Scenes Around Me[16]AKIRAさんとの事(5:1997年2月-1997年3月)A倉庫の留守番をする・潮干狩りギャラリー
── 関根正幸 ──

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前回、AKIRAさんに記録の重要性についての、手ほどきを受けた話を書きました。これも前回の繰り返しになりますが、私はその話を聞いて直ちに記録魔になった訳ではありませんでした。
https://bn.dgcr.com/archives/20171107110100.html


もし、今の私が当時のAKIRAさんと関わっていたら、「偽アンディ・ウォーホル展」のシルクスクリーンの製作現場や、展示会場の設営状況なども撮影していたに違いないので、そうしなかったのは、大変残念なことではありました。

ただ、「記録」にのめり込むようになったのは、東京大学駒場寮のうす暗い場所でシャッタースピードの遅い写真を撮影し、見えたものと写したもののギャップに味をしめるようになったのと、1998-9年に見た二つの展覧会に影響を受けたことが、きっかけとしてはより大きかったのです。

なので、「偽アンディ・ウォーホル展」が終わってからも、AKIRAさんとの関わりの中で撮影した写真はそれほど多くありません。






AKIRAさんは1997年3月から4月にかけて海外に出かけることになり、私はのざらし委員長として、A倉庫の留守番を任されました。

そして、留守の間、のざらし画廊の打ち合わせと称してAKIRAさんの部屋で馬鹿騒ぎを繰り広げていました。

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写真は、のざらし画廊のスタッフをしていた、チョチョ、小田切、モンコ。AKIRAさんの部屋で撮影。

そんな中、海外にいるAKIRAさんから、1997年3月に開催される納豆漁協121メートル集合主催の「潮干狩りギャラリー」に、代理で作品を出品してほしいと連絡がありました。



https://web.archive.org/web/20160426091518/http://www.h5.dion.ne.jp/%7Eolounge/kaitai/nato121.html


納豆漁協121メートル集合は、山形県寒河江市出身の芳賀徹氏と鈴木淳史氏の二人からなるアートユニットで、1995年から1998年の間に18もの風変わりなイベントを企画、2006年に回顧的な展示を行いました。

納豆漁協の二人のうち、芳賀徹氏は1996年11月のざらし画廊捨て看板展に参加しているので、その関係でAKIRAさんにイベントへの参加要請があったのだと思います。



潮干狩りギャラリーは、横浜市金沢区海の公園(八景島近くの海岸)の砂浜に作家が作品を埋め、掘り出した人がその作品を持ち帰ることが出来るというイベントでした。

その潮干狩りギャラリーに、AKIRAさんの依頼で、作品を埋めることになりました。

AKIRAさんの指示は以下の通りでした。

会場は海岸なので昆布が拾えるはずだから、豆腐と味噌があれば昆布と合わせて味噌汁が作れるだろう。

なので、砂浜に味噌汁セット(豆腐と味噌)を埋めて欲しい。

そして、(「偽アンディ・ウォーホル展」の都庁の撮影の時と同じく)記録写真を撮影して欲しい。



という訳で、イベント当日(ネガアルバムの日付によると1997年3月30日)、自宅から金沢八景まで自転車で移動し、会場近くの京急ストアで豆腐十丁と味噌を購入しました。

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そして、購入した豆腐と味噌を砂浜に埋めました。

https://farm5.staticflickr.com/4541/37584750135_078c925d19_c
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この作品への反応ですが、スコップの先に柔らかいものが当たる嫌な感じがあり、掘り出したところ豆腐だったので、そのまま何も見なかった事にして埋め戻した、という話を参加者から聞きました。

この日は他の作家の展示も何枚か撮影しています。

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作家が埋めた作品を解説しているところ。

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余談になりますが、当日同行していたのざらし画廊のスタッフが、来場したお客さん(女性)と知り合いになり、そのまま彼女の家に押しかけたそうです。

そうしたところ、彼女のルームメイトが「よいこっち」というTV番組のADで、番組への出演者を探していたことから、多くのアンダーグラウンドのアーティストがAKIRAさんの紹介で「よいこっち」に出演することになったそうです。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/よいこっち



【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。