もじもじトーク[81]タイポグラフィの学び方
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

みなさんは花粉症は大丈夫ですか? 僕も先週から目がかゆく鼻水もでてきました。症状はそれほどひどくないのですが、早く花粉が飛ばない季節になってほしいです。

そんな中、週末から喉も痛くなってきたので、本日、病院へ行ってきました。花粉症だけでなく、風邪も併発してしました。

●第13回FONTPLUS DAYセミナー

隔月で主催している『FONTPLUS DAYセミナー Vol. 13』を2018年3月7日(水)に開催しました。

テーマはずばり、「タイポグラフィ」です。今回も募集開始してから5時間ぐらいで定員80名に達しました。タイポグラフィにこれだけ多くの方が興味を持っているということ、とても素晴らしいことですね。





FONTPLUS DAYセミナー Vol. 13[タイポグラフィの学び方]
〜東洋美術学校から、河野三男さんと中村将大さんをお招きして〜

https://fontplus.connpass.com/event/79137/


僕は、IT系の技術会社に勤務しています。7年前に「FONTPLUS」というWebフォントサービスを立ち上げました。技術プラットフォーム屋です。

サービス立ち上げ当初から、「HTMLやCSS、JavaScriptが得意でも、文字や活字のことを理解している人は少ないよね」「Webディレクターやマーケターの方もタイポグラフィにあまり詳しくないよね」と感じていたのです。

なので、Webデザイナー以外の人も、文字や活字を深く理解すると楽しいし、新しい武器を持つことになるんじゃないかなと思って、「文字とデザイン」を学ぶ場所を提供することにしたんです。

コツコツと開催していたら、4年目になりました。まだまだ、これからも続けますよ!

過去のセミナー登壇者や企画内容を振り返ってみると、なかなか、がんばってるじゃん、と思いました(笑)

https://fontplus.connpass.com/


調子に乗って、セミナーの趣旨も掲載させてください。

◎書体やフォント、タイポグラフィ、グラフィックデザインなどに関する知恵や知識は、Webデザイナーのみに必要なものではなく、ディレクターやプランナー、マーケター、コーダー、プログラマー、エンジニアなど、Webに関わるすべての人にとって必修の科目です。

このFONTPLUS DAYセミナーは、皆さまと一緒に「書体とデザイン」を楽しく知り、深く考えるイベントです。「興味はあるけど初心者」という方も、ぜひ、ご参加ください。◎

本音を言うと、過去にお会いした方の中から、自分が大好きな方々を講師としてお招きしているのかもしれませんけど……。

●東洋美術学校

タイポグライフィの分野で長年活躍されていて、現在、東洋美術学校で講師をされている河野三男(Mitsuo Kono)さんと、中村将大(Masahiro Nakamura)さんをお招きしました。

河野さんは、朗文堂 タイポグラフィ・スクール 新宿私塾で講師の一人でした。
http://robundo.com/shinjuku-shijuku/


学校法人「東洋美術学校」(東美)は、4年間のうち、3年間通じて「タイポグラフィ」の授業があるそうです。大学でも専門学校でも、タイポグラフィを3年間みっちり授業受けられるところは少ないと思います。

河野先生はタイポグラフィのカリキュラムの中核の立場であり、中村先生はデザインにおけるタイポグラフィの重要性を授業で熱弁されています。

タイポグラフィで有名な大学と言えば、武蔵野美術大学(ムサビ)が思い浮かびますが、専門学校においては、東洋美術学校(東美)がタイポグラフィ分野でも超おすすめだと思います。

お二人のお話は、とにかく、楽しくて楽しくて、朝までセミナーを開催したい気分でした。ほんとです(笑)

そういえば、セミナーの休憩時間にTwittrend(ついっトレンド)を見たら、全国で30位に入ってました。ハッシュタグでは全国6位。瞬間風速とは言え、すごくうれしかったです。

参加者でない方から、「#fontplusdayのハッシュタグが面白ろ過ぎたので、まとめました」という、うれしいTwitter書き込みがありました。
平山鉄太郎(@__tetsu__)さん、ありがとうございます。

2018月3月7日(水)に東洋美術学校で開催された 【FONTPLUS DAYセミナー Vol. 13[タイポグラフィの学び方]】に関するツイートのまとめです。
|#fontplusday fontplusday #東洋美術学校
https://togetter.com/li/1206269


