[4604] デジタルの紙と鉛筆の登場◇ストーリーよりエンタメ優先?

投稿:  著者:  読了時間:16分(本文:約7,800文字)



《こどもの最初の画材がスマホの時代?》

■ユーレカの日々[67]
 いつか、紙と鉛筆のように
 まつむらまきお

■グラフィック薄氷大魔王[572]
 「映画のストーリーを止めてまで?」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■ユーレカの日々[67]
いつか、紙と鉛筆のように

まつむらまきお
http://bn.dgcr.com/archives/20180711110200.html
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先日、電車に乗った時の話だ。ぼくが立った位置からふと見下ろすと、親子四人が対面シートに座っている。

父母と、中学生くらいと小学5年くらいの女の子。娘二人はそれぞれ、スマホを見ているのだが、妹の方はスタイラスペンで、画面にになにか一生懸命、描いている。

最初は塗り絵アプリかな? と思ったが、そうではなく、おそらくこの子自身が描いた、アニメ風の女の子キャラに色を塗っているのだ。なぜ自作とわかるかというと、絵が微妙に下手だから。

アプリはアイビスペイント。無料で使えるペイントアプリで、高機能で知られている。彼女は慣れた手つきで、レイヤーを操作し、色を選び、マスクまで使いこなして一心不乱に作業を続けている。

操作を迷うことは一切なく、目まぐるしく画面を操作しながら、描いていく。アルファロックで、はみ出しを防いで塗る。二色で塗り分けたエリアをボカシツールを使ってグラデーションに加工する。

小学生でここまでやるのかと感心して眺めていた。よく見ると、ペンが細い。SAMSUNGのGalaxy Note。スマホではめずらしく、スタイラスペンを標準装備しているモデルである。

隣の姉の方はスマホでマンガを読んでいる。縦スクロールのWEBトゥーン形式だ。よく見るとセリフはハングル。この時点で気がついたのだが、この家族は韓国からの旅行者のようだ。

ぼくが降りるまで、約20分。彼女はずーっと、スマホで絵を書き続けた。この子は旅行中、ずっとこうやって描いているんだろうなぁ。そして、親から「いいかげんにしろっ」って叱られるんだろうなぁ。

●身近になったデジタル絵

大学の入試で、面接官をすることがあるが、最近はデジタルで制作している高校生がめだつようになってきた。絵を描き始めたきっかけを尋ねると、小学生の頃にペンタブレットを買ってもらったことだという高校生がいて、印象的だったのを憶えている。ほんの数年前のことだ。

それが今や、小学生がスマホを持っていても不思議ではない時代。パソコン+ペンタブレットは、安くなったとは言え、専門家のためのツールであり、どこにでもあるというものではない。

ところが、スマホや、タブレット端末は、子供にとっても、とても身近なモノだ。スタイラスペンだって、100円ショップで手に入る。これはなんだか、すごいことだと思う。

●不透明絵の具が嫌いだった

子供時代、最初はクレヨンなどで絵を描き始める。小中学校で手にする画材は、不透明水彩絵の具。ぼくが小学生の頃もそうだったし、娘たちの持ち物を見ると、今もそうだ。ところが、この水彩絵の具がクセモノ。

マンガやアニメ、雑誌をイラストをマネして描いても、これで線画に彩色すると、線が曇ってしまう。きれいにできない。おかげで、絵の具、彩色に対する苦手意識ばかりが募っていく。

線画に彩色するなら、透明水彩やカラーインクの方がずっと扱いやすく、きれいに仕上がるのを知るのは、ずっとあとになってからだ。

ぼく自身、そうやって、絵の具に挫折しまくってきた。電車の中の少女は、線画に色を塗るのに、線を保護し、別レイヤーに塗っていた。ちゃんと線を保護することを知って、作業していた。

小学生で、スマホとスタイラスがあったら、いくつものハードルを軽々と飛び越えられたんじゃないだろうか。

不透明水彩は、あらかじめ混色し、重ね塗りをする、絵画的な絵を描くのに向いている。ところが、絵画的な作品、たとえば風景画なんかは、マネしにくい。

鉛筆で形をとるのはマネできても、絵の具の使い方を知らなければ、ぐちゃぐちゃになってしまう。高校になってアクリル絵の具やカラーインクと出会うまで、絵の具を使うのは苦手だった。

●マンガはマネしやすい

ぼくの世代で、マネがしやすいのは、マンガだった。モノクロでいいし、キャラクターは記号的で、マネしやすい。モノクロで良い、ということは、紙と鉛筆ではじめられ、すぐに結果が確認できるということだ。

