もじもじトーク[96]世界を変えた書物展/関口浩之

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。あっという間に11月ですね。気がつくと、「デジクリゆく年くる年」の大晦日が、すぐにやってくるんだろうなぁ……。一年って、本当に早いね!

今年も、フォントに関するたくさんのイベントに参加したり、企画したり、登壇したりした一年でした。

イベント活動は、仕事として活動することが多いですが、ときどき休みとって、知見を高めるために、プライベートで展示会や博物館、イベントに足を運んでいます。ここ数年、活字に関する展示会が多いような気がします。

今年の9月8日(土)から9月24日(月・祝)で、上野の森美術館で開催されていた『世界を変えた書物展』に行ってきましたので、そのレポートを書きます。





●『世界を変えた書物展』とは

この展示会のチラシには、「金沢工業大学が所蔵する科学技術に関する世界的な初版本コレクションから選りすぐられた約130冊を展示します。人類の叡智を目の当たりにする絶好の機会です。」と書かれています。おおぉ……。

金沢工業大学ライブラリーセンターは、西暦1445年頃とされるグーテンベルクによる活版印刷術発明後に出版された、科学技術に関する初版本を2000点以上蒐集・所蔵しているそうです。

すご過ぎます。コペルニクスやガリレイ、ニュートン、アインシュタイン、ダーウィンなど、僕が尊敬する諸先輩方の初版本が一堂に会する機会って、そうはないですよね。

天体好きな、フォントおじさんとしては、行かないはずがありません(笑)

●書物展レポート

今回の展示会では、写真撮影が基本的にすべてOKでした。会場の入り口の看板、展示場入り口のゲートを見ただけで、わくわくするものがありました。こんな感じです、じゃーん!
http://bit.ly/syomotsu001

ゲートをくぐって、最初に目に入ってきた景色が、こちらです。
http://bit.ly/syomotsu002

風格のある立派な書籍が、天井まで綺麗に並べられています。図書館、そのものでした。書籍好き、図書館好き、書店好きな方、そうでない方も、感動します。平日にもかかわらず、すごいたくさんの人が見学に来てました。

二時間ぐらいの滞在でしたが、本当は一日中、じっくり眺めていたいと思った展示会でした。僕が、特に気なった展示物を掲載しますね。
http://bit.ly/syomotsu003

手にとって読むことはできませんでしたが、15~16世紀にタイムスリップした感覚でした。

天体おじさんにとって、ニコラス・コペルニクスの『天体の回転について』の初版本(1543年)が見られただけでも、感動ものでした。

天文学者のニコラス・コペルニクス、ガリレオ・ガリレイ、ヨハネス・ケプラー、アイザック・ニュートンが活躍した時代が、活版印刷の普及期の15~17世紀であったことは、活版印刷の普及と科学の発達とは密接な関係があったのではないかと思ってしまいます。

コペルニクスが天動説を唱えたことは有名な話ですが、当時のキリスト教は、プトレマイオスの天動説を支持していました。地球を中心に宇宙が回転しているという理論です。

そのため、太陽を中心に地球が回っているという地動説は、聖書の思想と相容れないと、物議をかもすことになったのです。

ただし、『天体の回転について』がローマ教皇庁から閲覧一時停止の措置がとられたのは、コペルニスが亡くなった1543年から、半世紀以上後の1616年になってからなんです。ガリレオ・ガリレイの裁判の時代のことです。

このあたりのお話は、別の機会に詳しく書きたいと思います。

もし、活版印刷が発明されていなかったら、コペルニクスの地動説が、広く世間に広まらなかったでしょうし、彼の死後、70年後に、ガリレオ・ガリレイの裁判が起こらなかった可能性もありました。

科学の進化や産業の進化に対して、活版印刷の発明が寄与した役割は大きかったのではないでしょうか。

●グーデンベルク以前の印刷技術

グーデンベルグの活版印刷技術が普及し、書物が本格的に量産できるようになったのは15世紀以降です。

でも、広い意味での印刷技術は、グーデンベルグ以前の古い時代に、東アジアで発祥したと言われています。

西暦2世紀頃に紙が発明され、8世紀頃には木版印刷が行われていました。版画なので、ページ毎の刷版を、人間の手で文字や挿絵を木板に彫って印刷、製本していたのです。

また、古くから、写本による書物は存在していました。原書を見ながら、手書きで複製本を作っていました。挿絵は、エッチング技法による銅版の版画が15世紀頃に普及したようです。

写本にしても、木版にしても、数百ページの本を作るとしたら、かなりの労力が掛かりそうです。それが、金属活字で組版して活版印刷できるようになり、書籍や冊子、案内状などが大量生産できるようになったのです。

とはいえ、ソフトウェアが存在しない時代ですから、文選して(活字を拾う)、組版して、印刷する労力は、今のDTPの作業に比べれば、相当、大変だったわけです。

現在は、インターネットがあるので、デジタル化された情報を、一度にたくさんの人に伝えることができるようなりました。しかしながら、それまでは、人間の手で丹精込めて組版し、装幀し、製本し、今回の展示された素敵な書物が生み出されていたのです。

人間の叡智って、本当にすごいなと思いました。

制限、制約、不自由さを克服するために、新しい発明がされ、さまざまな革命が起きた人類の歴史って、素晴らしいですね。その一つが印刷技術であり、偉大なる情報革命なのです。

情報革命、イコール、インターネットというイメージかあるけど、5,000年ぐらい前に誕生した文字も発明が、情報革命の第一歩だと思います。

だって、文字が発明されていなかったら、金属活字を鋳造することはできなったでしょうし、コンピュータやインターネットも誕生することができなかったわけですから。

記号が体系化された「文字」が、書物としてコミュニケーション手段となり、正確に情報伝達ができるようになったのです。

そして、マシンリーダブルな「文字」というコードを介して、コンピュータが理解し、インターネット上を「文字」というコードがパケットでやり取りし、いつでも、どこでも、情報が入手できるようになりました。

そう考えると、文字って、宇宙みたいな概念だなと感じました。

10月27日に開催された「クリエイティブハント山口」で発表した『文字の誕生』のスライドの一部、共有します。ぜひ、ご覧ください。
http://bit.ly/mojinotanzyou

では、二週間後に、またお会いしましょう。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com

フォントおじさん
https://event.fontplus.jp/about/hiroyuki_sekiguchi.html

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。1980年代に日本語DTPシステムやプリンタの製品企画に従事した後、1995年にソフトバンク技研(現 ソフトバンク・テクノロジー)へ入社。Yahoo! JAPANの立ち上げなど、この20年間、数々の新規事業プロジェクトに従事。

現在、フォントメーカー13社と業務提携したWebフォントサービス「FONTPLUS」のエバンジェリストとして日本全国を飛び回っている。

日刊デジタルクリエイターズ、マイナビ IT Search+、オトナンサー等のWebメディアにて、文字に関する記事を連載中。CSS Niteベスト・セッション2017にて「ベスト10セッション」「ベスト・キャラ」を受賞。フォントとデザインをテーマとした「FONTPLUS DAYセミナー」を主宰。

フォントおじさんが誕生するまで
https://html5experts.jp/shumpei-shiraishi/24207/