羽化の作法[65]現在編 瞑想の続きと個展『0.03』
── 武 盾一郎 ──

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こんにちは! 前回、瞑想について書いたのですがその続き。こんな情報があったので、追加で紹介します。

●瞑想について・続き「過去の経験から自由になれる?」

・洞察瞑想時に自伝的記憶関連脳領域間の結合性が低下することを発見──今この瞬間に生じている経験にありのままに気づくことの神経基盤──』
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2018/180702_1.html


「マインドフルネス実践法は、特定の対象に意図的に注意を集中する集中瞑想と、今この瞬間に生じている経験にありのままに気づく洞察瞑想から構成されています」

と、書いてあるのですが、瞑想には大きく二種類あるようです。このリンクで初めて知りました。「集中瞑想」と「洞察瞑想」があって、僕は多分「洞察瞑想」をしてるんだと思います。

そして、「洞察瞑想」の「ありのままに気づく」ことをしていくと、「自分の過去の経験に関する記憶に捉われる程度が低下」するようなのです。

「今後は、洞察瞑想によって自分の過去の経験から自由になれるという観点から、マインドフルネス実践法が日々の健康や幸福感を高めるメカニズムを解明することが期待されます」とのこと。

これは、現在となってはもう使い物にならない「過去の成功体験」にしがみつく、いわゆる「オッサン現象」に効果がありそうです。





辛い過去、トラウマに囚われてしまってる人にも「洞察瞑想」は良いんじゃないかと思う。だけど本当に辛かったら「瞑想」じゃなくて、ちゃんと「病院」に行った方が良いのだろうけど。

この「過去の経験から自由になれる」という文言が引っかかったので紹介したのですが、それはなぜかというと、最近、何かを見ても、どこかに行っても、記憶から脱出できない感じがあって、そこに小さな苛立ちを覚えたからです。

視覚や聴覚など外部情報が入力されると、すぐさま過去を参照する素晴らしい脳。しかし、未知の何かに触れた時の生々しいクオリアが発生するのではなく、過去に体感したかつてのクオリアを思い出すだけなのだ。そう感じるのだ。

日常で何気ない夕焼けの美しさに癒されてため息をつく瞬間も、夕焼けの感触の記憶を呼び戻してるのであって、この瞬間の夕焼けをダイレクトに生で感じてるのではないことに気が付いた。

それはなぜかと言うと、美しい夕焼けにホッとする時、決まってノスタルジーも湧くからだ。馴染み深い記憶をまたなぞることで安堵してるわけだ。なのでこの「夕焼けの美しさ」は「発見」ではなく「再現」なのだろう。

そう思って「まっさらな今」を感受できるのか、と近所の風景に目を凝らしても「知っている感じ」が消えることはない。

「私は自分の記憶に棲み続け、死ぬまでここから出られないのか?」と、何だかとても悔しい気持ちがしてしまう。

しかし、地元がまるで見知らぬ街に見えたら、それはきっと生命的危機状態なのだろうけど、そういう見え方ができる能力を身に付けたい。

それに瞑想が少しは役立つかも知れないと思ったのでした。

●個展『0.03』を開催中です

告知になってしまいますが、ただ今個展を開催中です。

武盾ー郎個展『0.03』
会場:参宮橋Picaresque
会期:2018年6月30日(土)〜7月29日(日)11〜18時(土日祝のみ営業)
https://twitter.com/picaresquejpn


個展タイトルの「0.03」はメインで使ってるミリペンの太さです。「Copic multiliner 0.03」を使ってます。
https://copic.jp/product/multi/


線画を描き始めた時はボールペン、「ぺんてる ハイブリッド・ファイン 0.6mm」を使ってました。同じ太さのボールペンの中で、最も線が濃く描ける感じがしたのです。現在は廃番となってるようですね。

線譜を描き進めて行くうちに、徐々に細いボールペンになって行き、「三菱ユニボール シグノ 超極細 0.28」を使うようになりました。
https://www.mpuni.co.jp/products/ballpoint_pens/gel/signo_cap/signo/um_151_28.html


そして更に細く描けるミリペンの0.03になったのです。

実はもっと細い線を描きたくて、「Copic multiliner 0.03」よりも細く描けるペンを探してるのですが、今のところ見つかってません。知ってる方がいらっしゃったら、ぜひ教えてください。

というわけで、個展のタイトルは「ペンの太さ」で、メタファーでもなんでもありません。そのまんまです。ピカレスクのオーナー松岡詩美さんと、個展を決めた後のスカイプ会議で決まりました。

詩美さん「ところでペンは何使ってるんですか」
私「コピックの0.03を使ってるんです」
詩「0.03ですか。それ個展のタイトルにしませんか?」
私「え? 0.03ですか?」

