[4492] 気がつくと趣味がみんな仕事になっていた

投稿:  著者:  読了時間:17分(本文:約8,100文字)



《「根性あるのみ」を呪文のごとく繰り返し……》

■はぐれDEATH[49]
 はぐれが“ひらめき”について考えた
 藤原ヨウコウ

■晴耕雨読[39]
 趣味を仕事にする話
 福間晴耕

■デジクリトーク
 一年がかりの一分間アニメ
 小川アリカ




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■はぐれDEATH[49]
はぐれが“ひらめき”について考えた

藤原ヨウコウ
http://bn.dgcr.com/archives/20180119110300.html
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ボクの場合、基本アホなコトしかひらめかないのは当然である。

一般的に「ひらめき」というヤツは、「インスピレーション」とも言われる。ある人達は「天の声」という例えを使ったりもする。もちろん寓意だと思いたい。本気でそう思っている人も、もしかしたら少なくないかもしれない。

もちろん、こうした人達の考えをボクが否定することはない。どう思おうが個人の勝手である。ボクは全然そんな風に考えませんが。

所詮はシナプス結合による結果の一つに過ぎない。唯物論者としては当然の帰結である。

「偶然」すら否定してしまう人なので、まぁしゃぁなしだ。

「ひらめいた」と感じるのは、突如それまで接続したことがなかったシナプス結合が起こったとすら思わない。稀な接続なのかもしれないが、本人が気がついていなかっただけで、「ひらめき」と認識できるのは単にその時に気がついただけの話だ。

ただ、前提条件はある。

新しい知識・経験の積み重ねが、新たなシナプス結合を促進するのは当然であろう。無からは何も生じない。少なくとも、生命体だって無から生じたわけではない。諸条件が整わなければ、生命の誕生はあり得ない。

これは進化でも何でもなく単なる自然現象であり、こうした大きな事象の中から人も逃れることは出来ないし、その中にいる限り当然のことながら限界はある。もっとも、人一人があっさり突破できるほど狭くはないけどね。

宇宙だって我々に測定できないだけで(あるいは測定の方法そのものが間違っている)、想像を絶する広さを持ちながらも、それなりの限界はある気がする。

それは空間に限らず、時間ですらそうだろう。我々の理解を超える法則は宇宙に腐るほどある。

「まだ解明されていない」事象ですら、人が「?」と思って検証してもまだ解明されていないだけで、まだ気がついていない事象の方が圧倒的に多いだろう。

話を戻して。前にも書いたが、五感から得られる無意識の情報だって、「ひらめき」に欠かせないのは言うまでもあるまい。むしろ、五感からの情報の方が重要な気すらする。

ある程度の周期はあるにせよ、我々を取り巻く環境そのものが停滞したり、変化しないなどということはあり得ない。日々、何らかの変化があるのが自然である。

こうした変化(それがどれほど些細であれ、劇的であれ)に気付けるかどうかによって、ひらめきは量も質も高度になると思っている。あくまでも私感です。

劇的な変化はひらめきを通り越して、ある種のパニックすら起こす。東日本大震災や阪神淡路大地震などは記憶に新しいだろう。

なにしろインフラがあっさり崩壊したのだ。東日本大震災にいたっては、福島第一原発の事故まで起きている。これで冷静でいられる方が、むしろおかしいだろう。

「ひらめき」というにはあまりにアホな流言飛語が飛び交い、いまもまだ誹謗中傷が止む気配がないというのは、それまでの日々の生活をあっさり覆されたからに他ならない。

とりあえず、原発設置地域や大手電力会社の話は脇に置くし、「安全神話」とやらもほって置く。どちらも早々簡単に片付く問題ではないし、そもそも政府・行政・自治体・電力会社が素直に建設的な安全策を早急に講じるとは到底思えないからだ。

何しろこの国は資本主義国家なので、資本が優先されるのは当たり前の話だからだ。

70年代の公害問題だってそれなりに時間はかかったし、未だにすべて解決されたわけではない。時間はまだまだ掛かるだろう。また話が逸れた。

現代人の五感の感度は、恐らく平均すれば年々右肩下がりなのではないか、という疑念についても、どこかで書いたような気がするので詳細は省く。

要するに、自然の情報よりも人工的な情報の方が刺激が強いので、五感そのものが人工的な情報に最適化されつつあるのではないか、というのが主旨だが、人工的な情報というのは人の手で編集されたり改変されたもので、生の自然の情報とは明らかに質が違う。

