わが逃走[227]海を見る。の巻/齋藤 浩

投稿:  著者:  読了時間:4分(本文:約1,600文字)



穏やかな海を見ていると、心まで穏やかになってくるから不思議だ。

遅めの夏休みをとって瀬戸内を旅してきたのだが、何とも心地よい日々だった。あわただしくないって、いいものだなあ。

今回は島々を知るべく名所旧跡の類も訪ねたが、再訪するのであれば、ただぼーっと海を眺めるだけの旅もいいかもしれない。

10月21日、尾道の千光寺展望台から瀬戸内海を望む。何度も訪れているけど、この眺めを絶景と言わずしてなんと言おう。尾道水道は今日も穏やか。快晴。四国まで見渡せる。西を見た。はるか彼方の島々で瓦屋根が反射している。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/001.jpg




10月22日、レンタカーを借り、渡船で向島に渡る。車窓が舷窓になる。ハンドルから手を離してサイドウインドウから外を眺めると、まるでクジラの背中に乗っているような感覚だ。

向島からしまなみ海道に乗り、まずは生口島を目指す。向上寺三重塔も、そこからの眺めも国宝級。海は波一つなく、まるで湖のようだった。

港に降りる。どこかで見た橋だと思ったら、『転校生』のロケ地だ。家出した二人が降りたつシーン。

近くには平山郁夫画伯の生家があった。画伯は子供の頃、このあたりの道路に片っ端から絵を描いていたそうだ、とご近所のおばちゃんから聞く。

大三島に渡り、南回りで半周。途中、西からの日差しがあまりにも美しかったので車を停めた。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/002.jpg

この日の宿のすぐ裏手で日没を見る。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/003.jpg

四国はすぐそこ。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/004.jpg

気がつけば月が出ている。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/005.jpg

10月23日、松山泊。10月24日、新居浜から伯方島へ。この日の宿も海に面している。ゆっくりと日が暮れる。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/006.jpg

10月25日、再び大三島へ。いい天気。天気がいいと、気持ちがいい。あたりまえなんだろうけど、実感したのはひさしぶり。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/007.jpg

午後は因島に立ち寄り、再び尾道に着く頃は、すっかり日が沈んでいた。山の手の宿に初めて泊まった。「満月の間」から満月を見る。満月はまるいなあ。そして、けっこうな早さで高いところへ上る。

ただ月を眺めているだけなのに、映画を見ているようにおもしろい。空は広く、尾道水道は細く長い。

瀬戸内は潮の満ち引きの差が大きく、水面が3メートルも上下するという話を思い出しながら眠る。

10月26日、夜明けを見たのは何年ぶりだろう。

http://bn.dgcr.com/archives/2018/11/01/images/008.jpg

人は小さく、地球は大きいなあ。といったことを心から思ったのも何年かぶり。

尾道には不思議な路地や面白い階段がたくさんあるので、訪れるたびに歩きまわってしまうが、海と空を眺めるだけの日を設定するのもいいかもしれない。なんてことを思った。


【さいとう・ひろし】saito@tongpoographics.jp
http://tongpoographics.jp/

1969年生まれ。小学生のときYMOの音楽に衝撃をうけ、音楽で彼らを超えられないと悟り、デザイナーをめざす。1999年tong-poo graphics設立。グラフィックデザイナーとして、地道に仕事を続けています。