[4663] TDR35周年◇20代までの音楽遍歴◇プログラミング教育と論理的思考

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《余韻に浸り続ける日々》

■装飾山イバラ道[232]
 東京ディズニーリゾート35周年《前編》
 武田瑛夢
 
■Scenes Around Me[37]
 東京大学駒場寮の事(16)しんげんち祭りに参加する。
 《1》20代までの音楽遍歴
 関根正幸

■crossroads[51]
 プログラミング教育と論理的思考
 若林健一




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■装飾山イバラ道[232]
東京ディズニーリゾート35周年《前編》

武田瑛夢
https://bn.dgcr.com/archives/20181023110300.html

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ハロウィンシーズンなので、東京ディズニーランドに行ってきた。寒すぎない今は時期的にもちょうどいい。

東京ディズニーリゾートでは、今年の7月からスマートフォンで使える公式アプリが登場した。これを活用することで、園内の過ごし方が格段に便利になったと思う。

自宅でチケットを事前に購入可能で、ゲートを通る時にもスマホをかざすだけでOKなど、使うと便利がことがいっぱいだ。便利と言うよりも有利なのだ。

35周年記念の“Happiest Celebration!”の内容とともに書いていたら、とても長くなったので、公式アプリについては次回、後編で書くことにしたい。

園内はハロウィンのカボチャのデコレーションが至るところに見られ、とても可愛い。建物に目鼻がついてオバケっぽいものもある。昼間に見れば怖い感じもほぼないので、小さい子でも大丈夫ではないだろうか。

仮装の人も多かったけれど、普通の格好でもまったく違和感はない。31日だとそうでもないのかな? そして35周年ということで、お祝いムードのデコレーションも同時に見ることができる。

・ホーンテッドマンションのハロウィンデコレーション
http://eimu.com/dgcol/hont01

●35周年のお祝い

東京ディズニーランド35周年記念のショー「Celebrate! Tokyo Disneyland セレブレイト東京ディズニーランド」が最高に良かった。これは東京ディズニーランドのシンボルであるシンデレラ城でのプロジェクションマッピングや、花火を使ったスケールの大きいナイトショーだ。

・ナイトタイムスペクタキュラー「Celebrate! Tokyo Disneyland」
https://www.tokyodisneyresort.jp/treasure/celebrate/


今日パークであった色々な楽しいことも、このショーにすべて持って行かれるほど素晴らしかったのだ。

家に帰っても、しばらくはこのショーを思い出しながら眠りについた。疲れているのでぐっすり眠れた。起きた後にも、やはりこのショーのことをすぐに思い出し、余韻に浸り続けた。

今回の私の説明では具体的なシーンについて書きたいため、どうしてもネタバレになってしまう。ネタを知っても実際の経験とは違うので大丈夫、という方には是非読んで欲しい。行く予定だから何一つ知りたくない方は、以下は読まない方がいいかもしれない。※以下はショー内容のネタバレを含みます。

このショーは東京ディズニーランドにあるテーマランドとアトラクションがシーンに取り上げられ、ミッキーとともに駆け巡るような内容だ。東京ディズニーリゾート全体がテーマになっている。

東京ディズニーランドで思い出を作ってきた人には、思い出も駆け巡ること請け合いなのだ。しかも、ベースになっているプロジェクションマッピングの技術だけでなく、花火や噴水、炎、レーザー、サーチライトなども、今までにない規模と回数で繰り広げられる。

園内の木々のイルミネーションも連動して光るので、東京ディズニーランド全体が一斉にこのショーのために動いていることを実感することができる。

そういえばいつも木々のイルミネーションは、ショーが始まると消される存在だったように思う。それをショーと連動させることで、舞台に引き上げ、一緒に踊ろうというのがこのセレブレーションなのだ。

主役も脇役も、表も裏も、東京ディズニーランド、リゾートのすべてのところで頑張ってくれている人や動物やモノたちへの賛美にもなっているのが、ダイレクトで素晴らしい。

「直接、具体的にホメる」というのはテレくさいけれど、お互いにとって大事なことだ。メインのショーのシーンに入れて貰えるなんて、格別なホメなのだ。

あらゆるアトラクションの脇役たちにもスポットライトが当たり、各シーンに生かされている。例えばビッグサンダー・マウンテンのシーンでは、ジェットコースターの山のてっぺんにいる、あのビッグホーンシープ。あのヒツジは今回、かなり美味しい役どころなのだ。