いいか悪いかはともかく、どこの誰がどういじくったのか分からん情報であることだけは確かである。このような二次・三次情報から得られる「ひらめき」などたかが知れてる、とボクは傲慢にも程があるほど思っているので、基本無視である。

だからと言って他人の話に耳を貸さないわけではない。相手次第である。

高度に思考を重ね導き出された情報は、人工的とはいえ、しばしば新しい見方を示してくれるからだ。というか、そういう人としかあまりお喋りをしないんですがね。

とにかく「ひらめき」を生むであろう情報は、自然だろうが人工だろうが、片っ端から叩き込む。

ももち(以前から登場する猫ね)だって「ひらめき」のネタ満載だし、おねえちゃん(以前から登場する娘ね)だってもちろんそうだ。どこに何が転がっているのかは分からんのだ。

すぐに「ひらめき」に繋がることを期待することは、僕の場合あり得ない。

むしろ、醸造する時間は長ければなはいほどいいと思っている。お酒や漬物みたいだが、実際そっちの方から得られる(大抵後から気がつくのですが)ひらめきの方が質は高い。

それでも、「ひらめき」のすべてが使い物になるかどうかはかなり疑問である。実際、ボクの場合は9割方使えない。いや、1割も怪しい気がする。

だから徹底的に検証するし、考える。

これはあくまでもお仕事の場合ですね。日常生活でこんなことをしていたら、ソッコーで狂うわっ!

ちなみに、この駄文も思いつきだけで書いているので、質に関してはかなり怪しい(笑)。精査などまったくしてないし。さすがに推敲はしますが、かなりいい加減である。

で、「ひらめき」とやらが重視されるのはもちろんお仕事に限定されるし、その限定された場では大抵の場合、原稿に「ひらめき」のネタは転がっているので、気楽と言えば気楽なのですが、どうにもそれでけで満足出来ないのがボクという人の厄介なところだ。

基本「原稿原理主義」なので、きちんと原稿を読めば済むはずであり、実際その通りなのだ。それでも満足出来ないのは、もうワガママ以外のなにものでもない。「まだ何かあるんちゃうか?」と思ってしまうのだ。

もっと分かりやすく酷い例えをすれば、「映らなくなったテレビでも叩けばどうにかなりそう」という、昭和の発想そのものだったりする。実際、それでどうにかなってたし、PCですらちょっと調子が悪いと、未だにボクは叩いたりしてるし。

シナプス結合とエラそうな言い方をしても、しょせんは電線が繋がるかどうかの話で(!)少々の接触不良などは、叩けばその場はどうにかなるもである。

「ひらめき」だってこの程度に荒っぽいものだからこそ「天の声」という比喩が生まれるに過ぎない。

だからこそ、日頃どれだけ情報をため込んでおくかが重要になる。いくら叩いても中で動くネタが少なければ、ひらめきようがないではないか。

と、まぁ難しいのやら荒っぽいのやらよく分からない結果にしかならなかったが、はぐれのひらめきなどこの程度である。


【フジワラヨウコウ/森山由海/藤原ヨウコウ】
YowKow Fujiwara/yoShimi moriyama
http://yowkow-yoshimi.tumblr.com/
http://blog.livedoor.jp/yowkow_yoshimi/

最近、本業で口に糊できないエカキ。これでエカキと言ってイイのか正直不安になってきている気の弱いぼーず。お仕事させてください…m(_ _)m


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■晴耕雨読[39]
趣味を仕事にする話

福間晴耕
http://bn.dgcr.com/archives/20180119110200.html
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気がついたら、趣味がみんな仕事になっている。

ちなみに、これまで仕事でやってきたことを挙げると、建築設計、インテリアデザイナー、CG系のテクニカルライター、イラストレーター、ゲーム開発全般、フォトグラファー、Webデザイナー、セミナーの講師、海外製品の買い付けと販売、遊技機(パチンコ・パチスロ)系映像製作、自動車用インターフェースデザイン、ちょっとした翻訳や技術系ライターなど、覚えているだけでもこれだけあって、自分で呆れてしまった。

趣味を仕事にするというと、採算度外視で働いてしまって身体を壊したり、好きなだけでは駄目で計画性を持たないと危険だとか、趣味性の高い仕事は潰しが利かなくて不安定だという話をよく聞かされる。

自分もかつてはそう思っていた時期もあったが、長年やっていれば結構なんとかなるものである。むしろ、多趣味なせいで逆に二足のわらじ状態となり、変な意味で安全牌になっている感じもある。

