[4637] ガイジンが日本でプロのmanga家になるには◇やっぱ24インチ最高!

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《外国人が日本でプロのmanga家になるための困難》

■ローマでMANGA[134]
 ガイジンが日本でプロのmanga家になるには
 Midori

■グラフィック薄氷大魔王[578]
 「やっぱ24インチ最高!」他、小ネタ集
 吉井 宏




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■ローマでMANGA[134]
ガイジンが日本でプロのmanga家になるには

Midori
https://bn.dgcr.com/archives/20180912110200.html

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●教え子が日本へ行った

学校の教え子ではなくて、19歳の頃からコンタクトをとってきた、今30歳の女性の話。本人に書くよと承諾を取っていないので、仮にマリアさんとします。花子さんみたいなものですね。

マリアは日本のアニメとmangaを見て育った世代。マリアより上の世代だと、アニメは子供のもの、と洗脳されているので、それでも内緒でアニメファンでいるのは少数になってきます。

でも、マリアの世代だとかなりの確率で、manga、アニメ、ゲームファンのまま成長します。

マリアはmanga家になるのが夢。30歳を過ぎてもその夢を捨てられず、ここでも何度か取り上げたコアミックス社のサイレント・マンガ・オーディション(以下SMA)に何度か応募して、昨年のSMA8で、ついに、なんとグランプリを獲ったんです。

SMAでは入賞した人に担当編集者を付けて、短編を作ってもらってSMAのサイトに掲載します。そして、今回日本へ行ったのは、入賞のご褒美の続きで、「マスタークラス」に招待されたからです。

他の入賞者と一緒に、北条司先生など、コアミックスの大御所のワークショップを体験するらしいです。

出発前に、「manga家になるための、次のステップはどうしたらいい?」と相談を受けました。せっかくmangaの本拠地日本へ行くので、manga雑誌に掲載を目指すために訪ねる場所を教えてほしい、というのがその心なのです。

日本の出版社が主催するコンクールで最優秀賞を取ったのだから、日本の市場で通用する、と考えても仕方がないといえば、仕方ないわけです。マリアの立場としては。

そこで、今回は「日本人以外のmanga家志望者が、日本でプロになれるか」という考察をしてみたいと思います。

●ガイジンが日本でプロのmanga家になるための困難
その1・言葉

ヨーロッパ内だと、国が違い、言葉が違ってもそれほど大きな障害にはなりません。下地になる文化が共通してるしね。

日本では、言葉ができないと意思の疏通が難しくなります。

通訳を通して言葉の壁を超えたとしても、メンタリティが違い、仕事の進め方が違い、原稿を作るにあたって、内容の細かなニュアンスを編集者が求めても伝わりにくい、というのを90年代に講談社の「モーニング」での企画のお手伝いをした時に経験しました。

マリア達はmanga言語を使うSMAで入賞したくらいだから、manga作品を作るのになんの問題もないだろうと思うと、そうでもないのが実情です。

●ガイジンが日本でプロのmanga家になるための困難
その2・絵柄のオリジナリティ

アニメとmangaを見てmanga家になりたいと思ったくらいだから、当然絵柄はいわゆるmanga風。当然ながら日本には、いわゆるmanga風の絵柄で作品を描く人がごちゃまんといるわけです。当然彼らは言葉の問題がないわけで、しかもメンタリティの問題もありません。よっぽど変わった人でない限り。

つまり、イタリア人である、という特徴が出ないと、編集部としては言葉や意思の疎通などの問題を苦労して越える、モチベーションに繋がらないわけです。

では、manga風から離れた絵柄だと扱ってもらえるか、となると、これまた問題です。manga作品が売れる条件は絵柄だけではないわけですし、読者が見慣れた絵柄から大きく離れて、市場に受け入れられるかとなると、これまた疑問です。

だいたい、話が元に戻るけれど、mangaとアニメを見てmanga家になりたいと思ったのだから、manga風の絵柄を持ってしまいます。

●ガイジンが日本でプロのmanga家になるための困難
その3・スピードとクオリティ

日本でプロのmanga家として仕事をするということは、連載獲得を目指して作品を次々と作っていき、連載を獲得したら、さらにスピードアップせねばなりません。しかも質を落とさずに。

