Scenes Around Me[12]AKIRAさんとの事(1:1996年8月頃)のざらし画廊・捨て看板展のプレゼンを受ける
── 関根正幸 ──

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前回まで数回にわたり、高円寺にあった岡画郎で行われた展示について、内容と写真を紹介してきました。

岡画郎のことを書いたのは、私が記録行為を始める一つのきっかけが、岡画郎に関わったことにあったからでした。

今回から、記録行為を始める直接のきっかけとなった、AKIRA(杉山明)さんとの関わりについて書くことにします。

連載の5回目に書いたように、AKIRAさんと親しくなったのは、1996年4月にAKIRAさんが企画した「高円寺新名所巡り」に参加したことでした。

以前書いたことの繰り返しになりますが、「高円寺新名所巡り」は、AKIRAさんがツアーガイドになって、高円寺駅前から高円寺の隠れ名所をなわとびバスに乗って回るというものでした。

そして、高円寺駅南口で待ち合わせをしていたとき、AKIRAさんとアンディ・ウォーホルの話で盛り上がり、その結果、翌年AKIRAさんが原宿DUGで開催した「偽アンディ・ウォーホル展」のスタッフをやることになったことまでは書きました。







AKIRAさんは現在、実家のある日光に住んでいますが、当時は杉並区の上井草にあった劇団の倉庫(A倉庫)の管理人をしていて、岡画郎定例会にもよく顔を出していました。

そして、1996年の8月頃だと思いますが、AKIRAさんが「のざらし画廊」の構想をプレゼンする場に居合わせました。

それは、美術館や貸し画廊に取り上げられてしまったアートを、ストリートに引きずりもどすというコンセプトで、手始めに捨て看板(街中の電柱等にくくりつけられている看板)に参加者が絵を描いて、銀座の街中に展示する(捨てる)イベントを行う、というものでした。

その話を聞いて、個人的な経験から引っかかることがありました。

それは、捨て看板が軽犯罪法に触れるということと、AKIRAさんがそのことを認識していない(かもしれない)ということでした。

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20年以上前のことですが、大学院を出た後、仕事に困って一年ほど人材派遣(というより便利屋)のバイトをしていたことがあり、その間、捨て看板の仕事を請け負って、警察のお世話になったことがありました。

その仕事はマンションのモデルルームの案内板を、電柱にくくりつけるというものでしたが、断られることを心配されたのか、仕事を紹介された際に捨て看板が違法であることを伝えられなかったことと、くくりつける看板が風俗系ではなかったため、問題ないと思い仕事を受けました。

依頼先(不動産屋)の事務所に行って看板を受け取った際の、社員の素っ気ない応対に何かしらの違和感を覚えながら、しかし、堂々と仕事をしていたところ、巡回中の警察官に見つかり、警察署まで連行されました。

パトカーの中で、街中の捨て看板が異様に多いのに気づき、警察が捨て看板への対応にピリピリしているだろうことは、容易に見て取れました。

警察署で、捨て看板はマンションの案内板であっても違法になること、薬物の中毒者が薬代に困って捨て看板の仕事を受けることが多いこと、を言われました。そして、薬の使用の嫌疑が晴れた後、始末書を書いて釈放されました。

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そのような経験があったため、その場でAKIRAさんに捨て看板の違法性を指摘しました。

すると、AKIRAさんは次のプレゼンの時までに捨て看板の業者に連絡を取り、捨て看板は現行犯で、設置する現場を押さえられない限り捕まらないこと、また、もし捕まっても初犯であれば始末書で済まされ、前科にならないことを調べてきました。

これは確かに私の経験と合致しました。

そして、AKIRAさんが多少の違法性をものともしないことにも感心して、ことの成り行きも見ておきたいという気持ちもあり、私ものざらし画廊に参加することにしました。

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今回の写真ですが、一年前に撮った写真をFacebookがおすすめしてきたので、千代田区一番町で撮影した月の写真を紹介します。

https://farm5.staticflickr.com/4373/37376331775_0931ac9193_c

この頃、人間関係でトラブルを抱えていたのですが、仲秋のこの日、そのトラブルが解決するかもしれないという局面を迎えました。

夜半になって外に出たところ、それまで曇っていた空から雲が消え、月が姿を現したのが象徴的で撮影しました。

もっとも、そのトラブルに関しては結局解決せず今に至っています。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。