グラフィック薄氷大魔王[564]「作品の占有容積」「iMac20年」
── 吉井 宏 ──

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●作品の占有容積

常々思うんだけど、世界中の画材メーカーがキャンバスや絵具を生産するのと同じペースで「消費」もされてるわけだ。描いたそばからばんばん売れるプロのアーティスト以外全員、使用前・使用後にかかわらず物置にどんどん貯まっていき、最終的には処分されるんだろう。

美術市場に出て誰かが買ったり飾られて残る割合って、全生産量の何万分の一とかくらい?

某会会員だった母の描いた絵も、実家の六畳間が埋まるくらいの100号キャンバスや小品が残ってるし、道具なんかもそのままある。

惜しいとか何とか言っても、結局は廃棄する以外どうしようもない。予感があったのか、急死の直前に近くの小学校や施設などに大きな絵をいくつか寄付したらしい。17年も前の話。





僕の場合、81年から92年までアクリル絵具で描いてたから、実家の自室にB1パネルや仕事のイラストなどが大量にある。東京の部屋にもスーツケース一個分くらいある。やはり捨てにくい。

ちゃんと複写すれば大半は処分して平気なつもりだけど、一度中途半端にコンパクトデジカメで撮ったきり。

「想いが込められているから捨てられない」とか感情的なことはおいといても、保管にコストがかかるのは当然。データ化するのさえ大変な労力と時間がかかるのは、実感としてよくわかるのだ。

Macで描くようになってからは、何千枚描いても物理的にはHDDやDVD程度。最終データだけならマイクロSDカード一枚に余裕で入るし、クラウドなら完全ゼロだ。

なのに、フィギュア制作など立体を始めてしまったのだー。

絵ならパネルから剥がしてしまえば容量は紙一枚分で済むのに、立体は作っただけ確実に部屋が狭くなる。

今までに、50cm〜1メートル弱の大型立体が9個。フルカラー3Dプリントの小さい作品まで合わせれば、たぶん70〜80種類くらいある。おまけに、フィギュアとして作ったものは複製してるから大変な数。

昔、立体イラストをやってるイラストレーターから倉庫を2つ借りた話を聞いて「へえ! 立体は大変だなあ」とか思ってたのに、自分がトランクルームを借りるハメに。

最近作ってる一点物も十個を超えてしまった。「作りたい!」って単純な衝動でワクワクノリノリで作ってるのに、「空間が狭くなる、置く場所がない」っていうマイナスの気分が出てきてしまうのが非常に困る。

これ、何かに似てると思ったら、「美味しいもの食べると太ってしまう罪悪感」そっくりだw

●iMac20年

5月7日はiMacが発売されてちょうど20年だったそう。11年前のiPhone発売を考えると、それほど昔じゃない気もする。ボンダイブルーはタイミング的に見送り、ちょっと後にオレンジ色(タンジェリン)を買った。

スティーブ・ジョブズが復帰、iMacでAppleが大復活して順風満帆……では、ぜんぜんなかったんだよね。それまでがひどすぎた。差し迫った危機から抜け出した程度。

iMac発売から5年後の2003年の本「マッキントッシュその赤裸々な真実!」は希望だった。その「シェアが低下してもAppleは潰れない。なぜなら利益を出してるから」にすがるように、Appleの生き残りを願ってたくらいだもん。

美しく楽しく親しみのあるこのデザイン。フォルクスワーゲンみたいに何十年もこのままだったらいいなと思ってたけど、液晶ディスプレイの普及が予想外に早く、割とすぐ液晶iMacに取って代わられちゃった。

スケルトンカラーの外観デザインの影響はすごかった。家電店行くとアイロンや掃除機など、みんなiMacの亜流だったなあ。

iBookもタンジェリンを買った。オレンジ色のものを買うことがうれしくて、いくつも買った。オレンジ色の樹脂のお盆がまだ現役w

ただ、iMacはグラフィック仕事のメインで使うには小さすぎて、それほど活用できなかった。今みたいに、無線LANで全マシンがDropbox同期されてれば使いようもあったんだろうけど、LANで繋がってたくらいじゃ仕事に使うには不便。

iMac類似パソコンの問題、どうなったんだろうと思ったら、損害賠償1000万円で済んだんだw 古い記事どんどん消しちゃうところが多い中で、2000年のニュース記事が残ってるってすごい!
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000117/sotec.htm


余談。今回、オレンジ色のお盆を裏返してよく見て、メーカーのロゴを見つけた。無名メーカーのiMac便乗製品だと思い込んでたけど、庶民のアレッシィと僕が勝手に呼んでるドイツの「Koziol」製だった! 楽しい製品をいっぱい出してて好きなメーカー。

http://www.yoshii.com/dgcr/koziol_IMG_0928
http://www.koziol.co.jp/



【吉井 宏/イラストレーター】
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テレビの「ケンミンショー」などで、愛知県っていうと必ず名古屋限定なのが残念。三河のほうにも行ってよ〜。せめて豊橋に。っても、三河にはああやって絵面で盛り上がるような食べ物はないからなあ。

手羽先を注文して食べたのは、十数年前に名古屋駅ビルで一回きり。90年まで名古屋に勤めてたけど、手羽先が名物なんて知らなかった。僕が名古屋にいたころにはそれほどメジャーじゃなかったのかも。っていうか、そもそも名古屋時代に、居酒屋って一度も行ったことないやw

・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」も出ました
https://bit.ly/2qWbmZh


・rinkakインタビュー『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii