[4547] いつもの倍褒めるキャンペーン

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《製作中の段ボールハウスに入り込んで眠った》

■装飾山イバラ道[221]
 いつもの倍褒めるキャンペーン
 武田瑛夢

■Scenes Around Me[25]
 東京大学駒場寮の事(4)
 学外サークル蟻天国の事
 関根正幸




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■装飾山イバラ道[221]
いつもの倍褒めるキャンペーン

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20180410110200.html

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最近あまり書いていなかった、高齢の母のこと。快活にあちこち出かけていた母も、最近は外に出るのが億劫になったり、グチを言うこともたまにある。

物忘れもあるけれど、病院に行って調べてもらったら、あまり深刻ではないとわかってホっとしている毎日だ。私もサポートはしているけれど、自分でできることは自分でしている状態だ。

ただ80を超えてしばらく経つと、どんどんお仲間がいなくなるらしく、寂しさを感じるそうだ。他界してしまった場合だけでなく、母のように外に出なくなるので、見かけなくなるという意味での「いない」もある。

●フレーズの真意

病院に行って血圧を測ってもらうと良好のようだ。「お陰様で体はどこも痛いところはないし、有難いと思ってます」のフレーズを、かかりつけの先生に言う。絶好調だからと安心させたいみたいだ。

しかし、先日、毎日飲んでいるはずの薬が、引き出しの中にたくさん溜まっているのを発見してしまった。飲んでいないのに、私には飲んだと言っていたようだ。

これもよくあると聞く話なので、そう深刻には考えないけれど、体のことを考えると、どうにかならないものかと思う。薬を飲むのが面倒くさいとしても、別の引き出しに溜め込むのも面倒なことではないのかな。

母の気持ちを考えていた時に、かかりつけ医に言う「お陰様で体はどこも痛いところはないし、有難いと思ってます」のフレーズが頭に浮かんだ。

そうだ、実は本人は体に不具合がないと思っているから、薬はいらないと考えているのだ。本心はそうなのかもしれない。

しかし、血圧だったり血の巡り系の薬はすぐに効いたと実感するわけではないし、薬の作用は素人には見えにくい。予防が目的の薬もある。

不調が出ないなら飲まなくていいというわけではないことを、本人が理解する伝え方はあるのだろうか。心の芯に届かないと、自分からはしてくれない頑固なところがあるので、大変だ。

今は曜日ごとに分かれたケースを用意しているけれど、カレンダータイプとか新しい方法を考えてもいいかもしれない。まぁ、ほどほどに信用して任せながらゆるりと行こう。

●お風呂の時間

あまり食べたい物もないし、会える人が少なくなったと嘆く母だけれど、母にとって今一番幸せを感じるのは、お風呂の時間のようだ。

私がまず先に入り、続いて母が入って頭を自分で洗ったら背中だけは流してあげている。母は昔から長風呂なので、今も長くなりがちだし、温度も高めにしたいようだ。

お風呂から出たら、髪をドライヤーで乾かしてあげて終了。すぐ乾くから必要ないと言っていたのに、一度ドライヤーで乾かしてあげたら気持ちが良かったようで恒例になった。

お風呂上がりは「あ〜気持ち良かった〜」と何度も言う。

こういう日々はお互いに年を取って、丸くなったからこそ獲得できたものだ。10数年前までは、日常の些細なことでケンカばかりだった。

「ここ10年以上、ケンカらしいケンカしてないよね」と聞いてみたら「そうだね、もうどんな気持ちでケンカしてたかも思い出せないね」と言っていた。

ケンカは、しなければしないで過ごせるものだ。あの頃にはわからなかった気持ちだ。

前出の薬を飲まなかったことなども、昔ならケンカになっていたかもしれない。私が小さかった頃ならこちらがやっていたようなことが、逆転しているのだ。まだまだ細かな問題は多いけれど、気持ちの持ち方さえ気をつけていれば大したことはないことばかりだ。

最も大事だと思うのは、母がこの歳で頑張って毎日を暮らしていることを褒めるシーンを作ること。褒めるというと上からのようで言葉が悪いかもしれないけれど、すごいとかよくやってるという発見を、しっかり伝えていくのはどんどんやっていこう。

褒めるのってタダなのに、家族同士が一番やり忘れることではないだろうか。以前は学生を倍褒めようと思っていたけれど、今は家族を倍褒めるキャンペーンを実施しようと思う。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


クレーンゲーム、昔は好きだったけれど、確率機なるものが増えたり、掴みとる技ではない仕組みが多くて、すっかり苦手になってしまった。一度大負けしてから、もう二度とやらないと気をつけている。

とか言いつつも、お酒が入っていたり、複数人だったら、楽しいのでいいかな。獲得賞品がなくても笑えたらいいかもね。いいカモだけど(笑)。


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■Scenes Around Me[25]
東京大学駒場寮の事(4)
学外サークル蟻天国の事

