Scenes Around Me[04]岡画郎との出会い/関根正幸

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現在のような記録行為を始めるきっかけとして、1995年11月に高円寺にあった岡画郎に出入りし始めたことに触れない訳にはいきません。

今回は、岡画郎との出会いについて記すことにします。

岡画郎は高円寺駅南口と青梅街道を結ぶ大通り沿いのマンションの一室にありました。〈東京都杉並区高円寺南2-26-9 第5下田ビル203〉




ここは、もともと岡啓輔さん(以下、岡さんと記す)の住居でしたが、部屋の窓が大きくて外から部屋の中がよく見えたので、窓際に作品を展示して道の向かいに設置された(100円ショップの)双眼鏡で作品をみるというコンセプトのギャラリーになりました。

岡さんは建築家(大工)兼ダンサーで、現在、港区三田で「蟻鱒鳶ル」という鉄筋コンクリート製のビルを自力で建築(セルフビルド)し続けています。

ちなみに、岡画「郎」というのは「廊」の間違いではなく、大家に部屋の居住以外の使用を咎められた岡さんが岡画郎(岡ガロウ)を名乗り、岡画郎という人物の住居だと言い逃れようとしたことに由来します。

岡画郎を立ち上げたのは、岡さんの他に小川てつオ君と水口孝一君で、彼らは1990年に小川てつオ君の呼びかけで集まった「ロシアノーパンギャルズ」というアートグループに参加した関係で知り合ったようです。

三人は、岡画郎最初の展示『窓際族』で、サラリーマンの格好をして窓際に置かれたデスクに座り続けたといいます。

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岡画郎があったビルの構造は少し変わっていたので触れておくと、建物の中心を貫くようにエレベーターがあり、エレベーターの周りを螺旋状に階段が作られていて、廊下はなく、各部屋は階段で結ばれていました。

なので、岡さんの部屋に行くには、通りの裏側にあるマンションの入口から階段を10段ほど下り、半地下にあるエレベーターホールからエレベーターで2Fへ、そこからさらに階段を10数段上る必要がありました。

岡さんの部屋自体はおおよそ4畳半の広さで、風呂トイレ付きでしたが、隣りに6畳くらいの広さのベランダがあって、ベッドなどを含む展示に関係のない家具や荷物は、すべてベランダに出されていました。

後述する岡画郎定例会で、参加者が多くて部屋に入りきれない時などは、ベランダに避難することもしばしばだったし、酒を飲み過ぎてベッドで寝ている間に体に落書きされたこともありました。

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岡画郎の展示は、窓際を板壁で塞いで板壁と窓の間に作品を展示することが多かったのですが、板壁以外にも展示に必要な道具類や双眼鏡をしまっておく箱などは全て岡さんの手作りで、そこに岡さんの大工としての技量が発揮されていました。

さらに、岡画郎では作品の展示以外に、毎週土曜日の晩に定例会と称した、誰が来ても構わないという会合を開いていました。

これは元々アーティストトークや、展示期間中のイベントを開催するための場だったと思われるのですが、後には次の月の展示内容を話し合いで決める場になったり、単なる飲み会の場になったりしました。

定例会には、とくに私が出入りし始めた当時は、美術家、音楽家、写真家、映像作家、ライター、詩人、パフォーマー、ダンサー、社会運動家といった、ありとあらゆる活動をしている人たちが出入りして、さながら、高円寺の文化の中心(のひとつ)になっていました。

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前述の通り私は、1995年11月に初めて岡画郎定例会に顔を出しました。

当時、ひどい失恋をしていました。今思うと、振られて当然、という成り行きではあったのですが、あまりに無防備だったため心に大きな傷を負ってしまい、見兼ねた友人が岡画郎の定例会に連れて来てくれたのでした。

ただ、その頃、あちこちで岡ガロウや小川てつオの名前を目にすることもあり、そのことがなくても岡さん達と知り合うのは時間の問題だったかも知れません。

ともかく、岡画郎定例会で多くの人達と交流することで、少しずつ失恋から立ち直ったのです。

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今回は、岡画郎があった第5下田ビルの全景を撮った写真を紹介しようと思ったのですが、見つかりませんでした。思うに、通りの向かいからだと極端にアオる必要があるため、撮影をしなかったのでしょう。

ただ、第5下田ビルの取り壊しが始まる直前に、少し離れた場所から撮影したことがあるのですが、岡画郎の後を継いだカフェ凹凹が2007年末に立ち退いて後、しばらくビルが取り壊されずに置かれた記憶もあり、いつ撮影したか思い出せないため、ネガを見つけられませんでした。

代わりに1998年の暮れに撮影した岡画郎の展示『夜光る』の写真を紹介します。

https://c1.staticflickr.com/5/4163/33710410043_918f7c884e_c.jpg

この展示は、夜間、岡画郎内を発光させることを意図して、部屋内に照明や鏡などを展示したのですが、個人が持ち込める照明に限界があったのと、電気容量の関係で、外から見ても発光している様には見えませんでした。

そこで、記録だけでも光っているようにと、長時間露光で撮影した、いわばやらせ写真です。

前述の通り、部屋と部屋の間が階段になっているため、隣の部屋と岡画郎が段違いになっていることが分かります。


【せきね・まさゆき】sekinema@hotmail.com
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1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。