晴耕雨読[42]海賊版サイトブロッキングは何が問題なのか/福間晴耕

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前回、海賊版サイトの一つ、漫画村を閉鎖させるのがどうして難しいかについて書いた。
http://bn.dgcr.com/archives/20180413110200.html

その落ち葉拾い的な意味でその後の経過と問題点を書いてみたい。

前回の記事の最後にも書いたように、あれから一転して大手漫画海賊版サイト「漫画村」と、アニメ海賊版サイト「Anitube」は突然閉鎖した。

技術的に外部からの攻撃や、著作権侵害の申し入れなどでも閉鎖させることが難しいこれらのサイトが、突然閉鎖したのは技術的・法律的に効果的な手段が取られた結果というよりは、ニュースにも取り上げられ政府も対策を取り始めたのに対して、足がつくのを避けるためにトンズラしたと見るのが自然だろう。

そうした意味で、海賊版サイト問題は解決したわけではない。また、ニュースに取り上げられた大手海賊版サイト以外にも、膨大な海賊版サイトはいまだにネット上に残っているし、大手サイトも別の名前で復活する可能性がある。





それでも、今回の騒動で、直接の著作権侵害に当たらなくても悪質なサイトはGoogleの検索から削除されるようになったし、資金源となる広告を外す事が有効だと分かったのは大きな成果と言えるだろう。

参考:「望んで広告を出しているものではない」 海賊サイト広告問題、出稿していた大手企業の言い分は(ねとらぼ)
http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1804/20/news124.html

しかし、新たな問題として今度は海賊版サイト対策のためにNTTグループ3社が法制度が整備されるまでの短期的な緊急措置として、サイトブロッキングを行うことを発表した。これについては賛否両論あるようだが、以下に述べる理由から役に立たないどころかむしろ有害ではないかと思っている。

まず最大の理由だが、対象となる著作権侵害サイトの多くが既に閉鎖していて、そもそもブロッキングする意味がないというのがある。

もう一つの理由は、ブロッキングのススメ方が政府が方針を示しただけで、実際のブロッキングの判断や責任をISPに押し付ける、というやり方になっている点である。

これではブロッキングする基準と根拠が乏しく、下手をするとブロッキングを行ったサイト側が法律違反に問われる可能性がある上に、ISP側にとっては自主的な判断を促すという口実で、何か問題があった時に責任を押し付けられることにもなりかねず、一番対応がやりにくい。

後で述べるが、ブロッキングも色んな方法があるものの、きちんと問題のサイトを遮断することは難しく、また誤って別の無関係のサイトを遮断してしまう危険性もあるのだが、そうした問題が起きた時に責任を誰が取るのかということになってしまう。

そして最大の理由は、そもそもブロッキングが効果的な方法ではない上に、副作用が大きいという問題がある。

ブロッキングの為には通信内容の一部を解読して、「何処のサイトにつなぎたいか」を判断する必要があるが、これが通信の秘密に触れる危険性がある上に、そもそも最近のネットでは通信手段が暗号化されていて中を読むことは難しい。

そうなると、目的のサイトを遮断するためには、目的のサイトの住所にあたるDNSサーバのデータを利用できないようにする方法が考えられるが、これもGoogleなどが提供しているパブリックDNSサービスを利用すれば、ブロッキングは回避されてしまう。

また、直接相手のIPアドレスを遮断する方法もあるが、検閲を回避してプライバシーを守る用途にも用いられている「Tor」や、海外のオープンプロキシが使われればこれも迂回されてしまう。

更に、違法業者がWebサイトやドメイン名を次々に変えていけば、それに合わせてブロッキングも更新する必要がある。抜け道を塞ぐために多くのIPアドレスを遮断すれば、巻き添えを食らって無関係なサイトがブロッキングされる危険性も高くなる。

実際にロシアの例では、ロシア国内では違法とされているTelegramというメッセンジャーサービスをブロックするために、180万ものIPアドレスをブロックを遮断した。巻き添えを食らって、GoogleやAmazonをはじめ多くのアプリが使用できない事態になったにもかかわらず、Telegram本体は利用できるという事件が先月に発生している。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。