3Dプリンター奮闘記[99]仕事は3Dプリンター、ワンフェスは手作り
── 織田隆治 ──

投稿:  著者:



もう7月半ば。そろそろ蝉の声も五月蝿くなってきましたねぇ。。。

7月と言えば、僕たち造形をやっている輩にとっては、大きなイベントがあります。それは、「ワンダーフェスティバル」。

年に二回、夏と冬に開催されるんですが、フィギュアやホビーのお祭りで、自分で作った「ガレージキット」と言われる、レジンキャストで複製されたキットを販売するイベントです。

これが、もうお祭りでありまして、僕もここ十年くらいずっとディーラーとして参加しています。

ここ数年で、原型を制作するのに3Dモデリングを行い、それを3Dプリンターで造形している物がかなり増えてきました。

3Dモデリングするためのモデリングソフトや、造形するための3Dプリンターの展示も、ここ三〜四年でかなりの盛り上がりを見せています。





こういったホビーの分野では、かなりの普及率になってきたように思います。

3Dプリンターもこの二年くらいで、驚くほどの進化を遂げており、造形レベルも格段に上がっていて、前までは一部の3Dプリントサービスを使っていた人達も、ある程度は自宅等で3Dプリンターを導入し、プリント(造形)が出来るようになってきました。これって、すごいことだなぁと思います。

僕が3Dプリンターを導入した時期から考えると、本当にレベルが上がってきました。FDMプリンター(熱融解式)も光造形のプリンターも、どちらもある程度緻密に造形できるものが、個人でも手に届くものになってきましたし、今後はもっと普及して行くんじゃないでしょうかね。

FDMプリンターと光造形の3Dプリンターを比べて見ると、FDMプリンターの造形レベルは、光造形の3Dプリンターにかなり近づいてきています。

素材についても、色々な企業が開発をしており、こちらもかなり良いものが出て来ました。

以前は、FDMで使われているPLA素材(ポリ乳酸)の樹脂は、凄く固くて後の整形がかなり困難で敬遠されていましたが、最近ではABSに近い特性を持ったPLAも出て来ています。

ABSというのは、家電や僕たちがよく用いるプラスチック製の製品にはよく使われている、強度とある程度の「しなり」を持った素材で、加工性も高いのですが、3Dプリンターで出力する時、熱収縮等の影響で、テーブルの温度や庫内の温度管理等をかなり気を使って行う必要があります。

物質は熱を加えると体積が増え、冷えると収縮します。このため、造形物をテーブルに固定している部分が冷えると収縮し、底面の大きいものになると、その収縮によりテーブルから造形物が剥がれてきてしまう現象が起きます。

これを予防するために、テーブルの温度を一定の温度に保ったり、3Dプリンターの庫内の温度を上げておく必要が生まれて来ます。

この熱による膨張や収縮が、PLAに比べてABSの方が大きく、ある程度大きなものを出力するには、ABSよりPLAの方が向いているということですね。

しかし、PLAにも弱点があり、造形後の素材が固く、融点が低いために熱による変形が起こり易い、湿気に弱く、素材のフィラメントが折れ易い等といったことから、PLAを敬遠するユーザーも少なくはありません。

FDMプリンターで使われる素材は、基本的にフィラメントといわれる線状の樹脂を、リールに巻いた状態で使うのですが、現在は1.75mmΦのものが主流。

素材が細いため、PLAは長期間使用しないで放置しておくと、温度や湿度による劣化がABSに対して大きく、造形途中でフィラメントが折れてしまって、3Dプリンターに供給されない状態になることが多く見られました。

それと、曲げに弱く、すぐに折れてしまいます。リールに巻かれている最後の方は、かなりきつく曲がっているので、それを伸ばした時に折れてしまいます。

それに対して、ABSはある程度の粘りがあり、曲げに強く、湿度による影響も少ないことで、やはりユーザーはABSを選びたい気持ちが強いんですね。

ABS素材に関しても、色々と開発が進んでおり、熱による変形を少なくし、テーブルから剥がれる現象を抑えたものも出て来ています。

3Dプリンターの進化に伴い、素材の進化もここ数年はかなり進歩していて、これからどんどん良い環境で、効率良くプリント出来るようになってくると思います。

一方、光造形のプリンターに関しても、このテーブルから剥がれてしまい、造形が失敗することが多くみられます。

インクジェット式を除く光造形式のプリンターは、テーブルからつり下げる方法を取っています。これは、素材が液体ということもあり積み上げて行くことが困難だからですね。

テーブルに固定している一層目の造形がうまく行かないと、出来上がったと思って見てみると、上がってきたテーブルには何も付いておらず、素材が溜まったプールが大変なことになっていた、なんてことが多々あります。

光造形のプリンターでは、造形ミスの中ではこの失敗が著しく多いのです。

先ほどのFDMプリンターでも同じなのですが、基本的に造形を成功させるカギは、「造形テーブルに、一層目がどれだけ定着しているか?」ということに尽きるでしょう。

ここさえうまく行く方法が定着すれば、3Dプリンターの利便性がかなり上がり、さらに普及していくんじゃないかなぁ……なんて思います。

最近では、色々と工夫された3Dプリンターや素材が増えてきて、こういった開発が多くのメーカーが行なわれています。

ホビーで使用する人は、元々物作りが好きな方なので、そういったトラブルにも比較的対応可能なんですが、一般に普及するには、そういったところの改善が必須なんでしょうね。

さて、冒頭に述べた「ワンフェス」ですが、僕もそろそ尻に火が付いてきていて、目の前にある原型をいい加減仕上げてしまわないと……。

ところで、僕の場合ですが、仕事で3Dプリンターを使うことが多く、すべて手作りも減ってきました。本当に便利になりましたね。

ワンフェス等の趣味の造形に関しては、基本的に手作りをモットーにしていて、ほとんど3Dプリンターを使うことはありません。やっぱり手作業が好きなんですよねぇ。

これ、かなり重要なことなんですが、造形をする場合、手作りの触感で立体を把握できるのです。まあ、技術の進歩により、始めからデジタルのみで手作業なんてやった事ない! って人も今後増えて行くんだろうなぁ。

凄いぜ未来。AR技術も進んでいて、触感を持ちながら、バーチャルでモデリングするような技術も出て来ていますし。

これ、やっぱり「触感」が大事、って事をみんな感じているんでしょうかね?まあ、この「触感」とか、五感をいかにバーチャルで表現するか、ってのがARの目指すところなんでしょうけど。

さて、そろそろ原型を進めないとエラいことになりますので、本日はこのあたりで……。


【___FULL_DIMENSIONS_STUDIO_____ 織田隆治】
oda@f-d-studio.jp
http://www.f-d-studio.jp