ステップアップして、ペンを使うようになると、下書きという手順を理解し、失敗も減る。修正液を手に入れると、失敗してもリカバリが可能になる。そして、そのどれもが、安価で、身近な技術だった。

そして、コピー機。カラーコピーはまだなく、モノクロコピーが主流だから、線画の方が、絵の具を使った絵より、ずっと利用範囲が広かった。

そういった、幸福な環境が、スマホの普及で、カラーイラストでも実現しつつあるのだ。ハードルが高かったカラーイラストも、マネしやすい、身近なものになっている。

●スタイラス問題

しかし、実際は、絵が描けるスマホは少数派だ。

スマホは、スタイラスではなく、指で操作しやすいように設計され、それゆえに大ヒットした。静電方式のタッチパネルは、指で操作しやすい反面、普通のペンなどでは反応してくれない。

現在、安価に売られているスタイラスは、ゴムや金属の網のペン先だが、これらの弱点は太いことだ。操作には使えるが、絵や字を書くのは、ペン先が見えないので実用的ではない。

電車の中の少女が使っていたGalaxy noteは、専用ペンが使えることがセールポイントの機種。ペンは4096段階の筆圧を検知する。これはワコムのintuos(安い方)と同等の性能だ。

画面画素は1440×2960ピクセル。ワコムのCintiq Pro 13(フルHD)より広い。
こんな性能のものを、小学生の頃から使いこなしているわけだ。

Apple Pencilが登場以来、iPhoneでも使える日を心待ちにしているのだが、なかなか実現しない。ただ、iPhone Xでは、指圧を検知するタッチ3D機能が向上しており、実は多くのお絵かきアプリで、すでに筆圧検知ができる。

筆圧検知性能は非公開だが、絵を書くのに実用的な、スムースな筆圧変化が実現している。Apple Pencilは使えないが、電磁式や、ディスク式のスタイラスペンなら、ペン先も細く、かなり自然に絵を描くことができる。

●何に使えるかわからないけど、必要

とはいえ、Galaxy noteも、iPhone Xも、専用ペンがないと描けないことにかわりはない。性能的には紙と鉛筆に近いけど、道具としてはまだ遠い。

電車の中の少女は、絵を描けるからGalaxy noteを選んだのか。それとも、たとえば親が勉強に使うなどを期待し、たまたま、Galaxy noteを与えて、絵を描くのにはまっていったのか。

その昔、携帯電話に加速度センサーが搭載された時、それを何に使うのか、必要なのか、だれもよくわからなかったが、今ではスマホカーナビや、ゲーム、健康管理アプリなどで使われる基本性能となった。

位置センサーやジャイロ。ひとつひとつのセンサーはシンプルでも、それがあわさって、複雑な情報検知が可能になっていった。

だったら、入力もいろいろ、できた方がいい。音声入力はまだまだ発展途上だが、スマートスピーカーなど、急速に生活に入り込んでいる。デュアルカメラは、3DセンサーとしてARの可能性を広げている。

すべてのスマホで、筆圧で入力が可能になった時、何かが変わるのだ、きっと。


【まつむら まきお/まんが家、イラストレーター・成安造形大学教授】
twitter: https://twitter.com/makio_matsumura
http://www.makion.net/
mailto:makio@makion.net

大阪の地震。幸い、怪我などはなかったが、本棚や食器棚が倒れ、マンションそのものも、外装のあちこちにヒビがはいり、二基あるエレベーターの一基は今もまだ動かない。街では未だ営業休止の店もちらほら。そして今回の大雨。大学は休講になり、いろんな予定が大幅に狂う。

そんなことを書こうと思っていたが、広島、岡山の被害を知り、言葉を失う。


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■グラフィック薄氷大魔王[572]
「映画のストーリーを止めてまで?」他、小ネタ集

吉井 宏
http://bn.dgcr.com/archives/20180711110100.html
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●映画のストーリーを止めてまで?

