[4677] 復刻版腕時計の価値と魅力◇Ingress Prime◇アメリカ版「永い言い訳」

投稿:  著者:  読了時間:23分(本文:約11,400文字)



《Ingressは会社経営と似てる》

■腕時計百科事典[67]
 復刻版腕時計の価値と魅力
 吉田貴之
 
■クリエイター手抜きプロジェクト[560]
 Ingress Prime(イングレスプライム)
 古籏一浩

■映画ザビエル[65]
 スクラップ&ビルド
 カンクロー




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■腕時計百科事典[67]
復刻版腕時計の価値と魅力

吉田貴之
http://bn.dgcr.com/archives/20181112110300.html
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アンティーク腕時計やヴィンテージ腕時計の価値は、その希少性やコンディションなどを総合的に判断して決められます。加えて、現行品にはない魅力的なデザインや、技術もその価値を支えているのは疑う余地がないでしょう。

そのデザインや雰囲気を、現代の技術で再現したモデルが「復刻版」の腕時計です。

▽復刻ビジネス

旧製品や旧作品の復刻販売は、歴史のある商品であればしばしば行われるマーケテイング手法です。自動車、お菓子、鞄、靴、スマホなど、枚挙にいとまがありません。

中でも腕時計は復刻ビジネスとの相性が良いようで、インターネット検索で「復刻」と調べると多くの復刻腕時計が販売されていることがわかります。

▽復刻で変化するもの

お菓子や服のように、つくりがシンプルなものは当時のまま復刻することが多いですが、つくりが複雑になればなるほど、何らかの改変を伴って復刻販売されることが多いようです。

腕時計では、ムーブメントが機械式のものからクォーツ式や電波式に変わったり、素材がステンレスからチタンなどに変わることもあります。

▽復刻腕時計の具体的な例

腕時計の復刻モデルの例はいくらでもありますが、いくつか代表的なものを見てみましょう。

オメガ:スピードマスター
チュードル:ヘリテージ
タグ・ホイヤー:モナコ/オータヴィア
IWC:ビッグ・パイロット・ウォッチ
バシュロン・コンスタンタン:ヒストリーク
ジラール・ペルゴー:ヴィンテージ1945
ロンジン:ヘリテージ
ボーム&メルシエ:ケープランド
セイコー:ヒストリカルコレクション
ジャガー・ルクルト

いずれも、各ブランドの人気モデルであり、プライドと自信をもって復刻販売したモデルといえるでしょう。

▽復刻版の魅力

復刻版の魅力は、そのちょっと懐かしい雰囲気や、現在では逆に目新しく感じるデザインにあります。多少、現代人の嗜好にあわせてブラッシュアップすることもありますが、基本的にはほとんどおなじデザインで市場に投入されます。

発売当時、すでに完成されていたデザインなので、変える必要がない、といったところでしょうか。

▽復刻版の価値

一方で、復刻版の価値はどれくらいのものでしょうか。もちろん、オリジナルと比べると価格が抑えられていることが多いです。復刻版の登場は、オリジナルの価格に影響を及ぼします。

復刻版が市場に投入された直後、オリジナルはいずれも少しだけ値を下げますが、基本的に数が増えるものではないので、長期的に価格が維持されることのほうが多いように思います。


【吉田貴之】info@nowebnolife.com

イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
https://www.idia.jp/
腕時計ポータルサイト:腕時計新聞
https://www.watchjournal.net/

兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。


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■クリエイター手抜きプロジェクト[560]ゲーム編
Ingress Prime(イングレスプライム)

古籏一浩
http://bn.dgcr.com/archives/20181112110200.html
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久々にというか5年ぶりに、Ingress(イングレス)が大幅アップデートされました。名前もIngress Prime(イングレスプライム)になり、アニメも放送されています(アニメは、まだ見てない)。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Ingress
http://ingressanime.com/

流行りのバーチャル・ユーチューバーの、キズナアイともコラボしたのもあります。


最初にちょっとだけ、ゲームのルールを説明しておきます。基本的にIngressは陣地取りゲームで、プレイヤーは二つの陣営(エンライテンドとレジスタンス)に別れて戦います。

