[4539] 「フォントソムリエ感」と命名します

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《栞の位置と車窓の景色はリンクする》

■わが逃走[214]
 列車の中で本を読みたいの巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[82]
 「フォントソムリエ感」と命名します
 関口浩之




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■わが逃走[214]
列車の中で本を読みたいの巻

齋藤 浩
http://bn.dgcr.com/archives/20180329110200.html
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なにもしたくないときってある。体や脳がそう欲しているのだ。

こういうときは積極的になにもしないに限る。

こんなとき寝台特急に乗りたいなあ、と思う。

「北斗星」は札幌まで16時間、「富士」は西鹿児島まで24時間、“何もしない”ができた。

昨今ブームの豪華列車みたいに理不尽な付加価値もなく、ただ普通に在来線で旅ができた。

普通に個室でくつろぎ、普通に食堂車で食事をし、ひとり楽しくぼーっと車窓を眺める。よいねえ。

何もしないとか言いつつ、列車の中で本を読みたい。読もうと思っていた本が何冊も積んであるのだ。

本を読むにも周囲の風情というのがあって、たとえば地下鉄や通勤電車の中での読書は日常すぎて
イマイチ“目的”な感じにならない。“ついで”っぽいのだ。

地上を走る列車で、速すぎず遅すぎず慌ただしくない、ロングシートでない、できれば尻が痛くならない、そんな車両での読書が望ましい。

そう考えると、在来線の特急がベストかなあ。

また、本を読むなら席はどこでも同じと思われがちだが、できれば車窓からの風景が美しい窓際、自然光の入る環境が好ましい。

栞の位置と車窓の景色はリンクするというか、どこまで読んだか、どこまで走ったか、が視覚化されるところが快いのだ。

次に同じ本を読んだとき、ふと見た景色が思い出されるのも愉しいねえ。

さて、来月仕事で金沢に行くことになった。

その場できっちりイイ仕事をするからには、旅程が楽しくなければならぬ。

ということで……早速、脳内でルートを検証してみる。

東京から新幹線というのは定番中の定番だが、景色を見ていると目が疲れるのが難点だ。

車内で本を読もうと思っても、物語の序盤で到着してしまう。新幹線は速すぎるのだ。特急「白山」や「北陸」がまだ走っていればなあ。

新宿から中央線の特急「あずさ」を使って松本経由で、と思ったけど、もはやJRは歯抜け状態になっており、第三セクター路線へ頻繁に乗り換えることになる。

在来線を使って松本経由で金沢に出るなら、「しなの」で一旦名古屋に出てから「しらさぎ」で向かう方が早く着くのだ。

しかし、日本海に近づいておきながら反転してわざわざ……というのは納得がいかない。

だったら素直に米原経由で「しらさぎ」に乗る方が潔い。それも悪くない。

しかし、中央線の「あずさ」で“春まだ浅い信濃路へ”向かう、という昭和歌謡な響きにはなんともいえぬ魅力を感じるのである。

それなら松本まで「あずさ」で行って、篠ノ井線で長野まで出て、そこから先は新幹線ということで妥協しようか。

尻も痛くならなそうだし、悪くない選択である。

早速運賃を計算してみると、やはり東京から新幹線の方が2000円近く安い。そりゃそうだよなー。

しかし、それだと3時間半も早く着いてしまう。

その点、松本経由なら3時間半も(※1)長く電車に乗っていられるので、新幹線だと1時間あたりの座り賃が約5600円なのに対しこのコースだと約2500円(※2)。

これはお得ですねえ。ということで、今回は中央線かな〜。

※1 待ち時間含む
※2 自由席料金


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[82]
「フォントソムリエ感」と命名します

関口浩之
http://bn.dgcr.com/archives/20180329110100.html
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

今月は天候が目まぐるしく変化しましたね。雪が降ったかと思えば、このところ20度を超えるポカポカ陽気が続いています。みなさん、体調を崩してないですか?

今日は3月29日。あれっ、2018年が始まったばかりと思っていたら、もう、3月の月末ですね。この調子でいくと、年末があっという間にやってくるような気がしてならない……。

さて、今日のお題は「フォントソムリエ」です。

数年前から、「絶対音感」ならぬ「絶対フォント感」という言葉を耳にするようになりました。

名付け親は誰だかよくわからないのですが、デザイン専門誌「MdN」2015年7月号で『絶対フォント感を身につけよう』という特集号が発売されました。すごい人気で、すぐに売り切れました。

僕、三冊持ってます。その後、「2,000以上のフォントを見分けられる絶対フォント感を持つ男」とか、「デザイナーは絶対フォント感が重要」とかのキャッチコピーを見かけるようになりました。

絶対フォント感とは、「目にした書体が何かを言い当てられる能力」ということです。

絶対フォント感があると、書籍の本文を見て「この文庫本は秀英明朝だけど、こっちは本蘭明朝だね」とか、マツコの知らない世界のテロップを見て「くろかねがたくさん使われてる」とか、街中のポスターを見て「これは游ゴシックだな」とか、見分けることができます。

