[4638] 新しい仲間UVプリンター◇運営するCoderDojoが四つに増えた

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《基本ひとり親方なので》

■3Dプリンター奮闘記[109]
 新しい仲間、UVプリンター
 織田隆治

■crossroads[48]
 再開にあたって── 一年半で変わったこと
 若林健一




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■3Dプリンター奮闘記[109]
新しい仲間、UVプリンター

織田隆治
https://bn.dgcr.com/archives/20180913110200.html

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ここのところ、台風、地震と、本当に自然災害が続いています。

僕は大阪市内に工房事務所があるんですが、先週の台風の際は怖くてパソコンをコンセントにつなぐ事をためらいました……。

今回の台風は、珍しく昼から夕方にかけて大阪を通過しました。昼までには仕事を片付けて……と思っていたんですが、結局台風が来るまでに終わらず、事務所で台風をやり過ごすことに……。

いつもの台風とは格別に違う雰囲気……。窓から外を見ると、そりゃもう凄い勢い!

僕の事務所はおかげさまで停電もなく、ほとんど被害もなく、なんとか通過してくれたんですが、通過した後に外に出てみると、街路樹はなぎ倒されてたり、電線は切れてあちこちでぶら下がってるし、いろいろな物が道に散乱していました。

なんとか大阪市内の整理や修理、補修なんかも進んできたかな……と思っていたら、北海道の地震。本当に酷いですね。少し前には西日本水害もあったばかりですよね。

これらの災害の被害額って、本当に大変な額になっていると思いますし、今後の生活にも大きな影響があるでしょうね……。

本当に被害に遭われた方の、少しでも早い復旧を願っています。

●工房内最大の機械を導入

さて、話は変わり、先日僕の工房に新しい機械を設置しました。

現在、僕の工房内には、3Dプリンターが7台入っています。それから、制作に必要な卓上ボール盤や昇降盤、塗装ブースなどなど。使い込んだレーザー彫刻機は、さすがに他の部屋に置いてます。

狭い工房内に、よくこれだけ置けるよなぁ……と言われるほど詰め込んでます。

そこに、工房内最大の機械を入れることになったもので、まずは工房内の荷物整理と、不要になった物の処理……。

基本ひとり親方なので、すべてひとりでやる必要があります。

追加設置する機械の重量は85kg。それなりの台も必要になるので、思い切って事務所内の棚を半分入れ替えることにしました。

これが……すごく……大変…… それなりの強度の棚は、それなりに重いんですよね。

二日かかって、なんとかひとりで作業を終えた頃には、全身筋肉痛に……。日頃の運動不足が響きます。

ということで、昨日やっと機械も設置できました。

そんなに機械あるのに、他に何が必要?

そう、今回導入したのは、UVプリンター。Rolandさんの「VersaUV LEF-12i」という機種です。

●UVプリンターって何?

要するに、簡単に言っちゃうと、インクジェットのプリンターのインクに、紫外線で固まる樹脂が入っているといった感じのものです。

まず、インクジェット式でプリントし、その後紫外線ライトを照射すると、樹脂が固まります。そうすることで、印刷面にガッチリと定着し、ちょっとやそっとでははがれなくなるわけですね。

このプリンターの良いところは、アクリルなどの樹脂、金属、革製品にいたるまで、いろいろな物にプリントが可能なんです。

今まではシルクスクリーンでしか印刷できなかった物に、印刷が可能。これ、とてもすごいことなんです。

これまで外注さんにお願いしていたことが、自分でできるようになります。それだけでなく、これまでやってなかった分野の仕事もできるようになります。

名入れ、アクリルキーホルダー、銘板、などなど。工夫と発想次第で、まだまだいろいろなことができそうです。

まあ、入れちゃった、ってことは、固定費も上がってきちゃうんですが……。インク代も結構な額だし、頑張って営業もしないと……。

そう、このVersaUV LEF-12iを導入する準備で、台風の通過する間、荷物を黙々と整理したり、棚こしらえたりしてたわけです。

さて、このUVプリンターですが、3Dプリンターにもこの方式のものがあります。インクジェット式にプリントし、そこに紫外線ライトを照射し固め、それを積み上げることで立体を作って行く方式なんですね。

僕が以前半年ほど使っていた、ストラタシス社のobjet24という機種。最近は、この方式を使ったミマキさんのフルカラーの3Dプリンターもあります。

時代はどんどん進んでいますね。新しい技術もどんどん増えて、僕がこの記事を書き出した、たった5〜6年の間に、とてつもない進化を続けています。

時代の進化に遅れないよう、あがきながら、楽しみながら、ついて行くつもりです。

だって、新しい事、新しい物、って楽しいし、ワクワクするでしょ?この世知辛い世の中、そうやって楽しんでいくのも悪くないです。

さて、新しいジャンルにチャレンジです!