互いに陣地を取りあいますが、明確な勝利というのはありません。一応時間単位で区切られたものはありますが、実質無期限です。また、このゲームではプレイヤーがやられて、ゲームオーバーになることがありません。つまり、ゲームオーバーのないエンドレスなゲームです。

陣地を取るために、プレイヤーは現実世界を移動し、ポータルをハックしてアイテムを集めます。ポータルをハックしたりするにはエネルギーが必要です。Ingressの世界では、XM(エキゾチックマター)と呼ばれています。

ポータルに自分の陣営であることを示す、レゾネーターを差し込みます。レゾネーターにはレベル1~8まであり、レベルが高いほど頑丈です。ただし、その分エネルギーも消費します。

特に毎日エネルギーが減っていくので、頻繁にエネルギーをチャージしないといけません。

ポータル同士は同じ陣営であればリンクすることができます。ポータルをリンクした際、三角形になるとフィールドができ、それが自陣営の陣地となります。

さすがに五年以上歴史があるゲームとなると、プレイヤーの数も増えたり減ったりします。でも、それは都市部の話で、田舎ではプレイヤーの数は減る一方です。

そうなると最終的にどうなってしまうのか、どうするのが得策なのかを考えてしまいます。都市部に遠征にいく気力も少なくなってくると、少ない労力で最大の利益をと考えるようになります。

もちろん、プレイするのをやめるという選択肢もありますが、Ingressから学ぶことがあるんじゃないかと思って、プレイし続けています。

何のゲームだったかは分からないのですが、国家を運営するゲームか何かで、何千年とプレイを継続していくと、民主主義ではうまくいかず結局、独裁状態にするしかないみたいな書き込みがあったのが、ずっと頭の中に残っていたからというのもあります。継続してプレイすることで、見えてくるものがあるのかもしれないと。

そうしてみると、Ingressは会社経営と似てるのではないかと思うようになってきました。

Ingressでのポータルを支店、そこに差し込まれたレゾネーターを社員、フィールドは業界でのシェア、XMは資金としてみるとどうなのかなと考えました。(銀行を思い浮かべてもらった方がいいかもしれません)

ゲームの黎明期では、簡単に陣地を取ることができます。黎明期では競合相手がいないからです。この段階では大きなシェアを占めることができます。

プレイヤーが増えてくると、次々とポータルがやられフィールドが減っていき、フィールドを維持するのが難しくなります。

たまに都市部に行くと、ポータルはあるもの、ほとんどフィールドが作られていません。プレイヤーの数が多いと、大きなシェアを占めていくことが難しいのでしょう。

都市部ではプレイヤーの数が多いわけですから、この先の展開にはなかなか進みません。しかし、戦国時代が終わった田舎では、事情が変わっていきます。

プレイヤーの数が減ると、何が起こるのか?

まず、争いが激減します。ごく希に争いはありますが、一か月に一度あるかないか程度の局地戦です。体勢に影響はありません。すでに、あちこちでシェアを占めているので、局地戦程度では何ともないのです。これは寡占化された業界ではシェアがほとんど変わらないのと似ています。

争いが減ってシェアに変化がなくなると、次に変わるのがポータルの維持数です。会社なら支店数です。まず、近くにある複数のポータルの中で、重要度が低いものは維持されなくなります。近くにある支店が統廃合されていくのと似ています。

ポータルの維持には、結構多くのエネルギーが必要です。そのためには、あちこち移動してエネルギーであるXMを確保しなければなりません。

ここでIngressで途中から追加された、特殊なカプセルの出番になります。この特殊なカプセルは、アイテムを入れておくと自動的に増えるのです。金利と同じ扱いです(銀行がIngressに協賛していた時に出たアイテムだから)。

このカプセルをたくさん集めて、そこにエネルギーを扱うアイテム(パワーキューブ)を入れて増やせば、あちこち出歩かなくても済みます。

これは、銀行の利子でどうにか食べていこうという行為にも似ています。会社が大きくなると、本業ではなく株や保険など、金融商品に向かっていくのと似ています(SONYとか)。