私たちも大好きで、行けば乗りまくってきたビッグサンダー・マウンテンだけれど、あのヒツジがディズニーランドのシンデレラ城のメインのショーに出てくるなんて、考えたこともなかった。高いところが好きなヒツジらしく、アニメになってシンデレラ城のてっぺんまで駆け上がる姿が可愛い。

脇役だけでなく主役を務めてきたミッキーマウスも、ビッグサンダー・マウンテンの鉱山列車に乗っているシーンが出てくる。いつもパレードのフロート上で皆に手を振ってきたミッキーも、ビッグサンダー・マウンテンに乗せてあげたいと思ってのことかな? と考えると胸熱だ。

●あの映画までも

ビッグサンダー・マウンテンのシーンだけでも感じることが多いのに、ホーンテッドマンションやら何やらのアトラクションのシーンでも、同じように支えてきたモノたちに光が当たっている。音楽も効果音も声も、乗り物に乗った時に聞き覚えのある音を採用しているのが良い。セレブレーションには必要な本物感だと思う。

以前のシンデレラ城のショー「ワンス・アポン・ア・タイム」では、昔からのディズニーアニメーションでシーンを展開していた。これはいわば自分たちの素材なので、シーンに入れるのに難しいということはないだろう。

しかし、東京ディズニーランドにあるアトラクションには、実写やSF映画を元にしたものもあり、これでシーンを作るというのは相当大変そうなのだ。

スター・ツアーズのシーンでもバッチリとスター・ウォーズの映像が城に投影され、あのテーマ曲が鳴り響く。シンデレラ城や周囲の塔に、アレコレとすごいものが映るのが目新しくて衝撃的だった。

トイ・ストーリーのバズのシーンでは、レーザーで作られた線画がアニメのように柔らかく描かれていた。アニメーション技術の進化が線画から始まったことをなぞるように、絵コンテをレーザーでなぞったのだろうか。

線を複雑化させることで感じられる立体感は、モノを描くことの基本。レーザー技術の人たちの頑張りがここで発揮されている。

シンデレラ城ってシンデレラと王子の城なはずなのに、東京ではもはやシンデレラたちだけのものではない。夢や魔法の形が、未来へと進化系で進んでいるのを見せてくれる舞台なのだ。

この先、まだ想像もできていない何かがシンデレラ城に映ったり、未知の映像技術が盛り込まれたりするのかな? 想像もできないけれど、きっと驚かせてくれるに違い無いという信頼感。

現存のアトラクションだけでなく、今はなきアトラクションもポスターとなって出てくる。めまぐるしくシーンが移り変わるので、見逃しも多いはずだ。何度見ても気づくことがあるショーだと思う。

●ラッキー! 中央鑑賞エリア

今回は二回目の夜の遅い時間のショーで、初めて中央鑑賞エリアから見ることができた。このことも特別な感動につながっているのかもしれない。

二回目は帰る人が多い時間帯で、抽選ではなく先着順でエリアに入場できることが決定されたのだ。開始前に少し雨が降っていたこともラッキーの要因だと思う。開始時間には晴れたので最高だ。公式アプリ上では先着順という情報が表示されていたので、すぐに現場へと向かったのも良かった。

・「Celebrate! Tokyo Disneyland」
http://eimu.com/dgcol/cass01

中央鑑賞エリアからの鑑賞は、ズレのない映像、見えない部分の無さ、レーザーや炎の熱波の迫力、全部が全部素晴らしかった。

中央鑑賞エリアから見るには、抽選に当たるか、鑑賞権利の付いているホテルプランがあるので、お金をかけるかの選択になる。そして運やお金以外に努力を使うなら、アプリなどで最新情報を常に確認するのも良い。平日の遅い時間帯のショーに、何か良いことがある確率は高いと思う。

セレブレート(celebrate)とは祝うこと、賞賛することと出てくる。各種アトラクションの出演者や技術者を賞賛し、ここに集まってくれた人たちに感謝を表す。皆で作る空間の素晴らしさを実感できるショーとなっている。

私もディズニーランドは数年ぶりだったので、午前中はまったりしていたけれど、疲れているはずなのに夜になるほど目が冴えてきた。楽しいことを受け入れる準備が整ったのかな。