【織田隆治】

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oda@f-d-studio.jp
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■crossroads[48]
再開にあたって── 一年半で変わったこと

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20180913110100.html

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こんにちは、ご無沙汰しております若林健一です。

昨年2月でデジクリへの寄稿を終了していたのですが、再開を希望したところOKをいただき、また記事を書かせていただくことになりました。

ご快諾いただきました柴田編集長、濱村さんありがとうございます。

再開にあたって、この一年半で変わったことや、今回寄稿を再開するに至った思いを述べます。

◆一年半で変わったこと

以前にも増して老眼が進んだ、とか挙げ始めれば色々ありますが、大きくはふたつのことがあります。

○運営するCoderDojoが四つに増えました

一年半前、私が運営していたCoderDojoは奈良市と生駒市の二か所でしたが、今年に入って明日香村と田原本町の二箇所が増え、全部で四か所になりました。

奈良に住んでいない方でも、明日香村は知っているという方も多いと思います。学校の歴史の授業で、推古天皇や聖徳太子が登場する「飛鳥時代」の舞台となったところですね。

もし明日香村をご存知なかったとしても、「高松塚古墳」や「石舞台」などは聞いたことがあるかもしれません。そういった歴史的な遺産の多い地域です。

明日香村は「明日香村における歴史的風土の保全及び生活環境の整備等に関する特別措置法」という法律により、多くの遺産や文化財が保護されており、今も「原風景」と言う言葉がぴったりの、のどかな田園風景が広がっています。

私がここでCoderDojoを始めようと思ったのは、明日香の雰囲気が好きだからということと、奈良県の南の方にコミュニティを作りたいと考えたからです。

奈良はコミュニティ文化が根づきにくい、という印象を私は持っています。それは比較的コミュニティ活動が活発な大阪や京都が近くて、そちらに参加することが多いことも要因のひとつかもしれませんし、奈良の方の性質かもしれません。

周辺にコミュニティがあるとはいえ、自分の住んでいる地域にある方がいいのは間違いありませんし、私としては参加者を増やすよりも、運営に関わる人を、コミュニティそのものを増やしたいのです。

これからの社会、学校で学ぶだけでは社会に出て生きる力を得られないと考えていて、「生きる力」を得る場としてコミュニティが大切、だからコミュニティを増やさなければなりません。このあたりについては、今後の記事の中でさらに詳しく述べていくつもりです。

あすかについて
https://asukamura.jp/kids/asuka.html


「明日香村における歴史的風土の保全及び生活環境の整備等に関する特別措置法」について
https://asukamura.jp/kids/asuka_asukaho.html


もうひとつの「田原本町」をご存知の方は少ないと思います。「たわらもとちょう」と読みます。

世の中には色んな「発祥の地」がありますが、田原本町は能の発祥の地、桃太郎伝説が生まれたところとも言われています。

「え? 桃太郎は岡山じゃないの?」と思われる方が多いと思いますし、私も岡山じゃなくて田原本町ですよ! と断言できるだけの根拠を持ち合わせていないのですが、少なくとも田原本町の方々は「ここが桃太郎伝説発祥の地」とおっしゃっています。

調べてみると、桃太郎伝説発祥の地は岡山、田原本以外にもたくさんあるようで、昔話というのは色々な地域へ広まる中で、その地域の文化として根付くというパターンを繰り返しているのかもしれません。

近くには、竹取物語発祥の地と言われる広陵町(こうりょうちょう)もあり、こういった話が多いのも、歴史の長い奈良の特徴で面白いところです。

ここでCoderDojoを始めるきっかけとなったのは、田原本町にある安養寺というお寺の住職さんと知り合ったことでした。

このお寺の住職さんは「NPO法人おてらおやつくらぶ」の代表理事をされていて「おてらおやつくらぶ」という活動を始められた方でもあります。

「おてらおやつくらぶ」とは以下のような活動です。(おてらおやつくらぶのwebサイトより引用)

