もじもじトーク[83]「フォントソムリエ感」パート2/関口浩之

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

4月10日は「フォントの日」でした。あれっ、そんな日があったの? 「フォン(4)ト(10)」の語呂合わせから、昨年、アドビが中心となって制定しました。

昨年、日本記念日協会に登録されたことを記念し、2回目のイベント「#フォントの日」が、Yahoo! JAPANのオープンコラボレーションスペース「LODGE」にて開催されました。

・超難度絶対フォント感が試される「フォントの日」 ITmedia NEWS
http://bit.ly/2qmRVtp

日頃から仲良くさせていただいている、フォント業界のみなさんが出演しているので、わくわくしますね。




フォントおじさんこと関口も、このイベントを楽しみにしてましたが、参加できませんでした。というか、参加しませんでした。Webビジネス企業のメンバーズから「フォントを学ぼう3DAYS」講座の企画話があり、授業初日をフォントの日に開催することにしました!

・【フォントおじさん、関口浩之氏特別講座】『フォントを学ぼう』
2時間×3日間
http://bit.ly/2H9Rex0

メンバーズ社員の方々とは、全国各地のセミナーでご一緒することが多いこともあり、今回、メンバーズユニバーシティ(Members University Open Campus)学長の川井健史さんと意気投合し、合計6時間の授業が実現しました。

なお、Members Universityは、今年から「Co-Create Digital Lab.」に名前が変わりました。その記念すべき第一回の、講師としてお招きいただき、光栄でした。

●Co-Create Digital Lab.とは?

なぜ、Co-Create Digital Lab.なのかというと、講義を一方的に受講するのではなく、講師と受講者、そして受講者同士も一緒に論議し、刺激しあって、一緒にクリエイティビティ(想像力)を高めようという趣旨が加わったからです。

メンバーズの授業は、社内の社員受講者と、オープン枠の社外からの受講者が、半々ぐらいで参加するという珍しい受講者構成でした。そして、二人机には、メンバーズ社員と社外からの参加者が、ペアで座る形で案内しているのが素敵だなと思いました。

このセミナー、事前連絡なしで欠席または遅刻した場合は、次回以降のセミナーには応募できないというペナルティがあります。この方針はすごくいいなと思いました。

セミナーが有償、無償に関わらず、参加したい人がいるのに、連絡なしでドタキャンするのはとても悲しいことなので、主催者にとっても、参加者にとっても、良いことだと思いました。

今回、授業中に、たくさんの例題を出題して、コールアンドレスポンス(呼びかけと応答)の形を取り入れました。アンケート形式の場合もあれば、個人に質問する形も取り入れました。

フォントの例題においては、答えが一つのケースもあれば、答えが一つでないケースもあります。日本における授業では、正しい答えは一つでなくていけない、間違った答えを発表するのは恥ずかしい、と思っている人が多いのではないでしょうか。

自分がこれかなと思うこと自体が大事なことで、それが正しい、間違っているは重要でないと思うんです。

僕は、数学や英語は得意だったんですが、国語の「作者はどのような意図でこの文章を書いたのか?」に関しては、僕はことごとく間違った回答をして、先生から叱られた記憶があります。でも、僕が感じたことが本当に間違っていたのか、作者に聞いてみないと分からないと思うんですけど……。

今回、心掛けたのは、想像力を高める、もしくは、考えるトリガーを引き出すことでした。知識の引き出しを増やすことも大事ですが、その知識を引き出すためのトリガー(きっかけ)を増やすことも大事だと思うんです。

なので、堅苦しくない雰囲気作りを心がけました。

●フォントソムリエ感を高める題材

「フォントを高めるため」の初日講座は、
・活字、文字の歴史を学ぼう
・街中のフォントを観察してみよう
・絶対フォント感、フォントソムリエ感
を中心に2時間の授業を行いました。

では、その授業で使用した題材を二つ紹介します。

リゾートホテルの支配人になったつもりで考えてください。新企画の宿泊プランのメインビジュアルを作ることになりました。あなたなら、どのフォントを使いたいですか?
http://bit.ly/2qnfiD6

すべてのフォントが正解です。出題するときには、どんな新企画なのかを説明しなかったので、企画内容に応じて、ふさわしいフォントは異なります。

授業参加者の反応は、1番が7割、2番が1割、3番が0割、4番が1割、5番が1割って感じでした。

綺麗なホテルの写真から想像すると、3番の古印体の選択はしづらいかもしれませんが、「怪談話ナイト」企画では、この書体がいいかもしれません。

それぞれの書体の解説はこちらです。
http://bit.ly/2v2Dtvp

もう一つの題材は、こちらです。
http://bit.ly/2v1D6Bi

先週、新小岩駅に仕事で立ち寄ったのですが、違和感を覚えたサインシステムを発見したので、写真に撮りました。アルファベットが半角等幅で組まれていました。

パーソナルワープロ全盛期の1980年代は、全角の欧文と半角の欧文しか印刷できない時代はありました。でも、今は、パソコンDTPの時代です。仮設とはいえ、大きなサインボードに半角等幅で「Shin-koiwa」と表現されると、外国人でなくても違和感を感じてしまうのではないでしょうか?

英語の文章は、アルファベット一文字一文字を読んでいるのではなく、単語(ワード)単位のひとかたまりとして目に入ってくると聞いたことがあります。

文字幅が狭い「i」と文字幅が広い「w」が等幅で続くと、一つの単語に見えない、もしくは、変形した単語に見えるそうです。

東京オリンピックを2年後に控えて、多くの外国人が来訪されると思います。国際都市である東京のサインシステムの外国語表記は、もっと親切で心地よいと感じる「歩幅」で文字が組まれることも、大切なおもてなしだと感じた題材でした。

今回、フォントを身近な題材から二つ紹介しましたが、学ぶべきことがあったなら嬉しいです。テーマや文脈に沿った書体選び、そして、見た人が心地よいと感じる文字の組み方って、デザイナーだけが知っていればいいという時代ではありません。

パソコンを使ってビジネス文書や案内状で作成する方は、ぜひ、意識して文字を観察してみてください。フォントソムリエ感のレベルが向上しますよ!

僕もまだまだ修行中なので、これからも身近な題材でフォントソムリエ感のセンスを皆さんと一緒に向上したいと思っています。

次回のもじもじトークは4月26日(木)を予定しています。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。