[4350] 小学生が感じた“新世紀への夜明け”

投稿:  著者:  読了時間:14分(本文:約6,800文字)



《文字っ子にとってうれしい出来事》

■わが逃走[202]
 YMOを語るの巻 その3
 齋藤 浩

■もじもじトーク[62]
 マツコの知らない世界でフォントやってたよ
 関口浩之




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■わが逃走[202]
YMOを語るの巻 その3

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20170525110200.html
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前回までのあらすじ:昭和50年代半ば、S玉県O宮市に住むひとりの小学生男子がYMOの音楽に度肝を抜かれたわけだが、いかにして度肝を抜かれたか、記憶が鮮明なうちに書き留めておこうと思い筆をとった次第です。

『イエローマジックオーケストラ(US盤)』B面に針を落とす。

大袈裟でなく、“新世紀への夜明け”を感じた。

東風、中国女、ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック、マッドピエロとノンストップで続く。

わ、全曲つながってる!というのも小学生には新鮮だった。

後年知ったことだが、B面の曲名はいずれもゴダールの映画に由来する。このあたりにも小難しい=カッコいいという、少年の誤解を助長させるに充分なパワーを備えているといえよう。

●東風

美しい曲である。

カッコいい、新しい、正しいというのはいずれも西洋的なもの、という認識が当時の小学生にはあったのだが、その固定観念を根底から覆した曲。大陸を感じる。とてつもなく広い。

ブラックでもホワイトでもなくオレはイエローだ! と拳を掲げて主張したくなったのである。小学生が。

生まれてから10年間、極東の島国で欧米文化こそ正解という、ちょっと違和感のある常識の中で育った子供が解放されたような?

いわば運命の曲だ。

このとき、ミュージシャンを目指してもこの人たちは超えられないだろうから、ならばYMOのレコードジャケットをデザインする人になろう。と、わりと本気で思った。

これが私のデザイナー人生、tong-poo graphicsのはじまりでもあった。

●中国女

ポーンというシンドラの音からピンクレディーの『サウスポー』を想起させ、10歳の少年はなつかしいな〜と思った。

小学生のくせに「なつかしい」とは生意気な、とお思いでしょうが、考えてもみてください。10歳における2年前とは50歳における10年前と同じなのです。

しかも、50歳の時間があっという間に過ぎ去ってゆくのに対して、小学生は“永遠に続くと錯覚するような2学期”を毎年経験しているのですよ。なので、「なつかしい」は正解なのです。

で、この中国女、最初はライディーンのバージョン違いかと誤解したっけなあと懐かしむ。インスト曲かと思えば最後にボーカルが入る。

歌詞の「Junk sails on a yellow sea」を「あんたらはイヤラシーって言ってるー」と当時の小学生は喜んでいたものだなあ、とさらに懐かしむ。

ここからじわじわとグラデーションのように曲間をブリッジするサウンドが。これぞ名曲『ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック』。

●ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック

マッドピエロの前奏なのか、はたまたA面からの流れの総括なのか。

今まで直列ですっ飛ばしてきた物語が横一列に並び、映画の回想シーンがスクリーンから溢れ出すような、デジタルな無機的なはずのサウンドが微生物のように増殖、増殖、増殖。

これも曲なのか? 小学生は思った。

こういった驚きとか、初めて触れる衝撃、といったものを誘発する要素は、YMOの全ての楽曲に含まれている。

●マッドピエロ

ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージックからの流れ、そしてこの小気味よい始まり方がスゲーカッコいい〜! って涙したものよ。

『MASS』に似ているとも思ったけど、陰鬱なそれに対し圧倒的に元気。『中国女』でも感じたことだが、作曲家が好きな“音の並び”ってあるんだな。

そのとき、大陸からヨーロッパに抜ける地図が浮かび、さらに広大な風景が脳裏に広がった。

この瞬間、YMOは“シラケ世代”の悲観的小学生に、夢と希望を与えてくれたのだ。

私は「誰にも迷惑をかけずにひっそりと死にたい」と考える子供らしくない子供だったので、今思えば、生きる希望といったものを音楽が与えてくれたということなのだろう。

うん、YMOのいいところは暗さの中に光が見えるところだな。

つづく


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[62]
マツコの知らない世界でフォントやってたよ

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20170525110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

僕は、比較的テレビが好きです。でも、ここ数年、テレビを見てるというよりも、BGM的にテレビの音を流していて、目と脳はMacBookかiPhoneに向けられていることが多いです。

好きな番組は、マツコの知らない世界、タモリ倶楽部、宇宙関連の番組です。あっ、名探偵コナンも好きです。あと、西村京太郎サスペンス・十津川警部シリーズのような二時間ドラマもいいですね。

渡瀬恒彦さんがなくなったと聞いたときはとても残念でした。「タクシードライバーの推理日誌」の渡瀬さんは大好きでした。

さて、今回のテーマは、マツコの知らない世界「フォントの世界」です。

●最近、フォントの話題が多いと思いませんか?