特殊なカプセルがあっても、大量のポータルの維持には手間がかかります。いちいち手作業でチャージしないといけないからです。すると、チャージするのが面倒になっていき、大きなフィールドの内側にあるポータルは維持しなくなります。図体はでかいが、ウドの大木のような状態になります。

会社のブランドは有名なのに、中身がなくなってしまったような会社を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。でも、Ingressをプレイしていくと、それは必然的な流れであり、仕方ないのではないかと思うようになりました。

ポータルに差し込んであるレゾネーター(社員ですね)を、大量に維持するのは大変なのです。争いがなければ、レベルの高いレゾネーターである必要はありません。一番レベルの低いレゾネーターでも、フィールド(シェア)は維持できるからです。

エネルギーの消費を最小限に抑えるために、レベルの高いレゾネーターではなく、レベルの低いレゾネーターにすることになります。念のためレゾネーターには、一番レベルの高いレゾネーターを一つだけ差し込んでおきます。(コンビニで店長がいて、他が全員アルバイトというのと似ている)

とは言え、万が一敵が攻めてきたら困るので、守りだけはしっかりとやっておきます。IngressではModと言って、四つまでモジュールを入れることができます。ここで、最強のシールドを入れておけば、守りもバッチリです。

Modはエネルギーを消費しないのです。業界での意味不明なルールや法律などでがっちり固められたものが、そうなのかもしれません。

ここまでで自分の陣地はどうなったかというと、レベルの低いレゾネーターで大きなフィールドを維持しているだけです。歩き回ることもない(これは新規開発、開拓にあたります)ので、大変楽です。

最小限の手間で最大の利益を得ていることになります。Ingressは健康のため出歩くゲームのはずなんですが、コタツでゴロゴロしながらチャージするだけのゲームに成り下がってます。

しかし、実際にはフィールドはでかいが、はりぼて状態なので敵がきたら、ポータルはあっさりとやられ、広い陣地はあっという間に消え去ります。特に陣地が広ければ、そこに時間も馬鹿になりませんし、そこに行くことができなくなっていることもあります。

さらに、敵が強い場合、こちらには対抗する武器も残っていません。ほとんどが守りのためのアイテムになってしまっているからです。これから武器を取得するには、あちこち歩き回りポータルをハックしなければなりません。

ところが、一旦レベルが下がってしまったポータルは、以前のレベルに戻すことはなかなかできません。プレイヤーの数が少ないので、ポータルにレゾネーターを差し込んでも、低いレベルにしかなりません。当然、ハックしても出てくるアイテムもしょぼいものだけになります。

ここで、ふと気づくわけです。フィールド内部で高いレベルのポータルをいくつも維持し続けないと、大きなフィールドをもう一度確保するのは難しいのだと。つまり優秀な社員にはお金をつぎ込まないと、最終的には初心者しかいなくなり、シェアを失い、さらには元に戻すことができないわけです。

ただ、Ingressには一発逆転のアイテムもあるので、それを特殊なカプセルで増やしておき、いざという時に使うという技もあります(著作権とか何らかの権利の主張に似ている)。

相手のポータルが最高レベルになった時に、そのアイテムを使えばいいのです。が、相手もやはりそういうアイテムを持っているので、最終的には負けてしまいます。相手はあちこち歩き回って、アイテムを大量に収集しているわけですから。

こうなると、広いフィールドを確保するのはあきらめて、自分の狭い範囲だけを徹底して守るという具合に、方向転換することになります。会社なら、その強みを活かすということになります。範囲が狭いのでポータルがやられても、すぐに修復することができます。最強の狭い陣地ができあがるわけです。

さて、ここから再び大きなフィールドを確保していくには、どうしたらよいのか。これは、もう一つしか方法がなくて、同志を集めるしかありません。つまり、仲間を集めてポータルのレベルを上げるしかないのです。プレイヤーの数が8人以上いないと、Ingressでは最強のポータルにすることができません。

しかし、悲しいかな田舎では8人もいないので、最強の狭い陣地か、ウドの大木陣地のどちらかになってしまいます。でも、都市部は常に戦国時代でフィールドを張ることも難しい。

