まにまにころころ[135]ふんわり中国の古典(孫子・その15)火攻篇と用間篇で孫子を読了
── 川合和史@コロ。 Kawai Kazuhito ──

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コロこと川合です。今回で孫子最後まで行っちゃうぞ、ということで、珍しく前振りなしで始めたいと思います。火攻篇と用間篇、二篇まとめて、どうぞ。

◎──『孫子』火攻篇(一〜四)

火攻めには五つの種類がある。

一・人に火をかける
二・食料に火をかける
三・武器に火をかける
四・蔵に火をかける
五・橋など行路に火をかける

火攻めを行うには条件があり、十分に準備する必要がある。また適した時期、適した日もある。時期は乾燥した時期、日は月が箕、壁、翼、軫にかかる日のことだ。月がこれら四宿の星にかかる日は、風が起こるからである。

また火攻めには五つの変化があり、変化に応じて対応する必要がある。





一・敵陣内に火の手があがった時は、呼応して速やかに外から攻める。

二・火の手があがるも敵が静かなら、いったん攻めるのを待って火の勢いを見極め、攻めるべきなら攻め、そうでないなら止めておく。

三・敵陣の外から火をかけられるなら、内からの火を待つことなく、機をみて火をかける。

四・風上から火の手が上がれば、それを風下から攻めてはいけない。

五・昼に風が長く続いたときは、夜の風では火攻めを止めておく。

軍は必ずこれら五つの変化があることを知っておき、それぞれ対応する方法をもって攻めるのだ。

火をもって攻撃の助けとすることは知恵によるもので、水を攻撃の助けとすることは軍の強さによるものである。水攻めは敵を分断するが、火のように奪うことはできない。

戦に勝利したとしても、戦果をまとめ上げられないようではいけない。

それは費留、つまり戦費の無駄と命名されるものだ。だから聡明な君主は、その点を良く考え、良将はその点をよく整理する。

有利でないなら動かず、利益がないなら兵をおこさず、危険が迫っているのでもなければ戦をしない。君主は怒りにまかせて軍事行動を発してはならないし、将軍も憤りにまかせ戦闘を行ってはならない。

あくまで、有利なら行動し、そうでないなら止める。怒りはまたいつか静まり喜びもあろうし、憤りも同様だが、国は滅びてしまえばおしまいであるし、死んでしまえば生き返ることはできない。

聡明な君主は怒りまかせの行動を慎み、良将は戒める。これが国を安泰とし軍隊を保つ道である。


◎──『孫子』火攻篇(一〜四)について

火攻めのポイントを述べた上で、戦の心構えで締める、短い篇になっています。

特に説明することもないのですが、火攻め水攻めのあたり、日本と中国の違いを少し感じますね。たぶん、中国は水攻めより火攻めが地形的にも向いてるんだろうなと。中国の地形をたいして知らないので、イメージですけども。

少なくとも、城の周囲に堤防を築いて、川の水を一気に流し入れるようなことはできないんじゃないかなと。秀吉の毛利攻めみたいな、ああいうのは。まあ、中国にも色んな川があって、黄河や長江ばかりじゃないでしょうけど。(笑)

最後の、怒りにまかせて行動せず、利害を考えて慎重に動けって話は、なんでここにあるのか分からない。というか、どこに入れてもよさそう。

いっそ、十四番目の篇というか、終章みたいなものを設けて、そこに入れてもいいくらい。最後の一文なんて、全体の締めの言葉ですよね。

しかも、時代も洋の東西も問わない、普遍的な話。感情のコントロール、大事。


◎──『孫子』用間篇(一〜五)

十万の軍をおこし、千里先へと出征すれば、民の出費も国庫の出費も一日千金費やすことになり、内外で騒動となって農業どころでなくなる家が七十万戸におよぶだろう。

対峙すること数年、一日の決戦を互いに争う。にも関わらず、爵位や俸禄、金を与えることを惜しんで敵情を知らないでいる者など、不仁、慈しみ気持ちをもたないことこの上ない。

そのようでは、人の上に立つ将とは言えないし、君主を補佐する者とは言えないし、勝利を手にできない。

明君・智将が、行動を起こしては人に勝ち、抜きんでた成功を収めるのは、予め情報を得るからである。それは鬼神の力でもなく、事例から類推するのでもなく、天文を読むのでもない。間諜、つまり人を使って探らせるのだ。

間諜には五種ある。郷間、内間、反間、死間、生間である。この五種の間諜を同時に使ってしかも人に知られない見事な用い方を、神紀という。国の宝だ。

郷間とは、敵国の領民を間諜として利用すること。

内間とは、敵国の役人を間諜として利用すること。

反間とは、敵方の間諜を二重スパイとして利用すること。

死間とは、偽情報を流し、敵国に潜入させた間諜を通じて敵へ知らせること。

生間とは、潜入させた間諜に戻らせて敵状を報告させること。

全軍の中で間諜は、最も親しく、最も厚遇すべきで、最も機密性が求められる。

聖知と呼ばれるほどの聡明さがなければ間諜を使いこなせないし、仁義の心がなければやはり間諜を使いこなせないし、微妙な心配りがなければ間諜を使いこなせない。実に微妙さが求められる。間諜はどんなことにも用いられるのだ。

そして、間諜のもたらした情報が公表前に聞こえてくるようであれば、情報を漏洩した間諜も、そのことを知らせてきた者も、みな始末しなければいけない。

撃ちたいと思う軍、城、相手については、必ずまずその守将と、その左右の者、謁見する者、門人・舎人の姓名を知り、味方の間諜にさらに探索させて情報を知らせさせる。

こちらを探る敵の間諜がいれば、利益を与えてつけこみ手懐け、反間として用いる。そしてその反間から情報を受けることにより、郷間、内間を得て用いることができる。

また死間を使って偽情報を敵に流すことができ、生間も計画通りに働かせられる。君主はこの五種の間諜のもたらす情報を必ず知るが、それを知るのは必ず反間のおかげである。だから反間は厚遇すべきだ。

昔、殷が興った時には、名高い伊尹が夏の国に潜入した。周が興った時には、あの太公望が殷に潜入した。明主・賢将のみが、優れた知恵を持つ者を間諜として用い、必ず大功を成し遂げている。間諜こそ用兵の要であり、全軍が行動に際して頼りにするところである。


◎──『孫子』用間篇(一〜五)について

スパイは大事だよ、という話。ミッションインポッシブル。

その種類と重要さを述べるものの、具体的な使い方については触れず。なんかちょっと駆け足な感じですよね。これでおしまいだし。

でも、スパイの重要性は現代でもまったく廃れていないし、むしろ増しているので、具体的なところは最新の用間法を修得する必要がありますね。

現代のスパイというと、それこそ産業スパイのようなものを想像するかもですが、情報戦は身の回りに溢れていますよね。情報、大事。

また、『孫子』の中ではほとんど触れられていませんが、情報セキュリティは今も昔も重要だったはず。漏洩があったら関係者皆殺し、なんてことは現代はないと思いますけども。いや、あるのかな。(怖)


◎──今回はここまで

ここまで、というか、これで『孫子』は最後まで読み通しました。終了です。短い本なのに、えらく時間がかかってしまいました。本当はもっとざっくりと読んでいくつもりだったのに、回を追うごとに細かくなってしまいました。

次回、本当にざっくりと全編を振り返りたいと思います。

次々回以降に何を取り上げるかはまだ考え中です。短いのがいいなあ……


【川合和史@コロ。】koro@cap-ut.co.jp
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