羽化の作法[43]いちまいいちまいがポスター
── 武 盾一郎 ──

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『羽化の作法・42』の冒頭で「1996月10月19日〜1997年1月4日までの間の制作ノートはない。」と書いたが、間違いでした。
https://bn.dgcr.com/archives/20170704110200.html

http://take-junichiro.blogspot.jp/2017/07/42.html


1996年11月13日〜1997年1月3日の制作日記No.7が見つかりました。

制作ノートの入ったリュックが盗まれた事実は変わらないのですが、空白期間は1996年10月19日〜11月13日の一か月弱だったのです。今回はもう一度時間を巻き戻して書いて行きます。




○制作ノートNo.7・11月13日(水)
イチコ ヤマネん家に泊まる
復活7軒目

と記してある。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1640476129330601



制作ノートに記してある段ボールハウス絵画がこれである。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1640430086001872



ラブホテル壁画制作で使っていた水性ペンキと、ネオカラーで描いている。

○制作ノートNo.7・11月14日(木)
イチコ新宿・カバン盗られる。制作ノートが入っていたのだ。

制作ノートの入ったリュックが盗まれたことも制作ノートに記してあった。


●ベルクの新メニューのポスターを制作する

前回「羽化の作法42」では、97年1月4日の制作ノートNo.8の「徹夜して始発でBERG」から始まり、唐突にベルクが出てきたが、制作ノートNo.7にその経緯が記してあった。

○制作ノートNo.7・11月23日(土)
ベルクポスター制作開始!!
無×一色曼荼羅開始
イチコに今日から宿題。一日5枚以上絵を描く

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1640548772656670



ベルクの新メニューの、ポスター制作をすることになったのである。新商品は前回書いたが今や定番となっている『ジャーマン・セット』。「ジャーマンセット ベルク」で検索すると様々な人のブログで紹介されいる。
http://blog.livedoor.jp/turkey_777/archives/1636747.html

http://crispy-life.com/food/berg1607/


当時はこの定番メニューがなかった。今、当たり前にあるメニューがまだない時に、それが産声を上げる機会に関わるという貴重な体験をしたのだ。

制作ノートには「ドイツっぽいの」と書いてある。ベルクは「お腹いっぱいランチ」を提供するお店ではない。小腹が空いた時に食べられて、しかもゴリっと硬派なドイツの味のメニューを出してみよう、ということらしい。

パンは石窯で焼いたパン、肉パテなど食肉加工品は東金屋オリジナル、ザワークラウトは無添加などなど、すべてにこだわっている。

この日の制作ノートには、タケヲと僕がベルクで店長の井野朋也さん、副店長の迫川尚子さんと、ポスターの話をしている一コマが描いてある。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1641108142600733



12月8日〜97年1月31日の期間限定で一日15セットを目標に販売して、うまくいったら定番メニューにしよう、ということだ。

ベルクは以前にスズキコージさんにポスターを描いてもらったことがあり、現在エスプレッソはベルクの定番になっている、とスズキコージさんのポスターをベルクで見せてもらった。
http://berg.s1.bindsite.jp/sako2/_src/sc1487/img022

当然、僕たちはメニューのポスターの仕事をしたことがなかったが、スズキコージさんの仕事を僕らも出来ると思うと興奮した。

●張り切り過ぎて体調を壊す

日本で普通に売っているソーセージは、でんぷんで増量してあるそうだ。これはただ単にコストの問題ではなく、日本人には本場ドイツのソーセージは「重い」らしく、でんぷんで薄めてる方が食べやすいらしい。

そこに、本場ドイツで修行して来た東金屋さんのオリジナル食肉加工品を贅沢に乗せて提供しよう、というのが「ジャーマンセット」である。

こだわって良い商品を作ったからって売れるとは限らない。こだわりの新メニューはバクチを打つ感じの緊迫感があった。

僕自身、命を賭けて頑張っても評価されない事実を身を以て知っていたので、こだわって作ったものは売れて欲しい。自分たちへの希望とも重ね合わせて、僕は張り切るのだった。

大枠のイメージが26日(火)の制作ノートに記してある。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1641162852595262



「いちまいいちまいがポスター」と書いてある。

小さな一枚一枚がポスターとしてあって、それらの集合体がまたひとつのポスターになっているというイメージである。それはジャーマンセットに合わせたイメージというよりも、僕たちが制作して来た体験を映したものだ。

段ボールハウス一軒一軒には、それぞれの絵が描いてある。ひとつひとつはそれで完成品だ。そして新宿西口地下道に広がる、ダンボール村全体でも「ひとつの作品」なのだ。

作品が永遠に入れ子になっているようなイメージ。それはフラクタルであり、曼荼羅のようでもあった。段ボールハウス絵画制作を通して、自分たちはそのようなイメージを体験的に蓄えていたのだった。それは今の線譜にも引き継がれている。

それをベルクの「ジャーマンセット」のポスターに適用するには、どうしたらいいのか? 初めてのポスター制作なので、僕らはウンウンと悩んでいたようである。

そんな僕らに対して、迫川尚子さんは11月27日(水)、そして11月30日(土)と打合せを重ねてくれた。

そして僕は不眠不休で張り切っては体調を崩し、そんな過剰な日常に、どこかナルシスティックな充実感を感じていたのである。

○制作ノートNo.7 1996年12月4日(水)より
イチコ、過労で体の具合が壊れてる

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1641193409258873


(つづく)


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