そうなると、田舎でも都市部でもない、中間が一番よさそうな感じになります。実際、適度に争いがあり、適度にいろいろ変化するので、プレイしていても一番面白い。

結局、中間を目指すのが一番いいのかなあ、というのが今の結論です。


【古籏一浩】openspc@alpha.ocn.ne.jp
http://www.openspc2.org/

Ingress Primeになったのはいいんですが、iPhone SEでは遅い。何とかプレイできるものの辛い状態。グラフィックはきれいだけど。

さて、DA PUMPのU.S.Aがヒットしているということなので、そうなると当然替え歌もあるだろうと思って検索したら、やっぱりあった。
・USB


・創って学ぼうプログラミング
https://news.mynavi.jp/series/makeprogram

・みんなのIchigoLatte入門 JavaScriptで楽しむゲーム作りと電子工作
https://www.amazon.co.jp/dp/4865940936
[正誤表]
http://www.openspc2.org/book/error/ichigoLatte/

・After Effects自動化サンプルプログラム 上巻、下巻
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397591
https://www.amazon.co.jp/dp/4844397605

・IchigoLatteでIoT体験
https://www.amazon.co.jp/dp/B06X3X1CHP
http://digiconcart.com/dccartstore/cart/info/2561/218591

・みんなのIchigoJam入門 BASICで楽しむゲーム作りと電子工作
http://www.amazon.co.jp/dp/4865940332/

・Photoshop自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00W952JQW/

・Illustrator自動化基本編
http://www.amazon.co.jp/dp/B00R5MZ1PA/

・4K/ハイビジョン映像素材集
http://www.openspc2.org/HDTV/

・クリエイター手抜きプロジェクト
http://www.openspc2.org/projectX/


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■映画ザビエル[65]
スクラップ&ビルド

カンクロー
http://bn.dgcr.com/archives/20181112110100.html
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◎雨の日は会えない、晴れた日は君を想う

英題:Demolition
公開年度:2016年
制作国・地域:アメリカ
上映時間:101分
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー、ジュダ・ルイス

●だいたいこんな話(作品概要)

ある朝デイヴィスは、自動車事故に遭う。助手席にいた自分は軽い怪我で済んだが、運転席の妻は担ぎ込まれた病院で亡くなっていた。

デイヴィスは、突然の出来事を上手く飲み込めず、事実を頭では理解していても感情がついてこない。

妻の死に何も感じられないまま、葬儀の日を迎える。他人事のような感覚で葬儀に参列しながら、事故の日、病院の待合いで自販機が故障し、チョコレートを手に入れられなかった件についての苦情の手紙を書き始める。

デイヴィスは、苦情よりもチョコレートを買うに至った経緯など、自らの身の上を書くことに夢中になる。

交通事故で妻を失ったこと。車には自分も同乗していたこと。妻の父親が経営する投資会社に勤めていること。それなのに通勤電車で毎朝会う男性に、自分はマットレスのセールスマンだと嘘をついてしまったこと。

見ず知らずの、自動販売機メーカーの顧客担当に宛てて、とりとめもなく書き綴った手紙は、何枚にも何通にも至った。

ある晩、手紙の内容に感銘を受けたと、顧客担当の女性から電話がかかってくるのだが。

●わたくし的見解/アメリカ版「永い言い訳」

昨年公開された作品なので、すでにあちこちで突っ込まれているのだが、邦題で失敗していることは否めない。

この情感あふれる邦題に見合った内容ではないので、ちょっと紛らわしい。では、どのような内容かと言えば、主人公は原題(“Demolition”)どおり、劇中ほとんどの時間を「解体」あるいは「破壊」に費やしている。住宅の壁を壊すような大きなハンマーや、ブルドーザーを使って。

だからと言って、「解体」というタイトルの映画など、誰が観に行くものか。建設事業にまつわるドキュメンタリーか、シリアスなイラン映画ならまだ可能性はあるにしろ、観客動員よりも、まず上映館数が極端に減ってしまう。

物語は、妻や結婚生活に関心を失っている男が、突如妻を失った様子を描いている。制作年度や公開年度を見ても、本当に偶然としか言えないが、西川美和監督作品「永い言い訳」と設定がとても似ている。

