わが逃走[201]YMOを語るの巻 その2/齋藤 浩

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〈前回までのあらすじ〉昭和50年代半ば、S玉県O宮市に住むひとりの小学生男子が、YMOの音楽に度肝を抜かれたわけだが、いかにして度肝を抜かれたか、度肝の抜かれっぷりについて書き留めておこうと思い筆をとった次第です。
http://bn.dgcr.com/archives/20170420110200.html

さて『MASS/CAMOUFLAGE』でいきなりYMOファンになった私は、改めて過去のヒット曲を聴きたくなり、『ライディーン』と『テクノポリス』(シングル盤)をおこづかいで購入。

いずれも懐かしい曲という印象。とくにこのシングル盤『テクノポリス』は今聴いても「?」と感じるMIXで、なんかヌケが悪いのだ。このせいで、82年頃までこの曲の良さがわからず悩むことになる。





また、『ライディーン』『テクノポリス』いずれも、全体的に音が今(1980年)とまったく違う。細い。と思った。

といっても、これらが発表されたのはわずか二年前なんだけど、その間の機材の進化も含めた環境の変貌は、ものすごかったということになるのかな。

テクノポリスB面の『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』は今も大好きな曲だが、ノリはイイのになぜか悲しくなる。それが何故だかわからず、不安で不安で仕方がない。

不安だからまた針を落とす。体はノリノリ、みぞおちモヤモヤ。これはイッタイ何??

対して衝撃だったのが、ライディーンB面の『コズミックサーフィン』。

グリークシアターだったか、英語のMCから始まるライブバージョンなのだが、とにかくものすごいグルーヴ感。当時まだそんな言葉知らなかったが。どうにも踊りだしたくなるこの心地よさ!!

やっぱりYMOはスゴい。この曲の入ってるオリジナルアルバムを聴きたい!ってことで、11歳の誕生日に1stアルバム『イエローマジックオーケストラ』を買ってもらうことになるのだ。

『イエローマジックオーケストラ(US盤)』A面に針を落とす。

●コンピューター・ゲーム ─サーカスのテーマ─

なんじゃこりゃ? これは果たして音楽なのか?テレビゲームの効果音なのではないか。かなり戸惑う。アルバム丸ごとこんなんだったらどうしよう。。。

「ピッポッ、ピピッ、ポッ、ピューン、ピコピコ……」

こんなのが永遠に続くのだとしたら、とんでもないものを誕生日プレゼントにリクエストしてしまったことになる。

しかし、バラバラな効果音のようなものは、徐々にリズミカルな音楽としてまとまっていき、ノリノリになりつつノンストップで次の楽曲『ファイアークラッカー』へとつながるのだった。

●ファイアークラッカー

横浜中華街みたいな音楽、と思った。YMOの代表曲ともいえるが、作曲はマーティン・デニー。

東洋と西洋が混じり合う気持ちよさ。こんな曲聴いたことないぞ!(←こんなのの連続)

西洋人の作曲した東洋的音楽を、赤い人民服を着て演奏するYMOは、世界に対して斜に構えているようで、小学生にはとってもかっこよく思えたのだ。

正確なリズムが脳内をぐるぐる廻り、ドドーンという爆発音で終わる。この終わり方もすごく斬新に思えた。

音楽ってなんて自由で創造的な世界なんだ! といったようなことを子供ながらに思った記憶がある。

●シムーン

小学生には、わーい変な曲〜。という印象だった。

コメディドラマで失敗しちゃったシーンで流れる、ホワホワホワワ〜ンという音と旋律に近いものを感じたからか。

いわゆる南洋的な心地よさ(小学生には初体験)を当時のシンセで表現したものだから、いろいろ初めてなことが重なって、なんとも不思議な楽曲という印象が強かった。

何度も聴き入るうちに頭クラクラ気持ちよくなってくる。

さて、当時同じ体験をしたであろう同世代のピアニスト・江草啓太の演奏する同曲のピアノバージョンがとてもイイ。原曲の良さを見事に引き出している。超オススメ。

●コズミックサーフィン

はじめに断っておくと、これは名曲であり、発表されているバージョン(コズミックインベンション含む)すべてが素晴らしいのだ。

シングル盤ライディーンB面の『ライブじゃない版』を聴きたくてこのアルバムを買ってもらった訳だが、まさかこんなに違うとは!

確かに旋律はライディーンB面のアレに間違いない。

しかし、例えるならこのアルバムのそれはC-3POが一人でサーフボードに乗っているのに対し、ライブ版は帝国軍が束になってサーフィンしているくらいの違いを感じたのだ。生演奏とプログラムされたものの違いなのか。

この『アレンジの違い』ってやつも、小学生には初体験だったわけで、音楽というものの入口に立った私は、とにかく世界の広さを感じまくったと言えましょう。

YMOの凄いところは、スゴい演奏家が機械に演奏させているところにある。

ということは、ライブこそYMOの真骨頂と言えなくもない?

とはいえ、綿密に計算されたアルバム版も何度聴いてもイイんだよね。でも、どっちが好きかと聞かれたら、ライブ盤と即答するだろう。

それくらいライディーンB面は衝撃だったし、実際に素晴らしい演奏だと思う。

●コンピューター・ゲーム ─インベーダーのテーマ─

A面は再び「コンピューター・ゲーム」で〆となる。針を落としてから針が上がるまでは、まるで日が昇ってから沈むまでのような印象。

地球的、超自然的。と11歳の私は感じた。

すべてのYMOの楽曲に言えるとこだが、目を閉じて聴くと、まぶたに美しい映像が浮かんだ。

YMOが曲を書き続けてくれる限り、新しい映像が脳内に再生されるのだ。

なんと素晴らしいことだろう!

つづく


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。