グラフィック薄氷大魔王[587]マンガ絵アニメ絵=萌え絵?/吉井 宏

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●言葉が認識を作る

話題の「児童書に『萌え絵』」について。たぶん、「萌え絵」という言葉が新しくできて、(主に)女の子を描いたアニメ・マンガタッチの絵の総称と解釈され、叩く対象として再発見されてしまった。のではないかと。

↑先日、映画「メッセージ」を観たときに「言葉が世界・認識・意味を作る」的な解説を読んだ影響w 新しい言葉によって、それまで認識できなかったものが見えるようになる、という。

従来、「正統派(?)のイラストレーション、さし絵」に対する「アニメ・マンガタッチの絵」を指す明確な単語は無く、単に「イラスト」とか「マンガ・アニメ風イラスト」としか呼べなかった。

そこへ「萌え」という新しい概念とともに、「萌え絵」という呼び方が生まれたとき、アニメ風イラストでしかなかったものが、「あれは『萌え絵』というものだったのだ!」と、認識されるようになったのかも。




曖昧な概念にピッタリな呼び名ができると、その周辺含めて一緒くたに放り込まれる。「ゆるキャラ」もそう。ゆるキャラの定義とか関係なく、着ぐるみマスコットは全部ゆるキャラ。

同様に、萌え要素がなくても、アニメ風イラストは「萌え絵」。この強い単語には、「アニメ風イラスト」などという弱い単語は影が薄くなるというか。

少なくとも30年以上前から、アニメ絵の絵本ってあったはずだけど、「萌え絵」という言葉ができて初めて見えるようになったのかも。

(児童書にアニメ絵の是非については、「全部の本がアニメ絵になってるわけではなく、多くから選択可」「子供がほしがる=読書のきっかけ」という点で、反対するつもりはないです)

●マンガ絵の違和感

ところで、やはり30年以上前からジュヴナイル(ライトノベル)をはじめ、文庫本等にもマンガ・アニメ絵のものが増え始めていた。当時僕はリアル系のSFイラストを目指してたので、マンガ絵が増えてきてた状況を苦々しく思ってた時期があるw

某大物イラストレーターの人も「マンガ絵撲滅運動を」とか冗談で言ってたくらい。実際、「イラスト」と言えば今やほとんど、「マンガ・アニメ風の絵」を指すことになっちゃったわけで、「正統派(?)」が駆逐されたとまでは思わないけど、ある程度その見方は正しかったんだな。

1984年の映画より前の「デューン」の文庫本シリーズのカバーは、石森章太郎のマンガ絵だったが、それさえ抵抗感あった。

マンガ絵を表紙やさし絵にすると、イメージが固定されてマズいんじゃないかと思った。考えてみればリアル絵も、登場人物の詳細な描写や凝ったメカデザインなど、イメージが固定されるのは同じだけどね。

生頼範義とか含むリアルでハードなイラストにあこがれてた一方で、僕も高校から専門学校卒業まで5年くらい、マンガをちょこちょこ描いてたので、マンガの様式や記号表現が染みついてた。

ところが、デザイン事務所に入って、パンフや広告やチラシなどに「カット」を描くようになると、「一般の大人向けのイラスト・カット」にマンガタッチが入り込むのとものすごい違和感があることに気づいた。

何を描いても、染みついたマンガ表現が出ちゃって困った。そういったマンガ表現から抜け出すのに数年かかったもんw

マンガに近い表現は従来のイラストにも普通にあるけど、それとは別の「明らかにアニメやマンガ系統からのニュアンスや表現」のこと。当時の僕が感じてた相違。

今でもたとえば「ベルばら」「ガラスの仮面」などを広告に登場させ、「違和感」をギャグとして使ってることがあるけど、あの「場所にそぐわない感」に近い。

それで、若い人が躊躇なくマンガ的表現をしてるの見て、「後で苦労するぞw」とか以前は思ってたんだけど、もうマンガ的表現しても大丈夫な世の中になってきたのかなあと感慨。

余談1:「一般の大人向けのイラスト・カット」……ふと考えたら、デザイン事務所に入った当時は20歳。最年少の大人。大人は全員年上だったw 相当背伸びしないといけなかったんだなあ。

余談2:日本の人形アニメ、ロボット製品などで「汗」とか「バッテン目」などのマンガ記号を使ってるのには、今も強い違和感がある。その記号を使わずにどうにかならないか? って。日本のマンガ記号が通じる範囲でしか理解してもらえないぞ? って。


【吉井 宏/イラストレーター】
http://www.yoshii.com
http://yoshii-blog.blogspot.com/

「♪あなた変わりはないですか、空のかなたにおどる影」
というのを思いついたんだけど、あっ! どちらも小林亜星だw

「♪冬のリビエラ、今は秋」
ってのもあって、こちらは大瀧詠一。

・スワロフスキー「HOOT HAPPY HOLIDAYS 2018年度限定生産品」
https://bit.ly/2QbNMmg
・スワロフスキー「SCS ペンギンの妹 PATTY」
https://bit.ly/2OZa3n9
・rinkakインタビュー『キャラクターは、ギリギリの要素で見せたい』
https://www.rinkak.com/creatorsvoice/hiroshiyoshii