昨年ぐらいから、テレビや雑誌、そして、オンラインメディアで「フォント特集」が増えているような気がします。

そんな中、5月9日(火)の「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)で「フォントの世界」を放送してました。

みなさん、ご覧になりましたか? マツコの知らない世界は、好きな番組だったのでフォント特集すると聞いたとき、うれしくなっちゃいました。

Facebookで「マツコの知らない世界でフォントやるよ」って拡散したら、すぐに200人ぐらいから「いいね!」もらいました。

「関口さんも出るんですか?」という激しいツッコミもいただきました。そんな訳ありません……(笑)

最近、「フォントはよく知らないけど、なんか楽しそう」「書体が変わるとイメージが変わるね」「身近な存在だけど、フォントの話あまり聞いたことないのでもっと聞きたい」という声をよく耳にします。

●絶対フォント感を持つ数学教師

番組を見逃した方のために、どんな内容だったか、ダイジェストを。

ゲストは、「絶対フォント感」の持ち主である数学教師の須藤雄生さんという方でした。

ちなみに「絶対フォント感」とは、文字を見ただけでフォント名がわかってしまうということのようです。須藤さんは3,000種類のフォントを見分けられるらしいです。変態ですね……(褒めてます!)

須藤さんは、街中を歩くと、こんな感じでフォント情報が脳に飛び込んでくるらしいです。
https://goo.gl/QlDHkS

特徴のある100種類ぐらいのフォントは、僕も見分けられそうですが、何十種類もの似たような明朝体を見分けるのは至難の業です。まだまだ修行がたりません。

「絶対フォント感」という言葉、昨年からよく使われるようになりました。でも、僕は「相対フォント感」のほうが好きです。「相対フォント感」は僕が勝手に作った言葉ですけど……。

「このフォントのほうがゆる可愛い」「こっちのほうが艶っぽいけど品がある」「これはアンティーク感があるフォントだな」というような感覚を、もっと身に付けたいと思っています。

そうすることで、「この高級車の広告にはこの書体を使おう」とか「大和朝廷博物展のポスターはこの書体を使おう」というように、書体選択の感性を磨いていきたいのです。

●フォントひとつでイメージが激変

このフリップをご覧ください。
https://goo.gl/kku1TW

フリップの一行目は、〈もじもじトーク〉で何度も紹介している「くろかね」です。このフォントで表現すると可愛らしいイメージになりますよね。バズドラで使われているフォントです。

「マツコの知らない世界」の画面に出てくるフォントの約8割は、「くろかね」が使用されています。

そして、二行目のフォントは極太明朝です。緊迫した感じになりますね。「緊迫した感じ」と表現したのはマツコなんです。以前、雑誌の編集をしたことがあるらしく、フォントにかなり詳しい感じでした。

次に、チョコレートのパッケージの新旧比較の話がありました。
https://goo.gl/qejWrn

チョコレートのパッケージに使われるフォントを変更したことで、売上が43倍になったというお話でした。

フォントの変更だけでなく、パッケージデザインの変更や広告施策とかの要素も加わっての結果だと思いますが、フォントが果たす役割は大きいと思います。

●マツコの手書き数字は、はつひやまとに似てる!

マツコが手書きした数字をご覧ください。
https://goo.gl/u373NG

この数字を見た時、僕も「はつひやまと」というフォントの雰囲気があるなぁと感じました。

このフォントは20年前に、書体デザイナー今田欣一さんが制作しました。今田さんが、当時、フォントワークスのマティスに合わせて、かな書体三種類を開発したとお聞きしました。

ちょうど先週、今田さんのブログ「欣喜堂通信」で当時の話が詳しく掲載されてましたので、ご紹介します。
http://yaplog.jp/kinkido/archive/112

●「そ」と「3」が気になる

須藤さんは、ひらがなの「そ」と数字の「3」が小さい頃から気になっていたそうです。

「そ」はざっくりいうと三種類あります。そして「3」は開き具合の違いで何種類も存在します。

今日は「3」が気になって、駅周辺で見かけた「3」を何枚か撮影しました。
https://goo.gl/zlbikm

●写植文字や国鉄フォント

最後に、絶滅危惧種フォントの中から、須藤さんの好きな書体ベスト3の紹介がありました。
https://goo.gl/8dSyHc

1位 スミ丸ゴシック(国鉄時代の駅フォント)
2位 石井太ゴシック(東急バスの古い停留所文字)
3位 本欄明朝(究極の透明感)

フォント好きな人にとっては、「そうそう、この3書体は味わいがあっていいよね〜」って反応をしたと思います。僕も「スミ丸ゴシック」が大好きです。ちなみに、マツコはこれら全部、知ってました。すごい。