どちらの作品の主人公も、周囲が期待するような形で、妻の死を悲しむことが出来ず困り果てている。涙が出るとか出ないとか、そんなのは表面的なことだから構わないとして、とにかく感情が湧き上がらず途方に暮れる。

妻の死後に知り合った親子との交流で、主人公が少しずつ、本来あるべきものを取り戻していく流れ。そして、悲しみのないことに罪悪感さえ抱いていたのに、物語の中盤で、亡き妻から手痛いしっぺ返しを食らうところまで、二つの作品は要約すると本当に同じような物語なのだ。

しかしながら、同じ食材でも違う料理が出来上がるように、単に日本とアメリカの違いにとどまらず、きちんと違う物語になっている。カレーと肉じゃがくらい、この二つの作品はちゃんと違うのだ。

「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」は、序盤で主人公が言っているように、“すべてが、metaphorになった”作品だ。

物語の説明をする時に「これは一種のメタファーで」と述べるのは、いかにも中二病的で個人的にとても恥ずかしく、他に適当な表現はないものか大変迷うところなのだが、本作に関しては、もはや比喩であって比喩でないところが面白い。

手紙は、特定の誰か宛てでないからこそ、正直に自分の感情や結婚生活についてまで書き連ねることが出来たに違いない。これには、書くという行為で自分や自分の置かれた状況を客観視できる、心理学的効果が期待できる。

主人公は、苦情の手紙という体裁のものを書くことで、セルフセラピーを行なっている。映画に描かれていないだけで、本当はカウンセラーに勧められて書いたのかも知れない。

同じように、彼自身をとり戻す(再構築する)ために「解体」する必要があったのだけれど、比喩としての解体ではなく、実際に自宅も自宅以外の家も壊していく様子は見どころだ。

自販機メーカーの顧客担当として電話してきたのが、ナオミ・ワッツ演じる(美人で絶妙に幸薄そうな、現在の宮沢りえファンあたりには堪らない)シングルマザーなのに、ロマンス要素は少ない。

彼女は「何も感じない」と感じている主人公の長い手紙から、それは大き過ぎる喪失感によるものだと知っていて、それこそカウンセラーのような役割を果たしていく。いわゆる一線は超えないところも、まさにカウンセラーのようだ。

後半にいたっては、ほとんど彼女の息子との交流が中心になっていくのも、実にさっぱりとしている。テーマの割には、しんどい思いをせずに鑑賞できる、邦題とは真逆の、ドライで軽やかな作風が本作の魅力でもある。

作品全体を振り返っても、ふわふわしていると言うか、やはり全体的に象徴的と言うか、“すべてが、metaphorに”感じられる。主人公が再生する過程(解体と再構築)の、イメージを見せられているような映画だった。

失ってから、大切にするべきだったものを、ないがしろにしてきた自分に気付く。よくある喪失と再生の物語なのだけれど、人生に喪失は付きもの。でも自分の人生で、失ってから大切なものに気付くなんて、あんまりだ。

よくある物語は、きっと本当によくある事なのだろうから、つい忘れてしまわないように、時々は自分への戒めと思って観るべきなのかも知れない。


【カンクロー】info@eigaxavier.com

映画ザビエル 
http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。


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編集後記(11/12)

●数十年ぶりに「ベン・ハー」をモニターで見た。テアトル東京のロードショーで見たような気がしたが、年齢的に合わないのでたぶん見ていない。見たのは「2001年 宇宙の旅」の方だろう。そして内容は理解できなかったであろう。今でもよくわからないのだから。「ベン・ハー」はたぶんテレビで、WOWOWで見たのだと思う。そして内容はかなり分かりやすいので、理解できたであろう。

冒頭で夜空にUFOが移動している。停止して光線を地上に照射する。ああ、イエス・キリストの誕生か。"Ben-Hur:A Tale of the Christ" のタイトル通り、キリストの誕生、受難、復活が「ベン・ハー」物語の背景にある。監督のウィリアム・ワイラーがキリスト役につけた条件は、威厳に満ちた歩き方ができるかどうかだった、とメイキングで語る。神々しい後ろ姿だけ撮られている。