みたいな感じだったでしょうか。

河原温の「日付絵画」みたいに「記述してあるだけ」みたいなドライな感じは好きなので、個展タイトルは「0.03」に決まりました。

「日付絵画」とは制作した日にちをキャンバスに描いた作品です。
http://artscape.jp/artword/index.php/%E6%97%A5%E4%BB%98%E7%B5%B5%E7%94%BB


クールでミニマル。シンプルなリズムが繰り返されて行くテクノ・サウンドのようなシリーズです。
https://alchetron.com/On-Kawara


〈河原温〉

実は、河原温のスタイルを取り込みたいなあと、常々思っているです。

このツイッターは河原温本人が作ったアカウントかどうかは分かりませんが、河原温の作品コンセプトを端的に現わしてると思います。
On Kawara https://twitter.com/On_Kawara


河原温は2014年に亡くなってます。ですが、今でも一日一回「I AM STILL ALIVE」とツイートしてます。

淡々と連続する言語。コンセプトだけが抽象化されたこのツイッターアカウントこそ、河原温らしいと僕は思ってしまいます。

そしてこの、河原温のコンセプチュアルなミニマル感を自分の作品で出したいなあといつもなんとなく考えてたりします。

他にも参照アーティストはいます。

〈ジャクソン・ポロック〉

ジャクソン・ポロックは、「抽象表現主義」の代表的なアーティストと言われています。「抽象表現主義」の特徴としてと、ウィキペディアにあります。

・画面に中心がなく、地と図の区別がない、「オールオーバー」(均一)な平面
・キャンバスは、作家の描画行為の痕跡(フィールド)であると考え、創作過程を重視する」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%BD%E8%B1%A1%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E4%B8%BB%E7%BE%A9


「線譜」も天地がなく、行為の痕跡として線が剥き出しになっている状態を描いています。なので、自分も抽象表現主義のくくりに入るのかなあと思ったりしました。

と言っても順序は逆で、かつて僕は何も知らずにペンキを「わーっ」とこぼして描いたりしていて、そこでジャクソン・ポロックを知って「へー」と思い、そこから「抽象表現主義」を知って行ったのですが。

ポロックも作品名は「ナンバー」だったりしてます。

「数字は偏見や先入観がなく、不偏である為、見る側は純粋な芸術として受け入れることができると考え、敢えて作品名を数字にしたといわれる」そうです。
参照:https://www.musey.net/3969


これは何も現代美術に限ったことではなく、クラシックの曲も番号だったりしてますので、むしろ古風な発想なのかも知れません。

僕も作品名は「完成した日の数字」例えば、「2018.07.10」とかで良いのではないだろうかとずっと思って来ました。

なぜなら、「私はひとつの宇宙を描いてるだけで、作品はその小さな断片に過ぎない。しかし描かれた宇宙はフラクタルなのでその断片が全てです」という感じで、作品個々のアイデンティティは「完成日」ぐらいだったからです。

ジャクソン・ポロックの「ノイズ・ミュージック」のような感じは、ペンキで描いてた頃からあって、今の線譜にまで引き継がれています。

そして、もうひとつミックスしたい要素があります。それは「物語性」なのです。河原温のスタイルとは矛盾する感じがするのですが、そこをなんとか織り交ぜたいと思っているのです。

そこで参照したいアーティストが、イリヤ・カバコフです。

例えば、こんな展示をしています。
1999年、水戸芸術館『シャルル・ローゼンタールの人生と創造』
https://www.arttowermito.or.jp/gallery/gallery02.html?id=182


「『シャルル・ローゼンタール』はカバコフが設定した架空の画家の名前です。水戸芸術館現代美術ギャラリーの空間に合わせて企画された本展は、ローゼンタールがその短い一生に追い求めた多様な絵画表現を、彼の回顧展の形で構成するという重層構造のユニークな展覧会となっています。

つまり、技術の習得に優れていた画家、ローゼンタールが、20世紀初頭という時代の影響を受けながら多様な表現を試みるが、若くして夭折するという設定のもとに、イリヤ・カバコフが平面作品を制作し、展覧会はひとつの物語のように展開されることになります。」

展示会場が丸ごと、架空の画家「シャルル・ローゼンタール」の回顧展となってまして、何から何まで創作な訳なんです。

例えるなら、コメディアンの古坂大魔王が、千葉県出身のシンガーソングライター・ピコ太郎を演じて、曲を発表しているスタイルです。

違いは、ピコ太郎が『ペンパイナッポーアッポーペン』のような曲がメインなのに対して、イリヤカバコフはローゼンタールの画家人生の物語がメインで一つ一つの作品が重要な訳ではないところです。

こんなレビューもあるくらいです。

「展覧会全体がひとつのインスタレーション作品と見るべきで、一点一点の絵を味わうという喜びには欠ける。」
http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/artscape/artscape/9911/murata/1031.html