これを追っていくだけで、タイポグラフィに興味をお持ちの方は楽しいに違いありません。

タイポグラフィをこれから学んでみようと思っている方、ぜひ、時間をかけて読んでみてください。タイポグラフィを学ぶためのいろんなヒントが隠れていますよ。

僕が心に残ったフレーズをいくつかご紹介します。主催者なのでバタバタしてて、メモ書きしか残せなかったので、解釈違いなどあってもご容赦ください。

箇条書きですが、腑に落ちる内容ばかりだったので、紹介します。

●コミュニケーションとしてのインフラストラクチャ

・活字は規格化され体系化したもの

感覚的なものと思われがちだが、タイポグラフィは規格化されている。図版もテキストも規格化されている。スペースが空いているのではなく、意識的にスペースを空けた、ということなのだ。印刷される文字(活字)と印刷されない文字(余白)が同等に扱われる。

音楽でいえば、譜面って規格されているよね。例えば「テンポ120、4/4拍子、Cmajor」とか。活字も同じ。感覚的サイズではなく、絶対的なサイズがある。余白も規格化されている、4分アキや8分アキとか。

・デザイン造形の最小単位と最大単位

造形の世界において、活字は数字でコントロールできる。1行○○文字、余白○文字とか。感覚的なものでなく、グリッドに沿って有機的にコントールできる。「余白が休符」で「音符が活字」とたとえられるね。

・習慣のなかで学習できる

活字の選択はドレスコード感覚と捉えると分かりやすい。書籍なのか、詩集ではどうだろうか、高級チョコレートではどうだろうか、クラシックレコードの、ジャケットではどうだろうか、など。活字の歴史背景もしっかりしているので学びやすい。

・タイポグラフィの定義が曖昧ではいけない

「タイプ」の語源は「型、母系、活字」。「グラフィ」の語源は「表現法、表記していくこと」。

タイポグラフィはつまらないぞ、地味だぞ、つらいぞーと言われるが、タイポグラフィはデザインの基礎である。文字のないデザインはほとんど存在しない。

タイポグラフィとは言葉を表記させたもの。活字を組む際にはストーリーを作ることが大事。誰がどんな状況であるか、何を感じたのかを考えてから、書体を選ぶ。言葉をどう膨らませるか。想像力、語彙力も重要。言語表現力があるひとは、タイポグラフィ上達が速いらしい。

・海外と日本ではタイポグラフィの違い

海外では15世紀のグーデンベルグの印刷技術発明からの歴史がある。海外のタイポグラフィ授業では、教師から徹底的に突っ込まれる。「どうして、この書体を選んだの?」「どうして、このスペースなの?」などなど。

日本では「なんとなくいいねー」となることがある。でも、言葉でちゃんも説明できないと、いいものができても「それは偶然の産物だ」と言われても仕方ない。

・創部10周年のタイポグラフィ・サークルQP

なぜ、サークル名がQPなのかと言うと、活字のサイズを表す級数のQとポイントのPを活動の象徴している。部員である生徒2名と、河野先生と中村先生と掛け合いが奥深い。部活動報告が楽しい。

以上が僕のメモ書きの紹介です。中村さんと河野さんがお話した内容のほんの一部です。

河野さんの結論は、「地味だけど、ちゃんと学びなさい」ということでした。ほんと、そうだと思った。すごく勉強したくなった。

東洋美術学校のwebサイトでも、セミナーレポートがアップされてました!
https://www.to-bi.ac.jp/2018/03/09/fontplus-day13/


最後に、河野さんの主著と、中村さんのオンライン授業のご紹介もさせてください。

河野三男さんの主著
『タイポグラフィの領域』(朗文堂 1996)
『評伝 活字とエリック・ギル』(朗文堂 1999)
『欧文書体百花事典』(共著 2003)

中村将大さんのSchoo(スクー)授業
「ミル文字ヨム文字ミセル文字」
「デザインのよみかた」
「いろのいろいろ」
https://schoo.jp/teacher/976


ちなみに、僕も、Schoo(スクー)でWebフォントの授業を2コマ、担当しています。
https://schoo.jp/teacher/1654


あっ、前回、「相対フォント感」のシリーズを始めるよ、と書きましたが、先週主催したセミナーが素敵だったので、今回は「タイポグラフィの学び方」セミナーのレポートを記事しました。

では、次回、3月29日のもじもじトークで、またお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。