[4435] 象の耳を触っているのか鼻を触っているのか

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《ぜひモヤモヤして下さい》

■腕時計百科事典[46]
 腕時計のブランド(ウブロ)
 吉田貴之

■クリエイター手抜きプロジェクト[519]IoT IchigoLatte編
 LEDを制御する
 古籏一浩

■映画ザビエル[43]
 象の耳を触っているのか、鼻を触っているのか
 カンクロー



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■腕時計百科事典[46]
腕時計のブランド(ウブロ)

吉田貴之
https://bn.dgcr.com/archives/20171016110300.html

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ウブロは1980年創業の、比較的新しいブランドです。新素材を意欲的に採用するなど、前衛的な時計づくりが特徴で代表作「ビッグ・バン」を大当たりさせて時計業界でのポジションを一気に築き上げました。

●創業とブランド名

ウブロはカルロ・クロッコによって、スイスで創業されました。現在の人気からは想像出来ないですが、これが約40年前のことです。

ウブロの社名はフランス語で「舷窓」を意味しており、船に取り付けた窓を連想させるデザインのベゼルを持つモデルを多数製作しています。

●素材の挑戦

腕時計といえば本体が金属、ベルト部分が革もしくは金属、という時代が非常に長く続きました。ウブロはその常識を破ることで、すでに円熟しきった時計業界に切り込みました。

高級感のある金属素材とスポーティなラバー素材を組み合わせるなど、大胆な素材使いは当時賛否両論ありましたが、多くは歓迎の声だったようです。

実は、腕時計業界において、素材でのアピールはなかなか上手くいかないことが歴史的に証明されているのですが、数少ない成功例のひとつとして他のブランドにも影響を与えたことは間違いありません。

●ジャン・クロード・ビバー

2004年、オメガのマーケティング戦略を担ってきたジャン・クロード・ビバーが、ウブロのCEOに就任します。彼は「ブランドの持つ個性の継続」と「素材の融合」をコンセプトに、ウブロらしい時計の製作に着手します。

もちろん、すでに時計業界で名の通ったジャン・クロード・ビバーの参画も、注目度を上げるのに一役買ったのは言うまでもありません。

●ビッグ・バン

2005年に発売した「ビッグ・バン」シリーズは高い評価を受け、時計にまつわる賞もたくさん受賞するなど、ウブロの地位を一気に高めました。

ビッグ・バンは、ウブロの売上を3倍に、一節によると10倍に引き上げたそうです。デカ厚時計ブームにのったウブロは、さらに大きな「キングパワー」シリーズをリリースし、そのジャンルの代名詞的存在になりました。

●独自ムーブメント「ウニコ」

ウブロの魅力は、外装の素材やデザインだけではありません。ビッグ・バンのヒット後は技術への注力をすすめ、独自開発の自社ムーブメントである「ウニコ」を完成させました。

スペイン語で「ユニーク」を意味するウニコは、スケルトンバックでみたときの美しさを意識してつくられており、傑作の誉れも高いムーブメントです。

さらに、開発部にグランドコンプリケーション部門を設けており、さらなる技術力の向上のための投資を惜しみません。

●積極的なコラボレーション

古典的なマーケティング手法ではあるものの、ウブロは有名人や企業、スポーツイベントとのコラボレーションも積極的に行っています。

F1やFIFAワールドカップでタイムキーパーをつとめたのを筆頭に、世界市場を意識した有名人や団体とのコラボレーションは、時計業界を超えて注目を集めています。

【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
http://www.idia.jp/


兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[519]IoT IchigoLatte編
LEDを制御する

古籏一浩
https://bn.dgcr.com/archives/20171016110200.html

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今回は、IchigoLatteでLEDを点灯と消灯を繰り返すプログラムを作ります。まずは、少しおさらいをしましょう。IchigoLatteでLEDを点灯させるには、以下のように led(1) とします。

led(1)

JavaScriptでは行末にセミコロンがなくても、自動的に行末だと判別してくれます。ただ、これがトラブルの原因になることがあります。

特にIchigoLatteでは、セミコロンがないと、うまく解釈できずにエラーになったり、ハードウェアリセットされてしまうことがあります。

ハードウェアリセットというのは、IchigoLatteで構文解析ができなかったり、重大なエラーが発生した場合、電源を投入した状態になってしまうということです。

要するに、再起動してしまうわけです。IchigoLatteは1秒かからず起動するので、再起動しても苦にはなりませんが、できれば防ぐことができる不具合は、あらかじめ手当しておくのがベストです。