僕も、結構、絶対フォント感はあるほうだと思います(笑)

絶対フォント感を身につけることも大事ですが、

・フォントの特徴を理解して、コンテンツや文脈に合わせたフォント選びができること

・文字や活字の歴史、言語や言葉の文化を理解すること

・文字を制作した書体デザイナーの想いや制作の意図を知ること

などを学ぶことも大事だと考えます。

それぞれのフォントの特徴を理解して、適材適所で、制作物やWebコンテンツに相応しいフォント選びができる感覚を、「フォントソムリエ感」と名付けたいと思います。

例えば、クライアントから「高級感をアピールしたいけど、身近に感じてもらえる優しさが欲しい」と言われたら、それに相応しいフォントを提案でき人が「フォントソムリエ」ということです。

最近、僕、フォントおじさんと呼ばれていますが、いつかは、優秀なフォントソムリエと呼ばれたいと思っています。でも、今は、フォントおじさんが気に入っています!

フォントという素材の特性を理解して、デザインという料理の美味しさや見た目を演出することは楽しいことですね。

そっか、毎週のようにフォントに関する講演やセミナーに出演したり、勉強会を主催したりしているのは、料理教室を開催しているのと同じですね。

僕もまだまだ、素材の見分け方、味付けや盛り付けについては修行中でして、諸先輩から技を盗んだり、参加者と一緒に料理を学んでいます。フォントやタイポグラフィの学びには終点がありません。

では、フォントソムリエ感を磨くための例題といくつか紹介します。

●バスケットシューズに相応しいフォントは?

ナイキのシューズ、大好きなんですが、例えば、このシューズを新製品として発表するとしたら、どの書体をロゴとして使用しますか?

http://bit.ly/2pO1xMG

よく使用される有名な欧文4書体を並べてみました。では、それぞれのフォントの成り立ちを簡単にまとめてみました。

Helvetica(ヘルベチカ)

世界でもっとも有名なサンセリフ書体と言えるでしょう。スイスのハース社が20世紀半ばにNeue Haas Groteskで発売し、それが原型となり、後にHelveticaになりました。

馴染みのある書体ですから安心感があります。キャンバス地のシンプルなスニーカーなら、この書体が似合うのではないでしょうか。

Baskerville(バスカヴィル)

18世紀にイギリスのジョン・バスカヴィル(John Baskerville)が制作した書体です。伝統と高貴さを感じさせる書体です。高級ビジネスシューズに似合うのではないでしょうか。

Didot(ディド)

19世紀初期にフランスのファルマン・ディド(Firmin Didot)が制作した活字を基に、デザインされた書体です。女性雑誌『VOGUE』のロゴで使用されていることで有名です。女性的で優美さを感じさせる書体です。高級ハイヒールに似合うのではないでしょうか。

Frutiger (フルティガー)

空港のサイン用としてデザインされた書体のため、視認性に優れ、明るい印象を受けます。アドリアン・フルティガー(Adrian Frutiger)によりデザインされ、1976年、Linotype社からフルティガーの名で発売されました。

Frutiger 76 Black Italicを使うと、スピード感とスポーティ感がでるので、バスケットシューズには似合うのではないでしょうか。

これが絶対に正しいということではありませんが、それぞれの書体が持つ特徴を理解し、実際に文字を置いてみたり組んでみると、適材適所の感覚の引き出しが増えるのではないでしょうか。

●止まれの道路標識のフォントは?

もじもじトーク[71]でお話しましたが、「止まれ」の看板の文字は丸ゴシック体が使われていました。
http://bit.ly/2pQRVAu

復習になりますが、逆三角形の赤い無地の看板の中に、「明朝体(マティス)」「角ゴシック体(ヒラギノ角ゴ)」「古印体」のフォントを配置して、どれが相応しいか比較してみましょう。

明朝体でも「止まれ」と理解できますが、ちょっと違和感があります。iPhoneで見慣れているヒラギノ角ゴで「止まれ」を表現しましたが、なんか違う気がします。僕が大好きな古印体で表現してみたら、思わず、ブレーキを踏みたくなりました。

明朝体は、線の太さに強弱があります。また、「ウロコ」と呼ばれる飾り(欧文だと「セリフ」)があります。メリハリがあるため、読みやすく、長時間読んでも疲れない書体です。

文庫本の本文には明朝体が使われていることが多いのはそのためです。「可読性」が高い書体といわれています。

ゴシック体は、線の太さが均一で、明朝体のようなメリハリは感じられません。欧文の「サンセリフ」に該当します。「サン」はフランス語で「〜のない」という意味なので、「サンセリフ=飾りがない」ということなのです。

ゴシック体は、見やすさが特徴なので、案内板や標識などのサインシステムで使われることが多いのです。「視認性」が高い書体と言われています。つまり、パッとみてすぐに判断できる書体なのです。

