グラフィック薄氷大魔王[551]最強のイラストレーター 生頼範義/吉井 宏

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上野の森美術館の「生頼範義展」に行ってきた。地元宮崎などで何度か同様の展示があったのは知ってたけど、ついに東京で見れた! すごかった。
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生頼範義展 THE ILLUSTRATOR 東京会場
会期:2018年1月6日(土)〜2月4日(日)期間中、休館日なし
会場:上野の森美術館
http://www.ueno-mori.org/
http://ohrai.net/

僕の作風と生頼範義って、あんまり関係ないように思われるかもしれないけど、高校時代からめちゃくちゃハマッてたのだった。超絶カッコいい「オーライ」って名前を覚えたのは、たぶん「スターログ」誌1979年8月号の特集だった。
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それより前に、とんでもなく上手いイラストレーターがいるって意識したのが、高校一年のとき買ったハチャハチャSFの文庫本、平井和正「超革命的中学生集団」のイラスト。





内容もイラストも超お気に入り。「過剰なほどの絵の上手さがそのままギャグになる」に衝撃を受けたのだったw 今回原画も展示されてて感激。
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その後の「SW帝国の逆襲」のポスター絵は、「イラストというメディアのパワー」はもちろん、海外の仕事(僕の大好物の逆輸入パターン)を意識するきっかけにもなった。
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たぶん、イラストを仕事にしようと思った理由の、少なくとも三分の一は生頼範義。イラスト一枚が、映画に匹敵するようなパワーを持てる可能性にワクワクした。

絵がかければ何でも表現できる! 描き方も生頼絵を模写して身につけた。あまりに影響が強かったので、二十代前半で封印。数年前に氏が亡くなるまで、興味持たないようにしてたくらいw
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バイブルだった80年12月発売の画集「生頼範義イラストレーション」に掲載されていた、僕の一部になってるというか深く刻まれてるイラストの原画の数々が目の前に! リキテックスの使い方を覚えた、制作過程写真の絵の実物が! でかい!

アメリカの大御所イラストレーターは、雑誌の表紙の原画がドア一枚サイズって聞いてたけど、生頼作品の原画も大きい! 画面設計も綿密だし、大量の資料も必要だろうし、雑誌イラスト一枚にどんだけ情熱注ぎ込んだんだろうって気が遠くなる。

ただ、絵画として見ると、盛り上げ塗りしようがニス仕上げしようが、やはりイラストのいい意味の「軽さ」の範疇であることは間違いない。

会場にも大量に展示されてたけど、文字がレイアウトされた印刷物で最大の効果を発揮する「イラスト」なんだなあとあらためて感じた。最強のイラストレーター。

絵画というか、美術作品として展示しない前提、歴史に留まろうとしてない前提で、与えられたテーマを触媒として、今現在のアイディアや技術を極限まで注ぎ込めるのがイラストのカッコよさ。

滅多に見れない貴重なものとしての原画展示はぜんぜアリだけど、「原画を見ないとわからない魅力」でイラスト原画展を語るのはちょっと違うかなあ、が持論。

とか言いつつ、網点やCMYKインクのダイナミックレンジから取りこぼされた、巨大な原画の魅力を堪能w

新聞広告や挿絵などの、モノクロの仕事の原画もたくさんあった。宮本武蔵や作家や政治家の肖像など、やはり大きい! 画集で見て点描画と思い込んでたけど、細かく弧を描くような繊細なタッチだった。

●模写と生頼由来のアクリル画法について

1981年春、高校卒業直前か専門学校に入りたての頃に模写したことがある。

生頼範義の画集から、有名プロゴルファーのイラスト2点を画集に載ってたサイズ(顔部分がハガキ大程度)で描いたけど、今回見た原画がB3かA2くらいの大きなサイズなことに驚いた。
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Facebookにアップしたら「可愛い」と言われたw 何かつかめた感動と必死さが確かにカワイイ。っていうか、この模写絵をじっくり見たのは何十年ぶり。今見るといろいろ若すぎるw

これが模写した見開き。背景を塗った時の緑色の絵具がページ下についてるなw
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ロバート・レッドフォード風のは、専門学校一年の夏休みに生頼風に描いたもの。あまりにグロテスクなので、モザイクかけときましたw B2サイズ。秋にこれのグロテスク部分を削除して、B1サイズに描き直した(所在不明)。
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赤い服の方は、B5くらいのサイズで描いたグレッグ・ノーマン。専門学校二年頃。プロのイラストレーターやデザイナーも出品する展覧会に出したんだけど、評判が良くて有頂天になってしまい、数年くらい道を間違えることになるw
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生頼画集で知った「暗部をベタ塗りしておいて、明るい色をザクザク重ねて立体感を出す」は、Painter時代にもそのまま続けてた僕の基本技法。

白い下地からだんだん暗くしていくと、見えるすべてを描かなくちゃいけないけど、暗いほうから描くと光が当たってる部分だけ描けばよく、ずいぶんラクで早いのだ。

ただ、印刷すると白浮きというか、階調が飛んでおかしくなることがある。先回りして印刷上がりを想定して描いたり、グリーンがきれいに再現されないからド派手にしておくとかもある。照明の具合によって、ぜんぜん違って見えるのも困った。

そのへん、Painterが出たときは、照明や印刷での変化を気にしなくてもいい僕にピッタリな画材だ!って狂喜したわけなのです。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/

生頼イラストの映画ポスターは、ショボい映画でも魅力を100倍くらいアップしちゃう詐欺とか言われてたなw

僕的に生頼範義の名前が大きすぎて、俳優の生瀬勝久を割と最近までずっと「オーライ」と思い込んでた。

最近、SNSの影響か、一部撮影OKな展覧会が増えてて良い。生頼展もあちこち撮影可だった。ジュラシック・パークの恐竜イラストといっしょに写真撮った。
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ついでに書くと、「おしゃべりOKタイム」を設けた展示ってのもあるといいな。絵を前にして、あーだこーだベラベラしゃべりたいのに、声が出しづらい……。検索したら、最近はおしゃべりOKも拡がりつつあるらしいけど、賛否両論。

・スワロフスキー干支モチーフの「ZODIAC」
https://www.fashion-press.net/news/33277

・スワロフスキーのLovlotsシリーズ「Hoot the Owl」
http://bit.ly/2ruVM9x

・パリの老舗百貨店Printemps 150周年記念マスコット「ROSEちゃん」
http://departmentstoreparis.printemps.com/news/w/150ans-41500

・rinkakインタビュー記事
『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』吉井宏さん
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii