もじもじトーク[79]フォントかるた(後編)相対フォント感
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。みなさん、インフルエンザや風邪など、引いてないですか?

ぼくは、先週、風邪でダウンしました。インフルエンザではなかったのでよかったですが、結局、急ぎの仕事の対応に追われて、布団の中で一日8時間ぐらい、ノートPCを開いてました。

そんな生活が二日続きましたが、熱も下がり、体調も戻りつつあるのでよしとしよう!

さて、今日のお題は、フォントかるた(後編)です。

前々回のもじもじトークで紹介しました「フォントかるた」は、発売されてから一年経過しましたが、昨年に引き続き、じわじわと話題になっています。

えっ、ふぉんと? フォント名を詠みあげて、そのフォントの札を取る、という大変マニアックなカードゲームです。

amazonでも売っています。フォントかるたで検索してね。価格は2,592円。詳細情報の「プレイヤー数1〜10人」に笑いました。はい、もちろん、一人でも遊べます。僕は一人かるた遊びが好きです。





●拡張パックはマジで無理ゲー

まずは、これをご覧ください。ジャーン!
http://bit.ly/2CmnmqD


9種類の明朝体が並んでいます。さぁ、みなさん、これら明朝体をじっくり観察してください。書体名を当てること、できますか?

では、答え合わせをしてみましょう。
http://bit.ly/2GbNuXS


左上から書体名を順番に書きます。
・本蘭明朝 L
・精興社書体
・MS 明朝
・リュウミン R-K
・MS 明朝
・秀英3号 R
・イワタ明朝体オールド
・モトヤ明朝2
・筑紫Q 明朝 L

ぼくが自信持って答えられるのは「筑紫Q 明朝 L」ぐらいです。あとは「リュウミン」をどうにか当てることができました。

これを全部答えられる人がいたら、お知らせください。まず、いないと思います(笑)かなりの「絶対フォント感」を持っている人でも、無理だと思います。

実は、これら9枚は、超上級者向けの『フォントかるた拡張パック 黒』(12書体)に収録されている明朝体なのです。

まずは、『フォントかるた』(通常パック/48書体)で遊んで、物足りなくなったら、拡張パック(黒と白がある)を買い増しすると、更に楽しさが広がります。

個人的な意見ですが、これらの書体名を見分けられる絶対フォント感を持つよりも、読み札に書かれている活字の背景や、その書体の特徴や情感を理解することのほうが大事だと思っています。

筑紫明朝を作ったフォントワークス藤田さんから、「写研に入った直後の若かった頃は、本蘭明朝がモダンで綺麗だなぁーと思ってゾクゾクした。その後、オールドスタイルで情感があって、ウエストが少し絞られたフォルムが美しい石明朝体に傾倒した」ってお話を、以前、聞いたことがあります。

拡張パック(黒および白)に収録されている、本蘭明朝や石井明朝を見比べるて、なるほどなぁーと思うわけです。

あらためて、このふたつの書体を見比べてみましょう。
http://bit.ly/2nYgjAe


読み札の解説を読みながら見比べないと、見分けが付かないかもしれませんね。

●非売品のフォントワークスバージョン

次に、こちらをご覧ください。ジャーン!
http://bit.ly/2nZS4BA


先ほどの鬼レベルの明朝体を見分けことに比べると、だいぶ、気持ちが楽になりましたね!

左上から順番にフォント名を紹介します。
・ラグランパンチ UB
・くろかね EB
・ロウディ EB
・コミックレゲエ B
・コメット B
・モード明朝体Aラージ M
・ニューシネマA D

フォント名が分からなくても、マツコの知らない世界で「くろかね」が必ず使われてるよねーとか、「コメット」は宇宙兄弟で使われているよねーとか、マジで怒ってるときのテロップは「コミックレゲエ」が使われるよねーとかの発見があったと思います。

それ以外では、映画の字幕は「ニューシネマ」が使われているとか、テレ東23時からの番組ワールドビジネスサテライトでは「モード明朝」が使われているよねとか、気付いた人もいるかもしれませんね。

フォントワークス書体って、テレビ・映画・ゲーム・アニメ・コミックの分野では一番使われていますね。

ぼくの大好きな書体デザイナー藤田重信さんが作っている筑紫書体シリーズは、装幀・ポスター・商品ロゴなどでも大活躍していますが。

この「フォントワークス版フォントかるた」は非売品なので入手困難ですが、書体を見分けることが比較的分かりやすいので、遊び易いです。

●相対フォント感と命名

昨年は、デザイン雑誌で「絶対フォント感」を身につけよう! って特集が組まれるとすぐに売り切れるようになり、マツコの知らない世界では、フォントの世界が特集されたり、フォントが身近な存在になりました。

でも、絶対フォント感の持ち主よりも、「このシーンではコンテンツの情感に合わせて○○書体を使おう」とか、数ある明朝体フォントの中から「この企業の商品サイトではブランディング視点から○○明朝体をWebフォントを使おう」とかの提案がきちんとできることのほうが重要だと思います。

そんな力を『相対フォント感』と名付けたいと思います。

次回は、「相対フォント感基礎講座」、ゴシック体と明朝体の使い分けをお送りしようかなと思ってます。

では、再来週の木曜日に、またお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。