●古印体(こいんたい)というフォント

先ほどの例題で、「古印体」を使った看板を作りました。思わず、「怖〜い」と、みなさん、思ったはずです。

でも、こちらをご覧ください。
http://bit.ly/2J2irQv

ぜんぜん、怖くないでしょ! 赤い古印体文字を、赤い丸枠で囲むと、印鑑になります。

古印体は、隷書体をもとに日本独自で作られた印鑑用文字です。歴史としては、奈良・平安時代まで遡り、鋳銅製の印章として使われました。鋳造によって生じた線の切れ目や墨溜まりが特徴です。

とはいえ、書体の適材適所を間違うと大変なことになります。3年前のまとめ記事ですが、当時、SNS上で話題になりましたね。たしかに、場違いなところで、古印体が使われているのを何度も見たことがあります。

なぜこのフォントなのか、シュールすぎる「場違いな古印体」
http://bit.ly/2pOVDdY

次回も、フォントソムリエのテーマでお送りします。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。


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編集後記(03/29)

●3月26日の読売新聞に「新卒採用にAIの目」という記事があった。企業では書類選考の手間が大幅に減り、人事担当者の心証や好みにされない公平な採用を期待する。AIが書類の内容を評価して、次の選考に進ませるかどうかを判断する。既に導入されている企業もあるが、学生の過半数はAIに判定されることに反対している。AI面接も実施例があるが、抵抗を感じる学生は70%超である。

NHKスペシャル取材班「人工知能の『最適解』と人間の選択」を読んだ(NHK出版新書)。人工知能は膨大なデータを処理して「最適解」を弾き出す。しかし、なぜそれが正解なのか理由は示さない。人工知能が人間の人生を左右する判断を始めたとき(既に始まっている)、その答えをどう受け止めればいいのか。

18歳以上の国民のおおよそ3人にひとりが犯罪歴を持つアメリカでは、刑務所不足を解決するための刑事司法制度合理化で、司法の場で人工知能が使われている。裁判官が人工知能に基づいて量刑を決定する。人工知能は過去データから導き出したパターンをあてはめ、被告人の未来の再犯リスクを算出している。能率的だがそこには正義はない。なぜそう評価したかはブラックボックスだ。

裁判所が便利な道具として使っている人工知能の再犯予測システムに関しては、検証が行われたことが今まで一度もない。人工知能は中立でも客観的でもなく、単なるデータの相関関係である。被告人たちは自分の行いに基づいて判決を受ける権利がある。「過去、同様の罪を犯した人たちのデータのどこに位置づけられるか」という数学的な計算によって審理されるべきものである。

司法制度は人間性に対する信頼のうえに成り立っていなければならない。誰かの人生そのものに大きな影響を与える場面に、効率や利益を追求する人工知能が介入するとき、改めてこの命題に立ち戻らねばならない。正義はコストよりはるかに重要なものである。アメリカの司法の場で人工知能が使われていることを、一般の人はまったくと言っていいほど知らない。知らされていない。

職場で人工知能に査定される仕組みは、日本でも実際に運用中だ。その例が幾つか挙げられている。筆者は「実際に触れた経験がないまま、人工知能に対する恐怖や過度の期待を抱いていた時代はもはや過去、無条件に飛びつくのではなく明確な目的意識を持ち、合致する人工知能を積極的に使おう」と書く。

「とはいえ、話を聞いていると、どうしても人工知能に評価されることに居心地の悪さのようなものを感じてしまう」とも書く。既に国や企業の中枢にあるシステムに人工頭脳の導入が開始されている。膨大なデータと個人情報から導き出される「最適解」が、知らないうちに国民や従業員の管理を行っている。

人工知能学会の倫理委員会は、「人工知能研究者は『良心と良識』に従って倫理的に行動しなければならない」と啓発している。人工知能が「天使」になるか、「悪魔」になるかは、当面、研究者や導入しようとする一部の人々の意図と良心にかかっているようだ。が、マトモな人ばかりではない。マッドサイエンティストや異星人が……と、B級SF映画マニアのわたしは不安だ。 (柴田)

NHKスペシャル取材班「人工知能の『最適解』と人間の選択」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140885343/dgcrcom-22/


●修理シリーズ、食洗機-New! 汚れ落ちが悪くなった。とてもきれいに落ちている食器と、汚れが残っている食器が分かれていた。

この食洗機には、食器を入れる金属製のカゴがあり、その下に、お湯を噴き出しながら回転するプラスチック製ノズルがある。

そのまた下には乾燥させるためのヒーターカバーとヒーター、横には残さいフィルターと排水口という構造となっている。

たまに、何かのフタやカトラリーがカゴの下に落ちて、回転ノズルの動きを止めてしまい、お湯が噴き出す範囲の食器だけがきれいになっていることがある。続く。 (hammer.mule)