[4623] 富山地鉄をちいさくひとまわり◇昔の夏は本当に涼しかったのか?

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《デザインとはこうでなくちゃ》

■わが逃走[222]
 富山地鉄をちいさくひとまわり の巻
 齋藤 浩

■もじもじトーク[90]
 昔の夏は本当に涼しかったのか?
 関口浩之




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■わが逃走[222]
富山地鉄をちいさくひとまわり の巻

齋藤 浩
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7月の終わりに金沢で会議があったのだが、ちょいと早めに出発して富山で途中下車し、富山地方鉄道に乗って日本の原風景と北陸ならではの構造美を眺めてきた。

できることなら一日乗車券で宇奈月や立山まで行きたかったが、さすがにそこまで時間はないので、「富山地鉄をちいさくひとまわりプラン」を採用。

電鉄富山→寺田→岩峅寺→電鉄富山と、富山近郊を一周したのだった。

●電鉄富山→寺田

電鉄富山駅は、ターミナル駅つまり、線路の末端である。始発駅であり、終着駅。こういう端っこ然とした佇まいがたまらん。

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観光ポスターの掲げられたホームの壁、その下には業務用ヘッドマーク置場が。相乗効果もあり旅情倍増である。

電鉄富山駅を発車し、数駅が過ぎるとすでに美しい田園風景が広がっていた。7駅目が寺田。宇奈月温泉へと続く本線と、立山へと続く立山線との分岐駅だ。

寺田駅は「齋藤浩のマイ近代化遺産」に登録されているすばらしい物件である(建物だけでなく、環境も使われ方も、その風情も含めた価値の総合的評価なので、「物件」と呼ぶ方がしっくりする)。

何がスゴいって、その分岐駅然としたホーム形状が素晴らしい。

上から見ると見事な扇形をしており、その輪郭に沿って本線と立山線が分かれていくのだ。

つまり、分岐駅と説明されなくても、上空から見ただけでそれとわかる。まあ、上空から見る機会のある人なんてそんなにいないだろうけど、つまり乗り換えながら無意識に鳥瞰図をイメージできる駅なのだ。

感覚で乗り換えホームがわかる、つまり方角がわかるということは、構造がサイン計画を兼ねてると言えましょう。平面だろうと立体だろうと、デザインとはこうでなくちゃ。

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扇形ホーム中央の待合室は、スクラッチタイルを多用した美しい木造建築で、1931年竣工。これを中心に、画面向かって左が本線、右が立山線。

DOCOMOMO100選に選定された黒部川第2号発電所(1938年)は、ここからすぐ!(誇大表現)。

こうして見ると、左右対称の表現主義建築の金字塔・小菅刑務所(1929年)を思い出すオレがいるわけですが、同時代における公共建築の夢と希望にあふれた設計のしっぷりに深い感銘をうけつつ、(立体にしろ平面にしろ)同じ設計や素材の使い回しに慣れすぎた21世紀を深く反省した次第。

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4番線から扇形ホームを見る。

●寺田→下段

寺田から立山線に乗り換え、岩峅寺へと向かう。スケジュールに多少余裕があったので、途中の下段(しただん)駅で下りてみた。とくに理由はないが、子供の頃親しんだ、プラレールの『いなかのえき』を思い出したから。次の列車まで1時間以上ある。

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前日通り過ぎていった台風の影響か、とんでもなく暑い。そのかわり、美しい山々がはっきり見える。ホームと木造の上屋。冬は寒いんだろうなー、と汗を拭きながら思う。

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ホーム端から階段を下り、短い廊下を進み、写真左側が駅舎への出入り口。構造から推測すると、この短い廊下部分は当初オープンエアだったのではなかろうか。

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写真は廊下からホームを見上げたところ。木造の手すりの外側のトタンの壁と窓、屋根部分は寒さ対策であとから追加された? などと想像しているわけだが、こういった推理ごっこは実に楽しい。竣工当初の姿や有人駅だった頃の風情をイメージするだけで、ごはん三杯はいける。