ということで、以下のように行末には;(セミコロン)を入れておきましょう。

led(1);

点灯したLEDを消灯するにはパラメーターに0を指定します。

led(0);

点灯と消灯を繰り返せば、LEDが点滅することになります。ここでは無限に繰り返しLEDを点滅させてみましょう。無限に繰り返す場合は、while()を使います。以下のようにすると無限にLEDが点滅します。

以下のプログラムを入力するには、シェルで vi と入力し、リターンキーを押します。(■はカーソルです)

lash>vi■

するとエディタ画面になるのでプログラムを入力します。

while(1){
led(1);
led(0);
}

プログラムを入力したら、escキーを押します。するとプログラムが保存され、シェルに戻ります。シェルに戻ったら、ms .と入力しリターンキーを押してみましょう。

(msの後には半角空白を入れてから . を入力してください。ms. とすると期待する動作になりません)

lash>ms .

すると、基板上のLEDが点滅します。ところが、点滅しているようには見えません。これはIchigoLatteのJavaScriptの処理速度が速すぎて、人間の目には点滅しているように見えないからです。

そこで、少しウェイト(待ち時間)を入れます。0.5秒ごとに点滅するようにプログラムを修正します。ウェイトは sleep() メソッドを使います。

() の中にミリ秒を指定すると、その時間だけ次の処理に移るのを待ってくれます。エディタを起動してプログラムを以下のように修正してください。

while(1){
led(1);
sleep(500);
led(0);
sleep(500);
}

プログラムを入力したら、escキーを押してシェルに戻ります。あとは ms .と入力し、リターンキーを押せばプログラムが実行されます。今度はLEDが0.5秒ごとに点滅するようになります。

うまく動作したら、sleep()の時間を変更して点滅間隔を変えてみてください。なお、実行しているプログラムを止めるには、escキーを押してください。

最後に while() で1を指定しているのはなぜか? という点について説明します。一般的なJavaScriptでは while(1) よりも while(true) のようにtrueを指定します。trueはあらかじめJavaScriptで決められている定数(リテラル)です。

しかし、IchigoLatteのJavaScriptには定数(リテラル)がありません。true、false、nullなどがありません。undefinedもありません。単純に真(true)は1(というか0以外)、偽(false)は0となっています。

余計なものがないので覚えることも多くありません。また、IchigoLatteで作れるプログラムサイズは2KB(2048バイト)未満ですから、作ったプログラムも把握しやすいでしょう。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/


先週土曜日に、IchigoJamを使った電子工作の講座があり、お手伝いをしてきました。小学校5年生と5年生が対象の講座で全3回です。

初回はハンダ付けがメインです。コツをつかめば小学生でも無理なくできます。見ていると、最初の抵抗一つをハンダ付けすれば、あっという間に学習してしまうようです。

・InDesign CS6 JavaScript Reference
http://www.openspc2.org/reibun/InDesignCS6/ref/


・Photoshop CS6 JavaScript Reference
http://www.openspc2.org/reibun/PhotoshopCS6/ref/


・Illustrator CS6 JavaScript Reference
http://www.openspc2.org/reibun/IllustratorCS6/ref/


・みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作
https://www.amazon.co.jp/dp/4865940936

[正誤表]
http://www.openspc2.org/book/error/ichigoLatte/


・After Effects自動化サンプルプログラム 上巻、下巻
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397591

https://www.amazon.co.jp/dp/4844397605


・IchigoLatteでIoT体験
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3X1CHP

http://digiconcart.com/dccartstore/cart/info/2561/218591


・みんなのIchigoJam入門 BASICで楽しむゲーム作りと電子工作
http://www.amazon.co.jp/dp/4865940332/


・Photoshop自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/


・Illustrator自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA/


・4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/


・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/



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■映画ザビエル[43]
象の耳を触っているのか、鼻を触っているのか

