メールが舞い込み。ウチのクライアントにスーパーリッチな人がいたんだけど、不幸なことに飛行機事故に遭い、一家全員が亡くなってしまった。莫大な財産を遺しているんだけど、相続人が名乗り出ないと、政府に没収されてしまう。

ついては、親戚を演じてはくれまいか。必要書類はすでに整えてあるので、一度だけ姿を見せさえすれば、万事うまく処理できる。山分けしよう、という持ちかけ。

怪しい宗教団体にだけは、マジで気をつけてください。チンコだけならまだしも、人生を棒に振ります。

さて。上記の論理には重大な欠陥があります。承知の上で、あえて、しれっと言ってみたのです。実は、言っている内容がぜんっぜん正しくないのです。

これをうっかり認めちゃうと、たいへんなことになります。後で出てくる、対角線論法の帰結と、決定的に矛盾が起きます。それは、直観と論理とのコンフリクトなどではなく、ホントのホントの論理矛盾です。

数学の体系の内部で矛盾が生じたとなると、体系全部が崩壊しかねない危機に陥ります。そういうわけで、上記の論はぜーったいに認めちゃいけないのです。

幸いなことに、よくよく精査してみますれば、論理の欠陥が発見でき、成り立っていないことが分かります。

次回までの宿題にしておきたいと思います。みなさま、がんばって、上記の論のどこに欠陥があるのか、指摘してくださいませ。

あ、もしかすると、けっこうな難問かもしれません。正直、私自身が七転八倒しましたから。

んではっ。


【GrowHair】GrowHair@yahoo.co.jp
セーラー服仙人カメコ。アイデンティティ拡散。
< http://www.growhair-jk.com/ >

 ◆信楽◆

巨大なタヌキがセーラー服を着ていると聞いて、信楽に行ってきました。やっぱニラんだ通り、オス♂ではないですかっ。写真はこちら。
https://goo.gl/photos/TMTBDRJwema4yZKg8

 ◆映画のウェブサイト◆

映画『よろずや探偵談』のウェブサイトができました。現時点で上映が決まっているのは、6月29日(木)〜7月2日(日)「ザムザ阿佐ヶ谷」においてです。
http://yorotan.com/


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編集後記(04/21)

●マンションの消防訓練が6月に行われる。いまそのメニューを検討中だ。昨年の防災訓練はバラエティに富んだメニューが組めたので、参加者にはけっこう楽しんでもらえた。今回は消防に特化することにした。わたしは5回目だが、新しい理事会には経験者がいないので、話し合いしても何のアイデアも出ない。

結局、管理会社の担当とわたしが引っ張っていかなければならない。昨年の消防署の〆の談話があまりといえばあまりのひどさだったので、今回は原稿を書いてやろうかと思ったが、さすがメンツを潰すことになるので、話してほしい内容を箇条書きにして提出することにした。ネットを漁るとトンデモ怖い話が。

マンションの火事なんて、火元の部屋が丸焼けか半焼けして、せいぜい真上と両隣が危険という程度だろうと思っていた。ニュースで見るマンション火事で大きかったのは、火元の真上とその上まで燃えた程度だ。実際はもっとすごいのもあったのかもしれない。でも、マンションは火事には強いと思っていた。

どこかの部屋が火事を出し、近隣に燃え移りやがてマンションが丸焼け、なんてことはない。だから、火元の上と左右はヤバいが、ほかはまず大丈夫ではないか、その棟全体の避難なんて必要ないだろうと思っていた。玄関ドアを開ければ外廊下、外階段という構造で、煙に巻かれて迷うといった危険性もない。

だが、マンション火事は、火災のアナウンスを聞いたら、なるべく早く非常階段で逃げるのがセオリーらしい。経験者によれば、どこで何が起きているのかまったくわからないのが「マンション火災の怖さ」だという。たぶん火元も被害の規模も何も分からない。とにかく必要最小限の物だけ持って地面に立つ事。

消防署から火災発生棟の全員避難と安否確認が指示されることもあるようだ。いずれにしろ安否確認は地上でしかできない。マンション火災の大問題は、消火の被水である。消火には水をかけるしか方法がない。延焼を防ぐために、火元の部屋と上下左右の部屋に水を大量にかける。部屋の中は大水害である。

家財一切が使い物にならなくなり、当分は住むことができない。ところが、被害者は、失火元に責任を負わせることができない。失火した者に大きな過失がない限り請求はできない(「失火法」に拠る)。被害者が火災保険や損害保険で修繕するしかない。保険をかけていなかったら、全部自己負担となる。

日本においては火災による経済的損失に対しては、火元からの損害賠償はない。この火災で被害にあった人々は「あきらめるしかない」ということなのだ。火災保険や家財保険で自衛しておかないと、マンション火災ですべてを失ってしまう。失火法なんて知らなかった。消防訓練ではこの話をしようか。 (柴田)


●おとといの吉井さんのを読んで頭に浮かんだこと。
http://bn.dgcr.com/archives/20170419110100.html

私は漢字Talk7か7.5だったような気がする。そうだわ、こういうアイコンだったわ。懐かしい〜。最初に触ったPhotoshopにはレイヤーがなくて、その後のバージョンで追加され、レイヤーって何? って思ったなぁ。このエミュレーターにはPageMaker 2.0が入ってるわ。

/「AutoDraw」でアイコンが楽に作れそう……。ロゴ用のパーツも。と思ったら提供してくれる人がいるのね。自動的に修正してくれるわけではないのか。マッチさせるのね。

ということは二次利用はダメなのかな。ダウンロードはできるんだけど、提供側のではGoogleが好きに利用していいみたいなことは書いてあるなぁ。

/「QuickDraw」。合ってるでしょっ! 鳩は鳥じゃないのか! と叫んだ。

/「Mastodon」のパンクエピソードにワクワク。パンクといえば、最初デジクリサイトはうちの自宅サーバで管理していて、メーリングリストも作ったけれど、非力すぎてリストの最後の人に届くまでにタイムラグが数時間(十数時間?)あったような。

遠い記憶だわ。常時接続とかレンタルサーバって、ほんと安くなったよねぇ。皆が気軽に使えるのはありがたい〜。 (hammer.mule)

Web素人がMastodonを立ててみた
http://katze.hatenablog.jp/entry/2017/04/16/010900

実際に運用してみてわかった、大規模Mastodonインスタンスを運用するコツ
http://inside.pixiv.blog/harukasan/1284