日本ではアシスタントを使い(編集部でもアシスタントを探してくれます)、イタリア(あるいは他の国)にいながら、質の高いアシスタントを雇えるものでしょうか。

昼も夜もクリスマスも復活祭も忘れて、manga制作に没頭する生活を続けていけるでしょうか。

●知り合いの編集さんに会いに行った

マリアはかつて大学で奨学金を得て、東京の大学に一時期留学してました。その時にも、私の知り合いの編集者に何度か会って作品を見せていました。

今回も、希望を持ってその編集者に会いにいきました。東京で留学中はかなり日本語が上達したのですが、その後、帰国して日本語環境がなくなってだいぶ忘れてしまいました。

というわけで、マリアと編集さんの会見に、FBのビデオを通して私も言葉のアシスタントとして参加したのでした。

マリアの「今後どうしたらいいか」の質問に、やはり、イタリア人としての特徴が出ないと難しい、という意見が出ました。そして、SMAでちゃんと編集が付いて作品制作ができるのだから、それを生かして行くべき。

他の出版社でゼロから始めて、今のSMAとの位置までたどり着くのは大変だ。ということも。

さらには、ソーシャルネットワークを活用して、名前を多くの人に覚えてもらう、という意見も私と一致してました。

要するに、日本で出版したいのなら、日本でmanga家になりたい日本人と同じ道を歩んで行くのが最良、ということのようです。

日本のmanga市場は世界に類を見ないほど大きい。その大きい市場は作り手の山の底辺がとても大きいことも関係してて、多くの人が興味を持ち、色々なテクニックを編み出し、真似してさらに改善され、その大きな土壌を栄養にしてヒットや大ヒットが生まれるわけです。

つまり、プロになりたいとmangaを描く人がたくさんいて、その中で注目を浴びるのに「イタリア人」であることをどうやって特徴にして行くのか、を考えるべき、な訳です。

manga風の絵柄で日本を舞台にした作品を描いて、山の底辺でピョンピョン飛び跳ねても、隣のピョンピョンより高くはならないのです。

●manga風を描くイタリア人manga家志望者はどこへ行くべきか

SMAで賞を取って、「日本で通用する」と思ってしまっても仕方がない、と書いたけれど、それだけではないのです。

フランス人でmanga風の絵柄で少年mangaをフランスの出版社から出版し、日本でも飛鳥新社から翻訳版が出て、あまつさえ、アニメになって10月から放映される「Radiant」という作品が、いまやマリアのようなヨーロッパ人の頭にはあるのです。

ヨーロッパ人が描いた少年mangaが、日本の市場で受け入れられる、という事実の前哨戦なわけです。後に続け!

Radiantの幸運は、絵が上手い、キャラが立っている、という基本的なことの他に、作者がフランス人で(ヨーロッパにおけるマンガ王国であるところの)フランスで出版され、日本にはフランスのマンガ(BD)を出版することに尽力しているフレデリックさんがいることにもあります。

Radiantはフレデリックさん率いる「ユーロマンガ」で翻訳などの編集作業をして、これまでも色々コラボをしてきた飛鳥新社から出版という運びになったわけです。

フランスでは、フランス人作家のmanga風作品を出版する「まともな」(きち
んと作者に報酬を払う)出版社がいくつかあって、市場がしっかりとできてい
ます。

ならば、イタリア人もフランス市場を目指せばいいのではなかろうか、というのが私の結論です。

イタリア人作家がマンガだけで食べて行こう、とするとフランスかアメリカで仕事をする、という悲しい現状がありますが、mangaもその例に倣う、というわけです。

もう一つ、manga風の作品を描くイタリア人に限らないのだけど、生き方として「アーティストを目指す」というのもあるかと思います。

本来、mangaは商品であって、買う人がいなければ存在しないも同様なものです。でも、作者の意図を表現でき、伝えることができる手法であるから、そちらを重視する生き方を選択するのです。

商業用作品と同様に、コンスタンスであることは大事な要素でありますが、それ以上に他に伝えたいことがあり、自分のテーマを持って掘り下げることができるなら、それを目的にしていくのです。

当然、食べるための別の仕事を持つことが条件です。もっとも、日本でも商業誌に掲載されていても、それだけでは食べていけない例はたくさんあると思いますが。

そう考えてきて、ふと思ったのは、私はそれを実践している幸せな人だということ。

今は年金生活に入った元公務員の旦那は定期収入があり、私はたまのガイド、週に二回の授業という、かなり時間が自由になるお仕事があり、貯金に回らない程度の収入ではあるけれど生活ができています。