他にもこんな展示がありました。
2004年森美術館『イリヤ& エミリア・カバコフ展「私たちの場所はどこ?」』
http://www.mori.art.museum/contents/kabakov/index.html


「巨人が絵画を眺めるメガスケールの展覧会(過去)、ヒューマンスケールの展覧会(現代)、そして床下に広がるランドスケープ。観客はまるでガリバーか小人になったかのような気分で、自分の記憶や想像力を動員して自由に空間をめぐることになります。」
https://www.mori.art.museum/assets_c/2017/08/kabakov_de-thumb-1280x640-671

観に行った人のブログが見つかったので引用します。

「散文的な写真と、その横のロマンチックな詩とのイメージの隔たりに、まず驚く。そして次には、そのイメージの落差そのものが、イメージを大きく膨らませて、今度は、写真と詩とが一つの物語を語り出す。

数枚の写真と詩の額を見て、コーナーを曲がると広い展示室に出る。

わっ! 巨大な足が天井から突き抜けて立っている。19世紀風の縞のズボンに革靴の二本足。チェックのズボンに革靴の二本足。縁取りの付いたスカートに踝までの靴の二本足。

天井近くには、金色の額縁に収まった古典的な絵の下の部分が、少しはみ出して見えている。足だけ見える巨大な人たちは過去の人たちで、天井の上の方で過去の絵画を鑑賞している。

私たちは、その足元で、ソ連時代の写真と19世紀の詩人の詩を組み合わせた現代美術を見ている。

そして、私たちの足の下には、未来の風景が広がっている。所々、床の隅に開けられた穴から覗き見るジオラマは、大きな川の岸辺の草原や畑や家々。」
http://www.geocities.jp/odessa_istanbul/art/kabakov.html


「三つのスケールを混ぜたインスタレーション」ということなのですが、浮かび上がってくるのは「物語性」で、面白いことに作者名が「イリヤ&エミリア・カバコフ」と夫婦二人になっています。柔らかでファンタジックな感じは、妻のエミリアさんのお力なのでしょうか。

例えば、河原温の「日付絵画」を観た場合「はぁ? で? 何が面白いの?」となってしまう人も結構いそうな感じに対して、カバコフは物語性で作品に入って行くことができるのです。

以上に挙げた3人のアーティストのスタイルをミックスして「耽美」に表現したいのです。

〈7つのテーマ〉

個展では線譜を7つのテーマに分けました。

1・音
音楽の元祖は自然の音。川や風の音、鳥や虫の声。人為的ではない音。線譜はそれら「アンビエント」や「ノイズ」をオートマティックに線描することから始まりました。「一本線の線譜」や「ノイズ」や「Improvisation(即興)」の線譜シリーズです。

2・インストゥルメンタル
「楽曲」という構造を持った音楽を表現した線譜。主にクラシック曲をイメージした線譜のシリーズです。

3・ヴォーカル曲
人物が登場する線譜はボーカル曲を表現しています。『文学乙女』や『繭の観音』など、人物が登場するシリーズです。

4・物語曲
物語の楽曲を表現した線譜。『ネズミに恋したネコのタムちゃん』や『アリス・イン・アンダーグラウンド』などの物語曲の線譜シリーズです。

5・音楽標本

「この宇宙は音楽である。物質とは本質的に音楽であり、宇宙とは壮大な交響曲であり、生物は動く音楽である」という仮説に基づいた世界。音楽を観る望遠鏡や顕微鏡を使って「宇宙の音楽」、「音楽生命体」、「音楽物質」などを観察・採集したシリーズです。

6・プロダクト
装丁画や肖像画など。

7・その他アーカイブ
ピカレスク収蔵作品や小作品。

なんとなくですが、1から6までは「線譜の進化」のような順番です。或いは抽象から具象(具体的展開)への流れです。

絵は「目に見える現実世界のモノを描く」と言う前提のようなものがあります。そして具象から抽象に進化するのが基本だったりします。

それに対して、絵は「音楽を描いている」という出発点の違う系譜をもうひとつ作り、一人でその絵画史を辿るという、実は壮大な芸術プロジェクトが線譜だったりするのです。

そんな文脈が見えるかどうかは、ぜひギャラリーピカレスクに足を運んで確かめてみて頂けたらなあと思っております。

ぜひお立ち寄りください!

武盾ー郎個展 『0.03』
参宮橋Picaresque
2018年6月30日(土)〜7月29日(日)11〜18時(土日祝のみ営業)
https://twitter.com/picaresquejpn



【武盾一郎(たけじゅんいちろう)/売れっ子天才画家】

◎代官山アートラッシュ『Tシャツ展』にも出展してます!
2018年7月4日(水)〜7月23日(月)
水・木・金・土 AM11:00〜PM7:00
月・日・祭日   AM11:00〜PM6:00
火曜日定休(入場無料)
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