羽化の作法[45]入院で三つの初体験/武 盾一郎

投稿:  著者:  読了時間:8分(本文:約3,600文字)



1997年2月28日、東京ジャーナルの授賞パーティが終わり、翌3月1日に38度の熱が出たので安静にしていた。

次の日、3月2日の朝に熱を計ってみると37度台になったので、もう大丈夫だろうと思って、出展中のアンデパンダン展に出かけ、懇談会にも出席した。

その後、高田馬場の親父の事務所に寄って頼まれていた仕事の台本を渡し、自宅の上尾に戻るというそこそこ忙しい一日を過ごせた。

このまま治るだろうと思っていたら、翌3月3日、再び熱が38度以上に上がっているので横になる。

熱は下がらず、二日後の3月5日には熱が40度を超え「これはなんかおかしい」と思って近所の町医者へ行く。「水分を良く摂ってしっかり寝てれば熱は下がりますよ」と言われ、少し安心して家に戻り横になる。

実際に38度台になったので、このまま我慢して寝てれば回復するかなと思って安静にする。ところが3月8日の朝、また40度を超えてしまう。フラフラで立つこともままならない。

「これは本格的になんかおかしい」と、再度近所の医者に行こうとするが、歩いて10分ほどの町医者まで自力で歩ける気がしない。タクシーを呼んでなんとか町医者にたどり着くと、診断で別の病院に入院することになった。




●普通の人間として普通に大切に扱ってくれる現実

制作ノートによると、入院先は高崎線の宮原駅の近くにある「大宮メディカルセンター」と書いてあるが、今調べてみるとメディカルセンターというのは宮原駅の近所にはなく、宇都宮線の土呂駅の近くに「彩の国東大宮メディカルセンター」という病院がある。どこに入院したのか、確定は出来なかった。

入院先の病院に着くと車椅子に乗せてもらい、病院の職員さんに押されて3階の608号室に入った。

車椅子に乗るのは生まれて初めてだった。なんだか恥ずかしいような、申し訳ないような気分だった。と同時に「本当に自分は病人なんだなあ」という諦めにも似た気持ちが湧いてきた。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1692596240785256:0


そして、自分が大切に扱われてる、優しくされている、という安堵感を抱き、それがとても自分では驚きだった。僕は今までずっとこういう公共のもの、学校とか路上とか病院とか社会とか、は自分を疎外するためにあると感じ続けてきたからだった。

世の中が、自分を普通の人間として普通に大切に扱ってくれる現実が存在する、という実感を抱くことができたのだ。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1692600404118173:0


病院のベッドに横たわりながら、あれこれと検査を受ける。寒気がするので布団を二枚に増やしてもらう。頭は熱いが体が寒いのである。

昼食はキウイだけをかろうじて食す。看護師さんが来て熱を計り、40度を超えているのを見ると氷枕を持ってきてくれた。点滴でいろんなのを注入して、薬も飲み、首に氷帯も巻いて少し落ち着いてきた。

夜中は体が冷たく感じるので、バスタオルをお腹に抱えてなんとか眠る。一夜明けて熱を計ると、34.3度だった。生まれて初めて34度台を体験したのだった。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1692615957449951:0


驚くような低体温だったが具合は良かった。朝食も全部食べることができた。

入院先で「車椅子」と「34度台の体温」を初体験することになったのだが、ここにもう一つ初体験が加わる。それは「ウォシュレット」である。これがまたとても良い。

「いつかはウォシュレットのトイレで暮らしたい」と夢を見るのだった。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1692628404115373:0


ちなみに20年経った今年の8月、自宅のトイレをウォシュレットにした。当時は綺麗な施設に設置してあるだけで、自分ん家のトイレをウォシュレットにするなんて夢のまた夢のように感じていた。
http://take-junichiro.blogspot.jp/2017/08/blog-post.html

3月10日のノートより

「僕はしかしながら入院するまでのここ最近「近いうちに入院するハメになりそうだ」と予感していた。それは何かを大きく変えて行かねばならないきっかけとなるかも知れない。それによって僕はまた新たな、確かな一歩を踏み出せるのかも知れないと。行き詰まりを感じてたのかも知れない。」

3月15日に無事に退院できた。

病院の先生からは「単核球菌」の病気と聞いたのだが、今調べてみると「キス病」というのがヒットしてくる。

「キス病」だとは言われなかったが、症状は二週間〜一か月ほど38〜40度の熱を出すとのことなので、これが当てはまる。抗生物質は効かず自力で直す病気のようだ。

「キスによる感染が多いので一般に「キス病」と呼ばれています。日本では2〜3歳までに70%が感染し、20歳代では90%以上が抗体を持っています。小児期の感染では、症状がほとんど出ずに抗体ができますが、思春期以降の感染では、50%が発病します。しかしほとんどが、感染後数週間で自然に治ります。」
http://www.kawasaki-m.ac.jp/jc/kansen/11.html

二十代後半になってやっと「キス病」に感染した、と言うことらしい。しかし、いったい誰が感染源なのだろう?

●1997年3月21日(金)

96年1月24日のホームレス強制撤去の際に抵抗し、「生卵を警官にぶつけたとして」逮捕されていた活動家の笠井さんが一審で「無罪」になっていた。

この日、新宿西口地下道の段ボール村にに行くとちょうど笠井さんが、段ボールハウスの前にしゃがんで丼飯を食べているのを見かけたので話しかけた。

「笠井さん無罪おめでとうございます」
「いやー、でもねえ控訴されましてまた裁判なんだよ」
笑いながら答えてくれた。

捕まっていた活動家が「無罪」となったニュースを聞いた時に描いた、段ボールハウス作品があった。一部だけだけど写真があった。

https://www.facebook.com/junichiro.take/posts/1692688600776020:0


そして、その日、新宿ベルクの店長井野さん、副店長の迫川さんにも会った。帰りに浦和の彩光舎に寄って、100号のキャンバスを注文するのだった。(つづく)


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