ローマでMANGA[123]ROMICS+傘おばけ+おっぱい
── Midori ──

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりしていきます。

前回は、「天才的な企画」のネーム作りの話をして、「こうして、36個の会話を無事に収めたけど、次の見開きでは行動の数の多さと、与えられたページの少なさに、大いに悩むことになった。

「でも、こういう規制の中からアイデアが出るものなのだ。それが、この企画で演出を受け持つ醍醐味でもある。次回、忘れてなかったら、他に書くことがなかったら、表現すべきことが多いのにページが限られている、そんな中で得たアイデアを書きます。」で、終わった。

ところが、今回は書くことが出てきてしまったので、この話は次回に、ということにします。今回は書くことが三つあります。

一つ目はこれ。





●秋恒例のローマでのコミックスフェア・ROMICS

https://www.romics.it/


4月と10月に、ローマで開催されるコミックスフェアだ。以前も何度か触れたが、コミックスフェアと言い難くなってきている。むしろ、キャラフェスだ。

年々書店や出版社の参加が減って、キャラグッズやコスプレグッズ、そして食べ物のブースが増えている。

食べ物のスタンドは、以前はフェア会場常設のBAR(注:オネエサンがお酌してくれるところではなくて、地中海文化の喫茶店に類した店)しかなくて昼時は長蛇の列だったのが、選択技が増えたのはありがたい。

今回、いつもと違うことがあって、どうしても書かなくてはならないのだ。

今年はビートルズの「サージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブバンド」がリリースされて50周年。それを企画に利用して「マンガのビートルズ」と題して展覧会を開催した。

イタリアの音楽ジャーナリストで、ビートルズが出てくるマンガのコレクターの協力を得てそれを展示。さらに何人か名のあるマンガ家、現代アーチスト、そしてマンガ学校の講師が、それぞれビートルズを描いて参加した。

私にもお声がかかって、喜んで参加したのだ。

・マンガのビートルズ、オフィシャル動画
https://goo.gl/uMNV7i


最近好んで使っている墨絵風のやり方で四人の顔を描いた。参加賞で楯をもらった、という経験が初めてのことで、けっこう興奮のコミックスフェアになったのだった。

しかも、舞台に登ってライトを浴びながら、一言マイクで発言したりするのだから大変なもんです。後になってああ言えばよかったこう言えばよかった、などとぐちぐち考えてしまったのは、こういうことに慣れてない証拠。

書きたいこと、二つ目はこれ。

●傘おばけ〜妖怪じゃなくて若い出版社

傘おばけはkasaobakeと書いて、小さなマンガ出版社の名前だ。
https://www.kasaobake.it/news/


〈ローマでMANGA〉では日本の漫画を「manga」、それ以外を「マンガ」と書き分けているのだけど、kasaobakeの出版物をどちらで書いたらいいのか迷う。

ヨーロッパでeuromangaと呼ばれる、manga風のマンガを扱う。euromangaを出版する出版社がちょっとづつ増加している。mangaとアニメを見て育った世代が増えていて、manga風の作品が増えていくのは当然の結果と言える。

既成の出版社は怖がってイタリア製のmangaを出そうとしないので、自分達で作っちゃお! という流れになっている。十数年前までは、manga風の作品を出したければ、自費出版しかなかった。

とりあえず、会社組織にして、ISBNコードを出版物につけられるようにする。と、こういうことができるくらいには、売り上げが期待出来るというわけだ。

Kasaobakeも設立は2015年。他の小さな出版社で少女(euro)mangaを出していたチームがあって、そのチームが出版社から離れ、別に会社を作った。

設立者の一人が仕事でスイスへ行くことになり、いま代表者を務めるエレナに委託したのだった。

・エレナと彼女の作品
https://goo.gl/YZeKnu


・エリザベッタと彼女の作品
https://goo.gl/raD96H


・フェデリカと作品
https://goo.gl/S5JfzC


もちろん株式会社ではなく、フリーランスでもない一人企業の形態を取っている。企業の形態を取らないと人を雇うことができないのだ。

グループのメンバーは若い女性ばかり5人で、2012年に先述した別の会社の少女mangaで知り合った。

五人で4タイトルから出発し、二年後の今、15タイトルを出すまでに成長した。発表の場所を探す若い作家がコンタクトを取ってくるのだそうだ。ネットのおかげで外国からもコンタクトがあり、現在、スウェーデンの作家のものも出している。
https://goo.gl/vg6QWv