大塚康生「作画汗まみれ」を読んでたら、やはりそういうことなのか! って部分があった。ストーリーよりエンターテインメント優先の場合もあるってこと。そうだろうと思ってはいたけど、はっきり書いてある文章は初めて読んだかも。引用する。

『(アニメでも実写でも)日本の一般の観客は「枝葉」の笑いや「遊び」の要素(いわゆるエンターテインメント性)を楽しむよりは、むしろ本筋の劇的展開や主人公の運命に一喜一憂することを喜ぶ(それをある種のエンターテインメントとする)という傾向が強かった(註3)。

(註3)当時、エンターテインメントの代表格であったアメリカのミュージカル映画も、日本の多くの観客の好みには合わなかったことを思い起こすべきである。お話の流れを止めてのんびり歌など歌ったり踊ったりしていることに、物心両面で豊かとは言えなかった当時の平均的日本人は「それで話はどうなるんだ!」といらだった。』

これだ! 映画やドラマとか見てて、ずっと不思議だった。物語が佳境に入ってて、次の展開を固唾を飲んで待ってるのに、なぜ、のんきにギャグやラブシーン入れたり歌ったりうんざりするほど延々ドンパチやったりするのかと。

カーチェイスや格闘シーンなんかも、同じく長すぎるとイライラしてくる。じらしてるのかと。頭来る! って思ってた。

細かいギャグが延々続いて本筋がなかなか進まないとか、クライマックスの盛り上がりを余計なエピソード入れてブチブチに切り刻むやつとか。朝ドラとかで、特に重要でない枝葉や小ネタを長い時間引き延ばすのも耐えられない。

テレビ番組で、モザイクや「?」で隠されたモノの種明かしを、延々続くCMに邪魔されてる感じに近い。

こっちは時間割いて観てるんだから早く進めてくれ!とw

そこは楽しまなくちゃいけないところだったのね?w わかってたけどさ。なんちゅうか、せっかちなのは自覚してるけど、精神的に余裕のない昔の日本人代表だわ……。

あと、ストーリーは決着してるのに、ほのぼのエピソードを付け足すとかも苦手。ミュージカルのストーリーは、「歌と踊りの入れ物」だろうから仕方ないけど。

もちろんエンターテインメントを否定してるんじゃなくって、僕的にストーリーとエンターテインメントのバランスがおかしく感じるのが苦手なんだと思う。

大塚康生といえば、宮崎駿より前に認識してたアニメーター。ルパン三世とかその他いろいろのタイトルバックで名前を見たし、アニメージュかなんかでジープやトラックの絵が紹介されてたな。

大塚康生「作画汗まみれ 改訂最新版」
https://amzn.to/2J3JDwP

●iTunes映画で倍速再生

外付けディスプレイで見るAmazonビデオは、HD画質不可が仕様。春頃からNetflixの代わりに使ってるU-NEXTも、ストリームの回線の状態によるのか、SD画質でしか再生できないことがある。

iTunes映画ならダウンロードしてから見れるので、画質は最高にきれい。ただ、Video Speed Controlなどのビデオコントロールアドオンがないので、2倍速再生とかできない。と思ったら!

今、iTunes映画を観てたら、下のコントロールの早送りをクリックしたままにすると、音声や字幕が出たまま二倍速再生(早戻しも)できるのを発見!

「command+option+左右矢印押しっぱなし」でも同じことができる。こんな機能あったっけ? 以前、散々試してできなかったのだが。(代わりに、ヘルプにも書いてあって以前はできたはずの「command+option+左右矢印で5秒飛ばし」ができなくなってる気がする)

高画質で見れるならiTunes映画がいちばんいい。字幕と吹き替えを途中で切り替えられない弱点は残ってるけど、両対応の映画も増えてきた模様。

●SketchBook無料化

ちょっと古い話題ですが。フルバージョンがサブスクリプション制になっていたAutodesk SketchBookが、無償になった!
https://sketchbook.com/

SketchBookはタブレットPCの頃からiPad3まで愛用してた。iPad ProでApple Pencilが使えるようになるとProcreateばかり使うようになってしまった。最初の頃のページめくり式は好きだったな。

復活してみた。Macとのやり取りを確認してみると、「PSDをエクスポート」で書き出し、「イメージから新規作成→ブラウズ」でレイヤーが生きたままPSD読み込み可能。それさえできれば僕的には及第点。

指消しゴムはないものの、画面隅ダブルタップで直前のブラシと交互に切り替えでき、スケッチ作業に使う上ではProcreateに劣ったところはない。ブラシの書き味もいい。

無償になったのはiPadだけでなく、パソコン版も同様。つまり、両方で同じアプリを使ってスケッチできるのだ。しばらく試してみよう。


【吉井 宏/イラストレーター】
HP  http://www.yoshii.com
Blog http://yoshii-blog.blogspot.com/

最近Facebook等でよくシェアされてた「What The Fluff Challenge」(犬に仕掛けるイタズラ。シーツを掲げてサッと隠れる。飼い主を見失った犬がオロオロする動画)。オウムのバージョンもあった。大好きなお兄さんが消えてしまって絶叫。