そもそも自分は貧乏性なので、本来趣味でやっていても「いつか仕事にする」という口実でばんばん機材を買って、その元を取ろうと色々やっているうちに仕事になるというパターンなのである。

とはいえ、器用貧乏とはよく言ったもので、これだけ色々やってきたものの、今でも仕事として残っているものは数少ない。

長年開店休業状態だったテクニカルライターの仕事が、テーマをCGなどの映像制作技術から、主にロシア関係の宇宙開発や軍事に変えて再び仕事になったように、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるで、長年やっていれば意外とものになることもあるようだ。

実は仕事に限らず趣味や習い事もこんな感じなので、ゲームのキャラクターで言えば、戦士や僧侶などの職種を超えてあらゆるパラメータを無節操に配分する効率の悪いやり方をしているのだが、願うならすべてのパラメータが使える値に達するまでの時間があればと思っている。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。


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■デジクリトーク
一年がかりの一分間アニメ

小川アリカ
http://bn.dgcr.com/archives/20180119110100.html
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かねてから、私は作ってみたい動画がありました。それは、人形を作る工程を撮影し、アニメにしてみること。

過去には、チームを組んでストップモーションアニメを制作したことがあります。メンバーはCMの仕事で知り合い、私以外は映像畑の人間で構成され、私は人形を作るというアナログ担当係をしていました。

機材もソフトも他のメンバーに揃えていただき、スタジオは夏休みの期間中は使用されないデザイン事務所をお借りし、窓を黒布ですべて覆い真っ暗闇にして24時間態勢でのぞみます。

この時の人形の大きさは、だいたい20cmぐらいです。空手黒帯の監督は、手を震わせながら「僕の腹筋はこの時の為に鍛えてある!」と、長時間中腰の姿勢で、悲鳴をあげながら数ミリ単位で人形を動かし、撮影のド素人の私は、パシャッパシャッとシャッターを切り、その単調な音に、うとうとします……。

5秒間のアニメに8時間も費やする時もあり、明け方に撮影が終了したころには、皆ヘトヘトで、帰り際にカメラマンが「監督、そのデータの入ったハードディスク、帰りの途中でオヤジ狩りにあってボコられても、絶対にそれだけは守って下さいよ!」監督「よし! 分かった! 死守する!」

こうして、監督の命よりも大切にされたアニメが「私は悪魔」です。

この時に色々と勉強させていただいた経験を生かし「いざ!」動画作りに挑戦!あー! でもカメラもソフトも持っていません……もとより業界で「原始人」と呼ばれた私は、デジタルが苦手でして……説明を受けても理解不能(とは言い訳で、先立つものがない)。

というわけで、シャッターを押しただけで写る、小さな手持ちのカメラと、Photoshopで制作することにしました。

人形を設置するには、あらゆる方向から人形を支える仕掛けが必要で、最初はその仕掛けも一緒にして動画にしていましたが、人形が目立たないため、写真を一枚一枚Photoshopで加工して、仕掛けを消すことにしました。

それは、根気のいる作業ですが、ストップモーションにありがちな、1フレームごとにパカパカとバックの色が変わり「あ〜失敗した〜」とか、1フレームだけ人形がずれていて、最初からやり直すなんてことをしなくていいので、これはこれで便利かな? と自分を慰めながら作業に取り組みます。

以前CMの仕事で、エディターが「根性あるのみ!」と言いながら、徹夜で作業をしていたその姿が思い出され、私も「根性あるのみ」を呪文のごとく繰り返し、粛々と進めていきました。

バックの処理を終えた画像は連番で保存し、Photoshopのアニメーション機能で読み込み、動画で書き出してから、iMovieで編集。これが一番お手軽で作れるかしら?

編集方法は簡単なのですが、意外と苦戦したのが、人形を前のフレームと同じ位置や角度に合わせること。

何せこの人形は60cmの大きさにして、地面に接する部分が少なくてグラグラと倒れ、まともに立たない!

