[4491] 冬の尾道の巻

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《これを買う人は変態だねー》

■わが逃走[209]
 冬の尾道の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[77]
 フォントかるた(前編)
 関口浩之




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■わが逃走[209]
冬の尾道の巻

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20180118110200.html
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あけましておめでとうございます。今年はより一層、無理せず地道にゆっくりと、そして楽しく生きて行こうと思う齋藤浩でございます。

実は半年ほど前に体調を崩してしまいまして。とはいえ、もうすっかり元気なのですが、アラフィフだしね、そりゃあ無理もきかなくなってきているよなあ。

と反省しつつ、年末にリハビリもかねて写真旅へ行ってまいりました。

ここ半年ばかりほとんど写真を撮っていなくて、というよりも撮れなくなったという方が近いか。

撮ろうという気にならない、撮りたくない、撮るのがコワイ(笑)という今までの私としては考えられないような状態が続いていたので、こりゃいかん、というわけで、まずは大好きな尾道へと出かけたのでした。

尾道はまったく変わっていないようで、少しずつ変化しています。

お洒落なカフェや雑貨店が増えている反面、昨年まで建っていた日本家屋が取り壊されてしまったりなどなど。

尾道のランドマークでもあった美しい木造駅舎も、築126年目にして“現存せず”の仲間入りとなったのはさみしいかぎりです。

今回はとくに予定も組まず、あてもなく、主に山の手を東西に行ったり来たりしながら気になるものを撮影することにしたのですが、フタを開けてみれば、過去に撮ったことのある壁や階段などが、同じような感じでどっさり撮れていました。

よほど好きなんだなあと、半ばあきれる始末。しかも露出も構図も過去の写真の方が明らかにイイ。

写真もバイオリンと同じで、常に続けていないと腕が鈍るんですね。バイオリン弾いたことないけど。

そんなわけで、今回はそのときのお散歩写真を紹介していきたいと思います。


○商店街から脇道にそれる
http://bn.dgcr.com/archives/2018/01/18/images/001.jpg

木造建築とか土壁とか、そういったものにぎゅっとはさまれる路地が何本もある。こういった空間を歩くだけで舞い上がってしまうが、落ち着いてディテールを見てみると、木目パターンや格子、街灯のデザインなど“詠み人知らずのデザイン”優秀作品が並ぶ。

○非常階段
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弦楽器みたいだなーと思うと同時にシャッターを切っていた。長らく尾道に通っているが、この物件に気づいたのは初めて。

町全体が迷路みたいなので、こういう新鮮な出会いもあるし、再びここに来たくても必ず迷子になるという面白さもある。

○逆光猫
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昔から好きな路地だが、このあたりも空き家が増えた。毎日こんな風景を見ながら過ごすと、人の感受性とかそういったものはどのように変化していくのだろうか。などと考えつつ坂を下る。

○朝日と夕陽の当たる家々
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毎日景色がかわるんだろうなあ、と思う。なぜなら来る度に光の色も空気のにおいも違うからだ。

こんなところで暮らしたら、日々この風景を記録したくなり、撮影やらスケッチやらでタイヘンなことになるだろう。

私が育った「インチキ造成地コピペ住宅群」とは真逆、暮らす側に主権のある生活を感じるのだった。

○重ねられたバケツ
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バケツは水を運ぶためだけのものではなく、光の反射を鑑賞するための装置でもあった。

このバケツさえあれば、空、雲、太陽のいつもと違った美しさをどこでも楽しめる。さあ、バケツを持って旅に出よう。

○直線的階段・手すりつき-1
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一見普通の階段だが、踏面の奥行きも一段ごとの高さも(おそらく)すべて違う。植物の覆われっぷりも秀逸。

手すりの基部も非常に特徴的なのだが、もはや草をかき分けないと確認できない。年に二度はこの階段を確認しているのだが、この変わり様を見ると、建築とか土木とかいったものも風景の一部なのだなあと思う次第です。

○直線的階段・手すりつき-2
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「直線的階段・手すりつき-1」から少し下ったところにある。10年前は手前左側に重厚な瓦屋根の日本家屋が存在していたが“現存せず”。

右側壁面には手すりの影だけが落ちる。夕方の路地の風情もずいぶん変わってきた。

といったところで日が暮れたのでした。まあいろいろと思うことあるのですが、無理をせず、穏やかに暮らすことこそ、人生最大の目的なんだと考えられるようになりました。

カメラの腕は鈍ったけど、今回は半世紀近い人生において、最も有意義な散歩だったような気がします。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[77]
フォントかるた(前編)

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20180118110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今年も文字のお話を中心に、ゆるーく楽しくお送りします。2018年もよろしくお願いします。