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20180410110100.html

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東京大学駒場寮の寮委員会は、1995年に大学側が入寮募集を停止した後、空き部屋対策として寮内に学外サークルを誘致することにしました。

廃寮問題が起きる前から、駒場寮の部屋は寮生が住むための部屋だけではなく、大学サークルの部室として使われる部屋がありました。

しかも、サークルの中には他大学との合同サークルもあったため、東大生以外の大学生(学外生)が駒場寮に出入りしていました。

そこで、東大生以外の人は学外生であると拡大解釈し、責任者が寮生(東大生)であれば、メンバーに学外生を含んでも構わない、とサークルを募集しました。

そして、そのサークルに空き部屋を使ってもらうことで、駒場寮がなし崩し的に廃寮に追い込まれるのを防ごうとしたのです。

その結果、東京大学とはまったく関係のない人たちが、学外生として駒場寮に出入りするようになります。

駒場寮内の飲み屋だったゼロバーや、前回取り上げたいくつかのギャラリーは、名目上は学外サークルでした。

そして、これらの学外サークルが寮内で活動を行うことで、駒場寮はおしゃれな場所として一般にも認知されるようになりました。



1997年の秋、駒場寮内に蟻天国という学外サークルが出来ました。

蟻天国は、ゼロバーでバーテンをしていた東大生のテツくんが、ゼロバーの常連だった東大生と学外生をメンバーとして結成したと聞いています。

学外生には画家の武盾一郎さん、大川興業に所属していた芸人のバンビ高橋さん(ヒデさん)、歌舞伎の女形の中村しのぶさんがいました。

私自身はサークルの立ち上げに立ち会っていませんが、寮委員会は毎年、3月末と9月末に入寮審査を行っていたので、蟻天国の審査も1997年9月末に行われたと思います。

しのぶさんはともかく、武さんとヒデさんはのざらし画廊のメンバーで、さらにヒデさんの大学時代の知人が数名(彼らも、のざらし画廊のメンバーだった)蟻天国に参加したこともあり、私も蟻天国に出入りするようになります。

こうして私の駒場寮内での拠点ができましたが、私自身は最初から蟻天国に入りびたったわけではありません。



以下、私が初めて蟻天国に行った時のことを(もしかすると、数日分の記憶がごちゃまぜかもしれませんが)覚えている範囲で書いてみます。

私が武さんの誘いで蟻天国に初めて遊びに行ったのは、1997年11月上旬だったようです。(下記の新宿梁山泊の公演が1997年11月22日に始まっている)

蟻天国は中寮の2階、中ほどから少し奥まった右手の部屋にありました。

部屋にはどこかの大学の学祭で使用されたと思われる、リングの残骸が持ち込まれていて、ヒデさんたちがリングを復元しようと悪戦苦闘していました。

また、新宿梁山泊が紀伊国屋ホールで上演する芝居の大道具として、武さんに段ボールハウスを製作して絵を描くよう依頼がありました。

そこで、武さんは段ボールハウスの製作を蟻天国で行っていました。私も割り箸でできた柱を、段ボールハウスの内側に固定する作業を手伝いました。

そうしているうちに、しのぶさんが現れ、酒盛りが始まりました。

しのぶさんは、歌舞伎「鳴神」を素材にした芝居を年末にオブスキュアギャラリーで打つことにした、と話していました。

以前にも書きましたが、しのぶさんは、占い師にあと30年しか生きられないと告げられたらしく、30年なんてあっという間だから、このまま下積みで何もできずに終わってしまう、と焦りを感じていました。

そこで、しのぶさん自身が主役を務める芝居を企画したのでした。

私もしのぶさんから芝居に出演しないかと誘われたのですが、セリフが覚えられないのと、稽古の時間が確保できるか分からないので、気のないそぶりを見せていました。

しのぶさんは「変ねえ、あなたには何かやりたいというオーラがうっすら見えているのに」と言いました。

時間も遅くなり、家に帰るのがわずらわしくなったので、私は製作中の段ボールハウスの中に入り込んで眠りました。

その様子を見て武さんは衝撃を受けたそうです。

というのは、武さんにとって段ボールハウスはあくまでも絵を描く対象であって、段ボールハウスの中は異界だと考えていたからです。

ただ、私にとっては、段ボールハウスは単なる物に過ぎないので、何も考えずに中に入って寝ることが出来たのでした。



ネガフィルムから写真をスキャンしているPCが故障したため、今回の写真は昨年デジカメで撮った写真を紹介します。

2017年1月22日 高円寺 Pundit
https://farm1.staticflickr.com/887/40382124695_eb00a864e2_c