【武田瑛夢/たけだえいむ】
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


ハロウィン時期には、カボチャの味とデザインのスイーツがたくさん発売されて楽しい。でも私は、やっぱりハロウィンのスクイーズを紹介。食べられないけれど、すぐにはなくならない。

まずはディズニーランドで購入した、ミッキーとミニーのパン型スクイーズマスコット。売り切れギリギリでGet。

・キーチェーン スクイーズパン ミッキー、ミニー
http://eimu.com/dgcol/sqmi01

見た目は最高に可愛いけれど、触り心地はかため。しかし押すとゆっくりと戻ってくるので低反発ではあると思う。園内ではミニーをバッグにぶら下げて歩いた。街ではしないけれどな。

そして、大好きなSilly Squishiesのカボチャとユニコーンが魔女になったケーキ型スクイーズ。専用の箱のデザインも可愛いし、価格も安くなって14.99ドル。シーズンものが売れ残ってもしょうがないので、最初から安くして大正解だと思う。他のスクイーズも、本家サイトで今はセールになっていてお買い得だ。

・Jack O'Lantern Cake&Unicorn Witch Cake
http://eimu.com/dgcol/siha01

どちらのスクイーズも「Glow in the Dark!」で、暗闇で光る塗料で顔が塗られている。もちペタなさわり心地。カボチャはパンプキンパイの美味しそうな香り。

今回はPunimaruのハロウィンスクイーズも注文したのに、到着がハロウィンに間に合うのか心配だ(おそらく無理)。昨年は発売も間に合ってなかったスクイーズがたくさんあったので(笑)、これでもスクイーズ業界は進歩したのだと思う。


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■Scenes Around Me[37]
東京大学駒場寮の事(16)
しんげんち祭りに参加する。
《1》20代までの音楽遍歴

関根正幸
https://bn.dgcr.com/archives/20181023110200.html

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駒場寮で写真展を行った後、私は1998年6月に神戸のしんげんち祭りに参加しました。

当時、武盾一郎さんと鷹野依登久くんたちは、阪神淡路大震災の被災者によってできたムラ(しんげんち)に住み込んで、壁画等の製作を行っていました。

しんげんちは神戸市須磨区の下中島公園にありましたが、新宿夏まつりのように、毎年、様々なゲストを呼んでお祭りを行なっていました。

そのしんげんち祭りに、私はBOBというバンドの演奏で、ノイズとして参加してほしいと依頼がありました。

当時、私は武さんや鷹野くんたちのライブペインティングのバックにノイズを出していたので、その関係で声がかかったのだと思います。

BOBはシンヤ(田中伸也)くんがやっていたバンドで、シンヤくんはコウキくんとともにオブスキュアギャラリーの運営をしていました。

その関係で、オブスキュア界隈の人たちも大挙して、しんげんち祭りを観に行くことになりました。

https://farm2.staticflickr.com/1927/30483816537_d99b886d86_c

この時カメラを修理に出していたので、現地で購入した白黒フィルムの「写ルンです」で撮影しました。



ここで、また話が脇に逸れますが、私がノイズを始めた経緯を説明するため、20代までの音楽遍歴について書くことにします。

物心ついたとき、私は道東の街、根室に住んでいました。正確には、住んでいたのは根室市の西外れにある厚床という街で、根室の中心部から30km、釧路からは100km離れていました。

そのため、文化的なものがなかなか身近に入ってくることはありませんでした。

子供の頃聴いていたのは、それまで父親が買い集めていたクラシックのLPで、それも、ベートーベンの「運命」や「第九」、チャイコフスキーの「白鳥の湖」といった名曲と呼ばれるものしかありませんでした。



状況が変わるのが、中学に入ってからです。その頃一家は四国(愛媛県大洲市)に引っ越していました。

1978年の冬休み、音楽の宿題で「第九」を聴くように言われた私は、大晦日にテレビを見ようとしましたが、紅白が見たかった両親にNHK FMを聴くように言われます。

実はその時まで、NHK FMがクラシックの番組をやっていることを知りませんでした。

これ以降、私はNHK FMを聴くようになりましたが、この頃からグスタフ・マーラーの交響曲が放送されるようになり、中二のサガとしてマーラーにハマることになります。

とはいえ、マーラーのLPを売っているような都会ではなかったので、FM放送をカセットテープに録音して聴き込む日々を送りました。

マーラーの交響曲の多くは演奏時間が長いため、90分テープの両面を使わなければ、全曲を録音することが出来ませんでした。

しかも前半より後半の方が長く、A面の頭から録音を始めて楽章の変わり目でカセットをひっくり返すとB面に収まりきらないため、番組表を見て前半と後半の時間差分だけ、テープを先送りして録音したことを覚えています。