私はmangaというものは絵柄のことではなく、読みのスピードをコントロールする構成の仕方だという持論があるけれど、あの、デカ目のmangaスタイルが扱う内容と相まって、ここまで世界中の人を惹きつけている事実はしっかりと受け止めねばならないと思う。

出版方針としてターゲットを一つに絞るのではなく、少年、少女、ファンタジー、冒険、エロ。読者層は幅広い。

作品の形態がmangaに近いものは(日本の)単行本と同じ判型にして、それ以外のものは、内容に合わせて判型を変える。

Kasaobakeのことを書きたいと思ったのは、自然発生的なeuro mangaの出版社の誕生の一つの例として。

そして、ここに「ファンタジー」作品で参加しているフィロメーナさんが、かつて、デ・アゴスティーニのmanga&animeの監修をしていた時に、同タイトルのウェブページも担当して、読者さんと交流していて知り合った。

Facebookを通じて、時々作品の講評をおねだりしてくる。熱心な依頼には応えたくなるので、やり取りを続けていた。

実際に会ったことはなく、今回、ROMICSにKasaobakeもブースを出して、しかも私が待機していた学校のブースの前にあって、初会見を果たしたのだった。
https://goo.gl/V5X4Sv


スウェーデンの作家の話をしたけれど、国籍は問いませんので、Kasaobakeから本を出してみたい人はここへ。原稿料はたぶんそんなに高くないと思う。
info@kasaobake.it

三つ目の書きたいことはこれ。

●おっぱい

Facebookで知り合ったビットリオ君から、ゲームを作っているんだけど、日本語に訳してくれないかとメッセージがあった。

そのゲームのタイトルは「Oppaidius」。あの、おっぱいのオッパイなのだ。どの国の男性もオッパイ好きと見える。


今のところ、デモのみで、本格的な制作はキックスターターで資金が集まったら開始できる。

ゲームばかりして外に出ない男の子が主人公で、爆乳の女の子が隣に越してきて、現実の世界(リア充っていうのかな?)へ戻って行くストーリーだ。90年代の日本のテレビゲームへのラブレターで、背景画像はビットで表現している。

euro mangaに続いて、ゲームでも日本が与えた影響は大きいと実感させられる。ちょっとプレイしてみたい方はここからDLできます。デモには私が訳した日本語を選択できます。
http://sbargisoft.itch.io/oppaidius


やってみて、応援してもいいかな、と思った方はこちらから。
https://www.kickstarter.com/projects/440243144/oppaidius-summer-trouble


ビットリオ君が教えてくれた制作の裏話。

曲はヤマハのFM音源IC、YM2151を使用してルーカ・デッラ・レジーナ担当。メタルギアシリーズの音楽担当の日比野則彦さん初め、日本のゲーム音楽に携わった三人がゲスト参加。100以上のアニメーションフレーム(2万6千ほど絵を描いたそうです)。開けてお楽しみのホットな最終シーン。全部イタリアで作った!

ビットリオ君とも、今回のROMICSでリアルに会った。コミックスフェアではなく、キャラフェスになってしまっているのが残念だけど、こうして出会う機会を提供してくれるので、足蹴にもできない。
https://goo.gl/tDDkXW



【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

あかしやSAI 彩、「彩があればそこがアトリエ」という殺し文句にやられて購入した水性顔料インクで日本の伝統色を再現した水彩毛筆にはまっている。
http://www.akashiya-fude.co.jp/050_product/sai_01.php


ぺんてるの携帯用筆ペン
http://www.pentel.co.jp/products/brushpens/brushtype/pentelfudeportable/

と、ぼかしに水だけの筆ペンを使って、kimonogirlと称して、現代の和服女性を描くのを日課にしている。

パレットを使う水彩とは別の使い方を工夫して、コピックのような効果も出せるし、水ペンで水彩効果も出せる。kimonogirlの手の形が変だったり、素人ぶりを発揮しながらも今年のinktober(10月にインク入れをした絵を毎日一枚描いてアップする)はこれでやってます。
https://goo.gl/iHKr5L


縦スクロールマンガ「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/


主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/