腕時計百科事典[42]腕時計のメンテナンス(精度不良の修理)
── 吉田貴之 ──

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今でこそ時計が遅れたり進んだりということは少なくなりましたが、時計の発明からクォーツ時計が普及するまでの長きにわたり、精度を追求することと維持することが、時計職人達の担う使命であり仕事の根をなすものでした。

腕時計の時間が遅れたり進んだりする場合の、原因と修理方法です。





●動作が原因

・腕につけると時計が遅れる

通常、自動巻の腕時計は腕につけている限り動き続けます。ただ、現代のライフスタイルでは、腕の運動量が機械式時計全盛期当時の想定よりも少ないため、自動巻機構によるゼンマイの巻き上げが十分に行われないことがあります。

この場合、時計は遅れたり止まったりすることがあります。身につけている時の運動量が十分にあり、竜頭を手巻きして補助すると問題なく動作する場合は、自動巻機構の故障が原因かもしれません。

・腕につけると時計が止まる

機械式時計で、机の上などに置いていると問題なく動作しているにもかかわらず、身につけたり傾けると運針が止まってしまう場合があります。

このような時は、テンプの軸が折れている可能性があります。古い腕時計ではテンプの軸が弱っていることが多く、衝撃などで破損しやすい個所でもあるので、早めに修理店などに相談したほうがよいでしょう。

●帯磁が原因

・機械式時計の帯磁

機械式時計は潤滑油の劣化や汚れの蓄積などで、徐々に精度が悪くなりますが、昨日までは正常に動いていたにもかかわらず、今日になって極端な進みや遅れが生じた、というような場合、腕時計が磁気を帯びた可能性があります。

・クオーツ式時計の帯磁

アナログクオーツ式時計はステップモーターが内蔵されているため、強い磁界では針が進んだり、止まったりします。

多くはその環境から離れると元に戻りますが、まれに機械が磁化してしまい、正常に動作しないこともあるようです。

●帯磁の原因となりやすいもの

・身の回りの道具

携帯電話、電話機、ドライヤー、電気シェーバー、電磁調理器具、鞄の口金 など

・電化製品

スピーカー、電話機、電子レンジ、ブラウン管テレビ、電気毛布、電磁調理器具 など

・健康器具

磁気ネックレス、シール型磁気治療器 など

●その他

磁石、電動マージャン台、モーター など

単純に磁石が内蔵されているものだけでなく、強い電流が流れるものなども帯磁の原因になり得ます。特に古い機械式時計は、これらから避けることを意識して利用することが大切です。

●帯磁の確認と修理

磁気を帯びてしまった腕時計の確認には、その腕時計に「方位磁石」を近づけます。磁化している場合、ゆっくりと方位磁針の針が動きます。また、分解した際に、磁化した小さな部品がピンセットにくっつく症状も見られます。

これを回復するには「脱磁器」を使用して全体を脱磁するか、分解して各部品の磁気を除去します。いずれも、設備の整った修理店であれば対応してくれるでしょう。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。