一冊だけ出したmangaは、知り合いの画家さんに「これはアートだ」と言ってもらったし。週に16ページ作成するために睡眠を削るような生活でもないし。

あとは、ちゃんと主婦の仕事との時間の配分をうまくして、少なくも年に一冊を(どこかから)出版して行けばいいだけです。

マリアは、後は自分のテーマを見つけ、もう少し絵が洗練されていけばいいと思います。どうしても日本で、と思うなら試せばいい。焦らずに自分の道を見つけて欲しい。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】

今回はなんとなく「です、ます調」で書き始めてしまって、なんとなくそのまま終わった。なんでそんな気になったのかは不明です。

我が家の一階部の水道管や電線が古いので、取り替えるついでに床も壁も新しくする工事を、この10月に始めます。(まただ)

一階にある私の蔵書をセロハンで何冊かづつ梱包して、運び出しやすいようにする作業に明け暮れてまして、気を紛らわせるのにYouTubeで古事記の解説や「目からウロコの」日本史解説など聞いている。

縄文時代について色々発見があり、以前の常識が覆されいて、縄文時代というよりは縄文文明と言うべきと言うことを知った。

メソポタミア文明やエジプト文明など、古代文明が栄えたところはことごとく砂漠になっているが、日本は今でも豊かな自然を享受している。それは自然にそうなったのではなく、古代から日本人が自然を守ってきたから、と言う説を聞いて、いたく感激してます。

半分日本人の息子に、日本史も文化もほとんど教えていないなぁと改めて思い、イタリア人の日本研究者が書いた「神道」という本を買いました。私がおずおず説明するより、イタリアのメンタリティを持つ息子には、イタリア人が解説した方が入りやすいだろうと思ったから。


[注・親ばかリンク]息子のバンドPSYCOLYT


MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/


主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/


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●ドローイングぶっ続け

7月末からず〜っとぶっ続けで仕事キャラ(兼、オリジナル作品用)のアイディアスケッチやドローイングをしてる。

長丁場になるのはわかってたので、いい機会だからと、「紙もiPadも液タブも使わず、板タブだけでやれるか?(板タブの注意事項をしっかり意識する練習を兼ねて)」と「紙と鉛筆だけでどこまで行けるか?」を試してた。

結論から言うと、初期のアイディアスケッチというかラクガキは、やはり紙と鉛筆がいい。スキャン後の作業は板タブだけでもけっこうイケる。

液タブやiPadも使ってみたけど、冷静に比較すると板タブだけでやるのが結果的に最もはかどる。姿勢がラクな板タブは、作業を長時間続けられるから。

手をブンブン振り回して描きたくなったら、紙に大きく描けばいいわけで。コピックや4mmの芯ホルダーで衝動を解放w

ところで、ドローイングしてた間はMODOをほとんど起動しなかった。クリエイティブの核心部は、ほとんど「紙と鉛筆」なんだなあってあらためて思った。その意味で、非常に濃い一か月半だった。今も継続中。

●やはりA3に描きたい!

紙と鉛筆の場合。そうだ! 手をぶん回して描けないのは紙が小さいからだ!大きく描けないからだ! って思う。だから「A3コピー用紙を使う」を以前から何度も試みてるんだけど、数枚描くと挫折する。

先日、「A3で10枚も描いてしまえば慣れるだろう」と勢い込んでやってみたけど、やはり3枚で挫折w

・A3に描く利点
「紙のフチを気にせず大きめに描ける」
「同じ面積でもA4に2枚描くよりA3のほうが多く描ける」

・A3に挫折する理由
「取り回しが悪い」
「Scansnapが使えない」(iPadのEvernoteでスキャンしてる)
「A4の紙といっしょに保管しておけず、新しく置き場所を作らなきゃならない」
「全紙を埋めるのに時間がかかりすぎる」
「A3は見栄えするから、どうせなら立派なドローイング作品に仕上げたくなって、さらに時間がかかる」

……やはりA3は使いにくいという結論。

A3を使わずA4にできるだけ大きめに描くには? 当然だけど一枚に一個描くなら十分広い。しかし、枚数が増えるので取り回しが悪くなるし、たくさんのスケッチを眺めるには都合が悪い。

以前はA5とA4の紙を混在して使ってた。一枚に一つ描くなら、A5が使いやすいサイズ。不要なら何も考えずそのまま捨てられるし。でも、枚数が多くなったりA4に混じって保管しにくかったりし、A4に統一した。

