もじもじトーク[85]丸明オールドと砧明朝体/関口浩之

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もじもじトークの関口浩之です。

今日のテーマは「丸明オールドと砧明朝体」です。

●丸明オールドという書体

過去のもじもじトークで、何度か登場した「丸明オールド」という書体。僕が好きな書体のひとつです。

ゴシック体には、角ゴシックと丸ゴシックがありますよね。でも、明朝体には、丸明朝体ってありましたっけ?

はい、あります。砧書体制作所(旧:片岡デザインワークス)が2001年にリリースした「丸明オールド」です。

では、僕が街中で、最近撮影した丸明オールドの皆さんを紹介します。じゃーん!
http://bit.ly/2s89EEK

明朝体の特徴は、横画のトメの部分に三角形のうろこが付いてますが、この書体は、うろこが丸いのです。さらに、ハライの先端なども丸いエレメントで構成されています。

なので、柔らかさと優しさを感じるわけです。そして、ひらがなとカタカナが、活版印刷の時代の書体の骨格で作られているので、懐かしさも感じます。

丸明オールドの過去記事も読んでくださいね。
http://bit.ly/2IHwtdK





●砧明朝体という新しい書体

5月11日に竹尾の見本帖本店2Fで開催された「日本タイポグラフィ年鑑2018グランプリ」受賞記念スペシャルトークショーに参加しました。登壇者は、グランプリを受賞した、砧書体制作所の片岡朗さんとと木龍歩美さんです。

毎年、国内外からタイポグラフィ・デザイン作品が応募され、『日本タイポグラフィ年鑑』に受賞作品や入賞作品が収められます。今年は、1,374件の作品が応募され、お二人が制作した『砧明朝体』がグランプリを受賞されたのです。おめでとうございます!

こんな素敵な明朝体なのです。トークショーの様子もご紹介します。
http://bit.ly/2ILqmAQ

●スペシャルトーク

グランプリ受賞を祝福したくて、最前列に座って、片岡さんと木龍さんのお話をじっくりお聴きしました。

そう言えば、4〜5年前に、片岡さんにお会いした際、「自分の明朝体を探す旅にでます」と聞いたがあります。「明朝体を究める旅にでてます」というニュアンスだったかもしれません。

今回の新書体も、5年の歳月をかけて、丹精こめて作られた書体だったのかーと感動しました。

新書体のコンセプトは、「優しさ」と「間」だそうです。こちらをじっくり観察すると、感じることができると思います。
http://bit.ly/2Lq0XhR

砧明朝体は、曲線の要素を多く取り入れたそうです。それが、印刷のにじみ効果のようになり、それが見る人に対して優しさを感じさせるのです。そして、横棒と縦棒にも、曲線を取り入れているので、よく見ると直線ではないのです。

トークショーで、とくに記憶に残ったお話がこちらです。

「写植時代には、1mmの幅の中に手描きで10本の線を書くという技術が必要とされた。いまはMacで書体を作れるけど、その感覚を大事にすることが重要なのです。画数の多い字を縮小しても潰れないように作る際に必要な処理です。そして、仮名は曲線がもともと美しい書体なので、漢字との調和を保つよう、制作しました」

このイベント申し込み時に、「メッセージや質問ありますか」の欄があったので、質問を書きました。当日、トークショーの中で回答いただきましたので紹介します。

僕のメッセージと質問内容は、こうです。

「片岡さんと木龍さんが手掛ける書体には優しさと温もりを感じます。そして使い続けても飽きがこないのは凄いなぁと感じます。

質問です。砧明朝体のアルファベットはとても個性があります。
A B K N Q R とか g k ! ? & 6 9 など、
今まであまり見たことない形をしていると思います。でも組んでみると違和感がありません。最初からこの形が思い浮かんだのか、試行錯誤の中から誕生したのでしょうか」

片岡さんの回答は、こうでした。

「欧文書体はものすごい数の書体が存在してるし、綺麗な書体がすでにたくさんあります。日本語書体を制作しているので、欧文書体の美しさを求めるというより、和文と欧文とを組み合わたときに、こういったアルファベットもあってもいいじゃないかなと思ったんです。漢字や仮名の要素を欧文に流用したのは実験的でもあり、みなさんが、これからどう感じていくのだろうかと思ってます」

なるほど……。片岡さんのコメントは、すごく深いんです。利用者に対して、書体をどう表現するかの選択肢の提案をしているんだと思いました。

そして、うれしいことに、セミナー会場で、僕の近くの席に、アートディレクターの副田高行さんが聴講されていました。

副田さんは、丸明オールドがまだ制作過程の時の2,000年に、丸明オールドを使ったサントリーモルツの新聞広告を発表しました。それがきっかけとなり、リリースから17年経ったいまでも、丸明オールドが広告やポスターで使われているのです。

その後、18年間、丸明オールドは、飲み物や食品、化粧品の広告には、なくてはならない存在になったのです。

新書体に対する感想や評価って、リリースされた時のものと、数年経ってからのもの、何十年、何百年経ってからのものがありますよね。

ファッションと同じように、書体の評価も時代と共に変化するものなのかもしれないですね。

●「フォントおじさん」で検索で1位獲得

最後に、自分ネタです。

昨年秋から「フォントおじさん」でGoogle検索すると、一番上に、僕のインタビュー記事が掲載されるようになりました。

・フォント素人のWebエンジニアが、「フォントおじさん」に聞いてみた! 
Webフォントの最近の事情とか
http://bit.ly/2ITuSxK

取材中に「関口さんを一言で表現するとなんだろう」という話になり、「フォントおじさん」という言葉が浮かんで、その話したら、「関口さん、フォントおじさんって表現、そのままじゃん」ということになったのです(笑)

そして、ありがたいことに、その記事が多くの方に読まれて、いつのまにか、検索結果の最上位にくるようになったのです。

その後、セミナー登壇のセッションタイトルに「フォントおじさん in ◯◯」と付くようになり、その関連記事も上位に入るようになりました。

いまでは、「フォントおじさん」のGoogle検索結果の上位に、僕の関連記事がたくさん出てくるようになったのです。

これって、すごい、ことですよね。インターネットがなかった時代の1980年代だったら、同人誌とかに僕の記事が書かれても、読む人はせいぜい数百人だったと思います。

それが、インターネット時代においては、数万人に読んでもらえる可能性があるわけです。

フェイクニュースやバズらせることを目的の記事が多数存在する中、楽しくて正しい情報をコツコツと掲載したいですね。

では、二週間後に、またお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。