[4495] 最強のイラストレーター 生頼範義

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《4,000円以下のDAPを70,000円のヘッドフォンで聞く》

■ネタを訪ねて三万歩[154]
 中国製ガジェット沼にドップリ
 海津ヨシノリ

■グラフィック薄氷大魔王[551]
 最強のイラストレーター 生頼範義
 吉井 宏




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■ネタを訪ねて三万歩[154]
中国製ガジェット沼にドップリ

海津ヨシノリ
http://bn.dgcr.com/archives/20180124110200.html
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年末年始は引きこもりの生活なので、正直つまらないのです。テレビ見るわけでもないので。いや、テレビは見る気もないし、見る環境もないですから。

例年は、ひたすらDVDをレンタルしまくるという感じでした。しかし、今回は色々とやることが溜まっていたので、意外と充実していました。

実は10月あたりに執筆の案件が入っていたのですが、色々あって私が身動きできず、遂に年末年始に怒濤の執筆ということになりました。いや、そうしないと大変な事になりますので(既になりかけていますが……)。

そして、ポチリました。どう考えても、執筆の反動だと思います。

年末に思案中だったDAPは、結局衝動買いしてしまいました。安い価格設定のiPodTauchで比較すると、約1/5の価格で遊べるデジタルオーディオプレイヤーです。

比較は微妙ですが、驚きの4,000円以下。しかし、機能は豊富です。iPod Touchなら対応していますが、iPodにはないICレコーダーや、FMラジオ機能付きとは驚きです。

なにより本体は8GBですが、TFカードが使えるので可能性は色々ですね。音質は電車の中で聞くのには充分。それと、ボディーは嬉しい金属製です。とにかく私は、音声データを聞きたくてゲットしたわけですから。

ということで、年末年始に遊んでみました。まず、よく考えたら海外のFMラジオ放送は国内では聴けないようで(?)私としてはハズレかな。ラジオドラマだったら国内でも聞きたいですけど……。

それよりも、気になっていたICレコーダー機能は意外と感度が良くて驚き。既に高性能な国産メーカー品を持っているので、期待はまったくしていなかったのでビックリを越えて衝撃でした。

とにかくTFカードが使えるので、ジャンル毎にデータを分けて使うことができます。なにより、iTunesで管理されていないので超便利。iTunesは最近本当に使い勝手が悪くなってしまったので、現在本気で疎遠中です。

とにかく、フォルダーにファイル名をユーザーが自由に設定して、データを突っ込むだけのイージー操作に首ったけです。

もちろん、アーティスト名などを設定することで、DAP側で使い勝手を格段に良くしたければ、iTunesで管理した方が賢明なのですが、今はWindows側でフリーウェアを利用しています。iTunesとは本気で疎遠中なので(超天の邪鬼)。

気にしたのはインターフェースなのですが、これが意外とスンナリ理解できて問題なし。もちろん日本語表記ですし、日本語マニュアルも付いています。

昨年はいくつかの大学で、中国からの留学生とどうやら相性がよかったので、もしかしたら中国フェアが続いているのかも。なんというか……乱暴な言い方をすると、私の日本語は日本人学生よりも中国人学生にやたらとよく通じた年でした。喜んでいいのか悲しんでいいのか、具体的なコメントは控えますが。

「しかし、そんなに安かったら、結局はオモチャでしょ。重要なのは音質でしょ!」と突っ込まれそうですね。

冒頭で音質は電車の中で聞くのには充分と言いましたが、これが良い意味で大いなる勘違いでした。なんと、手持ちで一番いいヘッドフォン(final SONOROUS VI)で聞いてみたところ、MP3程度であれば完全に及第点です。

デジタルリマスターとして昨年販売された、Beatlesの "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" もゲットしていますが、あれは全曲で5GB越えます。FLAC型式だから当然ですね。

それを考えたらMP3は7分の1ですから、ソレがこのくらいクリアに聞こえるのであれば問題ないという意味です。

かくして年末年始は、4,000円以下のDAPを70,000円のヘッドフォンで聞くというオバカな実験に、驚きを隠せない私でした。

そもそもCDとほぼ同じ音源のMP3は、原音の約10分の1です。片やFLACは原音の約半分です。やっぱり大切なのはスピーカー(ヘッドフォン、イヤフォン)ですね。

ちなみに、自宅用に128GBのTFカードで武装した、SONYウォークマンAシリーズ64GBがあります。まっ、これは持ち運び用のオモチャが欲しかっただけなのです。つい出来心でポチッとしてしまいましたが、これが予想外の大当たりだったわけです。やっぱり道具は遊び心が大切ですね。