カンクロー
https://bn.dgcr.com/archives/20171016110100.html

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◎三度目の殺人

公開年度:2017年
制作国・地域:日本
上映時間:124分
監督:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、満島真之介

●だいたいこんな話(作品概要)

裁判で勝つためには、真実は最重要事項ではないと考えてきた弁護士の重盛は、つねにビジネスライクに依頼人や案件と向き合ってきた。

30年前の殺人事件で、かろうじて死刑を免れたものの実刑判決を受けた、前科のある男の強盗殺人を争う裁判の弁護を引き受けたことで、重盛は流儀に反し真実という闇に引き込まれていく。

●わたくし的見解

邦画では稀少とも言える、ハートフルやコメディに頼らない重厚なドラマです。

本作は、裁判ものやミステリーとしては少々詰めの甘い感があるため、伊坂幸太郎のような伏線をすべて回収しきるミステリーを期待すると楽しめません。東野圭吾作品のような、エモーショナルなカタルシスも求めない方が得策です。

純文学系と割り切ってご覧ください。深淵を覗きこむと、深淵からもまた覗かれている。みたいな、ちょっと何言ってるか分かんないですけど(サンドウィッチマン(c))と言われかねない、モヤぁーっとした事象の映像化としては、かなり成功しています。実に面白い。(これも(c)か)

鑑賞後もモヤモヤできるので、モヤモヤするのが好きな方には格好の材料となるでしょう。公開中の作品ですしミステリーでもあるので、あまり具体的な内容に触れずに言及したいとは思うのですが、今回タイトルの「象の」云々というのは、劇中のセリフより拝借したもの。

三隅という男の強盗殺人を争う裁判で、最初に弁護を引き受けたのは、福山雅治演じる重盛とは別の弁護士です。三隅に前科のあることや、手口が残忍であることから、検察側からの死刑の求刑は必至。

にもかかわらず、容疑者の三隅は毎回違った供述をするため、お手上げ状態になった弁護士が、旧知の間柄の重盛に弁護の協力を求めるところから物語は始まります。

やり手弁護士の重盛が加わっても、裁判の行方は危うく厳しい展開が予想されるなか、二人の弁護士が事務所に泊まり込んだ際の雑談として「象の」くだりが登場します。

盲目の人々が実際に象を触ったあとに、象についてそれぞれが語ると、象の体は大きいため触った場所の違いによって見解がバラバラに。結果、口論になってしまうという昔話のようなもの。

もしかしたら私たちの行なっている裁判は、それに程近いのではないか。事実とは、象のようなものなのではないか。

象の耳を知っている人、鼻を知っている人、それぞれにとっての象は確かに真実で、誰も間違ってはおらず誰も嘘をついている訳ではない。ところが誰も象のすべてを把握できていない。そのなかで口論しているだけなのでは。

というのが、この作品のテーマのひとつなのだと思います。事実と真実の間に生まれる齟齬と言ってもいいかも知れません。

物語の本筋は、実際は何が起きたのか。知りたい鑑賞者は、主人公とともに翻弄され、主人公にリードされて結論に辿り着こうとした時に、それは違いますよ。と、三隅からスカされます。

え、じゃあ結局どうなの?! とモヤモヤしながら、作品のタイトルを見つめ、それで納得された方も多いことでしょう。私もその一人です。

と同時に、追いモヤモヤすることも出来ます。これは、まったく個人的な作品のしがみ方なのですが、三隅の真実、三隅の物語ではなく、重盛だけの物語と捉えることです。

極端なことを言えば、三隅などという男や事件そのものが実在せず、真実と向き合うことを意図的に避けてきた、重盛の反動の表面化なのでは、と。

(そうなるとシンプルに精神疾患の物語になってしまうので)もう少しソフトに言うならば、真実から逃れてきた重盛が変化するための、自己投影の道具でしかない三隅。という見解も、わたくしとしては捨て切れません。

しかしこれは、あくまでも副旋律、オブリガート。主旋律はやはり、重盛が三隅に取り込まれていく様子を眺め、物語の事実と真実を見つけようとすることであり、その視点だけでも実に面白い(←二回目)作品に仕上がっています。モヤモヤ好きには必見です。ぜひ、モヤモヤして下さい。

