グラフィック薄氷大魔王[566]LPレコードのデジタル化に再挑戦
── 吉井 宏 ──

投稿:  著者:



●レコードのMP3化に失敗

昨年10月に書いた件。数年前の実家制作中に「妹が買っておいてあった、SDカードに録音できるレコードプレーヤー」で60枚ほどのレコードをMP3化したのに、なんとなくおかしい。検証したところ、半音高い。つまり、レコードプレーヤーの回転スピードが微妙に速すぎだったのだ。
https://bn.dgcr.com/archives/20171011110100.html


Adobe Auditionを使い、音程と演奏時間の補正は成功したものの、低レートのMP3を編集しちゃってるし、そもそも録音したままの波形を見るとダイナミックレンジを振り切っていて、音が割れてる部分がある。
図/上 http://www.yoshii.com/dgcr/hakei

まともなレコードプレーヤーを買って、デジタル化をやり直したい!





そういえば、レコードのデジタル化サービスなんて、あるんじゃないか? 調べてみたら、確かにある。けど、CDに焼いてくれて一枚あたり3000〜4000円もする。300枚やったら……無理w タモリ倶楽部でやってた究極のレーザー式レコードプレーヤーより高くなっちゃう。

で、実家に行ってレコードを東京に送るタイミングを合わせて、レコードプレーヤーを購入することにした。

安価なプレーヤーには、回転スピードの調整機能がついてない。前回の反省を踏まえて、回転だけは正確にしたい! ってことで、思いついたのはDJ用ターンテーブル。これなら回転スピードは調整し放題だ。

Facebookに書いたら、音質的に鑑賞用プレーヤーとは異なるのでお勧めしないという意見も多かったのだが、プロDJのお墨付きを得てパイオニアのリーズナブルなDJターンテーブル「PLX-500」を購入。
https://bit.ly/2LBj9p3


●20枚ほど録音したところで気づいたこと

プレーヤーは3月末には届いてたのに、立体作品に取りかかってしまい、ずっとお預けだった。サンドペーパーで粉だらけの作業と、レコードの録音を同時にやりたくなかったのでw

回転スピードの微調整。50Hz(東日本)の蛍光灯の点滅で、ターンテーブル横の模様が止まって見えるように調整するのは知ってた。

なのに、うちはLED照明。蛍光灯デスクライトを物置部屋から出してきたところで気がついた。このプレーヤーには赤いストロボライトが横についており、50Hzで点滅するようになってる! 便利〜!

Adobe Auditionでは音を出しながら録音できなかったので、Amadeus LiteをPlay Throuthオンにして使った。48000Hz 32bit。

順調に録音を進めて、20枚ほどやったところで気づいた。ごくときたま、スピーカーの音がしばらく止まることがある。Macのオーディオ出力の具合かと気にもとめてなかったのだが、録音を確認したらその部分が飛んでる!

ってことは、数回音が止まった部分がそうなってる可能性。スピーカーの音を小さくしてて気づかなかった箇所もありそうだ。あっちゃー、やり直しだわ。まだ枚数少なくてよかった。

原因は、たぶんUSBに長い延長ケーブルやUSB type-cアダプタなどいくつも繋いでたため、エラー補正が追いつかなかったのだろう。MacBook Proにtype-Cアダプタのみで繋いだら、その後トラブルは起きなかった。

数週間かかって80枚を録音した。これからも実家に行くたびに、数十枚ずつ東京に送って録音するつもり。何度か繰り返せば今年中に完了するだろう。

●波形の幅の問題

AmadeusでもAuditionでも同じレベルの音になるんだけど、波形を見るとダイナミックレンジを使い切ってるとは言いがたい。音量が小さすぎない?
図/中 http://www.yoshii.com/dgcr/hakei

こういうときは無造作にノーマライズ(全体の音量を分析して適度に上げてくれる機能)してたけど、していいんだよね? と、Facebookで何人かであーだこーだと議論になった。
図/下 http://www.yoshii.com/dgcr/hakei

ノーマライズするとノイズや針音も大きくなってしまう、と。それはわかる。「録音時に最大音量に合わせて入力レベルを上げておく」が普通のやり方なんだけど、プレーヤーとMacをUSB接続の場合には調整できない模様。

音声編集ツールAudacityを使えば調整できるはずとのことで、インストール。しかし、やはり入力レベルの調整は出来ない。

で、素人ばかりが出した結論。USB直結で録音したのはプレーヤーが書き出した生のデジタル音声。音量を上げようがノーマライズしようが、録音された音そのものは変わらない。安心してノーマライズしてOK、とw

生のAIFデータはLPが1枚で1GB程度。これを「-1dbにノーマライズ」してAAC 320kbpsで書き出し100MBほどになった。AAC 192kbpsだと50〜60MB。聞き比べてもオリジナルAIFとの違いはわからない。

●ノーマライズやり直し

その後、どうも音量が大きすぎな気がしたので「-3dbにノーマライズ」で再び書き出したのだが……。iTunesから適当に曲(CDリッピングやストアで購入したもの)を選んでAuditionで波形を見てみたら、びっくり! 振り切れ寸前の真っ黒じゃ〜〜ん。
http://www.yoshii.com/dgcr/hakei_20180527-1

ギリギリまで音量音圧をかせぐってこういうことか! 「-1dbにノーマライズ」でよかったんだ。

探すとこのくらいの音量のもあるけど、遠慮しないで大きくして大丈夫っぽい。
http://www.yoshii.com/dgcr/hakei_20180527-2


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com

Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/


レコードの録音は、CDのリッピングや書籍自炊と同じく「ちょっと注意して監視してないといけない片手間作業」。これ、逆に仕事がはかどるはかどる! 仕事してて意識がムダごとに行っちゃうのを長時間防げるというか、仕事のみに集中させられてしまうというか。

・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」も出ました。
https://bit.ly/2qWbmZh


・rinkakインタビュー『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii