装飾山イバラ道[199]「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」感想 最終編
── 武田瑛夢 ──

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数回に分けて書いてきたゼルダのゲームの記事も、そろそろまとめにしよう。ゲームの進み具合としては、ようやくラスボスであるガノンを討伐し、やり残しの世界を歩き回っているところだ。
※以下はゲームのネタバレがあります。

祝・ガノン討伐と書きたいところだったけれど、やり残しを片付ける度に「これは先に済ませておくべきだったかー」という事を発見してしまっている。

もう少し先になりそうだけれど、再びガノン討伐に出かける時には、スカっと爽やかな終わりになるだろうか。今後はこのゲームにある色々な優しさのおかげで、いきなりゼルダロスにはならなそうだ。

このゲームは一度最後まで終えても、☆印のついたデータから続きをプレイできるようになっている。ラスボスを倒す以前の世界に戻って、やり残しを片付けることができるのだ。





●気づく楽しさ

前回、私はこのゲームを「ゲーム的に解釈された、この世の仕組み」と書いた。

オープンワールドというのがどういうことかを、このゲームを通して知ったのだ。自分で歩いたり馬に乗ったり、パラセールで飛んでいける。見つけたものに、どのような行動をしてみても良い。宝箱や謎解きが詰まった世界のセットなのだ。

全編を通して謎を解くことが多いけれど、もしかしてこんなことまでできるのか? と思ってやってみたことが、アタリだった時の楽しさは格別だ。

「?」が「!」になる気づきの連続だ。

この「気づく楽しさ」は、「できた」という達成感もあるけれど、この仕組みを作り上げた人たちの、巧妙さやユーモアに感動するのだと思う。

だからなるべくゲーム中は情報を絶って、自分で気づく回数を増やしたくなる。ずっと「?」だと苦しいので、ちょうど良いところで「!」になると嬉しい。

火をつけて燃やすと変化するもの、叩いて飛んでいくもの、拾って持ち歩けるものなど。ゲームの中で何が可能なのか、不可能なのかを試しながら学ぶのだ。

私は夫と協力してゲームしているので、「よくそんなことわかったね」と言われれば嬉しいので、なんとか先に謎を解こうと頑張ったりする。お互いに手柄を競いあっているのだ。

●何が起こるかはプレイヤー次第?

ゲームなのでほとんどの事件はあらかじめ用意されていることだけれど、たまに今のは偶然かも? と思えることが発生する。

戦っていた敵とは違うマモノの攻撃が、たまたま敵に当たってやっつけてくれることはよくあり、オウンゴールのようで笑ってしまう。

ある時、リザルフォスと戦っていたら、そばに小さい岩のマモノ、ミニイワロックがあった。するとリザルフォスが、ミニイワロックの腕を掴んで投げつけてきたのだ。

初めて見たので驚いたけれど、本当に投げたのか錯覚なのか、また同じ状況にならないと確認ができない。ゲームの中にいる生き物たちが、どんな絡み方をするのかは、かなりその場次第かもしれないのだ。

どうも後半になってくると、戦いに飽きないようにするためか、イーガ団がランダムに襲ってきて混戦状況になりがちだ。

天候も突然雷雨になったりするので、予想していた通りになりにくいのはこの世と同じだ。自然さに翻弄されるのもこのゲームらしいところかもしれない。

●リアルで美しいグラフィック

デジクリなのでグラフィック的には、リアルな背景のことについて触れたい。地面や木々、山肌はすべてがそこにあるように見事につながっている。

以前、海岸での波打ち際の水の美しさのことを書いたけれど、ゼルダではおなじみの火山地帯「デスマウンテン」の一帯の描写も、私にはとても面白かった。

固まって黒くなった溶岩の割れ目から、流れ出るオレンジ色のマグマなど、場所によって変化する岩の様子が実にリアルだ。メラメラとしたマグマの光り方が美しい。

盛り上がりながら固まるとこんな感じだろうなというザラザラとした岩肌は、本物のような繊細な質感なのだ。熱気で遠くの景色が揺らぐ感じや、目が痛い感じまでしてきて、あまり長くこの場所にいたくないという気分になってくる。

時間や天候要素もあり、何層にも重なった複雑な見え方が用意されているのだ。

火山の火口付近に立ち入ることなどは、私はリアルの世界では経験できないだろう。マグマに耐えるマモノがいたりして、ゲーム世界のありえない山ではあるけれど、リアルな要素を大事にしたところに、作りこみの本気度を感じることができる。

●失われた記憶を取り戻しながら進むストーリー

親子、幼馴染、ライバル、恋人など、人生で関わる色んな人間関係がこのゲームの中にもある。主人公は失われた記憶を取り戻しながら進んでいく。

あらゆる人々と関わりながら記憶を思い出すことで、戦いに対する切実性が増すようになっているのもいい。

急ぐ人も時間をかけて丁寧に関わる人も、どちらも肯定できるようになっているわけだ。「その人の大事にしている事が最優先でいいんです」というのは、このリアルな世界にも必要な優しさだと思う。

このタイプのゲームは数年に一度しかプレイしないのに、問題なく飽きずに遊べるのが不思議だ。そのように作ってあるといえばそれまでだけれど、難易度設定が絶妙なのだと思う。

それにしても大変なボリュームのゲームだ。クリエイターの皆さんには、こんなに素敵なゲームをありがとうと伝えたい。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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宅配カーのロボネコヤマトってすごいけれど、近所には自転車で荷物を引っ張るリヤカー? のヤマトさんがいる。調べると新スリーターというらしい。後ろの荷台が大きくてバランスが難しそう。