装飾山イバラ道[220]片付け作業と「トイ・ストーリー3」
── 武田瑛夢 ──

投稿:  著者:



春は仕事や学校などの自分の居場所が変化する人も多くて、引っ越しや片付けが大変な時期だ。私も古くから持っているモノを確認しては、モノの行き先を考える日々を送っている。

●「トイ・ストーリー3」

そんなところで、先日TV放映されていた「トイ・ストーリー3」を見た。これすっごくいいですね。この時期にコレというのもちょうどいい。シリーズ最初の「トイ・ストーリー」は、やはりTVで見たことがあったと思う。

※以下は映画のネタバレを含みます。





男の子(アンディ)のおもちゃたちが、人が見ていない時だけ動いて騒いで、物語を展開していくもの。おもちゃが、見ていない時に自分たちの世界を持っている話は、小さい頃から色々と見たと思う。

しかし、これはそういうありきたりを超えた、複雑な心理描写があるストーリーなので、皆に愛されているのだとわかった。

「トイ・ストーリー3」では、大学へ進学するおもちゃの持ち主がすっかりおもちゃで遊ばなくなり、おもちゃたちは自分の処分先とその後について不安になる。引っ越し先の大学の寮へ持って行くダンボールと、屋根裏部屋行きとゴミ箱行きの三つの運命。

可愛いおもちゃたちにはあまりに過酷な選別で、最近の片付けでモノをだいぶ処分した私には辛いシーンだ。まだ未決の箱がたくさんあるので、それを思い出す。これが日本の話だったら、「人形供養」行きの箱もありそうだ。

そこには片付けにつきものの、捨てる判断に罪悪感が出てしまうような、捨てられる側(おもちゃたち)からの視点が見える。

おもちゃたちはいつか遊んでもらえるという期待を持ちながらも、客観的に見てもう無理だということがわかっている。

映画のおもちゃたちは、人が見ていない時は動けるので、身の振り方を自分で決められる。このおもちゃたちの個々の判断が面白い。

アンディだってもう大学生になるけれど、大好きなおもちゃをどうするか、実は大いに悩んでいる。おもちゃに気持ちを聞けたなら、できるだけ叶えてあげたいはずだ。ただ「昔のように遊ぶ」ことだけは、年齢的にもう無理なのだ。

私は今でもおもちゃが好きなのは、ここで書いているのでご存知かもしれないけれど、昔からずっと同じもので遊んでいる訳ではない(笑)。

どんなものにも、興味→体験→習熟→退屈のような流れがあるようだ。おもちゃもガジェットも、新陳代謝は必要なのだ。

●モノとの関係性

片付けの本で有名なこんまりさんが、あるモデルの女性宅の片付けを手伝うというTV番組を昔見た。衣装部屋には大量の洋服やバッグがあった。

洋服の量が多いのは、モデルさんなので仕事道具とも言える。こんまりさんはモデルさんに、それぞれのモノをどこでどのように手に入れたのかを次々に聞いていた。

驚いたのは、このモデルさんが、服やバッグを買った時期や状況、入手経路などをほぼすべて覚えていたこと。

それぞれにどんな思い入れがあるのかも明確で、バンバン捨てさせるのが得意のこんまりさんも、さすがにこのモデルさんのモノについては「持っていていい」という判断だった。

不必要なのは、ある意味のないモノだけなのだ。

私はこの春の実家片付けで、自分の所有ではないモノをたくさん捨てるのを手伝った。モノを手に取れば、それはいつどこで誰がどのように入手したモノなのかを見極めることになる。

自分のモノではない場合は、想像を広げることになる。残す残さないの判断も同時に行う。それは簡単なこともあれば、つい保留ボックスへ入れてしまうものもある。

自分が使っていたモノの方が、モノとの関係性の仕組みがわかりやすい。判断には階層があって、パパッと瞬時に出来るものと、そこに残る価値や存在性をじっくり考える必要があるものがある。

使うか使わないか、また買えるかもう買えないかなどは、すぐに判断がつきやすい。しかし「思い出」に関わるモノについては、判断に時間を要するようだ。

気持ちを動かす何かがあるモノには、人との縁や自分の特別な経験、そのモノを使っていた時期に対する執着が染み付いている。

そのモノによって思い出される年代が、バラ色か暗黒なのかでもその処理が変わる。暗黒時代のモノはきっと暗黒物質だから、即座に捨てて構わない(笑)。

思い出したくもない時代を思い出すきっかけになるモノを、なぜ取っておいたのか。きっと嫌になる程じっくり関わったからだと思う。関わったり向き合った分だけ、それなりに大事だったのかもしれない。

しかし人生も半ばになると、もう思い出したいことだけでいいと考えるのだ。

モノから得た経験はすでに自分自身という形になっているのだと思うし、物質にこだわる必要はない。それでなくてもこの世界は新しくて素敵なモノでいっぱいで、新しい経験を自分に取り込むには「余裕」が必要なのだ。

冒頭の「トイ・ストーリー3」では、おもちゃたちの中心核となる存在のカウボーイ姿のウッディが、ラストで絶妙な判断をする。

おもちゃたち全員や持ち主が、どうなれば幸せなのか、真剣に考えた結果で、それはそれは素晴らしい。自分と自分の周りにいる者たちにとって常に一番良いと思える行動をする、賢者の特性を兼ね備えたヒーローなのだ。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


また「スプラトゥーン2」のフェスの時期が来た。ゲームの中のフェスというのは、二つのチームに分かれて対抗戦をするというもの。

マヨネーズ対ケチャップとか、似たような二つの言葉からどちらかを選んで、その色のTシャツを着たキャラクターで、ナワバリを塗り合う。

今回はナイキのスニーカーの「最新モデル」か「人気モデル」か、自分ならどっちを選ぶかというものだった。私が選んだのは「最新モデル」。

一日分の対戦結果の総合集計によって結果が出る。戦いは負けると本当に悔しいのでかなり本気だ。最近のお気に入りのブキは、赤ザップかバケデコかな。