もじもじトーク[66]フォントの神様/関口浩之

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

昨日は台風一過で暑かったですね。そんな中、自分が主催する「活字に関するセミナー」を開催しました。

FONTPLUS DAYセミナー Vol.9
[typeKIDS─活字は踊る]今田欣一さんをお招きして
https://goo.gl/yPEUmK

ということで、昨晩開催したセミナーレポートを書こうと思ったのですが、情報を整理するのに時間がかかりそうなので、次回のもじもじトークでご紹介したいと思います。じゃあ、今日のもじもじトークは…?

今日のお題は「フォントの神様」にします。





●鳥海修さんのセミナーに参加

先月6月14日(水)に神楽坂で、書体設計士の鳥海修さんのセミナーに参加しました。

神楽坂ブック倶楽部presents

鳥海修「書体で世界はがらりと変わる! 〜あなたは、どんな書体で読んでい
ますか〜」
https://goo.gl/vyC2ft

鳥海さんと言えば、書体設計をしている日本人の中で最も有名な方の一人です。

今回のトークショーの冒頭で、司会者からプロフィール紹介があったのですが、その内容がとても素敵だったので紹介しますね。

「スティーブ・ジョブズから『フォントの神様』と言われた鳥海さんです。そして、鳥海さんは、空気のような水のような書体を追求し続けています」

スティーブ・ジョブズが、カリグラフィーを勉強していたことは有名なお話ですよね。大学を中退した後も、ジョブズは大学に居続け、興味を持っていたカリグラフィーの授業を受けていたようです。

ですので、2000年に、アップル社CEOであったスティーブ・ジョブズが「空気のような水のような書体」を見て、感銘を受けたことは想像できますね。

●フォントの神様が設計した書体とは?

デジクリ読者の中で、iPhoneやiPadを持っている方、またはMacのパソコンを持っている方、少なくはないですよね。

アップル製品に日本語書体が搭載されているのですが(実際は、OSにフォントがバンドルされている)、そのほとんどの日本語書体は鳥海さんが設計した書体なのです。

鳥海さんが手掛けた代表的な書体は「ヒラギノ角ゴシック」「ヒラギノ明朝」「游ゴシック体」「游明朝体」が有名ですよね。それら書体は、2000年からのMac OSに搭載されているのです。

そういえば、Windowsパソコンにも、最新OSには「游ゴシック体」「游明朝体」がバンドルされているので、多くの方が鳥海さんの書体を日々、目にしているのです。

『文字の食卓』の著書である正木香子さんが書かれた鳥海さんの対談記事、僕、好きなのでご紹介します。
https://goo.gl/hpLp2v

●書体の適材適所

そのセミナーの中で、「書体の適材適所」をテーマとして、さまざまな書体を
非常に分りやすく解説していただきました。自分なりに咀嚼してご紹介します。

みなさん、「江戸文字」ってご存知ですか? 江戸時代に盛んに使用された文字の総称ですが、いくつかに分類されます。

・寄席文字

橘流とも言います。橘右近さんが橘流寄席文字家元として有名です。お弟子さんに左近さんなどがいます。テレビでも見かける「笑点」の文字、寄席文字の代表作と言えます。

そして、橘流の書体は「フォント化してはいけない」というルールがあるようです。寄席文字は、人から人へと継承され続ける書体なのです。

・勘亭流(歌舞伎文字)

歌舞伎の看板などで使用される書体です。歌舞伎の会場毎に書く人が異なるようです。

・相撲字

大相撲の番付表で使われる書体です。下位の力士になると、だんだん文字が小さくなるやつです。

実は、僕、歌舞伎と寄席と相撲の文字は、同じような形をした同一の書体だと思っていました。今回の講義で江戸文字のさまざまな書体見本をみて「あれっ、ぜんぜん違うじゃん」と気付きました。

江戸文字以外で、鳥海さんから解説があった書体の中で、記憶に残っている書体を書き出してみました。メモを頼りに話を思い出して書いているので、解釈が間違っていたらごめんなさい。

・新聞書体

一般的に10:9ぐらいの比率で平体かかっています。つまり、少し平べったい書体なのです。昔の新聞は1段15文字だったけど、最近の新聞では1段11文字になっているようです。

新聞を購読している人、すごく少なくなりましたね。僕も最近、新聞購読してないです。

・横太明朝体

明朝体は、本来、横線が細いのですが、テレビの解像度が低かった頃、横線が飛ばないように、横太明朝体が流行りました。

・ビットマップフォント

パソコンの解像度が低かった頃、アウトラインフォントではなく、ビットマップフォントが流行りました。

・教科書体

小学生の教科書で使われている文字で、書き順がわかりやすいように、文字が設計されています。そして、数字とアルフォベットは丸っこい形をしています。小学生にとって、書きやすいような字形になっているようです。

「も」の書き順ですが、みなさん、横の二本を先に書きますか? それとも、「し」の部分を先に書きますか? 正しい書き順は「し」が先です。書き順を間違って横から書くと、すぐにバレるそうです。

なぜなら、筆の流れがまったく違うので、筆跡が分かってしまうのです。恥ずかしい話ですが、僕は、横二本を先に書いていました。

・明朝体

長文を読むための書体と言ってよいでしょう。縦書きで書かれている文庫本の文字がゴシック体だったら、長い時間読むと疲れると思います。

スマホばかり見ていて、本を読まない人がいたら、ゴシック体に慣れ親しんでしまい。明朝体はあまり目にしない世代が出てきる可能性もありますね……。


かなり、ざっくりとしたご紹介でしたが、文字が使用されるハードウェア解像度に依存する適材適所もあれば、人間の脳が判断する適材適所もあり、また、情感に訴える適所適所もあるんだなぁ〜と思いました。

鳥海さんの最新の著書「文字を作る仕事」が、第65回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しました。おめでとうございます。
https://goo.gl/G9GFBS

セミナー会場で、なぜか、三冊目となる「文字を作る仕事」を購入して、鳥海さんのサインをいただきました。家宝にしたいと思います。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。