縦横を変える。普段は十数年前からの習慣でA4横で7〜8個描く。大きめに描く場合は高さを変えて3個。これをA4縦にするとほぼ同じサイズで4個描ける。どうしてもA3に馴染めないんだったらそれも手だ。

その後、「A3紙はすぐ捨てる前提でガーーッと描き飛ばす用に裏表使い、使えそうなアイディアをA4にトレース」をやってみたら、非常に良い! 捗る。

「紙のフチを気にせず自由に描く」と「A4にコンパクトにまとめる」を両立できる。

○ずいぶん前に見たNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」の石岡瑛子。仕事場のテーブルに広げた大きな紙(たぶんA3より大きい)に色鉛筆で何枚もドローイングしてたの見て、カッコイイなあって思った。

それもA3用紙を標準にしたい理由だった。色鉛筆は僕も同じものを使ってるし。まあ、大きい紙を使えるのは広い仕事場だからだろうけど。

http://www.nhk.or.jp/professional/2012/0130/


●やっぱ24インチ最高!

なんかわからんけど、27インチの大画面が視界いっぱいに広がってるだけで腹が立つw 圧迫感というか、ムダに広いというか。

3月以来久しぶりにEIZOの24インチに戻した。1920×1200pixelは確かにちょっと狭いけど、集中しやすくて作業がどんどん進む。24インチのサイズ感、好きだな。

「27インチ+Intuos Lサイズ」は描きにくいのはしばらく前にわかってたのだが、24インチだと確かに描きやすい。単純に画面に対して板タブの比率が大きいだけなんだろうけど、実際快適。腕を存分に動かせる。

ラフの清書的や3Dテクスチャ描きなど、フィニッシュ作業は液タブのほうがいいけど、それ以外のラフスケッチなど板タブで十分できると再確認。面倒くさがらずにその都度十分に拡大表示して作業すれば、清書やテクスチャ描きもイケそうな気がする。

正面を見ながら作業してると本当にラク。ときたま紙や液タブに描いてみると、下を見て作業するのがどれだけしんどいかよくわかる。

AdobeがついにPhotoshopのフルバージョンをiPad用に提供するらしく、「一気にデザイン環境がパソコンからタブレットへ進む」とか盛り上がってたけど、首痛める人続出になるぞ。


【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com

http://yoshii-blog.blogspot.com/


「文科省が“置き勉”認めるよう全国に通知へ」というニュース。先日、「12kgのカバンで通学」の話題もあったしね。そもそも、一年分の内容を全部持ち歩く必要はないよね。せめて章ごとに分冊にしてあれば軽く済む。

昔、バインダーノートが流行ったとき、「教科書もバインダーになればいい」となんで思いつかなかったんだろ。以前何かで「本は分割して一日に読める分だけポケットに突っ込んで出かける」って読んで、「合理的!」って感動したことあるw

中学ときは自転車通学だったから、カバンの重さは気にならなかった。高校は「ぺったんこカバン」が流行って、僕もそうしてた。教科書は学校のロッカーの中。

もちろん教科書も電子書籍になれば解決。「電子書籍だとちゃんと頭に入らない」って説もあるけど、だったら家に教科書をおいといて、タブレットで授業受ければいい気が。

・スワロフスキー「招き猫」と「HOOT HAPPY BIRTHDAY」も出ました。
https://bit.ly/2qWbmZh



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編集後記(09/12)

●カバーは黒地に文字白抜き、本体の天と地と小口も黒、開くと黒枠に囲まれた本文という、あまりに不吉な装幀の本「事故物件怪談 恐い間取り」を読んだ(2018/二見書房)。赤い腰巻には「恐くて部屋に入れない…!」とある。筆者は“事故物件住みます芸人”松原タニシ、松竹芸能所属のピン芸人だという。

この芸人が生活してきた事故物件での体験談、実際に事故物件の住人だった人に取材した話、加えて心霊スポット、怪奇現象が起こる“ある意味”事故物件な場所での出来事などを、間取りや地図付きで紹介する。事故物件とは自殺、他殺、孤独死など、なんらかの理由で人が死んだ物件をいう。松原はこれまで、“テレビに出るために”藁をも掴む思いで五件の事故物件に住んできた。