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駅舎は美しい瓦屋根の木造建築。

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あぜ道を通って田んぼからホームを眺める。夕方、電車を待っているときっと聞こえるよ、カエルの声が。写真右側の瓦屋根が駅舎、トタン部分がホームと駅舎をつなぐ廊下。

●下段→岩峅寺

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下段駅を堪能した後、車窓からの田園風景をめでつつ岩峅寺駅に到着。このまま立山まで行きたいところをぐっとこらえて下車する。

岩峅寺駅といえば寺社を想起させる駅舎建築が有名だが、今回は乗り換え時間10分のため見学(というか鑑賞)は割愛。

この駅の構内も独特で、立山線のホームを下り、構内踏切を越え、屋根つきの渡り廊下を通って不二越・上滝線のホームへ向かう。

思わず「オレは今、乗り換えてるんだ!」と強く意識してしまう、楽しい構造。

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構内踏切を渡り、立山線のホームを見る。何度か延長された痕跡が見受けられる。左側の階段は完全にトマソン化している。

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岩峅寺駅構内図。

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上滝線ホームから渡り廊下を見る。奥が構内踏切と木造モルタル2階建ての駅舎。

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上滝線ホームの待合室。梁が素朴でイイ。ここで読書しながら列車を待ってみたい!

●岩峅寺→電鉄富山

岩峅寺を発車すると、徐々に都市が近づいてくる印象。車窓から見える住宅の数もどんどん増えてゆく。車内も午前中の部活を終えた高校生で賑わってきた。そうこうしているうちに、南富山駅に到着。

オレ的「富山地鉄をちいさくひとまわりプラン」としては、旅情を優先し、ここで路面電車に乗り換えるルートを推奨しているのだが、今回はこのまま乗車して電鉄富山駅に向かった。暑くて乗り換える気力がなかったからである。

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これは6年前に撮影した南富山駅の写真だが、現在もほぼかわらないとみた。次回富山へ訪れたときは、路面電車をひたすら乗り降りしつつ散歩を楽しみたい。涼しくなってからね。

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電鉄富山駅に到着。終着駅のホームにさりげなく立てかけられた梯子が、いかにも“働き者”って雰囲気を醸し出していた。

富山の良さって、こういう素朴で素直な風情なんだと思う。

この後、脳を仕事モードに切り替え、きらびやかで見栄っ張りな(笑)金沢へと向かったのだった。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。


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■もじもじトーク[90]
昔の夏は本当に涼しかったのか?

関口浩之
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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

7月下旬から8月上旬にかけて、最高気温40度というすごい酷暑が続きましたね。暑がり屋にとっては、死ぬかと思った出来事でした・・・・・・。

先週ぐらいから、最高気温が30度前後になり、「過ごしやすくなったねー」という会話が聞かれるようになりました。

とはいえ、冬でも汗だくになる、暑さに弱い人間にとって、30度の気温も、しっかり酷暑です(笑)

そういえば、小さい頃(50年前)、夏でもクーラー無しで過ごしてましたよね。昔の夏は涼しかったのかな?

それとも、当時、クーラーは一般家庭には、まだ普及してなかったかのかな?

●体感温度5度ぐらいアップ?

「昔の夏は涼しかったねー」という会話も、最近、よく耳にしますよね。

じゃあ、50年前の夏の気温って、今よりかなり低かったのかなぁ?