こうして、中学高校時代かけてマーラーの交響曲を一通り聴き終えると、さらに新しい時代の音楽に興味を持つようになります。

とはいえ、当時の私は12音音楽を始める前のアーノルド・シェーンベルクですら取っ付き難いと感じていたので、自分が受け入れられる作曲家を探すようになります。

1983年に上京してからは、主にドミトリー・ショスタコーヴィッチの交響曲のLPを聴いていました。

ところが、この頃「ショスタコーヴィッチの証言」が出版されたことで、ショスタコーヴィッチが体制に迎合した作曲家ではなく、皮肉に満ちた反体制的な作曲家であると考えられるようになりました。

そこで、1985年頃、NHK FMでショスタコーヴィッチの特集が放送され、私はその番組を聞いて、交響曲以外のジャンルの音源も聴くようになりました

また、ペレストロイカ以降、ソ連にもアルフレート・シュニトケ、エディソン・デニソフ、ソフィア・グバイドゥーリナのような、前衛的な作曲家がいるという事実が西側に知られるようになりました。

私は三人の中でもシュニトケを好んで聴くようになります。この頃のシュニトケは、多様式主義の作曲家であり、不協和音の中に聞き覚えのあるような音楽が聞こえてくるという作風でした。

また、ショスタコーヴィッチは、自作や他の作曲家の曲の引用を多く行なっていました。

ショスタコーヴィッチ、シュニトケ以外に、以前の回で言及したことのあるベルント・アロイス・ツィンマーマンも一つの曲中に過去、現在、未来を混在させるため、過去や同時代の作曲家の曲を引用する手法を取っていました。

こうして、私は引用の手法に興味を持つようになります。

ちなみに、私がツィンマーマンを知ったのは、音楽雑誌に「シュトックハウゼンに嫉妬して自殺した作曲家」と紹介されていたのが気になったからでした(実は「嫉妬した」というより「苦々しく思っていた」という方が正確だった、と後になって知りました)。

ある時、FM放送でジェルジ・リゲティの「ライヒとライリーと一緒の自画像(そこにショパンもいる)」という曲を聴く機会がありました。

その後、中古レコード屋でその演奏が収録されたLPを入手したのですが、カップリングがツィンマーマンでした。「Monologue」という曲で、引用されたバッハとメシアンの音楽が突然流れて、大きな衝撃を受けたことを今でも覚えています。

1989年に作曲家の細川俊夫さんと評論家の長木誠司さんが、ツィンマーマン生誕70年を記念してレクチャーシリーズを企画したのですが、私もそこに参加したのは、以前書いた通りです。



私の音楽体験で次に重要だったのが、ジョン・ゾーンを知ったことです。

一般には、ジョン・ゾーンはジャズサックス奏者、作曲家として知られていますが、個人的にはアコーディオンのための「ロードランナー」という曲を通じて知りました。

この曲自体、過去の様々な曲のカットアップ、コラージュで出来ていたこともあり、興味深いと思っていました。

そのジョン・ゾーンが1988年に「Naked City」を結成し、1990年にアルバム「Torture Garden」を発表したことで、私の身近にいたロックやハードコアパンクのファンの人たちと話が通じるようになります。

それまで仲間内でも音楽に関しては孤立していたので、そのような話ができるようになったのは、思いがけず嬉しい出来事でした。

さらに、1992年からテレビで放送された「ウゴウゴルーガ」の影響もあり、ロッテルダムテクノなどのダンス音楽を聴くようにもなります。

実はダンス音楽への関心は、それ以前からありました。

かつて、汐留にあった東京パーンに度々通っていた私は、ジェネシス・P・オリッジのライブを見て、音楽で踊る体験を初めて得ました(それまで、クラシック音楽中心だったので、音楽で踊った経験がありませんでした)。

ともかく、1990年代には仲間と一緒に、808ステートやThe Orbなど、テクノやハウスのアーティストの来日公演を観に行くようになりました。(続く)


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos(2019年3月まで)


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔のような自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔


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■crossroads[51]
プログラミング教育と論理的思考

