もじもじトーク[62]マツコの知らない世界でフォントやってたよ
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

僕は、比較的テレビが好きです。でも、ここ数年、テレビを見てるというよりも、BGM的にテレビの音を流していて、目と脳はMacBookかiPhoneに向けられていることが多いです。

好きな番組は、マツコの知らない世界、タモリ倶楽部、宇宙関連の番組です。あっ、名探偵コナンも好きです。あと、西村京太郎サスペンス・十津川警部シリーズのような二時間ドラマもいいですね。

渡瀬恒彦さんがなくなったと聞いたときはとても残念でした。「タクシードライバーの推理日誌」の渡瀬さんは大好きでした。

さて、今回のテーマは、マツコの知らない世界「フォントの世界」です。





●最近、フォントの話題が多いと思いませんか?

昨年ぐらいから、テレビや雑誌、そして、オンラインメディアで「フォント特集」が増えているような気がします。

そんな中、5月9日(火)の「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)で「フォントの世界」を放送してました。

みなさん、ご覧になりましたか? マツコの知らない世界は、好きな番組だったのでフォント特集すると聞いたとき、うれしくなっちゃいました。

Facebookで「マツコの知らない世界でフォントやるよ」って拡散したら、すぐに200人ぐらいから「いいね!」もらいました。

「関口さんも出るんですか?」という激しいツッコミもいただきました。そんな訳ありません……(笑)

最近、「フォントはよく知らないけど、なんか楽しそう」「書体が変わるとイメージが変わるね」「身近な存在だけど、フォントの話あまり聞いたことないのでもっと聞きたい」という声をよく耳にします。

●絶対フォント感を持つ数学教師

番組を見逃した方のために、どんな内容だったか、ダイジェストを。

ゲストは、「絶対フォント感」の持ち主である数学教師の須藤雄生さんという方でした。

ちなみに「絶対フォント感」とは、文字を見ただけでフォント名がわかってしまうということのようです。須藤さんは3,000種類のフォントを見分けられるらしいです。変態ですね……(褒めてます!)

須藤さんは、街中を歩くと、こんな感じでフォント情報が脳に飛び込んでくるらしいです。
https://goo.gl/QlDHkS


特徴のある100種類ぐらいのフォントは、僕も見分けられそうですが、何十種類もの似たような明朝体を見分けるのは至難の業です。まだまだ修行がたりません。

「絶対フォント感」という言葉、昨年からよく使われるようになりました。でも、僕は「相対フォント感」のほうが好きです。「相対フォント感」は僕が勝手に作った言葉ですけど……。

「このフォントのほうがゆる可愛い」「こっちのほうが艶っぽいけど品がある」「これはアンティーク感があるフォントだな」というような感覚を、もっと身に付けたいと思っています。

そうすることで、「この高級車の広告にはこの書体を使おう」とか「大和朝廷博物展のポスターはこの書体を使おう」というように、書体選択の感性を磨いていきたいのです。

●フォントひとつでイメージが激変

このフリップをご覧ください。
https://goo.gl/kku1TW


フリップの一行目は、〈もじもじトーク〉で何度も紹介している「くろかね」です。このフォントで表現すると可愛らしいイメージになりますよね。バズドラで使われているフォントです。

「マツコの知らない世界」の画面に出てくるフォントの約8割は、「くろかね」が使用されています。

そして、二行目のフォントは極太明朝です。緊迫した感じになりますね。「緊迫した感じ」と表現したのはマツコなんです。以前、雑誌の編集をしたことがあるらしく、フォントにかなり詳しい感じでした。

次に、チョコレートのパッケージの新旧比較の話がありました。
https://goo.gl/qejWrn


チョコレートのパッケージに使われるフォントを変更したことで、売上が43倍になったというお話でした。

フォントの変更だけでなく、パッケージデザインの変更や広告施策とかの要素も加わっての結果だと思いますが、フォントが果たす役割は大きいと思います。

●マツコの手書き数字は、はつひやまとに似てる!

マツコが手書きした数字をご覧ください。
https://goo.gl/u373NG


この数字を見た時、僕も「はつひやまと」というフォントの雰囲気があるなぁと感じました。

このフォントは20年前に、書体デザイナー今田欣一さんが制作しました。今田さんが、当時、フォントワークスのマティスに合わせて、かな書体三種類を開発したとお聞きしました。

ちょうど先週、今田さんのブログ「欣喜堂通信」で当時の話が詳しく掲載されてましたので、ご紹介します。
http://yaplog.jp/kinkido/archive/112


●「そ」と「3」が気になる

須藤さんは、ひらがなの「そ」と数字の「3」が小さい頃から気になっていたそうです。

「そ」はざっくりいうと三種類あります。そして「3」は開き具合の違いで何種類も存在します。

今日は「3」が気になって、駅周辺で見かけた「3」を何枚か撮影しました。
https://goo.gl/zlbikm


●写植文字や国鉄フォント

最後に、絶滅危惧種フォントの中から、須藤さんの好きな書体ベスト3の紹介がありました。
https://goo.gl/8dSyHc


1位 スミ丸ゴシック(国鉄時代の駅フォント)
2位 石井太ゴシック(東急バスの古い停留所文字)
3位 本欄明朝(究極の透明感)

フォント好きな人にとっては、「そうそう、この3書体は味わいがあっていいよね〜」って反応をしたと思います。僕も「スミ丸ゴシック」が大好きです。ちなみに、マツコはこれら全部、知ってました。すごい。

番組では紹介されていませんでしたが、鉄道文字の素敵なサイトがあるので紹介します。このサイト、僕、大好きです。

駅の看板、案内板(サインシステム)、電車の方向幕など、素敵な文字が満載なんです。特に、1980年代までに制作されたフォントは秀逸です。

もじ急行
http://mojikyu.com/


今回、全国ネットのテレビのゴールデンタイムで「フォント特集」を放送するという、文字っ子にとって、うれしい出来事でした。

15分という限られた時間の中で、フォント初心者も楽しめて、フォントマニアも満足できる内容だったのではないでしょうか。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。