前回紹介した246表現者会議と、それに引き続く形で行われた宮下公園Artist in Residenceに参加した花咲草(かや)さんの写真です。

かやさんは、それまでの10年間に収集したフライヤーなどの紙類や、SNS等に投稿した文章のアーカイブを、数時間かけてすべて消去するパフォーマンスを行いました。

パフォーマンスはネットにストリーミング配信されました。

実は私はその前日に財布を紛失して、這々の体で実家に帰っていました。

最初は実家でストリーミングを見ていたのですが、色々なものが消去されて行くのをモニター越しに見るのが耐えられなくなり、親に金を借りて高円寺に向かいました。

その結果、ギリギリ最後の瞬間には間に合いました。

写真は、かやさんが頻繁に訪れている台湾の風習に従い、燃やした紙の灰を水に溶かして飲んでいるところです。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。


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編集後記(04/10)

●マックス・フォン・シェラー「アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの“崩壊”」を読んだ(ハート出版/2017)。現在のアメリカが抱える最大の問題は、左派が自分たちの考え=社会を崩壊させるポリティカル・コレクトネスを、強制的にアメリカ全土に押し付けようとしていることだ。

英語という言語すら作り直そうとする。HeとSheは差別用語であると決めつけ、これからの性別として中立的なZeを使うことを進めている。Merry Christmasという看板を店舗が出すのは危険だという。誰かに「あなたはキリスト教の信者ではない人を差別している」と裁判を起こされることになる。ホントである。

カリフォルニア州で結婚式をあげる場合、式の最中に「夫と妻」という言葉を使うことは、法律的に不可能である。これからは、性的に中立な言葉「配偶者と配偶者」を使わなくてはならないのだという。なぜなら、「夫と妻」という言葉は、ゲイの結婚に対して失礼であるからです、って……。唖然とする。

ハロウィーンの仮装をめぐって、いつも多くの争いごとが起きる。それはポリティカル・コレクトネスを守っていないという言いがかりだが、たいてい文句言った方が勝つ。カリフォルニア州の大学で白人女性が大きな輪っか状のイヤリングを付けていることに対し、ラテン系学生が反対している。そのようなイヤリングは有色人種の学生に対する抑圧と排除の象徴であると。鬱陶しい。

ポリティカル・コレクトネスによって革新、創造性はすべて禁止になる。2017年2月、ファッション雑誌ヴォーグが、白人女性のモデルが日本の着物を着た写真を掲載すると、強い抗議が寄せられた。ポリティカル・コレクトネスでは、白人が日本人の着物を着ることは不適切だから、だそうだ。バカバカしい。

2015年夏にボストン美術館が、企画展示を中止した。クロード・モネが妻が着物を着ている作品「ラ・ジャポネーゼ」を描いたが、美術館では参加者が絵と同じ模様の着物を着て、絵の前に立って写真を撮るというインタラクティブな展示が企画された。すると3人の抗議者が美術館にデモを行い、この展示は人種差別的な文化の盗用であるから、展示をやめるようにと難癖をつけた。

美術館がそれに応じない場合、ポリティカル・コレクトネスの支持者は実に協力的だから、抗議者はたちまち増え、新聞と雑誌に「ボストン美術館は非常に人種差別的だ」という記事が書かれ、テレビのニュースに取り上げられるだろう。館長は強制的にクビになった。なんだか、日本でも模倣者が出そうだ。

千葉市は職員や教職員向けのLGBT(性的少数者)対応指針を策定した。性別などを決めつける言動を避けるため、「夫」や「妻」ではなく「配偶者」や「パートナー」、「お父さん」や「お母さん」ではなく「保護者の方」、「ご家族の方」という表現を使うよう求めている。頭大丈夫か? この市長、市議会。公的証明書類の性別欄も廃止だというからバカだ。

「おれは男だ!」の森田健作よ、選択的夫婦別姓制度反対論者の千葉県知事よ、なんとかしろ。千葉市では「おじいさん」も「おばあさん」もなくなるのか。「男湯」「女湯」もなくなるのか。ああ、日本でもポリコレの暴走が始まった。嫌だ厭だ。 (柴田)

マックス・フォン・シェラー
「アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの“崩壊”」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4802400411/dgcrcom-22/



●ロビの予備ネジというか、ゴミ箱の続き。ゴミ箱の内側上部中央に、プラスチックの突起があり、そこにギザギザのあるコの字型パーツがくっついていて、バタフライ型になっている。

ギザギサに袋を引っかけて、細分化すれば、分別できますよというもの。市販のゴミ袋だけでなく、スーパーやコンビニの袋もセットできる。

ある時、ゴミ出しをさぼり、はみ出したゴミを無理矢理押し込んだら、そのプラスチックの突起の一つが折れた。ドラッグストアの袋って丈夫よねぇ……。

コの字型パーツが安定しなくなり、ゴミを入れるとゴミ袋がずり落ちるようになった。この突起だけでゴミ箱がゴミに? 続く。     (hammer.mule)

Like-it ゴミ箱 オルア ヨコ型分別ペダルペール ホワイト 約33L
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これに似ている

フタが選べるダストボックス
https://www.muji.net/store/cmdty/detail/4549337494169

無印のはワイヤーで、フタの開く方向が選べるようになっているのか〜。ペダルはないんだな