若林健一
https://bn.dgcr.com/archives/20181023110100.html

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こんにちは、若林です。

この週末、NASA主催のハッカソンに、大阪会場のスタッフとして参加してきました。一日目の夜、宇宙つながりということで、一部のメンバーで映画「GRAVITY(邦題:ゼロ・グラビティ)」を観ることになり、観終わったあとに衛星に詳しい方から、内容の正確さについてうかがうことができました。

お話によると一部正確さに欠くところはあるものの、おおむね正しく一般の方にもわかりやすい描写になり、且つウソにならないような設定がされているとのことでした。

一方で、衛星そのものを開発されている方のお話としては「あんなに簡単には壊れない」というコメントもあり、興味深いものがありました。映画に100%真実を求めているわけではありませんが、こういう映画の楽しみ方も悪くないですね。

NASA Space Apps Challenge 2018
https://2018.spaceappschallenge.org/


Yahoo!映画P「GRAVITY(邦題:ゼロ・グラビティ)」
http://bit.ly/2yUaV5V


■プログラミング教育で論理的思考は身につく?

さて、本題です。プログラミング教育関係の記事や宣伝の文句を見ると「プログラミングをやると論理的思考が身につく」と言われています。しかし、私は「プログラミングをやっている人の思考が必ずしも論理的ではない」と考えています。

その理由は、実際に職業としてプログラムを作っている人(つまり、プログラマー)で、論理的思考が実践できていない人もいるからです。

世の中には「処理内容に矛盾がある、漏れがある」「正しく対処されないエラーケースがある」といった問題を含むプログラムがあり、これらは「論理的に考える」ことが抜けているために生まれています。

つまり、そういったプログラムを作る職業のプログラマーがいる以上「プログラミングをやっている人は論理的思考である」と考えられないのです。

■論理的思考とは?

そもそも、論理的思考とは何なのでしょう? プログラミング教育が語られる時には「論理的思考」を「ものごとを順序立てて考える思考」と位置付けられていることがよくあります。

それも確かに論理的思考のひとつではあるのですが、その前段階として「目標から手順を分解する思考」と合わせなければなりません。

プログラミングに限らず何か作業を進める時、いきなり「ものごとを順序立てて進める」ところに着手する人はいなくて、まず「自分がやりたいことを達成するには何が必要か、何をやらなければいけないか」を考えるはず。

これはプログラミングでいうところの「設計」にあたるわけですが、前記した「処理内容に矛盾がある、漏れがある」「正しく対処されないエラーケースがある」のも、設計が正しくできていないのが原因です。

■カレーを作るにはどうしたらいいか?

よくプログラミングは料理に似ていると言われます。プログラムが正しい手順で組み立てられていなければ、期待した動作にならないように、料理も正しい順序にしたがって作らなければ、食べられるものになりません。

一方、料理を作ろうと思った時に、いきなり作り始めるのではなく、目的のものを作るには何が必要か、どんな手順で作らなければいけないかを考えるはずです。

先日、子供達に「カレーを作ろうと思ったら何がいる?」と聞いてみたところ「肉」「じゃがいも」「ルー」といった答えが次々と返ってきました(思えばにんじんは出なかったような)。

材料がわかったら、次は何をする? と聞くと「煮る」「味付け」「買いに行く」とさまざまな答えが返ってきました。このように考えてまとめていってから、実際に料理を作るという手順に入っていくわけですから、前準備の段階はとても大切です。

日頃から色んな料理を作っている保護者の方にとっては、カレーを作るのにいちいちそこまで考えなくても作れてしまうでしょうけれど、子供達にはそういった手順も必要ですね。そういう意味では、子供達というのはコンピューターに近い存在なのかもしれません。

この話は「プログラミングって何?」と考えておられる保護者の方にもわかりやすい例えだと思いますが、子供達が「プログラミングしてる暇があったら、家の手伝いをしなさい」と言われないか少し心配です。

■論理的思考とは

エンジニアの方には「いやいや、お前は何を言ってるんだ。設計を含めてプログラミングだろ。設計抜きでプログラミングっていうのはおかしい」と言われるかもしれません、それは正しいと思います。

しかし、ここでは「プログラミング教育」というテーマの中ので論理的思考について述べています。「プログラミング教育」に関わる方の中には、職業プログラマーやエンジニアでない方もたくさんいらっしゃいます。