まったく売れない芸人生活も10年過ぎ、先輩の北野誠(怪談分野で有名)に「事故物件に住まへんか?」と言われたとき、「何を言っているんだこの人は」と思うと同時に「これをできるのは自分しかいない」という根拠なき自負があったという。事故物件に実際に住んで心霊現象を検証する芸人。霊感がなく、オカルトに強かったわけでもない松原は、「人と違うこと」に執着する人だった。

「納得しないと気が済まない」人でもあった。「僕と事故物件」で13件、「誰かの事故物件」で20件、「土地の事故物件」で16件、こわい話、いやな話が収録されているが、この芸人、自分が怪異に出会ってもあまり怖がらず淡々としている。おいしいネタのためには怖くても怖くない。事故物件を求めて転々と。

最初に住んだマンションでは、何か不思議な現象が起きないかと、常に部屋の中をビデオカメラで撮影を続けた。初日からオーブと呼ばれる丸い発光体が映り込み、そのうち布のような浮遊物が映った(画像掲載あり)。このマンションは有名な殺人事件があってから事故物件と認定されたが、住民が幽霊を見る、車にひかれるなど、ずっと前から何かがあるトンデモ物件だったと知った。

町の不動産屋で「事故物件ありませんか?」と聞く怪し過ぎる男だ。破格に安い物件が三つも。その理由は「漢字二文字で、としか言えません」とのことで、殺人、自殺、病死の部屋だ。殺人部屋を選択。水中でしゃべるような変な電話がかかってくる。母親を殴打し浴槽に沈めて殺した息子の部屋だったと判明する。退去してから判明したのだが、直近の路上通り魔の犯人がその息子だった。

三件目は事故物件の部屋が確保できず、真下の部屋(普通物件)に入居。まったく何も起こらず一年後に退去したが、その直後、事故物件の部屋の住人が自殺した。正式な三件目、女性がドアノブ首吊りで死んだ部屋。部屋にいると頭痛、体調最悪、些細なことでイライラする。「大島てる」サイトで調べると、前の前の住人がロフトで首吊りしたと判明する。二重の事故物件だった。

四件目は1K6畳、27,000円と超破格。薬の過剰摂取で女性死亡。部屋に入ったとたん動けなくなり、気絶。強烈な倦怠感に襲われ気分が悪くなる。数回しか行っていない。五件目は自殺者の出た部屋、筆者が入れば事故物件ロンダリングで、彼の次の入居者には前の前の住人の自殺は告知しなくていいのだ。この部屋では、寿命が刻一刻と吸い取られているような倦怠感に襲われる。

その後、事故物件間取りギャラリーがあるが、どうにもこじつけっぽい。核心は部屋そのものである。間取りではない。この本のタイトルは間違いである。残りの3/4くらいが筆者の取材した「こわい話」集である。といっても、そういう話大好きなわたしは楽しめた。さすがに眠る前には読まないが。(柴田)

松原タニシ「事故物件怪談 恐い間取り」 Amazonベストセラーらしい
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4576180975/dgcrcom-22/



●分冊、私も思いました! だいたいなぜ教科書をA4にしたのか理解に苦しむ。ランドセルが大きくなってしまった。あと、紙の質を良くしすぎなくてもいいのに。重くなる。

/怖いよ〜。霊感のない私でも、苦手な場所はある。ゾワッとする。怖い。変な臭いがしたり、薄暗かったり、閉鎖的だったり、音がしたり、落ち着かない形だったりといろいろ。あれ何なんだろうね。すぐに離れるけれど、その変な場所にずーっといたら、食欲なくなったり、気持ち悪くなったりするだろう。太陽の光や緑や清掃って大切だなぁと思うのだ。

/台風の話続き。当日の朝は静かだった。テレビニュースでは、電車の運休予定と台風の進路の話。窓から外を眺めると、犬の散歩をする人がいる。後でいろんな人に話を聞いてみたけれど、臨時のお休みをもらい、のんびり過ごしていた人が多かった。JRの早期告知やニュースは大げさだと思っていた人もいた。

牛乳屋さんはいつも通りに配達してくれた。メールしてしまった自分が恥ずかしかった。佐川急便は、10時頃に配達があった。佐川はいつも昼前なので、早めに動いているのかもしれない。

家人が受け取り、「今日は在宅が多いから、はかどるだろうな。」と言った。ああ、なるほど、そういう利点もあるか。続く。 (hammer.mule)