マニュアルに面白い日本語を発見しました。「ボタンを押しすると」です。間違ってはいないけれど、これだと「ボタンを押し磨る」で古文になってしまいます。いくらなんでも「ボタンを摺り合わせる」なんて変ですからね。

でも、それは我々が英語などを使うときのミスの範囲でしょう。意味は理解できるので問題なしです。

そして、調子に乗った私は予備用に小型ICレコーダーも、中国製で決めてしまいました。8GBメモリに小型ピンマイクとイヤフォン付きで3,000円以下。

今回購入したDAPにもICレコーダーとしての機能はあるのですが、同時使用できないのと、もともと利用していた国内メーカー品の予備が欲しいという位置づけです。

ですから、相変わらずそれほど期待していませんでした。ところが録音データが予想外にクリアでビックリ。価格的にはオモチャなのですが、性能的には使えるガジェットです。操作性は慣れの問題的範囲で合格点。

暫く使っていてちょっとトラブル発生でしたが、メーカの対応は早く問題はすぐに解決しました。

ここで「あれ?」と気付いた(気付くのが遅い)のですが、DAPとICレコーダーの違いは何なのだろうか? です。どちらも両方の機能を備えているわけですから、ほとんど同じと言い切っても過言ではない状況でした。

こうなると、国内メーカーは本当にヤバイですね。なんだかドップリとこのガジェット沼に入り込んでしまいそうです。

そして、危険な状態の私に拍車を掛けるように、ICレコーダーに入っていたクーポン券の番号をサイトで入力したら、なんと電動毛玉取りが当たってしまうという予想外のオマケ付きに、またまたビックリ。ただし住所などの情報を求めてきたのでスルーしました。

とにかく、色々と抜け出せなくなる予感を感じる年末年始でした。次はスマートウォッチかな?

■今月のお気に入りミュージックと映画

"I Am Wrath" on Chuck Russell in 2016(U.S.A)

邦題「リベンジ・リスト」。ジョン・トラボルタが20年ぶりに挑んだアクションスリラー映画という位置づけですが、スティーヴン・セガールのケイシー・ライバック、トム・クルーズのジャック・リーチャーのように無敵のスーパーマン的な描写ではなく、一応元工作員ですが、見ていてかなりハラハラする感じが、逆にリアルで良かったです。

というか……主演のジョン・トラボルタが、予想外にいい味を出しています。気になるのは頭部だけ。相棒のクリストファー・メローニもね。とにかく最後の最後まで、見ている者をいい意味で色々と裏切ってくれます。これは絶対に続編ありですね〜と勝手に切望。

『リベンジ・リスト』予告編


"You're Sixteen" by Ringo Starr in 1973(U.K)

オリジナルは、1960年、ジョニー・バーネットが歌ったものですが、私はリンゴ・スター版が好きです。実はLPアルバムも持っています。

で、何故この曲なのかというと、「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のエンドロールでレイア姫(レイア・オーガナ)を演じたキャリー・フランシス・フィッシャーの哀悼が出てくることに端を発して、友人が教えてくれたのがこの曲。

なんの関連性があるのかというと、なんと当時のプロモーションビデオにキャリーがでているのです。とってもキュートな彼女が登場です。新鮮でした。

「スターウォーズ エピソード4」に登場したときは色々と揶揄されていた彼女ですが、こうして「最後のジェダイ」までを見てしまうと、やっぱり彼女でなくてはダメだったのだと痛感。

我々に夢を与えてくれた彼女に、心から哀悼の意を表したいと思います。そういえば、娘であるビリー・ラードが「フォースの覚醒」と「最後のジェダイ」にコニックス中尉役で出演していますね。May the force be with you!