番組では紹介されていませんでしたが、鉄道文字の素敵なサイトがあるので紹介します。このサイト、僕、大好きです。

駅の看板、案内板(サインシステム)、電車の方向幕など、素敵な文字が満載なんです。特に、1980年代までに制作されたフォントは秀逸です。

もじ急行
http://mojikyu.com/

今回、全国ネットのテレビのゴールデンタイムで「フォント特集」を放送するという、文字っ子にとって、うれしい出来事でした。

15分という限られた時間の中で、フォント初心者も楽しめて、フォントマニアも満足できる内容だったのではないでしょうか。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。


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編集後記(05/25)

●黄文雄は台湾出身の評論家で著作がものすごく多い。そしてタイトルも長い本が多い。今回読んだのは「米中韓が仕掛ける『歴史戦』世界史へ貢献した日本を見よ」である(2015/ビジネス社)。文章にも特徴があって、箇条書きがかなり多い。だから格調のある文章ではないが、とてもわかりやすいのだ。

教室で講義を聞いているような感じで、スルスル読み進められる。1980年代後半に入ってから、中国は日本に対していわゆる「正しい歴史認識」とやらを押し付け、韓国もその尻馬に乗った。それは「政治」であって断じて「歴史」ではない。ところが、日本政府は「反省と謝罪」という愚挙を繰り返してきた。

黄文雄は東洋史の理解から、中韓のいわゆる「正しい歴史認識」はすべて創作と見做す。それは自国史の投影からのフィクションとファンタジーの産物だと断言する。いわゆる「正しい歴史認識」は逆に読めば正しい。それが奴隷になりたくない人だけに薦めたい、じつに簡単な「歴史の真実」を知る秘訣だ。

中韓のいわゆる「正しい歴史認識」とは、正しくないだけでなく、歴史ですらない。とにかく世界史としての全体像がない。日中韓の関係史のみに限定し、歴史空間の広さと時間のスパンが不足している。戦前だけでなく戦後の中韓の内戦史も侵略史も隠蔽した。つまみ食い史観とあてこすり史観しかない。

戦後70年をターゲットに、中韓はいわゆる「正しい歴史認識」を日本に強要してきた。日本を貶めるのと金が目的なのは明白だった。日本の政治家はそれに対抗できない。筆者から見る中韓の歴史認識は、戦後史も戦前史も糾すべきところが多々あるので、今後は政治家ではなく、学者同士が論争すべきだという。

「中韓による日本への歴史戦を熱烈に歓迎すべきだ。(略)中韓両国は反日をしないと生き残れない哀れな国だから、思いやりあふれる国日本は、中韓の生存権を庇護するために『反日大歓迎』を勧めるべきだろう。これは決してパラドックスではない。思いやりの心から出てくる真誠だ」とはキツい。

大東亜戦争について、アメリカと中韓の歴史観とは真逆なのが、東南アジアの国々である。アジア諸民族から大東亜戦争を見れば、それは黄色人種対白人の戦争、独立解放を目指す植民地解放戦争だった。ただ一国、西洋植民地主義者と手を組み、アジア解放阻止に動いたのが蒋介石の中国だった。

政治目的しかない歴史は真の歴史ではない。実証主義の歴史学からすれば、検証する価値さえない。だから中韓との歴史戦争を日本は「熱烈歓迎」すべきだというのが黄文雄の持論だ。日本の国家・文化・文明を愛する日本人として、誇りを取り戻す好機になる。「ニコニコ超会議」あたりで公開日米韓中歴史戦をやってもらいたい。真の歴史ほど強いものはない。日本の圧勝だ。 (柴田)

黄文雄「米中韓が仕掛ける『歴史戦』世界史へ貢献した日本を見よ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4828418164/dgcrcom-22/


●ダイエット続き。7kg増に気づいたのは今月に入ってから。大阪マラソンに当選し、ウォーキングをはじめた。

どうせなら体重変化を記録しよう、モチベーション上がるかもと体組成計(体重計)を引っ張り出してきた。量ってはじめて、問題意識が生まれたってことなのだ。

月83gと書いたが、それは7年の平均の話であって、2年前からだと5kgは太っている。15年前からだと10kg以上となる。人に太ったんじゃない? と言われても、せいぜい1kgぐらいだと思っていた。

ちょっと太ったなぁと口にすることはあっても、さほど気にはなっていなかった。すぐに戻ると思っていた。自分の昔の顔なんて忘れていて、毎日急に太るわけじゃないから、差がわからないのよ。

脱線するが、インスタが流行って、若い女の子らは自撮りしてるから、変化に敏感なんだろうなぁ。7kgも太る前に対処しているよねぇ。私も自撮りしておけば良かったか……うーん。続く。 (hammer.mule)

いまだに『ポケモンGO』をやってる人にありがちなこと55連発
http://rocketnews24.com/2017/05/22/900993/