「おてらおやつクラブ」は、お寺にお供えされるさまざまな「おそなえ」を、仏さまからの「おさがり」として頂戴し、子どもをサポートする支援団体の協力の下、経済的に困難な状況にあるご家庭へ「おすそわけ」する活動です。

活動趣旨に賛同する全国のお寺と、子どもやひとり親家庭などを支援する各地域の団体をつなげ、お菓子や果物、食品や日用品をお届けしています。

たまたま奈良のDojoに参加されていた方が、この活動の事務局を担当されている方だったことに端を発し、私はこの活動を知りました。

また自宅から近い(歩いて10分程度)ということもあり、住職さんにコンタクトを取ってお会いし、CoderDojoの活動を紹介したところ、ぜひやりたいという話になり、お寺の本堂を使って始めることになりました。

明日香村での活動を始めた時点で、これが限界と考えていたのですが、住職さんの人柄とリーダーシップに惹かれ「この人と一緒にやらないという選択肢はない」と考え「自宅から近いから負担も少ないだろう」ということ、で二人の共同代表という形でスタートしました。

お寺の社会福祉活動 おてらおやつくらぶ
https://otera-oyatsu.club/


犬も歩けば棒にあたると言いますが、あれこれ動き回っていると色んな出会いがあるものです。こういった出会いを大切にしながら、さらに新しい人との出会いを広めて、ここにも新しいコミュニティを形成していきたいと思います。

○会社を辞めました

変わったことのもうひとつは、会社を辞めたことです。8月末で約2年勤めた会社を退職しました。

一年半前にデジクリを続けることを諦めたのは、仕事のことがひとつの理由でもありました。仕事とデジクリを両立するのが難しく、デジクリにかける時間が取れなくなり、このままでは中途半端な状態が続いてしまう。そう考えてデジクリへの寄稿終了を決めたのです。

そういう意味では、仕事を辞めたことがデジクリ再開に心動かされた理由でもあります。

現在は次の動きに向けた準備を進めています。長い間会社勤めをしてきましたが、一度自由に動いてみよう、自分の思うこと考えることを発信し行動してみたいと思っています。もちろん家族には心配をかけていると思いますが、こんな私のわがままを受け入れてくれていることに心の底から感謝しています。

◆これから綴って行きたいこと

今までも自分の思うこと考えることを好き勝手に書いて来ましたが、今後は所属する組織に対して忖度する(そんなことしたことあったかな)こともなく、今まで以上に自分の考えを綴っていきたいと思います。

一年半前までは、CoderDojoやプログラミング教育に関することをが多かったのですが、これからはもっと広い意味で「人の成長」に関わることについて取り上げていくつもりです。

デジクリの読者の中には、私の考えていることについて賛成の方、反対の方の両方がいらっしゃると思います。賛成の方はもちろん、反対の方についてもそれを何かを考えるきっかけにしていただければ幸いです。

「YesもNoも明日の糧に」をモットーに記事を綴っていきます。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


【若林健一 / kwaka1208】
https://croads.jp/aboutme/

CoderDojo奈良・生駒・明日香・田原本
http://coderdojo-nara-ikoma.github.io/

http://coderdojo-asuka.github.io/

http://coderdojo-tawaramoto.github.io/


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編集後記(09/13)

●毎日新聞校閲グループ 岩佐義樹「春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉たち」を読んだ(ワニブックス/2018)。手紙やメールに使いたい美しすぎる日本語、と帯にある。曙光はしょこう、短夜はみじかよ、と読む。清少納言の「枕草子」の冒頭の一節が浮かぶ。つくづく日本に生まれてよかったと思う。

筆者は毎日新聞で「週刊漢字 読めますか?」という漢字クイズを9年間連載していて、その時々にふさわしい漢字を選んできた。また校閲グループが運営するサイト「毎日ことば」で漢字の読みを三択で選ぶクイズを出題してきた。出題しながら思ったことは、日本語には季節に関わる言葉がなんと豊かなのかということだった。しかし、今はそのほんの一部しか知られていないようだ。