Ringo Starr - You're Sixteen You're Beautiful(And You're Mine)


映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』特別映像(キャリーのファン必見)


John Williams conducts Princess Leia's Theme(Star Wars)
(作曲者John Williams本人によるレイア姫のテーマ)



【海津ヨシノリ】
グラフィックデザイナー/イラストレーター/写真家/怪しいお菓子研究家

yoshinori@kaizu.com
http://www.kaizu.com
http://kaizu-blog.blogspot.com
https://www.facebook.com/yoshinori.kaizu

年賀状を止めてしまったのと年末年始は、ちょっとした執筆があって缶詰状態でした。もちろん、座りっぱなしはストレスが溜まるので適度に散歩をしていましたが、ちょっと気になったのは、驚くほど松飾りが少ないコト。

本当に今は正月なのだろうか? という疑問さえ湧いてしまうほどでした。クリスマスの飾りでは、かなり色々と皆さん遊んでいるのに。

かく言う私も、正月飾りはしたことがありません。そもそも元日の昼からスパゲティー食べていたくらいですから。もちろん最低限、朝だけは正月ゴッコはします。

多分、年賀状と同じように色々と伝統的なことが壊れ始めているのかもしれませんね。私は特にソレが悪いことだとは思っていません。価値観も文化も変わるのが時代ですからね。

それよりも2018年はどんな年になるのかが楽しみです。皆さんにとって良い年になることを願っています。

■page2018に登壇します

来たる2月7日より、池袋サンシャインシティーで開催される「page2018」にPhotoshopネタ「海津式デジタル・ウェザリング技法」にて登壇(2月9日14:45〜15:35)することになりました。参加無料(※)ですので、お時間のある方はお気軽に参加してください。詳しくは以下でご確認下さい。

InDesignの勉強部屋
https://study-room.info/jagat/page2018/#kaizu

※セミナーヘの参加は無料ですが、page2018への入場は有料です。ただし、page2018より無料招待券を入手できますので、活用されるといいでしょう。
https://page.jagat.or.jp

■2月の画像処理セッションは2月15日を予定しています〜Fusion360のモデリング基礎【有機形状のモデリング】〜詳しくは以下でご確認下さい。
https://www.borndigital.co.jp/seminar/5934.html

参加は無料で、どなたでも参加できます。詳しくは以下のサイトでご確認ください。なお、事前登録はありませんので、開催時間前に直接会場にお越しください。

○講演内容

Fusion360では、どちらかというと苦手と思われている有機的な形状のモデリングについて、整理・解説いたします。

・モデルとスカルプトの関係
・基本形状の設計
・針金細工
・他3Dからの読み込み


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■グラフィック薄氷大魔王[551]
最強のイラストレーター 生頼範義

吉井 宏
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上野の森美術館の「生頼範義展」に行ってきた。地元宮崎などで何度か同様の展示があったのは知ってたけど、ついに東京で見れた! すごかった。
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生頼範義展 THE ILLUSTRATOR 東京会場
会期:2018年1月6日(土)〜2月4日(日)期間中、休館日なし
会場:上野の森美術館
http://www.ueno-mori.org/
http://ohrai.net/

僕の作風と生頼範義って、あんまり関係ないように思われるかもしれないけど、高校時代からめちゃくちゃハマッてたのだった。超絶カッコいい「オーライ」って名前を覚えたのは、たぶん「スターログ」誌1979年8月号の特集だった。
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それより前に、とんでもなく上手いイラストレーターがいるって意識したのが、高校一年のとき買ったハチャハチャSFの文庫本、平井和正「超革命的中学生集団」のイラスト。

内容もイラストも超お気に入り。「過剰なほどの絵の上手さがそのままギャグになる」に衝撃を受けたのだったw 今回原画も展示されてて感激。
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その後の「SW帝国の逆襲」のポスター絵は、「イラストというメディアのパワー」はもちろん、海外の仕事(僕の大好物の逆輸入パターン)を意識するきっかけにもなった。
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たぶん、イラストを仕事にしようと思った理由の、少なくとも三分の一は生頼範義。イラスト一枚が、映画に匹敵するようなパワーを持てる可能性にワクワクした。

絵がかければ何でも表現できる! 描き方も生頼絵を模写して身につけた。あまりに影響が強かったので、二十代前半で封印。数年前に氏が亡くなるまで、興味持たないようにしてたくらいw
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バイブルだった80年12月発売の画集「生頼範義イラストレーション」に掲載されていた、僕の一部になってるというか深く刻まれてるイラストの原画の数々が目の前に! リキテックスの使い方を覚えた、制作過程写真の絵の実物が! でかい!