お正月と言えば「かるた」ですよね! でも、「んっ? お正月はかるたなの?」と思う人が多いかもしれませんね。

実際に、何かしらの「かるた」をやったことある人、どのくらいいますか? アンケートをとってみたいです。

ということで、2018年の最初のテーマは、「フォントかるた」です。

●「かるた」にもいろいろある

まずは、ウィキペディアで、「かるた」を調べてみました。

「かるた(歌留多、加留多、嘉留太、骨牌)とは、カードを使った主に正月に遊ぶ室内遊具である」と書かれています。

なるほど……。漢字で書くと4種類もあるんだ。どれも見たことない漢字でした。

かるたで最も有名なのは、「江戸かるた(犬棒かるた)」ですね。持ってる人、どのくらいいるのだろうか? 気になります。

「いろはにほへと」の読み札を書き出してみますね。

い 犬も歩けば棒に当たる
ろ 論より証拠
は 花より団子
に 憎まれっ子世にはばかる
ほ 骨折り損のくたびれ儲け
へ 下手の長談義
と 年寄りの冷や水

おっ、ぜんぶ、聞いたことのあるフレーズですね。ことわざの勉強になります。

Amazonで「犬棒かるた」で探したら、1,000円ぐらいで買えることが判明したので、衝動買いしてしまいました。

みなさんのお家には、何種類のかるた、ありますか? ちなみに、僕の家にあるかるたを列記してみました。

・犬棒かるた(明日、届く)
・上毛かるた
・ぐんま方言かるた
・フォントかるた
(標準パック、拡張パック白、拡張パック黒、フォントワークス特注版)
・HTML5カルタ ※知人の酒井優さんが作成

あれっ、しっかり、かるたコレクターじゃん。かるたではないですが、欧文フォントのカードゲームも3種類持ってます。

ちなみに、上毛かるた(じょうもうかるた)は、わが故郷、群馬県の郷土かるたです。70年の歴史があるかるたです。

群馬県民なら、ほとんど人が知っているかるたです。冬になると、小中学生は県大会を目指して、公民館で練習したものです。

「あいうえお」の読み札を書き出してみますね。

あ 浅間のいたづら鬼の押し出し
い 伊香保温泉日本の名湯
う 碓井峠の関所跡
え 縁起だるまの少林山
お 太田金山子育て呑竜

上毛かるたの素晴らしいところは、小学生が、地元の群馬の名所や歴史を、かるたを通じて身に付いちゃうことなんです。

●「フォントかるた」を知ってますか?

巷で噂になっている「フォントかるた」をご存知でしょうか?

まずは、フォントかるたを写真でご紹介します。じゃーん!
http://bit.ly/2FKMJp6

おまけで、僕が持ってるかるたの皆さんにも登場してもらいます。じゃーん!
http://bit.ly/2DpSgTC

そして、先週1月10日に、僕が主催するセミナーに「フォントかるた制作チーム」の4人をお招きして、FONTPLUS DAYセミナー Vol.12[新春フォントかるた祭]を開催しました。
https://fontplus.connpass.com/event/74858/

フォントかるた(基本パック)には、読み札と取り札が、48枚づつ、入っています。そして、取り札には、「愛のあるユニークで豊かな書体」と描かれています。

「愛のあるユニークで豊かな書体」と聞いて、ピーンときたひとは、フォントマニアです! そうです。写植(写真植字)メーカーの写研が、書体見本帖で使っていたサンプル文章です。

なお、フォントかるたに収録されているフォント48書体は、こちらです。

かるた BOLD/リュウミン B-KO/ヒラギノ明朝体 W8/小塚明朝 M/游明朝体 M/A1 明朝/マティス EB/ヒラギノ角ゴ W7/ゴシックMB101 B/游ゴシック体 B/こぶりなゴシック W6/太ゴB101 Bold/MS ゴシック/メイリオ/AXIS FONT ベーシック M/中ゴシックBBB/ゴナB/新ゴ R/新丸ゴ M/ヒラギノ丸ゴ W6/秀英丸ゴシック B/じゅん 34/筑紫A 丸ゴシック Bold/ナールDB/ナウ MU/わんぱくゴシックN B/ナウ GU/ハルクラフト Heavy/ハッピーN H/タカハンド B/くもやじ R/フォーク B/丸フォーク B/カクミン B/竹 B/創英角ポップ体/はるひ学園 L/明石 L/正楷書CB1/角新行書 M/モアリア B/教科書ICA M/ふい字/武蔵野/TB 古印体/勘亭流/プリティー桃 Bold/凸版文久明朝 レギュラー

これを見たら、「無理ゲー」と思うかもしれませんが、慣れると、そうでもないですよ(笑)

みなさんが見慣れている書体は、「MS ゴシック」と「メイリオ」の2書体だと思います。Windowsで標準搭載されているフォントです。あとは、iPhoneやMacで標準搭載されている「ヒラギノ角ゴ」ですかね。

さらには、「A1 明朝」は「君の名は」で使われている書体ですし、「マティス」は「エヴァンゲリオン」で使われている書体ですし、「創英角ポップ体」は街中でよく見かける、ゆるかわいい書体の代表選手なのです。

フォントかるたを、みんなに見せると、「こんなの無理ゲー」「これを買う人は変態だねー」と最初、言われます。

でも、そんな感じで慣れてくると、「無理ゲー」ではなくなります(笑)

一緒に遊んでいるうちに、「メイリオ好きー」とか「私のマイカードは筑紫A 丸ゴシックだよー」とか、わいわい盛り上がります。飲みながら遊ぶといいかもです。

あと、おすすめなのは、一人フォントかるた。最初は、一枚一枚、裏返しながら、書体と書体名を覚えることから始めます。明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体、その他、に分類して比較するのも楽しいですよ。

「フォントかるた」は1年前に発売されましたが、それを制作された4人組は、知り合いのデザイナーさんでした!

