はぐれDEATH[28]はぐれの体幹トレーニングみたいなもの
── 藤原ヨウコウ ──

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●猫背矯正作戦

なんだかなんだか、ボクの体シリーズみたいになってしまった。猫背生活50年のボクが、この歳になって猫背矯正に踏み切ったのにはそれなりの理由があるのだが、この辺は省く。必要にかられて、とだけは白状しておこう。

絵を描くのと同じぐらい猫背で、この歳まで過ごしてきた。特に困ったこともなかったし、親父も猫背なので遺伝だろうと思っていたのだ。骨格はお猿だし。

そこで、猫背についてちょろっと調べてみたら、説が色々ありすぎてどれが本当か分からない。姿勢矯正と称した怪しげな商品まで出てくるので、疑い深いボクはソッコーで逃げ出す。

「これはもしかして」と思って読んだら、ボクの体とは縁のないことだったりするのもザラである。こうなると、猫背を矯正する意義そのものが怪しくなってくるので、もう始末に負えない。

それでもとりあえず筋肉硬化説に基づいて、片っ端からストレッチをしたら、なんと大胸筋が硬くなっている。より詳細に言えば、大胸筋と三角筋の繋ぎ目が硬い。これには正直驚いた。

ボクの大胸筋はめちゃめちゃ薄いし、三角筋に至っては盛り上がりそのものがかなり稀薄なのだ。上半身でそれなりの筋肉があるのは、腹筋と背筋だけ。

肩自体の可動域は、それなりにあると思っていたのだが(普段生活する分には問題ないどころか、めちゃめちゃ動く)とんでもない。肩胛骨(肩甲骨)はがしは毎日やっているので、これは完全に盲点だった。





腕を「前に習え」の要領で前に出して、肘から先を直角に上方向に曲げる。この状態をキープして、外側に広げると大胸筋が伸びるのだが、大胸筋と三角筋の繋ぎ目にかなり負荷が掛かる。

おまけに僧帽筋まで痛くなる。ちなみに僧帽筋も大してあるワケじゃない。要は肩が内側に向いた状態で固まっているのだ。ちなみに、肩胛骨は余裕で回る。完全に前面の問題である。

よく猫背の人に「もっと胸を張りなさい」と言うが、肝心要の大胸筋、三角筋、肩胛骨周りの筋肉が硬いと、胸を張るのに力がいる。そういうわけで、力が入るというのは、前に筋肉が引っ張られているということになりそうだ。

解決策としては、「正常な位置に肩が戻るよう筋トレをする」か、「正常な位置に肩が戻るようにストレッチをする」かの二通りある。

ボクは後者を選んだ。これ以上、下手に筋肉を増やすより体質上柔らかくする方が楽だし、とにかく力を抜いて自然に正常な姿勢にする方が理に適っているような気がしたからだ。

自然体というのは体に無理な力が入らない。無理をすれば必ずどこかに故障が出る。とにかく、自然な状態は体に変な負荷がかからないのだ。ボクの猫背は、お猿起源の姿勢に由来している気がする。

前に書いたが、ボクの体はあちらこちらにホモ・サピエンスにはないはずの骨が残っているのだ。まさか姿勢にまで影響しているとは思わなかった。

何しろ肩こりとは無縁の人である。むしろ大胸筋を広げるストレッチをすると肩、首、背中までこったような感じになるのだ。肩の位置が内側に向いた状態で最適化された体としか思えない。とことんお猿さんである。

自然な運動律に関しても散々書いているのでどんどん飛ばすが、何か運動をしようとして、運動律そのものが本来どのような状態なら自然になるかということを調べると、必ず何らかのマニュアルなりなんなりに行き着く。

問題はこのマニュアルがホモ・サピエンスが「でふぉ」なのだ。当たり前である。普通ではない運動を、ホモ・サピエンスが試みた結果なのだから。

お猿さん用のマニュアルなどあるはずがない。こうなると、自分からホモ・サピエンスに近づくしか手がないではないか。

ちなみにホモ・サピエンスが登場したのは40〜25万年前で、その前のヒト属(ホモ属)に至っては、およそ200万年前といわれている。めちゃめちゃ譲歩してヒト属にボクを分類すると、200万年分の進化をめちゃめちゃ短期間でしないといけない計算になる。なかなかヘビーな話になってきた。

