映画ザビエル[66]ミギー/カンクロー

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◎ヴェノム

英題:Demolition
公開年度:2016年
制作国・地域:アメリカ
上映時間:101分
監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー、
ジュダ・ルイス

●だいたいこんな話(作品概要)

カリフォルニア州サンフランシスコで、TV局の記者として活躍するエディ・ブロック。自身も出演する突撃取材番組は、決して批判を緩めない姿勢が好評で人気を博している。弁護士の恋人アンとの仲も順調だった。

エディは、かつて画期的なガンの治療薬を開発した、カールトン・ドレイクが代表を務める「ライフ財団」によって行なわれている人体実験が、非常に危険なものであるという情報を得た。

この疑惑について報道しようとした途端、財団からの圧力でTV局をクビになり、財団の訴訟に関わっていた恋人のアンも、弁護士事務所を解雇される。そして、この事が原因で、エディはアンから別れを告げられてしまう。

職も恋人も失い、半年間、自暴自棄に過ごしてきたエディの元に「ライフ財団」の研究職員であるドーラ・スカース博士が現れ、財団がホームレスを利用して行っている人体実験で死者を出している事実を、改めて公表して欲しいと願い出る。

エディは、証拠を掴むため「ライフ財団」の研究所に侵入。その際、知り合いのホームレスの女性マリアを見つけ、助け出そうとした時に何かに寄生されてしまう。

それは財団が宇宙探査で見つけてきた、“シンビオート”と呼ばれる地球外生命体で、財団は、ヒトが宇宙環境に適応できるようになるため、“シンビオート”をヒトに寄生させようと人体実験を行なっていたのだ。

実験は失敗を繰り返し、数多くのホームレスがすでに死んでいた。しかし、エディは奇跡的に“シンビオート”との共生に成功し、凄まじいパワーを手に入れる。

問題は、“シンビオート”が寄生した宿主も含めて、ヒトを喰らう生物であること。そして、地球に連れて来られたのではなく、地球を支配するために意図的に捕まり、やって来たという点だった。





●わたくし的見解/「寄生獣」みたいなのだ

「悪役」あるいは日本的な表現だと「敵役」の魅力が、作品の人気に左右すると言っても過言ではありません。ガンダムの(初代)主人公アムロに対してのシャア、ルパン三世と対なる銭形警部、世界的に有名な悪役(敵役)のダース・ベイダー。

そのような役回りを、アメリカン・コミックではスーパーヴィランと呼ぶそうです。DCコミックスの「バットマン」にも、ジョーカーなど印象的なヴィランが多く存在します。

ヴェノムは、マーベル・コミックスの「スパイダーマン」にとって最大の宿敵とされている人気キャラクターで、映画でも2007年の「スパイダーマン3」(サム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演のシリーズ)に登場しています。

そこではすでに、“シンビオート”なる地球外生命体は、生物スーツとして開発されており、悪意のある人間が着用したことでスパイダーマンと敵対する存在になっていました。

さて、本作においてのヴェノムは、まさに宇宙から地球にやってきたばかりで、生物スーツなどにはなっていない、生命体そのものの状態です。

うジュるうジュるした形態のせいか変幻自在で、強力なパワーを持っています。そのぶん食欲も旺盛。何でも食べてくれれば問題ないのですが、食べられるものが限られていて、数少ない食べられるものに、何故がヒトが含まれているので困りものです。

地球外生命体なので、当然、地球上の常識や倫理感などある訳もなく、生き抜くためにヒトを殺す、そして食べることに躊躇しません。ある程度は宿主の意思で制御できるものの、それにも限界があり、寄生された主人公エディの苦労する様子がしっかり描かれています。

寄生されてから、その異常事態をエディが理解するまで、そして共生関係が安定するまでで本作は終了してしまいます。アメコミものの映画化作品の多くは、だいたい三部作を想定して製作されるので、一作目はどうしてもイントロダクションにある程度の時間が裂かれるもの。

「ヴェノム」は主人公の紹介だけでなく、地球外生命体みたいな突飛なものが何処から来たかなどの説明が必要なせいか、他のアメコミ原作の映画作品よりも一層スロースタートな印象を受けました。

ただ、それよりも観ていて一番心配になったのは、この傍若無人な食人モンスターを、どのようにして正義のヒーローにするのやらという点。ここは結局、アンチ・ヒーローの王道的展開を見せてくれます。

悪魔と合体しながら人間の心を持つ「デビルマン」や、改造人間になりながら人間の側に立ち、自らと同じ境遇の怪人たちと闘う「仮面ライダー」のように、人ならぬモノと人間のハーフのような異質な存在で、人間を救うために闘う流れに「ヴェノム」も該当します。

しかし、昭和の日本のアンチヒーローたちと少々趣が異なるのは、ベースとなる人間(主人公)と融合する人ならぬモノ(ここでは“シンビオート”)との間で友情に似たものが芽生え、共存・共生のために、ある種の契約を交わした結果、正義のヒーローとして誕生するところです。

闘いが終結したあかつきには、自らも抹消しなければならない昭和のアンチヒーローの悲劇的な存在と比べると、「共に生きよう!」と高らかにぶちまけるアシタカ(「もののけ姫」に出てくる理想論を掲げる若者)のような、どのような状況でも希望を失わない性根の明るさを「ヴェノム」にも感じます。

私としては、地球外生命体から寄生される、それらはヒトを頭から喰らう、変幻自在な形態などは、昭和から平成(1988〜1995年)にかけて発表された日本の漫画作品「寄生獣」を思い出さずにいられません。(ちなみに、マーベル・コミックスに「ヴェノム」が初登場したのは1885年)

実はヴェノムも「寄生獣」のミギー同様に、自らヴェノムだと名乗ります。ミギーは右手に寄生した経緯から自分でそう名付けましたが、ヴェノムは元々そのような名前を持った個体だったようで、他の”シンビオート”にも名前があります。

うジュるうジュるしてるくせに生物として強靭で、しかも知的生命体なのですから、かなり厄介です。

しかし、おそらくヒトより優れた地球外生命体の彼らの中では、ミギーもヴェノムも出来損ないや負け犬で、そんな劣等生達の抱く人間へのシンパシーのお陰で、いつも地球は救われるのですから世の中捨てたものではありません。

色々それらしく御託を並べておりますが、アメコミものの映画は大体において面白いんです。その中で、ベストとまでは申しませんが、ヴェノムの(モンスター的)映像表現だけでも一見の価値があります。ぜひ、楽しんで下さい。

ところで余談ですが「もののけ姫」と言えば、ヴェノムが途中からエディにヒトを食べていいか許可を得るくだりが、しきりにサンに「食べていい?」と聞く山神(デカい犬)みたいで可愛く思えました。

とんがった歯が一杯生えてて邪悪な形相のヴェノムですが、不思議と愛嬌があって憎めないギャップ萌えが、他のアメコミ作品にない魅力かも知れません。


【カンクロー】info@eigaxavier.com

映画ザビエル 
http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。

私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。