今回は、フォントかるた(前編)で概要を紹介しましたが、次回のフォントかるた(後半)では、書体の見分け方、セミナーの様子をお送りします。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。


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編集後記(01/18)

●古谷経衡「『道徳自警団』がニッポンを滅ぼす」を読んだ(2017/イースト新書)。自警団とは警官や軍隊ではない一般市民が、犯罪者を警戒するために組織した私的集団である。現在の日本には、「道徳的か否か」を善悪の判断基準とし「不道徳」「不謹慎」と認定した相手を徹底的に攻撃する鬱陶しい連中がいる。筆者はこのような人々を「道徳自警団」と名付けた(うまい)。

彼らの攻撃対象は犯罪者ではない。彼らの価値基準でNOと決めつけた相手を、まるで犯罪者のごとく扱って攻撃するのが最大の特徴だ。取るに足らない微罪や重箱の隅をつつくような法律違反を指摘し、ネット上で騒ぎ立て拡散する。能なしのマスメディアも巻き込むから、社会の隅々に悪影響を与えている。

彼らの攻撃の具体的理由は「不倫」「淫行」「微罪」「(わずかな)不正」の四つが殆ど。どうでもいい矮小なことばかりで、巨悪に対しては無関心を貫く。これが「道徳自警団」の顕著な特徴である。そんなバカ騒ぎが、人口減、国防、憲法改正、教育、貧困といった日本の喫緊の課題から目を遠ざけさせている。

「道徳自警団」とは、ネット世論を牽引する一部のノイジーマイノリティーはもとより、それに燃料を与える週刊誌、テレビ、スポーツ紙、夕刊紙、ウェブメディアなどの複合体である。本質的で根本的な問題解決より、どうでもいい「不道徳」「不謹慎」に世論が振り回される。中世の魔女狩りのようである。

しかもこの連中には「どうでもいいマイナス」への執着と、「どうでもいいプラス」への礼賛が常にセットで存在している。だからますます鬱陶しい。なぜこうなってしまったのか。それは「社会全体に金銭的余裕がなくなってきている」からだと筆者は喝破する。すべての原因は、今日の日本経済にあるのだ。

日本はいま、成長がなく、他人の粗探ししか娯楽のない「平成という中世」に堕ちている。「道徳自警団」は日本経済の長期停滞が生んだ構造的な集団なのだ。我々はこの厄介な連中とどう対峙すればいいのだろうか。答えは明瞭だ。彼らは経済成長によって自然消滅する。そんな些細なことに構っている時間的余裕がないほど、人々が明日への合理的判断を取り戻せばいいのだ。

「経済が長期にわたって停滞すると、その人間の動物的本能である功利的な部分が鈍感となり、ひたすら他者の不品行や粗探しに躍起となる。このような現象は経済の拡大によってすべて解決する」のだという。「道徳自警団」というネーミングを含めた問題提起と解決法のセッティング、その傾向と対策も筆者の発明である。何だかマッチポンプみたいな気がしないでもないが(スマン)。

筆者は力説する。「貧乏でも幸せだ」というのは異常な価値観である。「カネがあれば幸せ」という前提に立ち返れ。ある程度のカネで個人的問題の殆どが解決するという、シンプルで当たり前な価値観の前提がないと、社会がおかしくなる。……道理である。「この国にはほかの国に比べて異常に居丈高な消費者が極端に多いと思う」という意見にも激しく同意するものである。(柴田)

古谷経衡「『道徳自警団』がニッポンを滅ぼす」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4781650953/dgcrcom-22/


●直感ザワザワの続き。「Standland」では、連続記録ミッションにトライしている。スタンドゴールを連続して、5日、10日、15日、20日、25日、30日を達成するというもの。全部達成すれば、約100日スタンドしていたことになる。

最初の5日、10日のミッションでは苦しまなかったが、15日のでは何度か失敗した。25日までは達成した。クリスマスから30日ミッションがスタートし、あと2週間というところで途切れてしまった。

AWを忘れた日に(1日だけあった)取りに走ったし、ゴールするまで寝なかったりした。スタートが肝心と早起きもしている。

毎日AWで輪っかが繋がるのを見ていたし、ゴールした時の派手なアニメーションも見ていた。なのにStandlandでは失敗となった。ヘルスケアからのデータ再読み込みをしたがダメ。続く。(hammer.mule)

Standland
https://itunes.apple.com/jp/app/standland/id1033409631?mt=8