ネタを訪ねて三万歩[150]私の嫌いなカタカナ表記
── 海津ヨシノリ ──

投稿:  著者:



ツラツラと続けてきたこの連載も、ついに150回目になりました。10年以上続けているわけですから、それは本人もかなり驚いています。

更にこの連載以前にもテキストをアップしていましたので、本当に私のバックアップHDDを調べないと、いつから原稿を書いたのかよくわからない状態です。

 デジクリのサイトに海津さんの記事一覧があります(編集部)
 https://bn.dgcr.com/archives/海津ヨシノリ/


ところで、今年は毎日続けている画像アップも5,600を越えました。Blog全体も9,000を越えています。ただし、諸般の事情で一部の書き込みは削除してしまいましたので、現在は8,900ほどです。

Facebookのタイムラインも4,000を越えました。数が多ければよいわけではありませんが、これからもマイペースでダラダラと続けていきたいと思っています。大丈夫かな〜。

実は、Blogはスパムやストーカーもどきなど色々あって、コメントをオフにしてしまいました。そのためリアクションは不明ですが、Facebookでは海外の方も含めて多くのリアクションを頂き、毎日とても新鮮な刺激を受けているので、まだ当分は暴走が続きそうです。





●イラレ、フォトショ、インデ、パワポなんて言うな

さて、毎度のことながら、一部の大学では秋学期が始まり、しばらくはリズムに乗るまでの助走期間で一苦労といったところです。まっ、リズムに乗った頃が学期末という定番のオチですけれど。とにかく体調に注意して、風邪など引かないようにすることが大切ですね。

ところで、最近は前期・後期ではなく、春学期・秋学期という言い方が増えてきました。私自身は前期・後期という表現が染み付いているので、学生に話すときに時々混乱してしまいます。

もちろんそれは苦笑いするレベルでいいのですが、中には春セメスタ・秋セメスタと英語表記するところもあって、妙な違和感があります。

セメスタは2学期制の学期を意味する英語の "semester" ですが、春学期・秋学期でいいと思いません? もし3学期制だったら、3学期制の学期を意味する英語は "term" ですから、春ターム・秋タームでしょうか。

それとも米語の "trimester" で春トリメスタ・秋トリメスタ? やっぱり変です。

そして、そんな春セメスタ・秋セメスタを「春セメ(はるせめ)」「秋セメ(あきせめ)」と省略する先生が多くて、最初に聞いた時は「春雨」「空き巣」と聞こえてしまいました。

これってイラストレーターを「イラレ」、フォトショップを「フォトショ」、インデザインを「インデ」というのに似ていますね。ポワーポイントの「パワポ」もありますね。

私はぜったいにこの表現は使わないようにしていますし、学生にも注意していますが、流行なんですかね〜。とにかく、この4つぐらいしか妙な省略語は聞いたことがありません。

それと、昔から気になっていたシラバス "syllabus" というのも少し変ですよね。講義要綱または履修要綱でいいような気もします。

漢字を使うと、正確な表記ではなくても大凡の意味は相手に通じます。安易にカタカナ語を氾濫させると、日本語そのものが劣化し始めているような気がします。

たとえば、アジェンダやコミットもワカランチンですね。辞書で調べて日本語に戻した方が遙かに意味が通じます。【アジェンダ "agenda" 予定表、行動計画、協議事項】【コミット "commit" 委託する、約束する、身をゆだねる、任せる】いやいや、それって私が歳取ったせいでしょうか? だとしたら言葉がないです。

でも、冷静に考えれば、我々はやたらとカタカナを使う走りだったわけです。コンピュータをデザインワークに使い始めた世代としては、カタカナのオンパレードでした。

そんな時代の面白いネタとしては、かつてシーボルト・ジャパンの会場でバート・モンロイさんに初めてお会いした時のこと。同時通訳の方に掴まり、専門用語の説明を求められたのですが、カタカナ表記で大丈夫ですよと説明したら驚いていたことを思い出しました。

今でこそファイルの "save" "load" は「保存」「読み込み」という日本語になりましたが、初期の日本語メニューは「セーブ」「ロード」が当たり前のように大きな顔をしていました。

実はその当時、あるソフトの日本語メニュー化のプロジェクトにも関わっていたのですが、製品版ではスペースの関係で半角カタカナ表記になっていたことに唖然としたことを思い出しました。