そんな素晴らしい言葉は感性とともに、未来に引き継がなければならない。また、不適切な言葉遣いが伝承されるのは好ましくない。なかでも季節にかかわる言葉でつい使ってしまいがちな誤りも、この本にまとめられている。月ごとその月にまつわる言葉を集めている。順に読まなくてもいいという構成だ。

「矍鑠」とは年をとっても丈夫で元気がいい様子をいう。「かくしゃく」と読めるが、書けない。そもそもこの漢字はどんな意味か。「矍」は鳥のようにきょろきょろすることで、「鑠」は金属を加熱して溶かすことをいう。それほど強い勢いや輝きを現すんだって。なんだ、おれのことか、と言ったりして。

「危急存亡の秋」では、秋を「とき」と読ませる。なぜか。わたしは存じません。ここでの「秋」は大事な時期という意味を持つ。収穫の秋は一年で最も重要な時期であることから、この字をあてるようになったらしい。「天高く馬肥ゆる秋」は知っている。秋になれば元気な馬に乗って北方の異民族が攻めてくるので注意しなさいという、警鐘の意味を持つ言葉だったのだ。しらなんだ。

「後生畏るべし」は「こうせいおそるべし」と読む。読みと解釈は、編集の仕事についたとき会社のエラい人から、「校正恐るべし」と一緒に教わった。後生とは後から生まれて来た人で、後輩などを指す。「今は若輩者でも将来どんなに成長するか分からないので侮ってはならない」という格言で、論語にある言葉だ。その人は自戒を込めて教えてくれたのだと思う。いい時代だった。

8月15日前後に使われることが多い「国破れて山河在り」は、杜甫の「春望」が出典だ。この「破れて」の表記は「壊れる」「荒廃する」といった意味であり、敗戦を指す「敗れて」ではない。2013年の安倍首相の演説で「国、敗れ、まさに山河だけが残ったのが、昭和20年夏」と首相官邸HPにあるそうだ。

「これは、日本が戦争に負けたことをあえて強調したかったのか、それとも単に『破れて』という表記を知らなかっただけなのか……気になって」と書く。さすが毎日新聞社。つまらんいいがかり。気になる、とはとにかく首相を貶めるためにはどんな難癖でもつける、ということだ。情けない人たち。(柴田)

毎日新聞校閲グループ 岩佐義樹「春は曙光、夏は短夜 季節のうつろう言葉
たち」
https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4847096819/dgcrcom-22/



●UVプリンター、いいなぁ。/若林さん、戻ってきてくださってありがとうございます! 明日香村には遠足で行きましたっ。/「矍鑠」読めなかった。「天高く馬肥ゆる秋」はそういう意味だったのか〜!

/台風の話続き。窓から道路を見下ろすと、普段より車の量は減っているように思えた。テレビをつけ情報収集する。いまどこに台風がいるのか、進路はどうなのか、大阪が暴風域に入るのはいつなのか。レポーターらが取材をしていたが、四国の方は強風で、危なっかしくてハラハラした。何かあったらどうするんだ。

台風接近で落ち着かず、しょっちゅう窓の外を見ていた。建築中のマンションが数軒ある。どのマンションの屋上にも、工事関係者がいて、何やら作業をしている。高所なのに、台風が来たらどうするの、早く仕事やめて帰宅した方がいいよと何度か呟いた。

風が強まってきた昼頃には、どこも工事関係者はいなくなった。屋上に大きなクレーンがあって、普段と同じ姿だったので、折りたたんだりできないんだなぁ、なんだか怖いなぁと思った。

建築後だと屋上のクレーンは、より小さなクレーンで解体する作業を繰り返して、エレベーターで下ろすと聞いたことがあった。建築中は地下からパイプのようなものが立てられていて、その上にクレーンが乗っているように見える。続く。 (hammer.mule)

タワークレーンはどうやって屋上に上がるか 意外と知らない、身近にある「すごい技術」
http://a.msn.com/00/ja-jp/AAviM0E


JCC(タワークレーン)の組み立て/解体
http://www.iuk.co.jp/howto/t_crane.html


パイプのようなものは、マストというのね。船と同じね。マストクライミングのもあるわ。