そういった方にとって「プログラミング」とは「プログラムを作る行為」であり、キーボードで文字を入力したり、ビジュアルプログラミングでブロックをつなぎ合わせる作業のことをイメージしている方もが多いので、あえて「設計」の部分を切り分けて伝えています。

論理的にものごとを考えるためには、手順の分解と組み立てだけできればいいわけではありません。

MECE(Mutually Exclusice and Collectively Exhaustive)と言われる「重複することなく、漏れることなく」考えることや、主観と客観の両方で考えることも必要です。

それらをまとめると「適切な軸を設定してそれぞれの軸に沿って多面的に考えること」なのかなと理解しています。ただ、それも抽象的すぎて伝わらない感じではありますが。

「MECE」な思考でロジカル・シンキングの効果を高めるhttps://www.ti.tohmatsu.co.jp/column_report/column/hrd_column_52_171121.html


■プログラミング教育で実践すべきこと

もちろん、きちんと準備から組み立てまでを実践すれば、プログラミングで論理的思考を身につけることは可能です。

しかし、実際にプログラムを作る時にはそこまで考えない子がたくさんいます(もちろん、仕様書のようなものを作ってからプログラミングを始める子もいます)。そんな子供達に「まずはきちんと設計してからやれ」というつもりが、私にはありません。とくに小学生ぐらいには。

まずは、自分が思いつくまま好きに作ったらいい、それでうまくいかなかったら何が悪いのかを考えてやり直したらいい「トライ&エラー」というやつです。これが何度でもできるのがプログラミングの良いところなんですから、とにかく作ってみて修正する、この繰り返しでいいのではないでしょうか。

カレー作りであれば、一度ぐらいは許してもらえても、何度も失敗したらお母さんに怒られますからね。

子供達とプログラミングの関係では「論理的に考えて実行」よりも「まずはやってみて失敗」の方がいい、それができる貴重な環境なのです。

CoderDojoでは、大人も子供も一緒に「やってみて失敗」してますよ、どうぞ参加してみてください。


【若林健一 / kwaka1208】
https://croads.jp/aboutme/


CoderDojo奈良・生駒・明日香・田原本
http://coderdojo-nara-ikoma.github.io/

http://coderdojo-asuka.github.io/

http://coderdojo-tawaramoto.github.io/


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編集後記(10/23)

●昨日は、日中はMac mini、Timemachine、移行関連のサイト巡りに集中していた。わずか10か月でダメになったminiと思っていたが、意外にサクサク動く。もしかしたら普通の起動に失敗しただけかも、と希望的観測も生じたが、そんな甘いもんではないのかも知れない。新しいminiを買い、Timemachineバックアップから復元するのが簡単そうなので、研究中。せめて平日はこのまま動いて欲しい。今後、もし予告なく発行が止まった日があったら、そういうことなのですから、しばしお待ちいただきたいとお願いしておきます。

昨夜は市役所の会議室に行って、「自治基本条例推進委員会」に出席した。一期二年でやめる人が多いが、議長、副議長を含め8人が残った。わたしを含め、うるさ型、発言の多い人ばかりである。今期はものすごく発言の多い人が一人いて、この人がわたしと同じ思想であったらいいなあと思うが、まだよく分からない。委員の大半は発言がない。なんのために委員になったのだろう。

家に帰ったら、眼鏡がないことに気づいた。市役所から電話があって、もしかして眼鏡をお忘れでは? 助かった! 明日とりに行きます。ということで、古い眼鏡で後記を書いているのは苦痛なので、これまでにします。(柴田)


●若林さんと編集長の後記を読んでいて、自分はパソコン・機械類に関しては、「やってみて失敗」タイプだなぁと思う。「正しい」こと、「最善」が何かなど、結論が出るまで考えても、いくらシミュレーションしても、正解を知らないわけで、結果動けなくなる。

大掃除や片付けだと、正解(綺麗)は知っているものの、最善の手順なんてものを考えてしまう。箇条書きして眺めると、抜けがあったり、順番を入れ替えた方が良いように思えて、考えることに時間が取られてしまう。

いろんなアイデアや例外がパパパッと頭の中に浮かび、連想し、それぞれの枝葉まで考えてしまったり、検索してしまったり。結果、実際の活動時間が圧迫されてしまう。

逆に正解のわからない時の方が動き出すのが早い。中途半端にわかっていると「最善」にこだわり、迷いが出てきて、これまた遅くなる。続く。(hammer.mule)