一枚撮影しては、前回撮った写真とのズレをPhotoshopで確認する。びみょ〜に振りが違うので何度も撮影し、修正を繰り返すはめに。

これに懲りて、いま現在制作中の作品は二本足で立つ人形にしました。

動画の音楽は、好きで度々聞いていた秋山裕和氏に、ご無理をいい協力していただきました。

実は私は編集作業が嫌いです。同じ物を何度も見返していくうちに、途中で飽きてくるのです。でも今回は好きな曲を選んだお陰で、飽きることなく作業が進みました。

さて! 制作と約500枚もの写真加工に一年をかけ、動画になった作品は、1分間! でした。オヨヨヨヨ〜ん。

こんなふうにしてできあがった作品ですが、ご覧いただければ幸いです。

「ドラゴンの作り方」


「私は悪魔」(ユニット名スプリングボード)



【小川アリカ】
3Dイラストレーター
arika@skyblue.ocn.ne.jp
http://www.arika7.com/


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編集後記(01/19)

●林望「役に立たない読書」を読む(2017/集英社インターナショナル新書)。二万冊の蔵書と一緒に暮らす作家、国文学者のリンボウ先生のことだから、逆説と韜晦を含んだ、とうてい一筋縄でいきそうにもない読書論に違いないと、用心深く読み進めたのだったが、全然そんな面倒くさい内容ではなかった。

「自由に読み、ゆっくり味わい、そして深く考える。ただそれだけのこと。この絶対の自由と自主、それこそが読書にとって、もっとも大切なことなのだ、と私はただそれだけを言いたくてこの本を書いた」とあとがきにある。ベストセラーは読まなくてもいいが、真の古典は読んだほうがいいと断言される。

日本では、本当の意味での「読書」が、紙から電子書籍に置き替わることはないだろう、と先生は予想する。日本語は、漢字、平仮名、片仮名、アルファベットの四つの文字を使い分けるという点で、他のどの国にもないユニークな文字体系を持つ。その理由は、日本語は世界一、同音異義語が多い言葉だからだ。

漢字を使って表記しないと、意味が判別できにくい、非常に読みにくくなってしまうという、日本語固有の問題点がそこにはある。辞書的に同じ意味であっても、用字の使い分けによって、一定のニュアンスの違いが出てくるという特殊事情もある。さらに様々な書体があり、縦書きか横書きかも大問題である。

「日本語はグラフィックな情報が非常に大きな役割を果たす言語であり、日本人はこの文字を『グラフィック情報として味わいながら、テキスト情報として理解する』という特異な文化を1000年以上続けてきた」のである。さらに、日本人は一般の書物にもさまざまの「見た目の美しさ」を求めてきた。

内容や書体に加えて、全体の装幀や紙質といった「オブジェクトとしての書物の形(書姿)に強い意識を持ちながら読書をしてきた、長い長い歴史が日本にはあった。「紙の書物」に、欧米人とは比べものにならないほどの愛着を感じるのが日本人である。電子本には質感や肌触りが、まったく存在しない。

さらに、電子本には「我が物にする」という感覚がない。「愛着」という要素が介在しにくい。まさにその通りで、何年前に導入したのかも忘れたKindleは、もう長いこと画面を見たことがない。時々、充電してくれーという合図に応えるだけの、いまだに頑固に携帯電話(死語w)も持たない老人なわたしだ。

「知識をタダで手に入れようとしてはいけない。結局のところ、無償で手に入れたもの、借りて読み囓ったものなどは、自分の心の中深くに残らない。そこで、あらためて言っておきたいことは、本は自分で買うべし、そして座右に置いておくべし、という、この二点です」。うう、図書館ハードユーザである私には耳に痛い。この本も図書館の新刊棚で見つけて借りたものだ。(柴田)

林望「役に立たない読書」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797680091/dgcrcom-22/


●「変な意味で安全牌」。私もだ。趣味の延長が仕事になるとは思わなかったわ。/1年が1分。思い出したのは「ハーレークイン」を描いている動画と、雪の上の足跡で描くスノーアート。

/直感ザワザワの続き。iPhoneのヘルスケアやアクティビティアプリを見ると、二日前のあの寒い時に再起動がかかってからの記録がない。ふと、そういやAWが静かだったなと気づく。通知はあるが、それはAWにインストールされているアプリからだけだ。

AWから「iPhoneを探す」をしたが反応なし。普段なら大音量でiPhoneが答えるのに。iPhoneのAWアプリを見ると、AWはオフラインになっている。ぎゃー。目の前にあるでしょ! AWのコントロール画面だと、左上にiPhoneと繋がっているマークは出ている。

iPhoneからAWアプリを開くと、ペアリングは解除されていない。どちらも再起動や機内モードのオフオンしたが繋がらず。iPhoneからペアリング解除をしたら、AWから「iPhoneを探す」がグレーアウトした。解除できたってことよね? 続く。(hammer.mule)

Drawing Harley Quinn
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01NCMNTH4/dgcrcom-22/

スノーアート
https://tabi-labo.com/243132/snow-art

写真集が販売されている。200枚以上の画像があるらしい
http://snowart.gallery/