晴耕雨読[44]外国人受け入れ拡大の裏で何が起きているのか/福間晴耕

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最初にこれを見てほしい。これは2000年から今年まで、法務省入国管理局の施設内または業務下で起きた死亡事件である。

■入国管理局における公表された死亡事件(2000年〜2018年4月)
合計16件

2001年10月30日 ベトナム 西日本入国管理センター(大阪府茨木市)自殺
2006年12月 ナイジェリア 東京入国管理局(東京都品川区)病死
2007年 2月 ガーナ 東京入国管理局(品川)病死
2008年 1月 1日 インド 西日本入国管理センター(茨木)自殺
2009年 3月21日 中国 東京入国管理局(品川)自殺
2010年 2月 9日 ブラジル 東日本入国管理センター(茨城県牛久市)自殺
2010年3 月22日 ガーナ 東京入国管理局成田支局 強制送還中の制圧による窒息死の疑い
2010年 4月 9日 韓国 東京入国管理局(品川)自殺
2010年 4月 フィリピン 東京入国管理局(品川)病死
2010年12月 フィリピン 東京入国管理局(品川)病死
2013年10月14日 ミャンマー(ロヒンギャ) 東京入国管理局(品川)医療放置による病死
2014年 3月29日 イラン 東日本入国管理センター(牛久) 誤嚥性窒息死(医療放置)
2014年 3月30日 カメルーン 東日本入国管理センター(牛久)医療放置による病死
2014年11月22日 スリランカ 東京入国管理センター(品川)医療放置による病死
2017年 3月25日 ベトナム 東日本入国管理センター(牛久)医療放置による病死
2018年 4月13日 インド 東京入国管理センター(品川)自殺

このうち2014年3月の牛久入管内での「病死」は、睡眠導入剤、抗うつ剤、痛み止めの過剰投与で薬漬けの状態で、食事をのどにつかえさせた後30分以上放置されての「病死」であった。





また2014年11月のケースでは胸の痛みを訴え治療を求めたが、病院には搬送されず、その数時間後に息を引き取った。

この他にも死亡に至らない人権侵害・暴行・医療放置などは無数にある。また先週アメリカで収監されていた難民が、家族とバラバラに収容されていることが問題になったが、日本でも家族や支援者の面会を断ち切るために、わざと地方の収監施設にを転々とさせるといったケースも報告されている。

信じがたいかもしれないが、これが今、日本の入局管理局の入国管理センターで起きていることなのだ。

入国管理センターは法務省の部局の一つで日本人・外国人の出入国審査、外国人の在留管理、難民認定などを扱う施設のうち、在留資格のない外国人を帰国まで収容する施設だが、後述する様々な理由から多くの問題が起きている。問題の原因は、難民認定申請したり、家族が日本にいるなどの理由で帰国を拒んだりして、収容が長期におよぶ外国人が多い為である。

もともと入管の管理センターは、今のような多くの外国人を長期間収容することを想定していない時代に作られている。そのため牛久にある東日本入国管理センターでは洗濯物を干すスペースすらなく、非常階段に収容者の洗濯物が干されていたり、非常勤医師1名しかいない状態で治療を受けられないまま放置されている収容者が多数いる状況だ。

また介護施設や医療機関同様に入管職員のなり手が少なく、オーバーワークで極めて職員の定着率が悪い問題も起きている。

さらに入管はその性質上、リベラル側からは収容者の人権問題で批判をうけ、保守側からは不法在住者への対応が甘いと批判され、どのような対応をしても必ず批判を受けることもあり、極めて士気は上がりにくい。

そうしたこともあり、資質に問題のある一部の職員による鬱憤晴らしから、収監者への暴力が日常化しているという、人権団体からの指摘もある。

そうした問題が起きているなら、とっとと強制送還すればよいのではないかと思う人も多いだろう。

だが費用をどこが負担するかという問題や、過去に強制送還中に死亡事故が何度も起きていることなどもあって、簡単には踏み切れないという問題や、そもそも書面審理待ちの収監者が大量にいて、捌ききれない状態になっている。

それでも2014年には、年間5500人を超える人数を強制送還しているのだが、後述するように入国してくる外国人は労働者だけでも年間数10万人、観光ピザで入国してくる人を含めると2743万人にも達しているので、焼け石に水なのが現状だ。

このように入管のシステムは破綻しているのだが、根本的な原因は入ってくる人間に対してキャパシティが足りず、人も施設もお金も足りないのが根本原因にある。

しかも、こうした受け入れ側の問題が改善する動きは見られないのに対して、外国人の受け入れについては、政府は今後さらに増やそうとしている。

特に不法在住者の原因になっていると言われている外国人労働者の受け入れに関しては、政府は今後単純労働まで範囲を拡大した上で、年間50万人以上の受け入れを目指している。

これがどれだけの人数かと言えば、今の日本の年間出生率が2016年で97万6979人というから、およそ今後増えていく人口の、3人に1人は外国人という計算になる。

もちろん、外国人労働者がそのまま不法在住者になるわけではないが、外国人技能実習制度を悪用するかたちで人権蹂躙や事件が多発していて、パスポート取上げて奴隷労働させたり、時給300円で残業させたり、来日している外国人女性に対してセクハラなどを行うといったケースに事欠かず、これに耐えかねた外国人労働者が逃亡して、不法在住者になるケースが多発している。

また、途中に介入するブローカーが、多額の借金を負わせて日本に外国人労働者を送り込むケースも多いために、借金を返すまでは帰国できない(帰国したくない)という事情も不法在住者が増える原因になっている。

もちろん政府も手をこまねいているだけではなく、それなりに対策は取ってはいるものの、2017年には27団体で偽造文書の行使などの不正行為が発覚したり、今年になってからも三菱自動車工業岡崎製作所で規定にない作業を行わせていたり、十分な説明もないまま福島第一原発の除染作業を行わされていたりと、完全に後ろ手に回っているのが現状である。

更にヨーロッパを中心に難民が増えているという問題もある。日本では中東・アフリカ諸国から遠いこともあり、難民問題は対岸の火事のようなイメージがあるが、収容者が増えている背景にはこうした難民問題も絡んでいる。

シリア・トルコ・イラクにまたがる地域には、国家なき最大の民族と呼ばれているクルド人が住んでいるのだが、彼らの多くがシリアやイラクの戦火やトルコ政府による弾圧を逃れて日本にやってきているのだ。

特にトルコに住むクルド人は、トルコのパスポートを持っているために日本にはビザ無しで入国することができるのだが、トルコ政府と友好関係のある日本ではクルド人を難民と認めないために、多くのクルド人が収監されている。

一方で、トルコのエルドリアン政権はますます独裁化・強権化を進めていて、国内のクルド人に対する弾圧は激しさを増している。

外国人労働者受け入れに関しては、最近積極的にニュースなどでも取り上げられ、受け入れに関しては様々な議論が進んでいるようであるが、入り口だけでなく、出口や関門に当たる部分を早急に見直さないと、いつか大きなしっぺ返しが来るだろう。


【福間晴耕/デザイナー】

フリーランスのCG及びテクニカルライター/フォトグラファー/Webデザイナー
http://fukuma.way-nifty.com/

HOBBY:Computerによるアニメーションと絵描き、写真(主にモノクローム)を撮ることと見ること(あと暗室作業も好きです)。おいしい酒(主に日本酒)を飲みおいしい食事をすること。もう仕事ではなくなったので、インテリアを見たりするのも好きかもしれない。