アメリカの大御所イラストレーターは、雑誌の表紙の原画がドア一枚サイズって聞いてたけど、生頼作品の原画も大きい! 画面設計も綿密だし、大量の資料も必要だろうし、雑誌イラスト一枚にどんだけ情熱注ぎ込んだんだろうって気が遠くなる。

ただ、絵画として見ると、盛り上げ塗りしようがニス仕上げしようが、やはりイラストのいい意味の「軽さ」の範疇であることは間違いない。

会場にも大量に展示されてたけど、文字がレイアウトされた印刷物で最大の効果を発揮する「イラスト」なんだなあとあらためて感じた。最強のイラストレーター。

絵画というか、美術作品として展示しない前提、歴史に留まろうとしてない前提で、与えられたテーマを触媒として、今現在のアイディアや技術を極限まで注ぎ込めるのがイラストのカッコよさ。

滅多に見れない貴重なものとしての原画展示はぜんぜアリだけど、「原画を見ないとわからない魅力」でイラスト原画展を語るのはちょっと違うかなあ、が持論。

とか言いつつ、網点やCMYKインクのダイナミックレンジから取りこぼされた、巨大な原画の魅力を堪能w

新聞広告や挿絵などの、モノクロの仕事の原画もたくさんあった。宮本武蔵や作家や政治家の肖像など、やはり大きい! 画集で見て点描画と思い込んでたけど、細かく弧を描くような繊細なタッチだった。

●模写と生頼由来のアクリル画法について

1981年春、高校卒業直前か専門学校に入りたての頃に模写したことがある。

生頼範義の画集から、有名プロゴルファーのイラスト2点を画集に載ってたサイズ(顔部分がハガキ大程度)で描いたけど、今回見た原画がB3かA2くらいの大きなサイズなことに驚いた。
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Facebookにアップしたら「可愛い」と言われたw 何かつかめた感動と必死さが確かにカワイイ。っていうか、この模写絵をじっくり見たのは何十年ぶり。今見るといろいろ若すぎるw

これが模写した見開き。背景を塗った時の緑色の絵具がページ下についてるなw
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ロバート・レッドフォード風のは、専門学校一年の夏休みに生頼風に描いたもの。あまりにグロテスクなので、モザイクかけときましたw B2サイズ。秋にこれのグロテスク部分を削除して、B1サイズに描き直した(所在不明)。
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赤い服の方は、B5くらいのサイズで描いたグレッグ・ノーマン。専門学校二年頃。プロのイラストレーターやデザイナーも出品する展覧会に出したんだけど、評判が良くて有頂天になってしまい、数年くらい道を間違えることになるw
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生頼画集で知った「暗部をベタ塗りしておいて、明るい色をザクザク重ねて立体感を出す」は、Painter時代にもそのまま続けてた僕の基本技法。

白い下地からだんだん暗くしていくと、見えるすべてを描かなくちゃいけないけど、暗いほうから描くと光が当たってる部分だけ描けばよく、ずいぶんラクで早いのだ。

ただ、印刷すると白浮きというか、階調が飛んでおかしくなることがある。先回りして印刷上がりを想定して描いたり、グリーンがきれいに再現されないからド派手にしておくとかもある。照明の具合によって、ぜんぜん違って見えるのも困った。

そのへん、Painterが出たときは、照明や印刷での変化を気にしなくてもいい僕にピッタリな画材だ!って狂喜したわけなのです。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/

生頼イラストの映画ポスターは、ショボい映画でも魅力を100倍くらいアップしちゃう詐欺とか言われてたなw

僕的に生頼範義の名前が大きすぎて、俳優の生瀬勝久を割と最近までずっと「オーライ」と思い込んでた。

最近、SNSの影響か、一部撮影OKな展覧会が増えてて良い。生頼展もあちこち撮影可だった。ジュラシック・パークの恐竜イラストといっしょに写真撮った。
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ついでに書くと、「おしゃべりOKタイム」を設けた展示ってのもあるといいな。絵を前にして、あーだこーだベラベラしゃべりたいのに、声が出しづらい……。検索したら、最近はおしゃべりOKも拡がりつつあるらしいけど、賛否両論。

・スワロフスキー干支モチーフの「ZODIAC」
https://www.fashion-press.net/news/33277

・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x

・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


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編集後記(01/24)