気象庁ホームページで、夏の平均気温、100年の変化トレンドの資料を見つけました。

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/sum_jpn.html

日本の夏の平均気温は上昇傾向が続いており、長期的には100年あたり約1.09℃の割合で上昇しているらしいです。

50年前の夏の平均気温より、最近の夏の平均気温は、体感的には5度ぐらい高いと感じていたけど、データ的には、0.5〜1.0度ぐらいの変化ということなのでしょうか。

夏の平均気温を毎年見比べると、昔も猛暑の年があったり、冷夏の年があったりで、長い年月を掛けて調査しないといけないようです。

いろいろ調べてみましたが、大半の意見は、この50年で夏の気温が急上昇したわけではない、ということでした。測定する地域による違いもありますが。

僕は1960年から1978年まで群馬県の田舎で過ごし、1978年から40年間、東京暮らしです。

個人的な意見ですが、こんな観点で、昔と今の夏を比較してみると、体感温度というか、人間が実際に感じる温度は、5度ぐらいアップしているような気がします。

・小さい頃に住んでいた群馬も、上京したばかりの東京も、今より緑は多かったし、今ほど、コンクリートやアスファルトに囲まれていなかった。

・気象庁が設置している温度測定装置(百葉箱)は、たしか、芝生から1.2〜1.5mの高さで測定すること、だったと思う。恵まれた環境だよね。

・一方、僕らが暮らしている環境は、ヒートアイランド現象をもろに影響を受ける。西新宿の高層ビルが最初に建設されたのが、京王プラザホテルで、1971年だから、47年前のことなのだ。

・50年前、暑かったらランニングシャツ1枚になればいいって感じだった。僕が通った高校の先生は、男子校ということもあり、夏はランニングシャツ1枚で授業していたし(笑)

つまり、百葉箱の環境は50年間、変わってないけど、僕らが暮らす環境は、この50年間で大きく変化して、夏の体感温度をどんどん急上昇させたのではないか、というのが僕の結論でした。

ということは、我々人類が、クーラーがないと生活できない環境に変化させてしまったのではないでしょうか。

●クーラーとエアコンのお話

さっき、何気なく『クーラー』って言葉を使ってしまいましたが、『エアコン』のほうが最近の一般用語ですね。

でも『クーラー』という言葉は、50年前の正式名称だったんですよ。自称、家電おじさん、でもある僕は、「樹氷」というナショナルの家電製品をリアルタイムで体験しました。

なんか、ギンギンに冷えそうな製品名でしょ。

・ナショナル製ルームクーラー「樹氷」

「樹氷」というブランドの『クーラー』が1969年に発売されました。室内機と室外機が二つに分かれた、壁掛けセパレート型としては世界初です。

さすが、世界のナショナル(パナソニック)! これが、現在のクーラー(エアコン)の原型となったと言われています。

「樹氷」は暖房する機能はなくて、冷房機能だけなんです。冷やすだけだからクーラーなのです。

このクーラー、群馬の実家で使ってました。昔の家電って、筐体設計デザインといい、機能性といい質実剛健って感じで大好きです。こちらです。ジャーン!
http://bit.ly/mojimojitalk-cooler

そして、1973年にルームクーラーの普及率が10%を超えたようです。

・ナショナル製ルームエアコン「楽園」
ついに、冷房と暖房の両方の機能が付いた『エアコン』が1974年に発売されたのです。

暖房機能が付いちゃったので、家電業界的に製品カテゴリーを、『クーラー』ではなくて、『エアコン(エアーコンディショナー)』に、変更する必要があったのです。

そして、ナショナルのエアコンブランド名は、「エオリア」という爽やかなものに変貌していったのであります。個人的には、「樹氷」とか「楽園」とかのブランド名、僕は大好きなんですけど・・・・・・。

おっ、後半は、文字の話を書こうと思ってたんですが、夏の気温の話と、クーラーとエアコンのことを書いていたら、時間切れになってしまいました。

今日のもじもじトークの締めは、セミナー情報です。

●FONTPLUS DAY in 大阪(リクリセミナーコラボ)

書体デザイナー藤田さんをお招きして、筑紫書体の現在・過去・未来を語っていただきます。フォントおじさんコーナーもあります。

第36回リクリセミナー「フォントのホント リターンズ with FONTPLUS DAY」
http://bit.ly/fontplusday-in-osaka

関西周辺の方で、筑紫ファンのみなさん、フォントが好きなみなさん、文字っ子じゃないけどフォントの世界に触れてみたいみなさん、ぜひ、ご参加下さい。

有料セミナーですが、60名定員に対して、募集開始二日間で、すでに40名の方からお申込みいただいてます。ありがとうございます。

席数が少なくなってますので、ご興味あれば、ぜひ! はじめて参加される方、フォントマニアの集まりって感じの参加しづらい(もしくは怖い・・・笑)イベントではありませんよ。肩の力を抜いて、誰でも楽しめるセミナー企画です。