【カンクロー】info@eigaxavier.com
映画ザビエル http://www.eigaxavier.com/


映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。


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編集後記(10/16)

●黒川博行「果鋭」を読んだ(2017/幻冬舎)。大阪府警今里署暴力団対策係の相棒だったが、不祥事を起こしてクビになった二人、堀内(左下肢に障害があり鉄骨を芯に仕込んだ杖を持つ)と伊達(柔道四段90キロ級の巨漢)が組んで、パチンコ業界の暗部に巣くう悪党を相手に、大暴れ大稼ぎするエンタメ。

パチンコなんてずっと昔に、旅先でひまつぶしに数回やっただけである。いまやパチンコはコンピュータとの勝負だから、運もツキもないらしい。パチンコ台に裏ロムを仕込むとか、ジェットカウンター(玉の計測器)還元率の遠隔操作とか、そこにゴト師ややくざがからむとかいう、よく理解できない背景だ。

そのへんはわからなくても、二人が大金を得るためにじつにマメに東奔西走するさまが面白い。二人が交わす関西弁がお下品で笑える。敵側がまた、えげつないことを言う。危ない場面なのに、まるで漫才の応酬みたいだ。そして古巣の暴対課の荒木という100キロ超級の極道面刑事に、度々情報をもらっており頻繁に大接待する。

行く先々に元大阪府警のOB、といっても二人と同様のクビ組がいたりする。大阪府警にとってはいやな小説であろう。筆者のこだわりは、食い物と行動力である。一日の始まりは、何を食おうかなのだ。最初の日は老舗の鰻、餃子と搾菜、しゃぶしゃぶ、赤提灯、仕事終了が午前3時半。いちいち献立が示される。

次に行動力だ。こんな具合。西中島のホテル→天神橋商店街→新開地5丁目のパチンコ店→南京町の中華屋(豪華メニュー)→八尾本町のマンション(4時間ほど張り込んで男を拉致)→府道5号を東へ、信貴山口を過ぎて山に分け入り行き雑木林で男を脅しあげて訊問→男を置き去りにして下山→真夜中、江坂の寿司屋→西中島のホテル→朝、西天満の喫茶店→(伊達は和歌山へ)堀内はパチンコ屋→北浜の遊技協同組合で元警官を脅迫→JRで和歌山、御坊→タクシーで山奥の曲谷処分場跡、ここで二人は落ち合う。10時過ぎ、敵三人現れる。護衛ヤクザ二人を殴り倒し、標的を拉致→東大阪の遊戯施設→三人でホテル泊→三人連れで四つの銀行を回り4847万円を引き出す……途方もない働き者だ。

人さらいが得意技、痛めつけ責め立ててすべてを吐かす。容赦ない凶暴で強欲なコンビ。金は徹底的にむしり取る。手に入れた金はきっちり折半。じつに正直な、友情に篤い、お友達にしたくないコンビではある。そして、徹底的な男の世界で、女性がからむようなめんどうくさい甘い話は一切ないのが潔い。90キロ超で腕力最強の伊達が、じつは超恐妻家であるという設定が笑わせる。

この話のパチンコの問題とか人間関係とか、じつはよく理解していないのだが、精巧な推理小説ではないから、読み進めていけばわかるようになっているのでお気楽だ。この小説は新聞連載である。こけにされている大阪府警や遊技施設関係者は、どういう思いで読んでいたのだろうか。笑ってたのかな。 (柴田)

黒川博行「果鋭」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4344030885/dgcrcom-22/



●先週末の夢の話からの連想。秘書AI欲しいなぁなんて思った。やらなきゃいけないリストを作っている。でも実行時には割込やら予定外のことがあって、絶対に予定通りにはならない。

ナビだと目的地を入力すると、途中で曲がるところを間違ったり、事故が発生したりしたら、自動的に計算し直して、新しい道筋を示してくれる。これを秘書AIがやってくれたらなぁ。

今日の予定はこれこれです、というのは今でもあるけど、割込入ったので終了時間がいついつになりますが、仕事Aは絶対に今日やらないと間に合いませんし、頭使うから先にやりましょうとか、今日やる仕事Bを、二日後のいついつに入れたらこなせますよとか。続く。 (hammer.mule)