ユダヤの王子ベン・ハーは旧友のメッサラに裏切られて、奴隷の身に落とされる。彼らは聖書の人物と思われがちだが、聖書には載っていない。クライマックスは十字架であり、ベン・ハーの改宗である。でも、とくに信仰に関心のない普通の人には、目玉シーンは海戦と馬車レースの凄まじいまでの演出である。

メッサラは上昇志向満点の司令官である。ローマ皇帝だけが全能の神だと言う。最初は相当な男前で好感度も高いが、ベン・ハーを裏切ってからは、次第に表情が悪くなり、絵に描いたような悪役、敵役になってしまう。実にわかりやすい。新総督を迎えた日。ベン・ハーの館の瓦が偶然、総督の行列の中へ落下する。暗殺を疑われた無実の彼を、メッサラは裁判もせずに奴隷の身に堕とす。

さらに、親友でさえ罰する男として恐れられよう、とうそぶく。ベン・ハーは復讐の念と信仰に支えられ、ガレー船の底で鎖につながれた、漕ぎ手41号として三年を過ごす。彼が苦役する船に乗った、ローマ海軍の総司令官アリウスを助けたことで奴隷から解放される。筏で漂う二人の姿は、合成の輪郭がハッキリ出ていてお粗末。海戦のシーンは海でなく、池を掘って演出されたという。

ガレー船も実物大を二艘つくった。一艘を動かすのに300人の力が必要だった。水中にレールを引いて船を動かした。ここでも合成の粗が見えてしまった。最大の見せ場、八台の馬車が円形競技場で競走するシーンは実写。人死にが出たのではないかと思われる凄まじいシーンもあるが、撮影で死んだ人は一人もいない。ベン・ハーのチャールトン・ヘストンが、一番練習熱心だったらしい。

ワンカットだけ数秒間、スタントマンが演じた。一台が300キロ以上の馬車が激突しても大丈夫なように、円形競技場の壁は本物の石を使っている。競技場のシーンには、背景に当時のローマが映っているのでマットペイントの岩山と合成している。大観衆も上の方の席は人形だ。メーキングがとても興味深い。

「ベン・ハー」は世界的に貴重な、10万ドルもするMGM65ミリカメラで撮影されている。6年半もの製作期間を経て、制作費は当時最も高い1500万ドル(当時54億円)で、収益は8000万ドル。大勝負に大勝利。2016年に五度目の映画化がされているとは知らなかった。190億円もかけて大コケだとか。どうやら最低の出来らしい。やらなければよかったのに。よく企画通ったな。(柴田)

「ベン・ハー」字幕版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00FIWNX1S/dgcrcom-22/


●Ingressは会社経営に似ている……読むと確かに。さしずめ私は営業マンといったところ。うちは都市部よりの中間地域。なのでハマったのかもしれない。

他社シェア地域のため、自社の強い地域に遠征して、そこをより強化し、補給をして地元に戻り、シェア拡大をはかって奮闘。地域マネジャーや、敏腕営業マンを頼りつつ、どうにかシェア縮小を食い止めている感じであった。

マネジャーらは月に数回、キャンペーンを計画した。他地域のマネジャーらと協力して、営業メンバー一丸となり活動。月に一度、新人研修もあった。マネジャーらが活躍していた。年に数回、全国から集まるイベントも行われていて、幹部らの会合にもなっていた。名刺交換会もあった。

膠着している地域には、絨毯爆撃を仕掛けられたことがあった。その行動力に舌を巻いた。信頼回復のための営業活動は大変であった。営業は脚で稼ぐを地で行った。

土地勘のない地域で活動し、そこの地域マネジャーに「計画が実行できないから、ここ変更してもいい?」なんてメッセージをもらったこともある。近視眼的に動いていたら、日本全体のシェアを握る企画を実行した猛者らがいて、視野を広げないとなぁなんて思ったりしたのであった。 (hammer.mule)

初心者育成イベント「Ingress FS」日本は安定の世界1位(2015.10.11)
http://ingressblog.jp/ingress-fs-2015-10/