カタカナ表記だと、微妙な言い回しのミスが解りにくくなると感じるのは、私の語学力のなさでしょうか。そういえば昔、ある仕事でドイツ語の文章をレイアウトすることがあったのですが、以下のような感じで、あきらかに妙な部分を発見したのです。

Ist das das der richtige Weg, diese Worte zu benutzen?
(サンプル文章でその時の文章ではありません)

中性名詞に付く定冠詞の "das" が重複しているのです。乱暴に言うと英語の "this" みたないものです。すぐさま担当者に確認したところ……「ドイツ語も話せないくせに」と揶揄されて、そのまま印刷にまわってしまった事件がありました。もちろん刷り直しになりました。

プロだって間違いをすることはあります。たまたま翻訳家の方がミスってしまったそうです。しかし、ここでドイツ語が分かるとかの問題ではなくて、おかしいと普通は気が付きますよね。


■今月のお気に入りミュージックと映画

"No Tomorrow (feat Pawws)" on Le Matos in 2015(CA)

カナダのグループで、アルバム "Synthwave, Vol.2" に収められている曲ですが、映画 "Turbo Kid" の曲と言った方が分かり易いですね。とってもいい感じです。

このグループの詳しいことが分らないのですが、本当に日本の音楽シーンは崩壊してしまった観が拭えないですね。

日本のヒットチャートだけ異質ですから……。また今更CDと言われそうですが、日本で買うより米国や英国から直接買った方が安いって現実は笑えないです。

https://lematos.bandcamp.com/


Le Matos No Tomorrow feat PAWWS



"Turbo Kid" by Francois Simard, Anouk Whissell, Yoann-Karl Whissell in 2015(NZ, CA)

邦題「ターボ・キッド」。どうもビデオ作品のようです。B級作品だろうと冷やかしで借りたのですが、これが意外と楽しめました。

予告編ではグロシーンが多いのですが、低予算ではあるものの、色々な映画のパロディ要素満載で、とにかく楽しめます。なによりローレンス・レボウーフ演じるヒロイン役のアップルが素敵過ぎます。その天真爛漫さはメイクと相まってキュート過ぎて一発でファンになってしまいました。

ちなみに、ストーリー上カットされた部分かもしれませんが、主人公と出会う前のシーンがYoutubeで公開されていました。ファン必見ですね。もう彼女の演じるアップルを見るだけでも価値があると思います。

なお、2005年製作の「レーサー/光と影」では実在のロードレーサーを主演している実力派です。ところで、彼女の名前は日本ではロランス・ルブーフとも表記されている場合がありますが、Laurence Leboeufをそのまま日本語読みするとローレンス・レボウーフですね。

ロランス・ルブーフは英語読みのカタカナ表記のようです。混乱しているということは、日本ではそれだけ知名度が低いということですね。

最新作は "Dragon 3D" というファンタジーSF(?)なのですが、残念なことに国内上映はなさそうです。

「ターボキッド」予告編(グロ閲覧注意)


Le Matos feat. PAWWS "No Tomorrow - A Turbo Kid Tale" Directed by RKSS
(グロ閲覧注意)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=480&v=G8kFIbmmuEk



【海津ヨシノリ】
グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

今年の夏は水筒が大活躍でした。大きな水筒を新調したこともニュースでしたが、使わなくなってしまった小さい水筒に飲み物を入れて、仕事部屋で活用することにしたのです。

うっかり転倒してもこぼれることはありません。温度差で器に水滴が溜まってしまうこともありません。なにより、冷たい飲み物をいつまでも冷たいままで飲むことが出来るのは本当に嬉しいです。どんなに気をつけていてもコップを倒してしまうことがありますからね。

■10月の画像処理セッションは10月19日を予定しています。
〜Photoshopの復習【応用力が付く様々なカラー調整】〜

詳しくは以下でご確認下さい。
https://www.borndigital.co.jp/seminar/


参加は無料で、どなたでも参加できます。詳しくは以下のサイトでご確認下さい。なお、事前登録はありませんので、開催時間前に直接会場にお越し下さい。

●講演内容

画像のカラー調整を行うために必要な正解は、自分で見付けるというスタンス。今回はPhotoshopが持っている様々なツールの効率の良い使い回しと、変則的なカラーバランスの調整方法を整理検証してみます。

・基準はフレキシブル
・主従関係を明確に
・色の盛り合わせと洗い流し
・CameraRawの間違った使い方

yoshinori@kaizu.com
http://www.kaizu.com

http://kaizu-blog.blogspot.com

https://www.Facebook.com/yoshinori.kaizu