●高橋ユキ「暴走老人・犯罪劇場」を読んだ(2017/洋泉社新書)。高齢者たちが凶悪な犯罪に手を染める。そして公判ではその「老人力」を全開して奔放に振る舞う。その身勝手さ、自由さはみごとなものである。筆者は13年にわたって刑事裁判の傍聴を続けてきた。そして、彼らのように高齢になってから殺人など、ルール違反、人間失格な行動に走る人たちを「アウト老」と名付けた。

「犯罪白書」を見ると、近年、男女ともに高齢犯罪者の増加が著しい。殺人や強盗などの凶悪犯に加え、傷害や暴行といった粗暴犯では高齢者が凄まじい勢いで増えている。高齢者人口が増加し、出生率の低下による少子化は、ますます高齢者犯罪を生む。アウト老のとんでもない実態を露わにするレポート。

この本に登場するアウト老たちは、筆者がこれまで見てきた高齢凶悪犯罪者のほんの一部だという。共通項は、カネの問題を抱えていること、かつて「良い時代」を生きてきた過去があり、妙にプライドが高いこと、不寛容さがあること、そして「歪んだ正義感」があることだ。これらは“燃料”でしかない。

“着火”させるのは高年齢者ゆえの「他者への強い執着心」「怒りを制御できない」という「性質」である。認知力の低下に加えて、「プライドの高さ」や「歪んだ正義感」といった共通項が、執着心や怒りを増幅させていった。それをコントロールできれば、アウト老にはならなかっただろうと筆者は考える。

アウト老たちは逮捕されてもなお、自分が正しいと信じて疑わない。この独善性はどこからくるのか。精神科医の春日武彦氏に聞くと「〈プライド・こだわり・被害者意識〉がグロテスクに結実しているということでしょうね。自分には人生経験と苦労がある。それなのにオレを〈ないがしろ〉にしやがった世の中こそが反省すべきだ、という思いが根底にあるからでしょう」と説く。

アウト老たちは、法廷でもアウト老ならではの振る舞いを見せる。妙なプライドを振りかざして被害者を悪し様に罵る。老人力を駆使して公判を混乱に陥れる。自分こそ弱者、被害者だと主張する。いずれもまったく自分勝手、まったく自由奔放、まったく反省がないのが特徴だ。救いがたいアウト老たちである。

それぞれの事件の概要と、法廷での彼らの言動を具に描写していて興味深い。筆者の傍聴ポイントが「車椅子の被告人の裁判は何かある」で、たいてい不可解な言動を繰り返す。車椅子は殆ど偽装であるらしい。弁護人は犯行時に被告は心神耗弱状態であり、責任能力について争うと主張するのはお約束だ。

いやはやとんでもない凶悪事件の詳細と、公判時のとんでもない言動がミックスされ、とんでもないアウト老の本性が暴かれていて、その方面が好きな人には格好の娯楽レポートになるだろう。一章まるまる使った「恐怖の隣人トラブル」はリアルに怖い。幸い我が家の両隣は静か過ぎる人たちである。

この新書のフォーマットが問題だ。1ページが1行42字、16行、断ちから6ミリの余白である。余白が狭すぎて落ち着かない。1行多いからだ(代表的な新書として新潮新書を例にあげると、1行39字、15行、断ちから10ミリの余白である)。右ページ隅に1行15字だけ、左ページは次の章のタイトルが中央に、というみっともない見開きもある。右ページ白のほうがまだましである。設計が菊池信義とあるが、なんでこうなるの? 残念な新書である。(柴田)

高橋ユキ「暴走老人・犯罪劇場」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4800313708/dgcrcom-22/


●直感ザワザワの続き。単体ではどちらも使い続けられた。iPhoneとだけデータを同期するんじゃなくて、Wi-Fi下でiCloudに自動的にアップするとか、マージするとか何か仕組みを残しておいて欲しい。

どちらかがトラブったらデータ消えます、っておかしくない? それもヘルスケアという取り返せないデータ。

Standlandアプリは毎日起動せず、たまに今日は何日目かな〜と覗く程度。しかしこの寒い日の外出以降、そろそろ見ておきたいな〜という気持ちが何度か浮かんでいた。

しかし細かな仕事が多くて、つい後回しにしていた。せめて当日に気がついていたら……。妙に気になっていたのはこういうことだったのね。直感やザワザワは優先すべきだったわ。(hammer.mule)