人類の起源や進化の過程は自分で調べて下さい。諸説色々あって調べるだけで楽しくなりますから。

もっとも、ボクの場合は姿勢だけをホモ・サピエンスに進化させるだけで、他の部分はそのままほっておくことにする。

足の指が自由自在に使えるとかメリットもそれなりにあるし、一代でまともなホモ・サピエンスになれるはずもなく、必要なのはホモ・サピエンスとしての自然な姿勢だけなのだから。

京都に戻ってから下半身のストレッチをずっと続けていて、おかげさまで立位前屈で完全に手のひらが地面にべたっと引っ付く状態まで戻った。

階段のようなちょっとした段差があれば、手は下の段に向かってどんどん曲がる。毎日の地味なストレッチは、ボクの場合まだ健在なのだ。さすがに歳をくったので油断はできないから今もやっている。これにメニューが若干加わるだけの話だ。大したことではない。

でも猫背で誤魔化していた(結果的にだが)腰の小ささが、まともな姿勢になると目立ち出すような気がしてちょっと怖い(笑)。

猫背だから所謂背中のS字カーブがきちんとなっていないのだが、姿勢を直したらちゃんとしたS字カーブになってしまうではないか。なんだか益々貧相に見えそうで困るのだが、まぁしゃぁなしである。


●片足立ちができないっ!

体シリーズ続く(笑)

お散歩の話で「足腰が全盛期に戻った」と大口を叩いていたが、大間違いだったことがつい先日判明してしまった。片足立ちがいつの間にか出来なくなっていたのだ。相当ショックである。

歳を考えたら当たり前かもしれないのだが、変に体が柔らかいので勘違いしていたのだ。バランス感覚と体の柔らかさはあまり関係ない。

どうやら、最近よく耳にする体幹とやらがへたっているのが原因らしい。猫背の矯正も大事なのだが、これはこれでどうにかしないと気になって仕方がない。

断っておくが、闘争心とかアンチエイジングとかというような、高尚な発想はカケラもない。ただ単に、あまりの情けなさにがっかりしただけである。

普通ならあきらめるのかもしれないが、「立つ」「歩く」という基本的な運動能力だけは死ぬ直前まで、絶対にキープしていたいのだ。

理由は単純で、じっとしているのがイヤだから。引きこもりなのに落ち着きがないというのは、自分でも不思議なのだが、とにかくそうなのである。と言うか、辻堂時代に一生分「寝たっきり」はやったのでもう十分。

前にもどこかで書いた気がするのだが、京都市内や伏見(伏見も京都市内なのですが)は、歩くのにちょうどいい都市設計になっている。中心部は人が多すぎるので、大工さんのお手伝いの時しか行かないが、上賀茂やら伏見あたりは適当にぼけてて歩いて楽しかったりする。

上賀茂に比べればまだ冬の冷え込みはマシだが、辻堂の暖かさからすると十分寒すぎる。その分、春のありがたみがまた違う。

話を戻す。体幹といっても、ボクがそれほど詳しいワケではない。むしろ疎い。読んでる皆さんの方が詳しい可能性が高いので、ややこしい事はじゃんじゃん飛ばす。

それに気がついたのは、太腿のストレッチをしていたときだ。太腿の前の部分を伸ばそうとすると、片足で立ってあげた脚のつま先を手で掴んで、上に引っ張り上げなければならない。

この時にバランスが取れないのだ。ストレッチはしたいので、あまった手で何かを支えにしてやるのだが、ストレッチという無理な姿勢なせいだろうと甘く見ていたのだ。

猫背矯正とも関係あるのだが、下半身をそれなりに元に戻そうとすると、どうしてもそれまで使っていなかったり弱っていた筋肉を、総動員しないとどうしようもない。もちろん筋肉痛が出る。痛いのはイヤなのでストレッチをする。これの繰り返しである。