なお、このイベントは、デジクリでもおなじみ“コロ”こと、川合さんにもお手伝いいただいてます。

では、またお会いしましょう。次回のもじもじトークは、文字に関するお話になる予定です。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。


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編集後記(08/23)

●シュワルツェネッガーが大暴れする話か、しない話か。しない方では、良き父親役の「マギー」を前に見たが、いまひとつだったな。今度の映画はどっちのタイプになるのかな、期待して見た「アフターマス(余波)」(2017/アメリカ)だったが、これもまた大暴れしない話、しかも悲しい役であった。

さらに、悲しい役の相手も悲しい役である。建設現場の監督ローマンがシュワの役で、久々に妻と娘(妊娠中)が帰ってくるのでルンルン、家中を飾りつけ花束抱えて空港に行くと、二人(三人か)が搭乗した飛行機が、空中で衝突事故を起こして全員死亡の大惨事と知らされる。彼を小部屋に呼んで、淡々と事故を伝えるのは派遣会社スタッフという、日本ではありえない「処理」である。

271人死亡の大惨事を招いたのは管制官のジェイクのミスともいえるが、たった一人で管制の仕事を任され(そこが大問題だ)、他の対応をしている間の出来事なので、事故調査委員会は彼の法的責任を問わなかったが世間は許さない。彼は自分を責め続ける。彼の家にはKILLER、MURDERといった落書きがされ(外国映画ではよく見るような)、仲のよかった家族との関係も冷え込んでいく。

航空会社の代理人はただ一人合意しないローマンに、総額16万ドルの賠償金と航空会社プレミアムメンバー提供を示し、告訴を取り下げるように要求するが、「家族を殺したことを謝罪して欲しい」と言うだけで、彼は頑として応じない。一方のジェイクの苦痛は次第に和らいでいくが、事故に関することを一切語らなくなった。ジャーナリストのテッサがローマンに、ジェイクに接近する。

一年後、ジェイクは家を売り州外に引越し、名前を変え新居に近い旅行会社で働いていた。ローマンも別の町で大工として働いていた。事故の慰霊式典に参加したローマンはテッサと出会い「管制官だったあの男は今どこで何をしているのか」と尋ねる。分かっていたとしても、応えるべきではない。しかし、テッサは軽率にも(一応躊躇するが)ジェイクに関する情報を与えてしまう。

そりゃあないだろう、と誰もが思う。だが実話ベースの映画だから、そういう成り行きがあったのだろう。ローマンはジェイクを直撃し「家族の写真を見せたい。そして謝ってほしい。誰の口からも謝罪の言葉を聞いていないんだ」と詰め寄る。「あれは事故だったんだ。僕は殺していない。帰らないと警察を呼ぶ」と言われ、逆上してナイフで刺殺してしまう。稚拙な二人である。

10年後、ローマンは予想外の仮釈放を得る。週に3回精神科医に面会し診断書を書いてもらう、欠かさず面会を受け、診断書に問題がなければ刑務所に戻らなくていいという。今度はジェイクの息子サミュエルが、出所したローマンを射殺しようとするが、「すまない……」と謝るローマンを射てない。これも実話なんだろうか。ほとんどひねりのない、なんともスカッとしない話である。

事故被害者の遺族のたった一人が、頑として賠償に応じないで、往時の管制官に対して「この写真を見ろ、殺したことをあやまれ」と激昂し(しかも事故後10年を経過している)ナイフで刺し喉をかき切るなんて、実話だとはいえ、頭がおかしいだろう。シュワルツェネッガー主演でなくても全然OKだ。(柴田)

「アフターマス」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B077D6KL2S/dgcrcom-22/


●また大型台風が〜。今回はわりとすぐに通過してくれるらしい。今夜の食材は確保したっ。/疲れが取れず。ずっと身体がだるくて、頭がぼーっとする。後記も書きかけては消し、消しては書き、の繰り返し。 (hammer.mule)