ペットっていうか動物や鳥は、ただ本能に動かされてるだけでなく、人間と同じように意識や感情がある。それがこの動画シリーズで確信できた気がする。言葉による複雑なコミュニケーションができないことが多いだけで。

・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」も出ました。
https://bit.ly/2qWbmZh

・rinkakインタビュー『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii


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編集後記(07/11)

●20年以上も前のSF映画で、当時から見た未来の話だが、未だにそんなことにはなっていないし、いま新作として公開しても殆ど違和感がないのが「ガタカ」であった(1997/アメリカ)。10年以上も前に確かに見た覚えはあるが、内容はすっかり忘れていた。こんなとんでもない未来だったら永劫に来ない方がいい。

主人公ヴィンセントは勤務先の宇宙局ガタカで、恒例の血液検査、尿検査を受ける。医師の見えるところでコップに排尿し、性器が立派だと冷やかされる。血液や尿の検査の目的は、異分子「不適正者」の紛れ込み防止である。生体ID検査結果はすぐにモニターに顔写真と名前が示される。この時代、「適正者」と「不適正者」は峻別されて、「不適正者」は表の社会から排除されるのだ。

かつて人間は無事に生まれればよかったのだが、いまは遺伝子操作により身体的能力の高さや優れた知能、容貌を持って生まれた「適正者」と、遺伝子操作を受けずに自然出産された「不適正者」に分断される。ヴィンセントは「不適正者」であるが、「適正者」と偽り憧れのガタカに入局できた。彼は土星に行く宇宙飛行士を目指している。なぜ生体ID検査を無事に通過できるのか。

ヴィンセントはDNAブローカーの仲介で、「適正者」の生体ID(指紋、血液、尿、毛髪など)を買ったからだ。「適正者」は元水泳選手のジェームス、事故で下半身の自由を失い選手生命を断たれた男だ。ヴィンセントは彼の邸宅に住み、彼から提供される生体IDを用いて、ジェームスとしてガタカに入局したのだ。検査時の性器は作り物、尿や血液はジェームスのものだからバレない。

ヴィンセントは正体の発覚を恐れ、常に慎重に振る舞い(見ているほうがハラハラする)訓練で優秀な成績を収めて土星探査船の宇宙飛行士に選ばれる。だが、探査船の出発間近になって、彼の上司が殺害され局内には警察が入る。殺人現場近くで発見されたまつ毛は、「不適正者」ヴィンセントのものだったから大変。発覚を恐れながら「適正者」ジェームスになりきって追及を逃れる。

いつバレるか、バレずに乗り切れるか、じつにスリリングな展開だ。探査船の出発が延期も中止もされないタイミングで、宇宙局長が犯行を自供した。彼はヴィンセントを守るために、告発しようとした男を消したのだ。ここでホッとしたら、船に乗り込む寸前に検査が行われた。いま彼はジェームスの生体IDを持っていない。「子供があなたを英雄だと思っている」と言う医師はジェームスを見逃す。

ヴィンセントは探査船に乗り込み、仲間とともに宇宙へ旅立った。えっ、と思ったのはみんな普通の服装なのね。宇宙服なんか着ない。なんか変だなー。この映画では同僚女性との恋愛や、捜査陣のトップがヴィンセントの弟だったりという展開もある。一番素敵でイイ奴は、生体ID提供者のジェームスである。

いつも身だしなみを整えた車椅子の美青年。彼は人生を捨てずに、ヴィンセントの土星行きを献身的に支える。ヴィンセントのための生体IDの摘出、保存に務める。全登場人物中で、彼ほど美しく屈折した者はいない。彼もヴィンセントと同時に旅立つ。クレジットで G A T が強調されるのがすてき。(柴田)

「ガタカ」
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00PXKWZFA/dgcrcom-22/


●編集長、最後までネタバレは浜村淳でもしませんぜ(汗)。浜村淳は2.99で止めますもん(笑)。まだ見てらっしゃらない方は、「なぜ生体ID検査を無事に通過できるのか。」までで読むの止めて〜。

まつむらさんのおすすめ映画の中に「ガタカ」があった。まつむらさんのおすすめに外れはない。衝撃を受けた。今では好きな映画を聞かれたら、真っ先に「ガタカ」と答えてる。

/「What The Fluff Challenge」を見た。大慌てする犬と、意味がわかってるのかわかっていないのか、ぼーっとする犬とがいて面白い〜!(hammer.mule)

What The Fluff Challenge Compilation
Best of Instagram 2018 Funny Dogs Reacting #whatthefluff

これをザッピングしながら見た