絵もそうだが(特に素描)単純な反復訓練は、本来飽きやすいものなのだ。しかし、ボクの場合ハマると延々続けるという悪癖がある。

応用は難しいのでやらない。楽な基礎をとにかくやる。基礎は基礎でそれなりの成果があるので、それで満足出来るのだ。と言っても完成することはない。

レベルの高い基礎というのがあるのだ。これを目指し出すとそれなりに楽しい。ボク的には「怠け者だから」なのだが、人によっては「熱心」に見えるらしい。怠け者が楽しく続けられるのが、このような基礎の把握の仕方だったりする。

アルトもそうなんですがね。ロングトーンとオーバートーンだけで満足してしまう。これ基本中の基本で、普通の人はつまらなくなって、すぐにちょっとしたフレーズとか簡単な曲とかを吹くようになるのですが、ボクはこれで十分満足出来る。

おかげで無駄に音がでかくなった(笑)。それなりの目標はあるのですが、それはまた別の話なのでパス。ちなみにこういうのを「馬鹿の一つ憶え」という(嘘です)。

で、片足立ちだ。これって基本的な運動能力のひとつじゃないですか。「寝る」「座る」「立つ」「歩く」。それぞれに色んなバリエーションがあるように、片足立ちだって「立つ」の中の立派な基本的なバリエーションのはずなのに出来ない、というのはかなり衝撃的だったりする。

老いを否定する気はさらさらない。老いるのが自然なのだ。自然に逆らうほどボクはタフではない。基本、流されっぱなしである。ただ、ちょっと計算違いをしたことは素直に白状しておこう。

これは以前の顛末記にも少し書いたと思うのだが、ボクは自分の寿命は50歳と思い込んでいたフシがある。実際、49の時に吐血して死にかけてるし(笑)

あの時、運が悪ければ失血死していたのだ。何しろ痛みで気絶してしまって、気がついたら処置されていた。詳しいことはバックナンバーでも探して下さい。

運がいいのか悪いのか分からないが、助かってしまったので計算が狂った。人生設計は50までしかしていないので、体力だって落ちるに任せていたのだ。追い打ちをかけたのが辻堂の引きこもり事件である。これで一気に体力が落ちた。

ストレッチそのものは、アルトを鳴らしている時もやっていたのだが、辻堂に行ってアルトを鳴らさなくなり、ストレッチも当然しなくなった。

片足立ちのストレッチも上京前はできていたのだ。たったの三年で、人間ここまで堕落できるのである、呵々♪

そこで、体幹トレーニングである。やり始めて気がついたのだが、トレーニング方法は大分ヨガと被る。一時期ヨガをしつこくしていたのだが、どうもその時知らず知らずのうちに体幹も鍛えられていたようだ。

ちなみに、いつやめたのか定かではない。恐らくいつも通りフェードアウトしたのだろう。

歳が歳なので、素直に初心者コースを選んで始めたのだが、三日で片足立ちは出来るようになった。ここまであっさりできる、と逆に不信感を抱くのがボクの慣いである。

話が出来すぎてるし、そもそも「効果があらわれるのは早くても二〜三週間(個人差あり)」なのだ。個人差といってもボクの場合はどう考えても異常である。

自己肯定力が異常に低いので、よけいに疑心暗鬼になる。ある種「負のループ」と言っても過言ではなかろう。

この手の疑心暗鬼はいつもつきまとっているのだから、個人的には「でふぉ」のはずなのだが、これはいままでちょっと経験したことがない類なので戸惑っている。戸惑った先にある結論は「たまたまであって常態ではない」ということになり、しつこく続けることにした。

実は猫背の方も、二〜三日である程度矯正の効果は出ているのだ。今は猫背の方に違和感を感じるくらいで、矯正を始めた当初より明らかに意識的に姿勢を正す、という場面が減っている。

姿勢の違和感を感じた時、少し意識すれば比較的正しい自然な姿勢になる。

単なる思い込みの強さのせいかもしれないが、もしそうならかなりアホである。「直そう」という意識そのものが深層意識に変化して、無自覚に直す努力をしているとすれば、これほど洗脳にかかりやすい例も珍しい。他人からの洗脳は分かりません。自己洗脳(笑)。

まぁ、なにかと変ではあるな。やっぱりお猿並みか……。


【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
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装画・挿絵で口に糊するエカキ。お仕事常時募集中。というか、くれっ!